イギリスは、良きにつけ悪しきにつけ、行くたびに何か新しい発見をして面白くなり、ますます気に入って好きになるという不思議な魅力のある国である。さすがに元大英帝国だっただけのことはあり、奥深くてすべてにそれなりの理屈がある。あるとき、インテリの若いイギリス人に対して不躾ながらと断りながら、「なぜ大英帝国は、凋落したのか」と単刀直入に尋ねたことがある。彼はぐっと詰まりながら、「昔は国際情勢もイギリスに有利で、かつまた冒険心あふれる人が多かったのだろう」と答えた。

 しかし私に言わせれば、これでは合格点はあげられない。これは絶頂期を説明はしているが、凋落の説明にはなっていないからである。古代ローマはその絶頂期のあと民衆がパンとサーカスを求めるようになって堕落した。それに対して現代のイギリスの場合は、揺り籠から墓場までの完璧な社会保障体制が、人々の冒険心と活力を奪ったのではないかと思うのである。そういう社会保障体制を作り上げることこそが、人々の悲願であったわけであるから、誠に皮肉なことである。







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