悠々人生エッセイ



01.jpg




 私には、もう30年来の友達の華僑がいるが、彼の古希のお祝いに招かれたので、タイ北部からの帰国の途中に東南アジアの現地に来ている。会場に入ると、10人ずつかけるテーブルが20も続いている。ということは、今日は参加者が200人もいるということか、、、すごいなぁ。

 この日の主役は、さぞかし着飾っていると思ったら、主役の友達は黒っぽい地味なジャケットにノーネクタイ、その奥さんは黒のワンピースにブカブカの白のパンツという普段着で入り口にいて、お客さんを迎えている。とてもよそ行きというスタイルではない。まあ、これが華僑の良いところだ。アンパオというお祝い金をその息子さんに渡した。


 各テーブルには、真ん中に派手な造花があり、百合と薔薇だ。椅子は、もとより赤く飾られている。しかも、各人の前には、いかにも持ち帰ってくれとばかりに、お土産の赤い袋が置いてある。後から見ると、「福」と書かれたお茶碗と、箸だ。お茶碗は、これから食いっぱぐれがないようにという意味だそうだし、お箸は子孫繁栄を現しているとのこと。

 主役の息子(次男)が舞台に出てきて、「これから開会しまーす」という宣言をしてからは、特に手順もないままに、直ちに始まったようだ。

 壇上は、お爺さんたちが日頃の練習の成果か、カラオケに興じている。主役ご夫妻も普段から入れてもらっているグループだという。私と同じ世代なので懐メロばかりだ。そうかと思うと、幼稚園から小学校の子どもたちが自然にわらわらと出てきて、振付けありで童謡を歌う。


 各テーブルで、「ヤムセーーーン」という大きな掛け声で、乾杯を繰り返している。それがもう、うるさいのなんのって、、、でも、これが当地の華僑パーティの定番なのである。私のアイウォッチから警告が出る「騒音が95dBを超しています。30分以上いると、耳を痛めます」、、、しかし、そんなこと言われても、、、。




 そのうち、バースディケーキが出てきて、孫たちが集合した。「ハッピーバースディ」と、「結婚42周年おめでとう」の声が聞こえる。そして、花束贈呈のあと、蝋燭を皆で消した。それから、バックの画面に、子どもや孫たちからのビデオメッセージが出る。それを見ている主役の友達夫妻が、もう涙目だった。

 それからが、全くの無礼講で、お爺さんグループ、子どもたちのグループ、おばあさんコーラスなど、いやまあ、壇上の独占が続くは続くは、、、あれれ、子どもたちの小学生グループが、アナと雪の女王をやっている、、、それが実に上手い。感心してしまった、しかも、物怖じなんて無縁だ。舞台が開くのを待っている。そうそう、華僑は子供の頃からこれくらい厚かましくないと、生きていけない。

 お爺さんグループと一緒に、飲み歌い踊っていた主役は、遂に酔い潰れてしまった(笑)




 彼が復活した頃、長男一家が全員で歌い出して本日のお礼を喋った。それからは、三々五々に解散していく。これで終わりか、、、始まりも終わりも、形式なしだから、あっけないものだ。でも、世代を通して親類や取引先など皆が親密で、羨ましい限りである。


(令和5年12月24日著)
(お願い 著作権法の観点から無断での転載や引用はご遠慮ください。)





悠々人生エッセイ





悠々人生エッセイ

(c) Yama san 2023, All rights reserved