シンガポールは、日本の淡路島程度の面積しかないが、実によく管理されている美しい都市国家である。そびえ立つ高層ビル、美しい並木、世界のブランド店があふれる中心街、ハーバー・エリアのしゃれた散歩道など、どれをとっても一幅の絵となる風景である。旅行者にとって、こんな居心地の良い国はない。

 しかしあるとき、シンガポールの意外な一面を見てしまった。シャングリラ・ホテルでテレビを見ていると、ブルドーザーが轟音を立てて古い中国人街の町並みを取り壊している。そのすぐ横では、伝統服を着た中国人らしきお婆さんが、家の柱にしがみついて何か叫んでいる。そこにテロップが流れて「再開発に頑強に抵抗する老婆」とあった。「ははぁ、これくらいの強制力でもないと、こんな町並みは実現しないのか。日本ではまず絶対に無理だな。」と、妙に納得してしまった。聞きしにまさる大変な管理国家である。








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