悠々人生エッセイ



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1.そろそろ年貢の納め時かな

 私は、子供の時分に大病したときは別として、風邪を引いた場合は除き、何の薬も飲まないで昨年まで過ごしてきた。ところが毎年の健康診断で、ここ2年ほど、それまで120台で推移してきた血圧の上(収縮期血圧)が150を超えるようになった。そこで昨年末頃に、健康診断後の医者との話合いで、「そろそろ血圧の薬を飲んだらどうですか」ということになり、私も「まあ年貢の納め時かな」という気がしてこれを受け入れた。

 そこで医者が処方してくれたのが、「アムロジピン」というカルシウム拮抗薬である。高血圧の薬としては広く知られて最も普及しているもので、その最小の2.5mgをもらった。これは、一日1回飲む舌下錠で、水がなくとも飲めるから使いやすい。

 これを飲むと、血圧の上(収縮期血圧)が150から132へ、下(拡張期血圧)が98から78へと激減した。確かに効果がある。血管の壁はカルシウムイオンを取り込んで収縮するのだそうだが、この薬の作用機序は、そのカルシウムイオンの取込みを阻害することにより、血管(動脈)の収縮を妨げるようなのである。


2.夜間頻尿とふらつき

 それで、しばらくは安泰だと思っていたが、今から振り返ると、この薬を飲みだした頃から、身体に変調が生じてきた。一つは、夜中に頻尿が起こる。寝ているのに2回ほど起きてトイレに行かなければならないのである。これがあるので、眠りが妨げられて熟睡できない。年齢のせいかなと思っていた。

 二つ目は、特に階段を降りる時にふらつくのである。とりわけ、地下鉄の階段を下る時が危ない。降りて行って下の階に近づいた時に階段の位置がよく分からなくなって、この1年で3回も転んでしまった。これは、危なくて仕方がない。

 いずれも、なぜだろうと不審に思っていたが、最近ようやく、その理由に思い当たった。これらは、アムロジピンの副作用のようなのである。典型的な副作用として「夜間頻尿」と「ふらつき」が載っていた。そうか、これなのだ。ならば、この薬を使い続けるメリットと、止めてしまうデメリットを比較しなければならない。


3.使い続けるとデメリットばかり

 アムロジピンを使い続けるメリットは、高血圧を薬で抑えて脳出血を防ぐということだが、最近は脳卒中のうち脳出血の割合が2割程度と、昔に比べて激減した。栄養状態の改善によるものだろう。その反面、脳梗塞が8割にもなっている。血圧を抑えると、脳に血が回らなくなり、脳梗塞の危険が増す。こちらの方が危ない。加えて、15,000人を対象にした調査だと、高血圧の薬を飲んでいるグループは、飲んでないグループと比較して、認知症の数が3倍にもなったという。これも危ない。

 それに、私は頭を使う商売なのだが、アムロジピンを飲み始めてから、徹底的に細部まで頭を使うと、なんだか面倒に感じることも多くなった。気のせいかテニスも、早いボールに目が追いつくのが難しくなった。頭の隅々に血液が届いてない気がする。それやこれやで、要は、アムロジピンの摂取は、デメリットばかりなのである。



4.高血圧症の基準がそもそもおかしい

 こんな問題の多い薬を飲まされている背景として、そもそも高血圧症の基準がおかしいのではないかと考えるに至った。歴史を振り返ると、1960年代は、「年齢+90以下」の血圧であれば問題なしとされていたので、これを適用すると、現在の私の場合は165 mmHg以下のはずである。次いで1987年になり、旧厚生省が日本で初めて高血圧の基準値を設定し、180/100mmHg以上と決められた。ところが、年を経過するにつれてこの基準が下げられていき、 1990年には160/90mmHgに下がり、2024年現在、高血圧と診断する基準は140/90mmHg以上(診察室高血圧の場合)とされている。さらに130/80mmHg以上の場合にも高値血圧と扱われている。

 しかし、年齢を経れば血管が固くなり、それだけ血圧が上がるのが当然なのに、この基準ではそれが全く考慮されていない。だから、75歳の私に、ただ血圧が150だからといって、機械的にアムロジピンを投与するのは、やりすぎではないのかと思うようになった。

 そうこうしているうちに、「2024年4月から特定検診における高血圧の基準値が、現在の140/90mmHg以上から160/100mmHgへ変更となる」と聞いた。それ見たことかと思ったが、これは治療のガイドラインを変えるものではないそうだ。うがった見方をすると、これが治療基準の変更ならば高血圧の患者数が激減するはずだから、薬会社や医師会が安易に受け入れるはずがない。それはともかく、これは私の決断を後押しすることになった。



5.こんな薬は止めてしまえ

 つまり、もうアムロジピンを止めることにした。というわけで、6月から十日間、試しに薬なしの生活をして、血圧を測ってみた。すると、下記の通り、アムロジピンを止める直前は、128/74mmHgだった血圧が、24時間後は138/92mmHgと上がり、36時間後は146/93mmHgと、差分20mmHgも跳ね上がった。それからはほぼこの調子で、収縮期血圧は150弱、拡張期血圧100弱を続けている。でも、160/100mmHgの範囲に十分収まっている。

 薬を止めてから、体調はすこぶる良い。何よりも夜中に起きてトイレに行くことは全くなくなったから、熟睡出来る。昼寝も必要なくなった。地下鉄の階段を降りる際も足元がふらつかなくなった。本を読んだり書き物をしても、頭がスッキリとしている。この調子で行こう。医者の言うことを鵜呑みにしてはいけない。引き続き減塩に務めつつ、体重を維持し、断酒を続けて行くつもりだ。自分の体なのだから、大切にしたい。


      5月31日朝128/74(この計測直後から薬を止めた)

      6月01日朝138/92、 夜146/93
      6月02日朝149/97、 夜144/91
      6月03日朝146/101、夜140/93
      6月04日朝149/109、夜152/100
      6月05日朝142/98、 夜137/95
      6月06日朝143/91、 夜118/79
      6月07日朝133/98、 夜142/93
      6月08日朝146/100、夜133/83
      6月09日朝151/96、 夜149/98








(令和6年6月12日著)
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