悠々人生のエッセイ








 5月は、アメリカの大学の卒業シーズン。身内の通った大学でも、卒業式があった。この写真のように、卒業生は房の付いた角帽をかぶり、ガウンを着て、式に臨む。ロースクールの中でも、JDといわれるコースは赤いガウン、LLMというコースは黒のガウンを身に着ける。ウチの息子の場合はLLMなので黒いガウンだが、首から背中にかけて青と赤のストライプの飾りが付いていて、なかなか格好がよろしい。本人は謙遜するたちで特に角帽は「似合わない」と言っていたけれど、親バカのせいか、ガウンだけでなく帽子の金色の房もとっても似合って良かったと思うのだが・・・。

 聞くところによれば、卒業証書をもらうときに名前が呼ばれると、両脇のスタンド席に陣取った応援団が叫んで、それはそれはうるさいという。それに、式には家族というか親類縁者が総出で押しかけるものらしい。私たちも行ってやりたかったが、何しろ5月は仕事のまっさい中なので、そうもいかなかった。同級生として一緒に卒業したメキシコ留学生の場合は、お祝いにやってきた親類縁者として、父、母、おば、妹、ここまではいいとして、妹のボーイフレンド、そのボーイフレンドの友達が来ていたという。そうなると、ほぼ見ず知らずの人間までもが、卒業のお祝いにかけつけるということらしい。それは面白いと、思わず大きく口を開けて笑ってしまった。

 それにしても、インターネットというのは便利で、この卒業式の模様がもう数日後にはウェブで見られるようになっていた。その卒業式で写真を撮りまくった写真屋さんのサイトである。それは、式全体や家族との写真で580枚、卒業証書を受け取るシーンで200枚もの画像で出来ている。それらのサム・ネイルがすべて載っていて、欲しければ正式写真をプリントかデジタル・データで提供するという。データの場合は一枚30ドルもしたのだが、やはり一生に一枚だからと、本人が学長から卒業証書をもらっている写真を買ってしまった。そのほか、このサイトはサービス精神にあふれていて、こうした写真の中から好きな写真を選んで自分独自のアルバムを作ってよいというもので、これには感心してしまった。

 ところで、この写真屋はなかなかツボを心得ていて、中には角帽とガウンの卒業生を囲み、家族全員で撮ってもらっている写真も結構多かった。文字通り「Commencement Day」つまり門出の日を親類縁者みんなで祝う感激のシーンである。これらの写真をみると、実にほほえましい。ははあ、こういうのがアメリカ大学の卒業式かと感激したのである。それにしても、日本の大学の卒業式でも、日の丸だ何だとつまらないことで騒いでないで、こうやればはるかに一生の思い出となっていいのにと思うが、どうだろうか。学生がいっぱいいる学部卒では無理だろうが、新しく来年春から発足する法科大学院などで、角帽とガウンと、ラテン語で書かれているばかでかい卒業証書を与えたら、一生の記念になると思うし、卒業の有難味も増すというものだろう。

 ところで、こうしてウチの子と一緒に卒業した仲間をみると、いろいろな人種がいる。アメリカ人、中南米風の人、中国人、日本人、ヨーロッパ人に、アフリカ人。とくにアフリカ人のお母さんは、大きな原色の帽子をかぶって、あたりを睥睨している。いやいや。こんな連中に囲まれて勉強したのか、よく1年で卒業にこぎつけたものだとつくづく思う。英語でいえば、
I am proud of you! と、大きな声で言ってあげたい。よくがんばったねぇ。本当にご苦労さんでした。


(平成15年5月31日著)
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