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1.面白かったのは二つのショーだけ 2度目となる大阪での日本国際博覧会(大阪・関西万博)2025が、2025年4月13日から半年間の予定で開催中である。私も、この世紀の祭典を見て来ようと、6月10日と11日の二日間、大阪に行って入場してきた。暑くなる夏の前に行かなくてはと思ってこの時期にしたが、折悪しく梅雨入りしてしまって、連日の雨だった。 会場はともかく広い。そこを延々と歩いて待ち、合計18の館(パビリオン)を回った。事前の予約と抽選に全て外れていたので、どこも並ばないといけなかった。 そうやって苦労して入っても、どの館でも観光用のビデオや写真を見せられて、もの新しさはなく、総じてつまらなかった。それくらいなら、テレビの観光番組を観たり、私も実際に42ヶ国を訪れているから、私の方がよく知っているほどだ。 ちなみに今回の万博のテーマは、「生命かがやく未来社会のデザイン」らしいが、少なくとも私が見た館(パビリオン)では、その大半がこのテーマとは全く関係がない展示だった。目玉のはずだった「空飛ぶクルマ」も商業運行の認可が降りず、客を乗せて飛ばなくなった。 これを予約なしで見るには、東ゲートからでは間に合わない。西ゲートから朝早く入って直接行くなら、見られるだろう。まあ、良い。昔、バチカンで美術品は十分に見たし、それに来年か再来年にでもローマに行って、実際に本物を見てくるつもりだ。その頃には、今回の万博への出品物が帰ってきているだろう。 2.1970年の大阪万博以来 前回は1970年に大阪の千里丘陵において、「人類の進歩と調和」をテーマに開催された。その時、私は京都で大学生だったが、生来、科学好きで目新しい物が好きなので、4回も通った。私の回想録では、次のように書いている。 「会場に入ると、中央には、岡本太郎の強烈な個性がほとばしる太陽の塔がそびえている。これは、あたかも異次元の世界の門番のようなものだ。建ち並ぶ各国や企業のパビリオンはいずれも斬新な意匠のものばかりで、華やかなファッションに身を包んだコンパニオンたちが案内してくれる。その中に展示されているものはどれも目新しく、近未来の製品ばかりだ。新し物好きの私には、もうたまらない。でも、どこもかしこも見物客が一杯で、長い列を作っていた。 それにもへこたれず、列の中で何時間も待ち、アメリカ館に入って月から持ち帰った石を見たり、白い4つの球から成るフランス館に入ってその洒落たデザインに感心したりした。また、国鉄のリニアモーターカー、動く歩道など、企業館に展示されている最新の製品を見て、私の科学好きの心は刺激され、外国への憧れと、まだ見ぬ未来への夢を膨らませた。」 3.今回の大阪万博の前評判 今回は、それから55年後の2回目の開催である。場所は大阪市の夢州(ゆめしま)で、テーマは前述の通り「生命かがやく未来社会のデザイン」である。158の国・地域・国際機関が参加しているという。 ところが、どうにも事前の人気が高まらない。大阪府と市が毎年、万博に来場するかどうかを尋ねるアンケートによれば、「行こうと思っている」人の割合は2021年は51.9%だったが、翌22年は41.2%まで下り、24年12月の調査では34.9%となってしまっている。つまり、近付くにつれて人気がガタ落ちなのだ。 目標入場者数は、2,820万人なので、一日当たり15.3万人が入ってくれないと、この目標には到達しない。 いざ万博が始まると、案の定この目標を下回る日々が続いた。6月8日までの 57 日間の来場者数は、約 571万人 で、 1日平均は約 10 万人 だった。ところが、4月から5月にかけて漸増傾向を見せ、5月31日には約18万人と、過去最高を記録した。まあ、それでも15万人を少し上回った程度だ。さて、今はどうなっているか、実際にこの目で見てくる必要がある。ちなみに、私が入った6月10日の入場者数は、10万7千人、6月11日は12万2千人だったようだ。 4.大阪万博(第1日目) 私は、前売り券を既に買ってあり、6月11日に行くことにしていたが、よくよく考えてみると、せっかく大阪まで行くのだから、その前の日も早めに東京の自宅を出て、お昼から入場しょうと考えた。そういうわけで、次のような二日間の券となった。 6月10日昼12時からの一日券(6,500円) 6月11日朝10時からの前売券(5,000円) パビリオンの予約ができるというので、それぞれの券で確か7箇所ずつ申し込んで、7日前の抽選結果を待った。すると、何とまあ、全て外れて一つも当たらなかった。もうがっかりだ。最後の望みで直前の予約に掛けたが、それも外れて、実に嫌な気分のまま行くことになった。まあ、自分には、くじ運がないのは分かっていたが、それにしてもこんなにないとは、我ながら呆れて物も言えない。 泊まるのは西梅田にあるホテルにした。近いから交通が便利そうだからという単純な理由で、二泊三日で予約した。荷物は、前日に着くように宅配便で送った。この予約はAgodaを通じて行ったのだが、実際に来てみると、ダイレクトの予約で一泊2,000円近く安く泊まれたようだ。おそらく、万博人気が高まらなかったためだろうと思う。 6月10日(火)、東京の自宅を午前7時に出て、8時03分の新幹線で大阪に向かう。小雨模様だが、大阪は久しぶりだから、少し心がウキウキする。京都駅を過ぎて新大阪駅に着き、メトロ御堂筋線を探す。床に引かれた緑の線を辿って少し歩くと着いた。本町駅で、メトロ中央線に乗り換える。エレベーターでは右手に立ち、先を急ぐ人のために左手を空けるというのは、東京と反対で面白い。 夢洲駅に着いた。12時を少し過ぎたところで、予約時間に間に合った。駅名をついつい「ゆめす」と読んでしまうが、「ゆめしま」なのだそうだ。 だだっ広い構内を通り抜けて、地上に出た。雨の中をぐるりと回って入り口ゲートに行くと、荷物検査がある。それを抜けて直ぐ前に入場チェックポイントがあるので、そこに入場券のQRコードをかざして簡単に入場できた。そのスクリーン・ショットをあらかじめ撮っておいたのでスムーズだった。というのは、 4月の開場直後は、入場ゲートで、インターネットから直接QRコードを表示しようとした観客が、サイトがフリーズしたものだから何時間も待たされたと聞いていたからだ。 (並び始め12時18分、入場13時20分、退出13時50分) トランプ大統領はこんな無駄な役所はないとしてアメリカ開発庁(USAID)の解体を進めているが、もしこの展示を知ったら、それこそ逆上して真っ先に予算が削減されそうなものばかりだと感じた。かつての寛大な超大国アメリカは、もはや過去のものとなったか、、、。 アメリカ館から、向かって右手方向つまり反時計回りに歩いて行くことにした。フィリピン、マレーシア、アイルランド館があったが、どれも知っていたり、小さな国だったりするからわざわざ並んでまで、入りたいとは思わず、次のルクセンブルク館の前まで来た。この国は、ベルギー、フランス、ドイツに囲まれた西ヨーロッパの小国である。公用語は、ルクセンブルク語、ドイツ語、フランス語だと言う。 (並び始め14時11分、入場14時40分、退出15時00分) ルクセンブルク館内には、自然、鉄鋼所、金融、高層ビルなどの写真が展示してあり、なかなか裕福な国だと思ったら、一人当たりGDPで世界一の富裕国だそうだ。これには恐れ入った。全く知らなかった。不明を恥じよう。 展示の中で面白かったのは、この国の在住20年という日本人女性がビデオに出てきて、日頃の生活を紹介していたことだ。それなりに幸せそうで、良かった。 ドイツ館は入場制限中で入場できなかった。 そこで、隣の韓国館に入った。正面の巨大な一枚の液晶パネルがくっきりと映像を映し出し、そこは液晶が得意な韓国らしいところだ。 (並び始め15時10分、入場15時45分、退出16時05分) (並び始め16時15分、入場16時49分、退出16時55分) (並び始め16時57分、直ちに入場、直ちに退出17時00分) (並び始め17時02分、入場17時10分、退出17時16分) 17時25分、お腹が空いたので、どこかで食べようと思って探したが、ちゃんとしたレストランなどは見当たらず、ファーストフードもどきのものばかりだ。仕方なく、近くのラーメン屋「大阪千日前河童本舗」に入った。店内にあった「青春は一瞬、ラーメンは一生」という標語には笑った。これは、「青春は十年、ラーメンは一瞬」の間違いではないのか。 スペイン館の展示は例の通り観光写真だったが、18時30分からのフラメンコショーは、期待以上で心から楽しんだ。 (ビデオ)フラメンコ 緑のコスチュームを着た女性フラメンコダンサーは、力強く激しく情感あふれる踊りを披露してくれたし、バックで歌う男性の声もなぜか物悲しく、気持ちが込められていた。 (並び始め17時45分、入場 17時52分、いったん退出17時58分、18時10分に再び入場し、18時30分からのショーを見て17時05分に再度退出) (並び始め18時45分、直ちに入場、退出19時05分) (並び始め19時13分、入場19時18分、退出19時25分) 並んでいる時、大阪人のおばちゃん三人組と話をした。きっかけは、そのうちの一人がたまたまスマホを出していて、つい自撮りしてしまったら、嫌な顔をしてその写真を消してしまったからだ。そして曰く「もう歳だから、自分の写真なんて、もう見たくはないんよ」というものだから、ほかの二人が笑い、つられて私も笑ったからだ。 「どっから来たん?」 「東京です。」 「あっそう、東京でも万博は噂になってんの?」 「いやいや、滅多に報道されないし、それどころか少し前には、『建設が遅れている、間に合うのか』とか、始まったら始まったで、『客があまり入らない、大丈夫か』などという否定的な話ばかりで、私の周りでもわざわざ行こうというのは、あまりいないですね」 「へーぇ、そうなんや。大阪では、連日、万博の報道があるけどね。西と東とではちゃうねぇ。」 「ところで、どこが良かったですか?」 「ベトナム館の水中人形劇と、あのぽんぽこという音楽が良かったよ。そんで、アメリカ館のロケット打ち上げね。」 「ああ、そうですか。私は、スペイン館のフラメンコが良かった。昔、本場に観に行ったけど、それよりはるかに良かったですよ。お勧めです。」 「じゃ、こんど行ってみるね。」 この日は、これがもう体力の限界で、大屋根リングに登る気力さえ残っておらず、そのまま東ゲートから退出した。それで、夢洲→本町→梅田のルートでホテルに帰った。部屋で湯船にゆっくりと浸かって、身体中の疲れをほぐしてからベットに横たわると、直ぐに寝ることができた。 翌朝、泊まったホテルで朝食を食べ終わって外に出ようとしていると、受付の係にiPhoneを向けている中年女性の客がいる。中国人らしい。 そのiPhoneから綺麗な日本語が聞こえてくる。「私たちは、このホテルの泊まり客です。三人います。朝食をとりたいのですが、席はありますか?またお値段はいくらですか?」・・・なるほど、もうこんな時代になったかと感慨深いものがある。 5.大阪万博(第2日目) 朝からの大雨のため、東ゲートから10時の入場に結構手間取った。その結果、フランス館に並び始めたのが10時47分、1時間待ちだと言われた。でも、仕方がないと思って待っていたら、40分ほどで入ることができた。 (並び始め10時47分、入場11時25分、退出11時46分) 会場には中国風の館を模した背景が設えてあってその中央に簾(すだれ)があり、外からはその中は見えない。これがいわば小劇場だ。そして、舞台に相当するのが緑色をした水面で、その上で人形の演技が行われる。 (ビデオ)水中人形劇 今度は、魚が現れた。水中を飛び跳ね、同じように自由自在に泳ぐ。しばらくして、釣り糸を垂らし小舟に乗った老人が出てきた。髭を生やし、背中の方に大きな筒のようなものがある。舟はゆらゆらと揺れ、老人は釣り糸を先頭に魚を追いかけ回す。それが、ふと、止まる。獲物を釣り上げたようだ。 そして一服する。何をしているかと思うと、口から煙草の白い煙を吐いたから、見物人が「おおっ」とどよめき笑う。そしていつの間にか、老人の舟は、魚とともに消えていった。 さて次は、宮中の王女様のような出立ちの若い女性の人形が出てきた。しかも両手に扇子を持っているから、その華やかなことといったらない。しばし踊ったら、同じように退出した。 次は民族音楽の演奏である。ギター、エレクトーン、琵琶、太鼓などで賑やかな音楽が奏でられる。このリズムを聴いてきると、どこか郷愁を呼び起こされる。同じアジアの米作民族であるせいだろうか。 (ビデオ)民族音楽 一曲が終わると、年配の女性奏者が出てきて、竹の筒が並んだ楽器の前に立った。それは長いものから短いものまで順に並んでいる。観客側の竹は閉じているが、奏者の側は空いていて、そこに両手で拍手をすると、その音が竹筒にこだまして何とも言えない音がする。同時に笛も吹かれているので、両方相まって、これまた懐かしい響きがする。 それとともに、別の奏者が竹で出来た不思議な楽器を奏でる。横に長い竹筒があり、縦に先がやや曲がった金属の棒が突き出ている。これがまた、「ウィーン」とか「ピョーン」とかいう独特な音がでる。何かと思うが、その音と空中で手をくねくね回しているところからすると、あれは間違いなく、ロシアの「テルミン」に違いない。面白かった。 そういうことで、13時30分から始まり、ちょうど30分間の演技だった。前半の10分間は水中人形劇、後半は竹の筒を楽器にしたものや、テルミンのような楽器、竹の木琴などを駆使した民族音楽の演奏を楽しんだ。 (1回目:並び始め11時49分、入場12時00分、退出12時07分) (2回目:並び始め12時50分、入場13時10分、退出14時00分) アラブ首長国連邦館は、ガラスの箱の中に柴を束ねた大きな木が何本も林立していたが、さほど見るべきものもなく、そのまま出てきた。 (並び始め12時40分、入場12時42分、退出12時47分) (並び始め14時05分、入場14時20分、退出14時30分) (並び始め14時50分、入場15時00分、退出15時10分) (並び始め15時17分、入場15時42分、退出15時52分) (並び始め16時10分、入場16時45分、退出17時15分) ふと見ると、大屋根リングがあった。そういえばまだ登っていなかった。「よし、あそこに登って東ゲートに向けて帰ろう」と考えて歩き出した。3階の高さなのに、調和の広場からエスカレーターで登ったのは、2階部分だ。そこを反時計回りに歩き出した。視界は広がり、見通しが良くなった。眼下にはウォータープラザというのか、ここで本来は水上ショーなどが行われるのだろうが、レジオネラ菌が見つかったとかで中止になり、今は静まりかえっている。 見下ろすと、螺旋を巻いたような独特の形状のオーストリア館、屋根の上に風船がある白いベルギー館、赤い球体のシンガポール館などが良く見える。続いて、カナダ館、アラブ首長国連邦館、カタール館、フランス館などが見えてきたところで、もう少し高い場所から見たくなった。今いる2階から3階に行くには、、、あれあれ、直接行ける階段がない。ということは、あそこまで後ろに戻って斜め上に上がるしかないのか、、、。仕方がないので戻った。それで3階に上がっていくと、会場外側には大阪港が見える。会場内側に目をやると、見通しが良くなった。内外の写真を撮っていると、ここで問題が発生した。それは、虫(ユスリカ)の大群がやって来たのだ。これは参ったと、慌てて地上に避難した。 6.今回の万博の問題点 (1)予約ができない iPSの心臓細胞やロボットなど、せっかくこの機会に国内館の科学展示を見たかったのに、予約が必要でその抽選に一つも当たらなかった。二日間のどちらもダメだった。そういう場合は、申し込み数に応じて当たらなかったら最後に倍率を上げて一つくらい当たるようにするなど、なんとかならないかと思うのだが、この辺りは観客に対する配慮が足りないと思う。 それに、会場に来て何ヶ所かある当日予約コーナーで予約が出来るというのだけれど、各館に並んで忙しいのだから、そんな暇はないし、見ているとそうした予約コーナーで、機械の操作に手間取っている観客の何と多かったことか、、、その後ろにはまた沢山の観客が並んでいる。これも、観客が手元の自分のスマホで当日の予約が出来るように配慮できないものか。 (2)「ミャクミャク」は気味が悪い 「細胞と水がひとつになったことで生まれた、ふしぎな生き物。その正体は不明。 赤い部分は『細胞』で、分かれたり、増えたりする。 青い部分は『清い水』で、流れる様に形を変えることができる。 なりたい自分を探して、いろんな形に姿を変えているようで、人間をまねた姿が、今の姿。但し、姿を変えすぎて、元の形を忘れてしまうことがある。 外に出て、太陽の光をあびることが元気の源。雨の日も大好きで、雨を体に取り込むことが出来る。 開幕前から自分のことを皆さんに知ってもらい、2025年に開催される大阪・関西万博で多くの人に会えることを夢見ています。」 『1-008』 しかし、一見したらわかるように、これがまた本当に気持ち悪い代物なのだ。誰がこんなものを可愛いとか、何とか思うのだろうか。見れば見るほど、自分の感覚と視界がおかしくなったのではないかと心配になるほどである。私は、今回の大阪万博がさほど盛り上がらないうちに終了するのは間違いないと思うが、その一つの原因は、このミャクミャクにあるとすら考えている。 (令和7年6月12日著) (お願い 著作権法の観点から無断での転載や引用はご遠慮ください。) |
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