This is my essay.








 夏休みの一週間前の日曜日の朝、まだ寝ぼけまなこで新聞などを読んでいると、近くの根津小学校から「わぁぁー」という歓声が上がる。そうすると「ああ、また今年もやっている、梅雨が明けそうだなぁ」と思うのである。実はこれ、小学校で「どじょうつかみ」という恒例行事を行っているのである。東京の下町でも、こんな行事をずーっとやっているのは、この小学校くらいであろう。いま、30歳になっている知り合いが、ここの小学校にいた頃にやった記憶があるというのであるから、もう少なくとも20年以上は続いていることになる。

 実はこれ、本郷消防団分室の日ごろの訓練を披露するという趣旨もあるのである。8人ほどの消防団の制服を来た人たちが、リヤカーというと失礼かもしれないが、それくらいの大きさの真っ赤な消防ポンプを引き出してきて、団長の掛け声のもと、軍隊風に敬礼し、きびきび動いてホースを伸ばしていく。それを、校庭に置いたビニール・シートで作った大きな三つの池というか水溜りに向けて、水を放出する。そこに生きたどじょうを放し、それを水着姿の小学生たちが歓声を上げてつかむ、という趣向である。

 そしてまたここからで遊び心もあるのであろうが、どじょうつかみの最中に消防ホースを上に向けて放水して、その池というか小学生たちに水をかけるのである。ときどき意図的かどうかは知らないが、その筒先を回りの大人たちに向けていくので、お母さん、お父さんたちが
「わぁー、水をかぶるー」と叫んで、逃げ惑っている。そして、「わあわあ、きゃあきゃあ」と小学生たちがどじょうと格闘している。本当に賑やかで楽しい催しである。

 三つの池は、それぞれ小学校高学年向け、中学年向け、低学年向けということになっていて、さすがに高学年の子たちは、どじょうを取り慣れているだけあって、高学年向けの池には早々と、どじょうは取り尽くされてしまった。そして、
「きょうは、柳川だー」と叫んでいるので、とてもおかしい。こんなものを食べるのかと思うが、浅草の浅草寺の近くには、江戸時代から続くどじょうの店もあるから、どじょうは意外と下町に根付いているのかもしれない。

 まあ、こんな行事に興じている子供たちのキラキラした眼を見ていると、最近次々に起こる少年による凶悪事件など、まるで別世界のように思えてくるのは、私だけではあるまい。







(平成15年7月13日著)
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悠々人生・邯鄲の夢





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