悠々人生エッセイ



池之端からの眺め



         目   次
 1     根津のマンションを購入した時のこと
 2     それから27年が経ち
 3     湯島の新築マンションを検討
 4     池之端のマンションを購入
 5     捨てに捨てて断捨離を敢行
 6     マンションの方とのやり取り
 7     引越し準備でいろんなことが
 8     引越し当日と追加の粗大ゴミ
 9     引越し直後の出来事
 10     引越しの後日談


1.根津のマンションを購入した時のこと

 根津のマンションを購入したのは1995年末、入居したのは翌96年1月のことであるから、根津に住んで丸27年になる。そのとき、私は次のようなメモを残している。

「これは、我が家の記念すべき出来事だ。やっと家が持てたのだから。

 元はというと、杉並区の片田舎にある住宅アパート・・・お世辞にも綺麗とは言いかねる所・・・に長年住んで、つくづく嫌になったことだ。

 確かに家賃は安いが、雨漏りは直してくれないし、狭いから人は呼べないし、駅まで遠くてかなわない。もう40歳台後半になって、こんなことではいけないと思うようになった。

 たまたま、長年掛けていた住宅財形が500万円を超すようになり、その他の貯金や保険金をかき集めれば、自己資金としてその倍は用意できる。それに基づいて計算すると、数千万円の住宅ローンが組める。ちょうどバブル経済が崩壊して、金利も史上最低水準だ。借りられるのは70歳までだから、そろそろこの辺が限界だろう。

 そういうわけで、住宅雑誌を片手にあちこちを見て回った。まず、一軒家は高すぎるし、都心から離れるのは嫌だ。町内会とか何とか、面倒である。そこで、マンションに的を絞って、主に夜中に車で走り回った。そうしたところ、買える範囲内ということで、一時は大泉学園にある新築マンションを考えた。ところが、あまりに遠すぎるし、しかも当選するかどうかわからないという代物だったから、今ひとつ気が進まなかった。

 そうこうしているうちに、家内が雑誌で、現在のマンションを見つけた。抽選がなくて早い者順、町の中心にある。私の通勤はドア・ツー・ドアで20分で済む。これは凄いことだ。問題は狭さだが、家族4人のうち、娘は医学部に合格して出て行ってしまった。だから3人だ。これなら、2LDKで十分だろう。息子は東大に合格するだろうから、そうするとこの家から歩いて通える。

 だから、ここしかないと思うようになった。資金計画は、こんなものだ。

 (1)住宅金融公庫    2,222万円(3.25%、3.3% )
 (2)三菱銀行(固定型) 1,240万円(3.75% )
 (3)共済組合(元本均等)1,500万円(3.41%)
 (4)自己資金      1,000万円  ______________________________________________________
     合 計      5,962万円

 この通りに住宅ローンを組み、買い入れた。マンション自体は1995年12月に出来上がった。私は、部屋を計測して家具の配置を検討し、楽しみながら準備した。そして、息子の東大合格を確認して、引っ越しをした。

 楽しい我が家の始まりだ。谷根千の下町にあり、周囲が珍しく、面白い所ばかりだ。ここで、いつまでかはわからないが、借金を返済するまで、家族でしっかりと住んでいこうと思っている。」



2.それから27年が経ち

 新築のマンションを手に入れて、恥ずかしくなるほど素朴な嬉しさと幸福感が伝わってくる文章である。我ながら、よほど嬉しかったのだろう。それから、27年が経過した。住宅ローンは、その後の金利の低下で3回借り換えて再び当初の三菱銀行に戻り、11年前に完済した。

 振り返ってみると、この根津のマンションは手狭だが、とても良かった。近くに飲食店が多いし、何よりも地下鉄の駅まで、2分で行ける。霞ヶ関の当初の勤め先までドア・ツー・ドアで20分という近さだ。そのうち、オフィス・カーで通勤することになるが、その時間は行き帰りともちょうど30分間である。かつて、片道1時間半もかけて杉並区から満員の電車で通勤していたことを思えば、まるで、天国のようなものだ。結局、霞ヶ関や隼町で私は46年間勤務したことになるが、そのうち丸26年間は、ここから通った。仕事は時には明け方になることがよくあったほどの厳しい勤務ばかり続いたが、この間、健康で病気一つしなかったのは、こうして通勤に苦労しなかったからだと信じている。

 でも、27年という長い年月が経つと、色々と問題が生じてきた。一番、不自由に思うのが、畳の部屋やフローリングの居間との間にある段差と、トイレや浴室と廊下との間の段差である。これらは若い頃には全然気にならなかった。ところが、家内が脳梗塞で身体不自由になると、不便というよりは、危険なのである。加えて、廊下が狭くて車椅子が通らない。バリアフリーどころか、バリアフルもいいところだ。耐震性といえば、81年基準はクリアしているものの、建物全体が古くなっているのも、やや気になる。

 しかも、長年積み上がった荷物というか、もはやゴミとしか言いようがないものが、山ほどある。また強いて言えば、外の景色も、昔は東大農学部の緑が多く見えたものだったが、最近は温室を建ててしまって、以前ほど緑は多くなくなった。もちろん、春の桜の季節には辺りは花吹雪でいっぱいになるのは変わりないが、昔はもう少し緑が多かったと思うと、ちょっと残念だ。それやこれやで、何とかしたいという気になってきた。


3.湯島の新築マンションを検討

(1)そういうとき、あるネット広告が目に止まった。湯島駅(千代田線)から徒歩2分の黒門町で、新築マンションを売り出すというのである。価格は8千万円から9千万円。13階建てで12階より下を一般に分譲するようだ。ここは、ロケーションがともかく便利だ。湯島駅(千代田線)の他、御徒町駅(JR山手線)、上野広小路駅と末広町駅(いずれも銀座線)、京成上野駅(京成電鉄)、仲御徒町駅(日比谷線)、上野御徒町(大江戸線)が5分以内、そのほか10分も歩けば御茶ノ水駅(JR中央線)、秋葉原駅(JR山手線)がある。都内23区内なら全方向に30分で着く。成田空港や羽田空港にも、45分で行ける。かてて加えて、上野松坂屋をはじめとして、商業施設が豊富なことだ。食べるもの、買うものに事欠かない。

 これは良いなぁと思って間取りを検討すると、2LDKがあって使い勝手の良さそうなのは12階の部屋しかない。あとは、要するにワンルー厶だから、単身者向けなのだ。気になるのは眺望である。大通りの昭和通りから一本西へ入った所にあるから、交通騒音からは逃れられるが、その代わり向かいにはオリックスのビルが建っているので、眺望どころか、逆に覗き込まれかねない。これが大きなデメリットだ。しかし、フルフラットな造りなので病人には優しいし、周辺は繁華街だから、何と言っても食料調達をするには至極便利だ。これは、調達係の私には、とっても大きなメリットとなる。松坂屋の地下まで、歩いてわずか数分なのだから、これは良い。また、湯島駅の反対側には、スーパーのサミットがある。これは湯島天神の並びだから崖の上まで3階分の急坂を登らないといけないが、それは表向きで、実はその脇にはエレベーターがあるから、遠慮なく使えば良い。

(2)よし、これを買うことにしようと思った。それには、まず、「商談」というものをしないといけないようだ。土曜日の午前中の時間を予約した。男性の担当者が出てきた。まずはビデオを見せられた後、私の希望の部屋のタイプと支払い方を伝えておいた。

 それで、私から2つ質問した。一つは、「台東区の洪水ハザードマップをみると、この地域は最高3メートルの浸水エリアとなっている。以前、武蔵小金井の高層マンションで台風が襲来した時に地下の電気設備が水没して停電となったことがあったが、このマンションはどうなのか。」

 二つは、「3階以上が住居とあるが、1階と2階には何が入るのか。もし飲食店だと調理の臭気はないのか。また、パンフレットには『稽古場』とあったが、それはアングラ劇団か何かか。」

 すると、後日、メールで回答があった。最初の問については「変電設備は1階にあり、その高さは78センチです。仮にこれを2階に持っていくとかなりのスペースをとるので、これになりました。」という。ただし、台東区の荒川水害ハザードマップによると、この地域は0.5から3メートル水没することになっているので、そうなったらもうお終いである。浸水がないことを祈るしかない。

 次の問については、「1階はエントランス、メールボックス、駐車場、駐輪場、ゴミ置き場等の一般的なマンションの管理施設が入り、2階は日本舞踊の稽古場で、楽器を使うから防音仕様」だそうだ。それなら、大丈夫だ。

 それから「銀座のショールーム」を予約し、そこを訪ねた。すると、部屋に投影して間取りや外の景色などを見せてくれるので、なかなか面白かった。その時に出てきた係の人がこの部屋の担当らしくて、私の色んな質問にテキパキと答えてくれていた。なかなか、手際が良いではないか。ますます気に入った。

(3)しばらくして、バーチャルでシミュレーションすることができるサイトのアドレスが、送られてきた。「ROOV」というのだが、これがすごく使い勝手がよいので感心した。まずは、画面上に、平面図が現れる。不動産のビラによく出てくるものだ。それをクリックすると、3Dになっていきなりその部屋に入った感じになる。もちろん、各部屋を自由に移動することができる。「インテリア」のボタンを選ぶと、家具がバーチャル上に置かれる。だから、部屋の感じが一見してわかる。

 次に、「家具シミュレーション」のボタンにすると、これから置こうとする家具を選んでその場所に置ける。家具の色は白だが、これを青くすると、置く方向を変えられる。ただし、操作はちょっと難しい。色が白一色にとどまっているし、家具の方向転換が難しいのはこれからの課題だが、しかし良く出来ている。

ROOVのシュミレーション画像


 これは秀逸だとつくづく感心したのは、任意の場所の寸法を測ることができることだ。これに従って、どんな大きさの家具を買ったらその場所にはまるのか、すぐ分かる。しかも、床のフローリングの色もクリックひとつで変えられるから、コーディネイトしやすい。私はこのサイトを見ながら、家具屋さんのサイトより選んだ家具のうち、何をどこに置こうかなどとシミュレーションをするのは、実に楽しかった。

(4)そうこうしているうちに、いよいよ契約の日が近づいてきた。抽選だというが、私の担当者は、このようなメールを送ってきて、「先日の日曜日にご要望書の締切日を迎えました。現時点で12階のご指定のタイプは、貴殿のみご要望を頂いております。最終的な抽選の有無は再来週土曜日に決定致しますが、先週も無事に重なることなくご案内をすることが出来ました。残り約2週間も抽選にならないように頑張ります」と可愛いことを言う。私の狙う部屋はやや高いせいだろうか、、、よしよしこの調子で行けばと、期待は高まる。

 ところが、世の中、そう上手くはいかない。前日になって、担当者からこんなメールが飛び込んできた。「本日は残念なお知らせがございます。貴殿にご検討いただいておりました1203号室が抽選となってしまうことが決まりました。

 ここまで他のお客様と重ならないように進捗してきたのですが、最後の最後に、10階から12階のフロアをまとめて購入希望の方が現れてしまったのです。もちろん公平な抽選を行いますので、その方は当選した区画だけ購入されることとなります。

 私自身、1203号室は貴殿に・・と守ってきたつもりでしたので本当に心苦しく感じております。本日は取り急ぎ状況のご連絡でございます。詳細については明日ご案内させて頂きます」


(5)何だか、体良く騙された感がある。それでも、気を取り直して、銀座のショールームに出掛けて、またびっくりした。なんと1203号室の競争者がまた1人現れて、3人となっていたからである。これでは、私の勝つ確率は3分の1になってしまった。このままでは引き下がれないので、同じ部屋構造の1103号室の抽選にも参加することにした。そちらは、4分の1の確率だ。全然当たる気がしない。しかも私の抽選番号は、4番だ。嫌な予感がする。

 抽選時間になった。たくさんの人がきて大賑わいかと思ったら、全然違った。私一人が立ち合うだけだ。大晦日の商店街のようなガラポン抽選機が回される。私のは3番の球だが、まず11階は1番が当たって3番の私は外れた。いよいよ12階となるが、あーぁ、また1番が当選だ。つまらない。両方とも抽選を外れてしまった。全くの時間の無駄だったと、愕然とする思いで、家路についた。

(6)一体、何なんだこれは、、、と思っていたら、それから数日後、ごく最近、外国人投資家がその有り余る資金力で、東京都心部の不動産を買い漁っているという記事があった。あの「10階から12階のフロアをまとめて購入」というやり方は、それかもしれない。それが二人も出ては、勝負にならないのは明らかだ。


4.池之端のマンションを購入

(1)それからしばらくして、家に帰り、ふと郵便箱を見た。何かチラシが入っている。普通なら、そんなものは見ないで直ぐに脇のゴミ箱に捨てるのだが、たまたまその時は、手に取って見た。すると、このように書いてある。

・足元に不忍池の水辺と、上野恩賜公園の雄大な緑を抱える暮らし
・2つのバルコニーがあり開放感あふれる間取り
・防犯性や快適性のあるホテルライクな内廊下
・各階にゴミ置き場があり便利


自宅からの眺め(6月初旬)


自宅からの眺め(1月下旬)


 これは、ひょっとして私の求める理想のマンションかもしれないという気がした。というのは、もう私も歳をとって、緑が豊かな環境が良いなと思うようになってきた。しかしその反面、都会の真ん中に住むこの便利さと快適さは捨てがたい。東京都心部の食事、医療、交通、エンターテインメントの質の高度さと量の豊富さとは、さすが大都会と言いたくなる。ところが、この二つは、まず両立しない。都心部から離れれば離れるほど緑豊かになるが、その分、都会の便利さからは遠のくからだ。

東京スカイツリーの電飾


 その点、このマンションは、都会の真ん中にありながら、真下は上野動物園と不忍池、向かいには国立博物館や五重の塔を含む上野の森、さらに東京スカイツリーが真正面に見える。こういうのをパノラマ眺望というのだろうか。実に素晴らしい。昼だけでなく、夜になると、スカイツリーのイルミネーションがキラキラ光って綺麗だ。東向きだから、西日に悩まされることもない。緑と都会が見事に両立している。うーん。素敵としか言いようがない。

 そのチラシを手にしたのが午後5時のことで、そこに書いてある携帯に電話した。すると、不動産会社の女性が出てきて、明日と言わず、今日なら午後6時から見学できると言うので、直ぐに行くと返事した。このマンションは、私の現在のマンションから歩いて10分ほどだ。ついでに言うと、現在のマンションは地下鉄千代田線根津駅の北にあり、駅まで歩いて2分だ。駅まで近いのは気に入っているものの、地上まで通じているエレベーターやエスカレーターがないというのが欠点だ。若い時は全く気にならなかったが、家内が身体不自由になると、これは困るようになった。

 その点、新マンションは、根津駅まで歩いて5分とやや遠いが、改札階に行けるエレベーターがある。場合によっては湯島駅まで8分ほど歩けばやはりエレベーターを利用できる。それに加えて、住んでいる根津からこのマンションの前を通って歩いて湯島や御徒町によく行っているので、私の生活圏内である。

 ともあれ、午後6時に間に合うように、歩いて新マンションに向かった。10分もかからない。不動産会社の若い男女二人が待っていて、中に入る。屋根付きのエントランスがあって、雨の時にも濡れなくて便利だ。マンションに入る人は、まず建物の入口で部屋を呼び出し、エレベーターの前でまた呼び出し、それでエレベーターに乗ってまた部屋の前でチェックするという三重のチェックがある。あれ、これはどこかで読んだことがあると思ったら、湯島の新築マンションの資料と同じ仕様だ。

 エレベーターが目指す階に着いた。いわゆる、ホテル仕様の内廊下である。これも、湯島の新築マンションで宣伝していたものだ。しかも、ゴミはいちいち1階に行かなくても、同じ階にゴミ捨て場がある。ドアは重厚な造りで、これは気に入った。開けて中に入ると、廊下は白の大理石、部屋の中はフローリングで、リビングとその隣の部屋とがフラットに続いている。その間は、3枚の「ぶら下がり」ドアで、仕切られているから、アイランド・キッチンと合わせて、一体として使える。ああ、トイレも納戸も、もうひとつの部屋も、フルフラットだ。何もかもROOVで見慣れたものばかりだ。あれは良い予習となった。

 窓からの眺めの前面は、真正面に東京スカイツリー、上野の森、上野動物園に不忍池で、期待通りの素晴らしい眺望が広がる。夜だったので、スカイツリーの電飾、上野精養軒の照明が目立つ。真下には上野動物園のフラミンゴ舎とペンギンのプール、左手にはキリンの運動場も見える。キリンは暖かくなったら出てくるだろう。孫が来たら、それを見て喜びそうだ。建てて9年の中古マンションではあるが、築後28年目の根津のマンションに比べれば、まだ若い。

上野動物園のキリンが見える


上野動物園のフラミンゴが見える


不忍池の弁天堂とスワンボートが見える


 隣りには、やはり高層マンションが見える。少し遠いから、気にならない。これは期待以上の景色だ。家内の介護ベッドは、上野の森がよく見えるところに置こう。この景色だけでも、気に入ってもらえそうだ。少なくとも、気は晴れるに違いない。床はフローリングのフルフラットだから、歩くのに支障はない。

 「よし。ここに決めた」と不動産屋に言うと、そんなに簡単に決める客はあまりいないらしくて、ビックリしていた。もう、笑い話だ。その他、設備を見ていくと、湯島の新築マンションで宣伝していたものと非常に良く似ている。ここは、9年前の中古マンションではあるが、もう既に現時点の高級マンションの設備と仕様を備えている。フローリングやドアなどは濃い茶色で、重厚感がある。ますます気に入った。

(2)日を置かずして、契約した。不動産会社のオフィスで売主と対面し、その場で契約を交わしたのである。売主は、大手企業の役員をされていて、インターネットの役員プロフィールと同じ人が出てきたから、安心した。手付金として不動産価格の数%をネット銀行から振り込んだが、その場で思わぬ失敗があった。450万円を振り込もうとしたら、アプリから「振込み限度額を超えています」と出てきて、止まった。「そういえば1日当たりの振込額を100万円に設定していたな」と思い出し、振込み限度額設定の画面を呼び出して「4,500,000」と入れたら「間違いです」と出てきた。よく見ると、限度額の単位が「万円」だったので、「600」と打ち込んで、やっと変更が終わった。

 次に振り込む段階となって、画面に思わず「450」と入れてボタンを押したら、何か変な気がした。それもそのはずで、今度は「万円」単位ではなくて、「円」単位だったからだ。もう笑い話を通り越している。それを説明したら、売主も笑っている。そこで、改めて450円を差し引いた「4,499,550」と入れて、それも送金された。合わせて、不動産会社に売買手数料の半額である150万円を振り込んで、送金は無事に終了した。私としては、なるべく早く引き渡してほしかったのだが、売主側で担保を外す手続きなどがあって、約1ヶ月後に残代金の支払いと引き渡しが決定した。

(3)それ以降、どういう家具を入れるか、引越しはどうするかを考える日々が続いた。これには、抽選が当たらなかった湯島の新築マンションについて、あれこれシミュレーションした経験が実に役に立ったから、世の中は面白いものだ。

 まずは家内の介護ベッドをどこに置くかだが、これはもう最優先で、東京スカイツリーと上野公園が正面に見える部屋にした。また、その部屋には箱物家具を置かない。阪神淡路大震災では、何十キロもある家具が宙を飛んで居住者に当たり、多くの人を死傷させたからだ。リビングには、65インチの有機液晶テレビを据え付け、それが見える位置にリクライニングの椅子を並べよう。そして、アイランドキッチンの脇には、二人用のテーブルと椅子を置く。あとは、北向きの部屋に私のベッドと小さな机を置こう。かくして、とりあえずの基本構想は固めた。

 家具は、ニトリと大塚家具の新宿のショールームを見に行った。ニトリでは、3席のリクライニングソファが気に入った。真ん中の席を倒せば、テーブルになる。まずこれを買う。次にダイニングテーブルを何にするかだが、この3席ソファが大きすぎて、大きなテーブルは入らないので、ごく小ぶりのテーブルにした。麻雀ができそうな四角のものだ。それと椅子を購入した。カーテンを見たが、紙テープを渡されて自分で採寸せよという。しかも、柄にはあまり選択の余地がない。これでは、ダメだ。

 次に大塚家具に行ったが、家具は無駄に大きくて、広いスペースがあるならともかく、我が家には適さないものばかりだ。これにはガッカリした。その代わり、カーテンが色々な生地や柄があってこれは良い。センスの良い奥様が選んでくれたものにした。後日、係の人が来て、ちゃんと採寸してくれた。取り付けもしてくれたが、ピッタリだった。これには、満足した(詳細は、8.(4)参照)。

 あと、台所のスペースの冷蔵庫の隣に、100cmの余地があるので、ここに入るような台所ボードがほしい。そこには、電子レンジと炊飯器を置き、炊飯器は引っ張り出して使いたい。良いものはないかと通販サイトを探したら、ディノスで見つけた。色は白だから、冷蔵庫と合う。これにした。

 改造は、二重窓にしたい。大きな窓を通じて冬に冷気が入って来そうだからだ。これは、厚手のカーテンでも防げるものではない。それに、省エネにもなる。あと、ピクチャーレールも付けて貰おう。その二つである。

 私の友人のそのまた友達が、阪神淡路大震災のときに神戸のポートアイランドにある高層マンションの最上階に住んでいた。朝方の寝ている時に地震で大揺れして、やっと収まったときに目を開けてみたら、天井ではなく空が見えたそうだ。つまり、ベッドごと窓を突き破ってベランダに放り出されたという。危なかった。紙一重で御陀仏になりかけたという

 その点、家内の寝ている部屋にはベランダがあるから、放り出されても大丈夫だろう。また、リビングの上野公園と東京スカイツリーが見える部屋にはベランダがないが、今回、真ん中の縦に仕切りのある二重窓を付けるので、外へ直接放り出されることはまずないと信じたい。


5.捨てに捨てて断捨離を敢行

(1)12月の初めから、毎日コツコツと、引越しのための準備を始めた。引越しとなれば、この際、長年にわたって溜め込んだゴミを処理してしまう絶好のチャンスである。子孫に美田を残すとまでは言わないとしても、少なくともゴミは残さないようにしよう。そのためには、ゴミとして捨てられるものは毎日、可能な限り捨てていって、これからの老後の生活で、新居で使うものだけにする。写真など過去の思い出などは、スキャナーで読み取ってハードディスクに入れてしまうことにする。

 手始めは、33冊に及ぶ写真アルバムだ。これだけで横1mのスペースをとるし、しかも重いのである。これは倉庫の下から2段目にあるから、これを外さないとその下の書籍が取り出せない。覚悟して、写真を1枚ずつ剥がしながら、スキャナーでどんどん読み込んでいった。12月初めから作業を開始して約1ヵ月ちょっとで終了した。このほか、8冊のネガアルバムもあったが、幸いこれは既にデジタル化していた。そんなことで、1冊のアルバムを処理するたびに細かくちぎって何回かに分けて可燃物としてゴミ置き場に持って行った。

 次は、膨大な数の書籍である。私が学生時代に使っていた教科書、清宮先生の憲法、民法の法律学全集、団藤先生の刑法、サミュエルソンの経済学まである。これが棚いっぱいにあったが、皆捨ててしまうことにした。もう時代遅れだし、もし必要なら、最高裁判所の図書館に行けばよい。そのほか、私自身の著書がある。9冊になる。さすがにこれは捨てられないので、3セットを残して、あとのものは捨てた。それでも、結構な分量になる。

(2)以上が倉庫の話だが、本丸は5畳の小部屋に置いてある一連の家具の中身である。地震対策で、阪神淡路大震災の話を聞いて、寝室や居間には家具を置かないこととし、この部屋に集めた。しかも、中身がぎっしりと詰まっている。

 最初は和箪笥で、恐る恐る上段を開けると、当たり前だがそこには和服がたくさんあった。外国でのパーティ、皇居の晩餐会、大使館での催しに家内が着ていったものだ。売るとそれなりに価値がありそうなものばかりだが、帯や草履にバッグも含めて、全部、捨てることにした。家内はほとんど寝たきりといってよい状態だし、背が縮んで体型も大きく変化したから、これから先、こんな和服を着る機会など、あり得ないからだ。ビニール袋に詰め込んで、毎日、ゴミ置き場に捨てに行った。和服とともに卒業証書類が出てきた。もちろんとっておくことにしたが、相当な分量だ、私や家内の分のみならず、二人の子供の小学校→中学校→高校→大学→大学院→医師の免状や司法修習生の採用通知まである。日本の卒業証書は丸められて筒に入っているが、アメリカのロースクールの卒業証書は横80cm、縦60cmとバカでかくてしかも平らだ。これら子供の分は、代表して長男に取りに来てもらった。

 和箪笥の下段には、まずアクセサリー類があった。主に御木本の真珠が若干だが、値段的には大したことはない。売っても二束三文だろうが、捨てられないし、嵩張らないので、とっておくことにした。でも、娘にあげるには、かなり古びている。我々がこの世を去る頃には、たぶん無価値となっていることだろう。その下の引き出し部分の大半は、私の古い下着だが、もはや着ていないものが多い。全部捨てることにした。必要なら、ユニクロに買いにいけばよい。

 洋箪笥の大半が、家内の洋服である。ただし、端っこには私の礼服、タキシードとモーニングコートが入っている。これらは、まだ着る可能性があるので、とっておくことにした。タキシードにつきもののエナメルの靴も同様だ。

 それは良いのだが、家内に残す洋服を選択してもらおうとして、一つ一つ本人に示したが、全然作業が進まない。若い頃に颯爽と歩いていた頃の洋服とか、アブドゥラ・ラーマン通りに買いに行った生地で作ったお手製の洋服とか、皇居にも着て行った和洋服とか、それぞれ思い出いっぱいなので、それはそれとして大切なのはわかる。しかし、これから本人が着ることは絶対にないし、こんなものを次の世代に残しても、体格や趣味やデザインが違うのでまず着てもらうことはない。だから、もはやタンスの肥やしどころかゴミなのだ。こういうものと化した洋服が本当に困る。女性って、そもそも狩猟採取時代から、物を貯め込む性質があるそうで、しかもそれは本能に近いものらしくて、やむを得ないことなのではある。でも、このままでは何ともならない。そこで、引越し前日まで箪笥に吊るしておいて、その約1ヵ月間、吟味してもらい、結局、ほとんど捨ててしまった。

 居間にあったリビングボードには、私の思い出の品が詰まっている。旅行に行くたびに買ってきた人形は、可愛い。ドイツの「ミュンヘンのくるみ割り人形」、イギリスの「バッキンガム宮殿の衛兵」、フランスの「ナポレオン時代の兵隊」、スペインの「リヤドロ人形」のお嬢さん、チェコの「ガラス製のチェス」、南アフリカの「現地人の人形」、鹿児島の「西郷さん土鈴」、山形の「こけし」などだが、思い出は頭の中と写真にあると考え、友人に差し上げる「リヤドロ人形」と、特に自分がとっておきたい「くるみ割り人形」と「チェス」を除いて、全て破棄した。

 問題は、外国暮らしをしていた時に使った「ノリタケのディナーセット」である。コップやスプーン・フォーク類を合わせると嵩張るし、かつてはかなりの値段で買い求めたものだ。しかも、梱包するには時間が掛かる。やってみたら、段ボール箱3つに収まるので、持っていくことにした。

 これで3大家具が処理できたと思ったら、この小部屋には段ボール箱が8個もある。開けてみたら、7年前と9年前に亡くなった義理の両親関係の諸々のものが山ほど出てきた。確定申告書類などの税務書類とか、写真とか、建物の設計図まである。このうち写真は、スキャナーで取り込んだ。その他のものは、国税の時効の5年間は過ぎているから、相続関係を除いてもはや必要ないし、建物は既に取り壊して土地は売却済だから、これも要らない。そういうものを、毎日コツコツとちぎったりして全部捨てた。これが小部屋の三分の一を占めていたので、ずいぶんスッキリした。

 小部屋のクローゼットには、私の服ばかりがあると思っていたが、そうではなかった。端っこには、家内のゴルフ・セット、子供が小学生時代の金属バットと木製バット、上の棚には膨大なビデオ・テープ、ゲートボールのスティックと球まであった。ゴルフ・セットとバットは粗大ごみ、ビデオ・テープは可燃ゴミとして処理し、ゲートボール関係は友達に差し上げることにした。

(3)家内が寝ている介護ベッドのある和室には、布団と下着類(今なら夏物)がある。布団は括ればよいし、下着類は段ボールに入れるだけだと思っていた。ところが、引越し直前に家内をホテルに連れて行って介護ベッドも撤去して和室を空にして覗いたら、案に相違して、いやもう予想もしないものが次々に出てきた。マレーシアを去る時にいただいた「ピューターの大皿」、「家族写真の巻物」、やたらと重いと思ったら娘の「結婚式のアルバム類」まで、いやはや次から次へと出てくる。巻物以外は、皆捨てた。

 台所がすごいことになっていた。地震対策用に備蓄してあった缶詰類が、ほとんど期限切れなのである。この数年、家内が病気や事故のために台所に立つことがなかったからだ。中身を出して、缶だけにして、それを水洗いして分別回収に持って行った。水の備蓄も同様で、既に期限切れである。これは中身を捨てるのは簡単で、やはり分別回収に持ち込んだ。台所の下には、洗剤の詰め替え、たわしなどの備蓄その他諸々の品があったほか、カセットコンロが3台とカセット6個、土鍋、鉄鍋、包丁の新品・・・すごい。小間物屋が開けそうだ。カセットの未使用品を捨てるのは危険なので、6個全部とコンロを1台だけ持っていき、そのうちベランダで鍋でもつつこう。あとは、捨てた。

 洗面台の下も、やはり小間物屋状態だ。セール品なのだろうが、同じものをなぜこんなに買い込むのか、男にはさっぱりわからない。どの家でもそうなのか・・・。未使用品は残して、あとはひたすら廃棄した。洗濯機の周りには市販の突っ張り棚を組み立てて取り付けてあるが、汚くなっているので、捨てよう。

 以上のような作業を連日午前2時頃まで引越し前日に至るまで続け、1日当たり平均でビニール袋3つから4つも排出したから、少なくとも捨てたのは100個近くにのぼったと思う。管理人には申し訳なかった。

(4)以上が普通ゴミ対策である。次に粗大ゴミとして、何をどういう順番で、出すかが問題だ。和洋箪笥や居間のリビングボード、台所の食器棚などは、一人で、駐輪場(粗大ゴミ置き場)まで、運べるわけがない、、、そうだ、引越し屋さんに引越しついでに下まで降ろしてもらえばよい。ちょうど引越しの翌々日が粗大ゴミ収集の日なので、都合が良い。我ながら良いアイデアだ。ネットで引越し屋さんを探して、安くて親切そうなところを幾つか当たり、その結果、引き受けてくれる所を見つけた。隆星引越しセンターという。3点までなら無料なのだけど、それ以上なら1点につき千円とるというから、7点あるので4千円の追加料金で済んだ。安いものだ。ついでに、新居に持っていく洗濯機のホース排水管のセッティングも頼んだら、快く引き受けてくれた。

 文京区の清掃事務所に、粗大ゴミの収集を申し込まないといけない。「粗大ゴミ受付センター」というものがある。そもそも粗大ゴミの定義は何かというと、一辺が30cmを超すものだそうだ。しかし、この定義だと、私の家にはたくさんある。ザーっと数えてみると、大物小物を合わせて、何と80個を超える。一度に申し込めるのは、10個までだというから、8回以上も、申し込むことになる。私と家内の名前でかわりばんこにやってみることにした。

 まずは、自分で動かせない大物家具の処分である。これは、「箱物家具」という分類になっていて、私の場合は、洋箪笥、和箪笥、リビングボード、ライティングデスク、台所のボード、テーブル、その長椅子である。これらは引越しの時に下に持って行ってもらうので、その翌日以降の最短収集日は翌々日だ。タイミングがピッタリで、都合が良い。そうすると、7点なので、あと3点、適当なものを追加しよう。一つはテレビ台のオーディオ、あと二つはこたつ板・こたつ本体にしよう。こたつはともかく、ほかのものは一人では絶対に運べない。

 これを中核として、その前にもまた、別の粗大ゴミを出そう。自分で駐輪場まで運べる範囲にしなければならない。インターネットで文京区の粗大ゴミ受付センターを見ると、まず、メールアドレスを入れたら、そこにメールが来て、そのアドレスを開くと、手続が始まる。品目を選択し、その数を入れてから、収集日を選ぶのだが、中にいくつか、どの品目に分類すべきか、わからないものがあるのには手こずる。例えば、子供用の野球のバットは、スポーツ用具の中には書かれていない。清掃事務所に問い合わせてみた。すると、どちらも「テニスラケット」で登録してくれという。これは、想像もつかなかった。次に、窓の下の結露防止のために両端が伸縮するヒーターが入った棒が3本ある。これも問い合わせたら「突っ張り棒」の分類で、何本かまとめて良いとのこと。ちなみに、野球のバットは、まとめてはいけないそうだ。何なんだ、この違いは?それから驚いたのが、収集日が遅いことだ。まだ12月の初旬なのに、収集日は1ヶ月近くも先だ。これは、出す順番などを相当、計画的に考慮しなければならない。要は、出せるものはともかく先に出すことが肝心だ。ということで、とりあえず、引越し前の1月9日、16日、19日に各1回、そして引越し後の26日に3回の計6回を登録した。

第1弾(1月9日)
 (1) 額縁
  @400円(A券 2枚)×2点 計800円
 (2) 箱物家具(高さと幅の合計が135cm未満)
  ⇒私がDIYで作った家具などで、頑丈すぎて壊せない。
  @400円(A券 2枚)×5点 計2000円
 (3) 板類一束 (ガラス板 鉄板類除く)
  ⇒私がDIYで作った家具をばらしたもの。
  @400円(A券 2枚)×1点 計400円
 (4) ハンガーラック(高さ1m未満)
  ⇒引き出して見たら、そもそも土台が割れていた。
  @400円(A券 2枚)×1点 計400円
 (5) かご (その他)
  @400円(A券 2枚)×1点 計400円

第2弾(1月16日)
 (1) ビデオデッキ
  @400円(A券 2枚)×2点 計800円
 (2) 傘立て
  @400円(A券 2枚)×1点 計400円
 (3) テレビ台(幅1m未満)
  @400円(A券 2枚)×1点 計400円
 (4) 布団
  @400円(A券 2枚)×5点 計2000円
 (5) 額縁
  @400円(A券 2枚)×1点 計400円

第3弾(1月19日)
 (1) 布団
  @400円(A券 2枚)×4点 計1600円
 (2) 壷
  @400円(A券 2枚)×1点 計400円
 (3) 座いす
  @400円(A券 2枚)×2点 計800円
 (4) いす(ソファー以外)
  ⇒ライティングデスクの箱椅子
  @400円(A券 2枚)×1点 計400円
 (5) 電話機・FAX(家庭用)
  @400円(A券 2枚)×1点 計400円
 (6) オーディオ機器(単体。カラオケ/スピーカー除く)
  ⇒ラジカセ
  @400円(A券 2枚)×1点 計400円

 この第3弾までは、自分で出せる範囲の粗大ゴミである。それから、1月24日の引越し直後には、引越し屋さんに下まで運んでもらう大型粗大ゴミの、その運ぶ順番も考えて計画を立てる必要がある。1グループが10点以内だ。それで、練りに練った計画を作った。例えば、大型家具を下に持って行ってから、その下に敷いてある絨毯を剥がすという手順を間違えて絨毯を先に出すことはできないなどという具合である。それから、収集の人がチェックしやすいように、それぞれのグループに、赤色、空色、緑色のラベルを貼った。まるで交通信号のようだ。

第4弾(1月26日)赤色ラベル
 (1) ライティングデスク
  @1200円(B券 4枚)×1点 計1200円
 (2) 箱物家具(高さと幅の合計が360cm未満)
  ⇒和箪笥、洋箪笥、居間のリビング、ボード
  @2000円(A券 1枚、B券 6枚)×3点 計6000円
 (3) 箱物家具(高さと幅の合計が180cm未満)
  @800円(A券 1枚、B券 2枚)×1点 計800円
 (4) テーブル(最大辺1.5m未満。ガラス製天板除く)
  @800円(A券 1枚、B券 2枚)×1点 計800円
 (5) こたつ板
  @400円(A券 2枚)×1点 計400円
 (6) こたつ(家具調電気こたつ)(こたつ板を除く)
  @800円(A券 1枚、B券 2枚)×1点 計800円
 (7) 長いす
  @800円(A券 1枚、B券 2枚)×2点 計1600円

第5弾(1月26日)空色ラベル
(1) 箱物家具(高さと幅の合計が360cm未満)
 @2000円(A券 1枚、B券 6枚)×1点 計2000円
  ⇒台所のボード
 (2) 箱物家具(高さと幅の合計が180cm未満)
  @800円(A券 1枚、B券 2枚)×1点 計800円
  ⇒台所の電子レンジ台
 (3) ハンガーラック(回転式又は高さ1m以上)
  @800円(A券 1枚、B券 2枚)×1点 計800円
  ⇒居間のクローゼットのもの
 (4) 布団
  @400円(A券 2枚)×4点 計1600円
 (5) 敷物・ホットカーペット(1畳を超えるもの)
  ⇒居間と廊下のもので、家具を動かしてから引越し当日の夜に準備

第6弾(1月26日)緑色ラベル
 (1) ゴルフ用具
  @400円(A券 2枚)×2点 計800円
  ⇒家内のゴルセット(私のものは既に処分済)とパター練習台
 (2) 三脚
  @400円(A券 2枚)×1点 計400円
  ⇒余分な三脚
 (3) 鉄製の棒
  @400円(A券 2枚)×1点 計400円
  ⇒小部屋の絵の支えに使っていたもの
 (4) テニスラケット
  @400円(A券 2枚)×1点 計400円
 (5) ラック(オーディオ用等を除く)
  @400円(A券 2枚)×1点 計400円
  ⇒居間のワインラック
 (6) ショッピングカート
  @400円(A券 2枚)×2点 計800円
  ⇒2つのつもりだったが、家内が持って行きたいというので1個になった。そこで、収集してくれる人向けに「1個に減った」と表記した紙を貼った。
 (7) 突っ張り棒
  @400円(A券 2枚)×1点 計400円
  ⇒電熱ヒーター付き3本をまとめる
 (8) 突っ張り棚
  @400円(A券 2枚)×1点 計400円⇒台所のもの


積み上げられた第4弾から第6弾までの粗大ゴミ


 引越しの前日に粗大ゴミ置き場に指定されている駐輪場を確かめてみると、あれれ、私の他に、ソファや何かの台といった家具を同じ場所に出している人がいる。紛らわしいなぁ、、、私の分を三色の色分けをしていて良かった。そして引越しの当日、引越し屋さんになるべく壁側に寄せて通行の邪魔にならないようにしてほしいと頼んでおいた。運び終わったので見に行ったら、壁際に置かれていて、上手く納まっていた。


6.マンションの方とのやり取り

(1)マンションの主な居住者には、数日前に引越しの挨拶に行ったところ、その直後に現理事長から、こんなメールが送られてきた。

「各位

 おはようございます、お世話になっております。

 理事の悠々人生さんから近々引っ越しますとのご挨拶がありました。近くの池之端高層マンションに奥様の為にバリアーフリーの部屋を確保したそうです。

 自転車置き場の沢山の家具類は悠々人生さんが出した物です、皆様にも宜しくと申し付かっております。

 まずはご連絡まで。」


 これはこれは、、、「気が利かないのを通り越して、何だか嫌味だな」と思って、念のため、次のメールを理事に出しておいた。

「理事会の皆様

 ただいま、理事長様のメールにあった通り、私は、池之端に新居を購入して、そちらに引越しすることにしました。特に理事会の皆様をはじめ居住者の皆様方には大変長らくお世話になり、深く感謝申し上げます。

 ここで、27年間過ごした当マンションから去るのは誠に心苦しいのですが、現在の設備、とりわけトイレや洗面所浴室の段差が家内の介護をする上で大きな障害となり、どうにもならなくなってきたものですから、今回の引越しになりました。

 家内は、一昨々年の脳梗塞に始まって、度重なる骨折など、ここしばらくは災難続きでした。それでも最近はようやく寝たきり状態から脱して、家の中では少しは歩けるまでに回復してきました。しかしそうなると、特にトイレの段差が困ってしまって、往生することが多くなりました。そこで、たまたま池之端の高層マンションの一室が売りに出されたものですから、それを購入したというわけです。

 この池之端のマンションは、フルフラットのフローリングで、段差はありませんし、室内用の車椅子が使える広さがあります。加えて、窓からは上野動物園、不忍池、上野公園、そして東京スカイツリーが見えて、昼も夜も眺望が良いものですから、たいそう気に入りました。ここを終の住処にしたいと思います。位置は、上野動物園池之端口の前です。家の窓からは、フラミンゴやキリンが見えるので、孫たちも来てくれることを期待しております。

 それでは、引き続き、ご厚誼のほど、よろしくお願い申し上げます。

(追伸)駐輪場に1月26日収集の粗大ゴミを置きましたので、ご迷惑かとは存じますが、ご容赦ください。なお、このうち三分の二は私が出したもので、赤空緑色のラベルと粗大ゴミ券を貼っております。その他、私が出したものではないソファ、家具などがありまして、その中には一見すると粗大ゴミ券が貼られているかどうかが確認できないものもありますので、場合によってはチェックする必要があるかもしれません」


(2)その直後、ポストにこんな手紙が入っていた。

「 悠々人生さん

 こういうこともあろうかと思っていましたが、いざ現実になると寂しいですね。うちの女房も母親の面倒を見ていますが、やはり段差のあるトイレで苦労しており、特に女房は数年前に転んで脊椎を痛めておりますので、今の形の面倒見がいつまで続くかと思案する毎日です。3年ほど前に同じ階のSさんが箕輪に移られたのも、やはりここで、お母さんの面倒を見るのは大変と、同じ段差が理由です。

 貴殿ご夫婦には、女房の母親も親しくしていただいたのを聞いています。今は認知症ですぐ前のことも覚えられない状況ですが、その時その時の会話は普通にできるので、貴殿ご夫婦が替わられると話したら、残念がっています。

 我々が来て間もなくの頃、お客が来るのでどこが良いレストランはないだろうかと貴殿と奥様に相談したところ、懇切丁寧に付近のレストランを案内していただいたことを思い出します。

 また別の面では、マンションの運営の面でも貴殿が理事会のメンバーであることで、ある程度の緊張感があったと思いますが、その面では今後の運営が心配です。その意味では2回目の大規模修繕が済んだ後なのがせめてもの救いです。両方の大規模修繕では大活躍をいただきました。

 今後どういうお付き合いがあるのかわかりませんが、連絡が取れるようにはしておきたく、差し支えなければ、連絡先を教えていただきたく。転居までの2週間の間に上手くお会いできるかどうかは分からないので手紙にしました。

 奥様にご連絡できるかどうかは分かりませんので、どうかお元気でよろしくお伝えください。ありがとうございました。

 尚、何かお手伝いするとことがありましたら、お申し付けください。

Fより」


(3)これを読んで大いに感激した私は、メールで次のような返信を書いた。

F様・奥様

 ご厚意あふれるお手紙をいただきまして、本当にありがとうございます。

 私たちも、かねてよりお母様に親しくしていただいただけでなく貴殿ご夫妻にも、とってもご親切にしていただいて、本当に感謝申し上げます。

 ここで、27年間過ごしたこのマンションから去るのは誠に心苦しいのですが、正にそのトイレや洗面所浴室の段差が家内の介護をする上で大きな障害となり、どうにもならなくなってきたものですから、池之端のマンションを購入して家移りすることにしました。

 家内は、一昨々年は脳梗塞、一昨年と昨年は何箇所か骨折するなど、ここしばらくは災難続きでした。それでも最近はようやく寝たきりから脱して、家の中では少しは歩けるまでに回復してきました。しかしそうなると、特にトイレの段差が困ってしまって、往生することが多くなりました。そこで、たまたま池之端の高層マンションの一室が売りに出されたものですから、それを購入したというわけです。

 この池之端のマンションは、フルフラットで、段差はありませんし、室内用の車椅子が使える広さがあります。加えて、窓からは上野動物園、不忍池、上野公園、そして東京スカイツリーが見えて、眺望が良いものですから、気に入りました。ここを終の住処にしたいと思います。位置は、上野動物園池之端門の前です。家の窓からは、フラミンゴやキリンが見えるので、孫たちも来てくれることを期待しております。

 当マンションの運営については、普通の管理運営であれば、町内会の延長のような感覚でできるでしょう。ところが、大きなお金が動く大規模修繕のようなときは、それなりの能力とセンスがないと、管理会社の良いようにされてその餌食になってしまうので、よくよく気を付ける必要がありますね。

 ともあれ、本当にお世話になりました。これからも、どうかよろしくお願い申し上げます。今度の池之端のマンションは、このマンションからは歩いて10分もかからない距離ですし、私自身も時々、こちらに来るつもりですので、その節は引き続きご厚誼のほどをよろしくお願いします。


(4)すると、メールで返事をいただいた。

「丁寧なお返事ありがとうございました。状況よく分かりました。

 奥様が快方に向かっておられるのが何よりだと思います。新しいマンションの設備は大いに助けになると思います。柏にいたときの介護も想定した広いトイレや風呂を思い出しています。便利な設備での無理のない生活が奥様の回復を加速することを祈っております。

 移転されたと言っても近くですから、心強い限りです。今後ともよろしくお願いいたします。

Fより」



7.引越し準備でいろんなことが

(1)12月初めから始めた引越し準備がいよいよ佳境に入ってきた。大型家具の中身が空になり、部屋のあちこちに段ボール箱が積み上がっていく。この段ボール箱は、引越し屋が送ってきたものだ。20個あったが、順次使っていって10個を過ぎると、新品ではなくなって、誰かの「使い古し」だ。、、、いや、それは言い方が悪い。「再利用品」なのである。契約の時の電話で担当者が何かごちゃごちゃ言っていたのは、これのことかと納得した。何しろ箱が一つでも欲しい時なので、構わずに使った。それでも当然、足りなくなるので、アマゾンの荷物が入っていた箱を同じ数ほど使う。

 それにしても、私のやっているのは、捨てて、捨てて、また捨てることだ。まるで「荷造りとは、捨てることと心得よ」とばかりに、家財で動かせるものの8割ないし9割はビニール袋に入れて捨てることだ。この頃になると、一度に10個もゴミ袋が出るから、下に持っていくだけでもひと苦労だ。しかも、衣類や書類は燃えるもの、茶碗や、磁器やコード類は燃えないものと分別しないといけない。

 この仕事、誰かにやってもらうことも出来ない。というのは、取っておくものと捨てるものの区別は、私しかできないからだ。もちろん、「あの家具を新居ではここに置くから、同じように収納してほしい」というやり方の方が、お金で片付くし楽なのだけど、その家具すら捨ててしまうという徹底した断捨離なので、そういうわけにはいかない。

(2)慌ただしい中、家電のビックカメラに行って、テレビ、冷蔵庫を買った。テレビは、ソニーの有機液晶の65インチを探したら、希望通りのものがあった。冷蔵庫は台所のスペースに入れるためには、横幅58cmを下回らなければならないので、探したところ、三菱電機のものだけが適合したから、それを購入した。係の人は韓国製を勧めてきた。確かに価格は半分近いが、断固断って日本のメーカーのものにした。

 ちなみにこの二つは、下取りしてもらうことにした。そうすると、かなりの値引きとなる。ということは、新居に持って行って、そこに新品を届けるついでに引き取ってもらわないと、下取りにならない。だから、これは粗大ゴミとしては出さないし、出せないのである。少々面倒だが、仕方がない。

 でも、テレビの下のテレビ台としてのステレオは、スペースをとるし時代遅れなので、これは粗大ゴミにしないといけない。そうは言っても、これは自分ひとりでは重たくて動かせないので、それとくっついているブルーレイレコーダー(旧と新の2つもある!)を先に外して粗大ゴミにしようとした。これについて排出日の第2弾となる1月16日に向けて捨てる準備をしている時に事件が起こった。

 テレビやオーディオ台の後ろは壁に近いし、積み上がった段ボール箱の山を避けて裏に回ることは容易でない。そこで、オーディオ台の前からその横長のガラス板の上に乗っている2つのブルーレイ・レコーダーを引っ張って出そうとしたが、電源コードやらテレビ電波受信コードやらが数本くっ付いていて、出せない。面倒だとばかりに、電源を切ってから、全部のコードをペンチで切断してしまった。すると、大事件が起こった。

(3)テレビが映らないのである。それもそのはずで、ブルーレイレコーダーを経由して、テレビは電波を受信していたのだから、それがなくなったら受信できないのは当たり前だ。コードをペンチで切断する時には、考え付きもしなかった凡ミスだ。

 引越しまであと10日なので、テレビなしで過ごすのも、面白くない。困ったなぁ、、、ケーブルを買ってきて、また繋ごうかとの考えも浮かぶ。決めきらないまま、次の部屋の片付けに行った。それは息子が使っていた部屋だ。整理していると、部屋の片隅に、白いケーブルの束を見つけた。昔、息子のテレビ用にと思って用意したが、結局放置されていたものらしい。だから、もう27年もそのままになっていたものだ。これは、ひょっとしたら使えるかもしれないと思って、テレビの部屋に戻り、部屋の隅に積み上げてあった梱包荷物をやっとのことでどかして、ケーブル端子を見られるようにした。2本あって、1つは地デジ用、もう1つは多分衛星用だ。引き抜いてみてケーブルの形状をみると、真ん中に1本細いピンが出ているのには見覚えがある。たぶん、これが地デジ用に間違いない。そこに発見した白いケーブルを繋ぐ。ネジ式だから、ケーブル本体を一緒に回して何とか連結できた。

 よしよしと、、、次はテレビ本体だ、、、いっぱいケーブルを繋ぐ所があるが、形状が違うものを全部外していって、一つだけ残った。これだ、、、そこに繋ごうとするが、どういうわけか、繋げない。10分ほど格闘して、中腰で辛くなってきたので、もう諦めようと考えた。その時、何気なくケーブルの先端を見たら、真ん中に出ている細いピンの先が倒れているではないか。これが原因かと思って、手元にあったハサミでそれを真っ直ぐになるように戻した。それでやってみたら、テレビ画面が映ったというわけだ。もう、偶然が重なって何とかなった、奇跡のような出来事だった。自分でもびっくりした。

(4)段ボール箱は、連日積みあがっていく。全ての段ボール箱に、中身を書くことにした。でないと、中に何が入っているか、わからなくなる。積み上げる一番下は、私の著書12冊と書類だ。これは重たいので、小さな箱にする。大きいと運べないからだ。その上には、雑貨、更にその上には衣類、、、などと順番を考える。整理はかなり順調に進んでいったが、台所になると雰囲気は一変した。皿やコップを一々、緩衝材の「プチプチ」で包んでテープで止める作業になり、全然進まない、慣れていないこともあって、段ボール箱一つに半日もかかる。嫌になってしまった。だから、ついつい、捨てる分を多くすることになる。ただ、捨てるかどうか最後まで迷ったのは、「ノリタケのディナーセット」である。外国駐在時に、外交団などを招くときなどに重宝した。高価なこともあり、結局、そのまま持っていくことにした。

 引越し当日の手順を考えているとき、各段ボール箱をどの部屋に持っていくかを指示する標識があったら便利だと考えた。さもないと、いったん運び入れてから行先を振り分ける羽目になってしまう。そんなことは、一人では無理だ、、、というわけで、引越し先の部屋の構図を見てみると、五つに分かれる、一番手前から奥に向けて、を居間、を私の部屋、を台所、を居間,を居間脇の部屋としよう。

 とまで考えたのは良かったが、現実には荷物を捨てたり段ボール箱に詰めたりする作業に追われて、時間がなくなり、全体の三分の二にしか、標識を付けられなかった。段ボール箱は山のように積み上げるので、特にその山の下の箱には、なかなか付けられなかった。しかし、この点は引越し屋さんの方が上手で、運ぶ途中に「これは『台所用品』とあるので、ですよね」、「とあるから、旦那さんの部屋に持っていきます」などと、ちゃんと整理してくれた。

(5)引越しの2日前に、家内には不忍池のちょうど対岸にあるホテルに滞在してもらい、主のいなくなった介護ベッドを業者に頼んで新居に動かしてもらった。その前に、ニトリから電動ソファとテーブル・椅子が届いた。この3つを入れると、狭くなった。同日、65インチのテレビとテレビ台、それに冷蔵庫が届いた。テレビ台は、一番コンパクトなものにしたので、それほど圧迫感はない。大きな地震の時にも倒れないそうだ。テレビを据え付けるのに際して「ケーブルはあるか」と聞かれ、「そんなものはない」と答えると、6,000円で買わざるを得なかった。しまった、、、あの白いケーブルを持ってくればよかった。

 それやこれやでセッティングが終わり、テレビをつけてみると、綺麗に映る。有機液晶だから、黒い部分がくっきりとしている。これはソニー製だが、前のテレビはシャープの「亀山モデル」で、27年間もちゃんと映っていた立派な製品だった。捨てるには惜しかったが、あと何年映ってくれていたかわからないので、仕方がない。

 冷蔵庫は、所定の場所にぴったりとはまった。前の冷蔵庫と比べて、何かすっきりとしたフォルムと内装だ。これも買い替えて良かった。その隣に置く台所のボードは、1週間遅れで着いたが、これも計測した通りに収まった。壁も冷蔵庫も台所のボードも全て白色なので、清潔感がある。ここまでは、高級ホテル並みだなと悦に入っていたが、その後、冷蔵庫にマグネットでカレンダーやらラップフィルム入れなどをペタペタ張ったら、急に所帯じみてきてしまった。

 その日のうちに、電気、ガス、電話とインターネットを開通させた。前の2つは東京ガス、残る2つはauに頼んだので、楽だった。なお、水道は、電話しただけで、引越し前日にはもう開通していた。


8.引越し当日と追加の粗大ゴミ

(1)隆星引越しセンター

 引越し屋さんは、午前8時から10時までの間に来ると言うので、荷造りしながら待っていたら午前9時ちょうどに来てくれた。たった二人で大丈夫かなと思っていると、特にリーダー格の人がものすごい。一人で軽々と冷蔵庫や大型家具を持ち上げたかと思えば、段ボール箱を幾つもつかんで、さっさと運び出す。それも、飛ぶような速さだ。あの痩せた身体で一体どこにあれだけのエネルギーがあるのか不思議である。これは、「隆星引越しセンター」というよりは、「流星引越しセンター」だ。

 そんな調子で約2時間、あっという間に片付けてしまった。そもそも、古くなった家具の大半は粗大ゴミとして捨てて、ごく一部だけ、新居に持って行く方針だった、ところが、電機製品のうちテレビと冷蔵庫は家電リサイクル法(特定家庭用機器再商品化法)の対象なので、自分で処理するのは面倒くさい。たまたま、テレビは27年間も使った年代物だし、冷蔵庫は新居で使うには横幅が2センチ大きすぎる。だから、前にも述べたように、この二つは新品を買う時の下取りとして、電気屋さんに持って行ってもらうことにした。でも、新品が届くまでの短い期間は使いたい。要するに、この二つと、引き続き使う洗濯機は、新居に持って行く対象とした。

 ただし、テレビの下のコンポーネントステレオは、粗大ゴミとするので、テレビと分離しなければならない。ところが、両者は固定されていて、そう簡単には外れない。私は、外し方を考えあぐねていたら、リーダーがやって来て、わかりにくい所にあったネジを2本外して、あっという間に分離させてしまった。まさにプロの技、凄いとしか言いようがない。

 そうかと思うと、洗濯機を外して洗面所から持ち出すのだが、洗濯機がドラム式だったため、その前面が丸く出っ張っていて、その僅かなところがドア枠に引っかかる。ほんの数ミリだ。私が、「引き戸を外したらどうですか」と言うと、「いやこれは外せないタイプです」という答えが返ってくる。結局、いったんは中へ入ったのだから出せるだろうと、やや無理して出すことにし、私がドアを押さえている間に、出すことができた。傷もつかなかった。もはや神技だ。感心することしきりである。

 このリーダーは、なかなか味のある人だ。一仕事のあと「ゆっくりしていきますか」と声をかけると、「昔は、仕事が終わったら、お客さんと一緒に食事したりしていたのですが、今は1日に何件も手掛けるから、そんなことはできないんですよね」とか、「本当は、この洗濯機をセッティングする仕事も、そのお客さん次第で『ああーっ、この水栓が左を向いているタイプは、特殊だから私たちにはできないんですよね』などと適当なことを言って断るのですけどね。今日は、やりましょう」と言ってくれる。どうやら、私に親しみを覚えてくれたようで、内心、笑ってしまった、

 それやこれやで、午前9時から午後1時半までかかったが、引越しは終わり、リーダーはまたトラックに乗り、顔を引き締めて、次の現場に向かった。私は、トラックに向けてお辞儀をし、手を振るしかなかった。

(2)実は、引越しの過程で思わぬものが出てきたりして、追加的な粗大ゴミ収集を申し込まざるを得なかった。あれだけ緻密に計画したのに、追加の数は30品目もある。これは困った。3回分にもなるではないか。当初は1月26日に3回分申し込んでいたのだが、品目の追加や数の変更で次から次へと変わるので、そのたびに、収集日が先延ばしされて、実際の収集はかなり先になり、結局、2月13日、16日、26日になってしまった。引越しの日から1ヵ月も先ではないか・・・仕方がないので、これらは収集の日まで残置しておくことにする。内訳は次の通りだ。なお、このほかにパソコンも出てきた。これは小型家電リサイクル法の対象であるのみならず、ハードディスクの消去をしないといけないので、その処理を手掛ける専門の会社「リネット・ジャパン」に送って有償で処理してもらった。

第7弾(2月13日)
 (1) ラジカセ
  @400円(A券 2枚)×1点 計400円
 (2) 額縁
  @400円(A券 2枚)×3点 計1200円
 (3) 箱物家具(高さと幅の合計が135cm未満)
  ⇒桐箪笥2
  @400円(A券 2枚)×3点 計1200円
 (4) テーブルの天板(ガラス製で最大辺1m以上)
  @1200円(B券 4枚)×1点 計1200円
 (5) ミシン(卓上式)
  @800円(A券 1枚、B券 2枚)×1点 計800円
 (6) 座いす
  @400円(A券 2枚)×1点 計400円

第8弾(2月16日)
 (1) カセットコンロ(卓上用)
  @400円(A券 2枚)×2点 計800円
 (2) 米びつ
  @400円(A券 2枚)×1点 計400円
 (3) 箱物家具(高さと幅の合計が135cm未満)
  ⇒灰色のプラスチック箱
  @400円(A券 2枚)×4点 計1600円
 (4) テニスラケット
  @400円(A券 2枚)×2点 計800円
  ⇒野球バット
 (5) ホットプレート
  @400円(A券 2枚)×1点 計400円

第9弾(2月26日)
 (1) 風呂ふた
  @400円(A券 2枚)×1点 計400円
 (2) 碁盤・将棋盤
  @400円(A券 2枚)×1点 計400円
 (3) ごみ箱→台所にあったもの
  @400円(A券 2枚)×1点 計400円
 (4) 箱物家具(高さと幅の合計が135cm未満)
  ⇒台所の調味料台と接続機器が置いてあった台
  @400円(A券 2枚)×2点 計800円
 (5) 板類一束 ガラス板 鉄板類除く
  @400円(A券 2枚)x2点 計800円
 (6) 突っ張り棚
  @400円(A券 2枚)×1点 計400円
 (7) 掃除用具
  @400円(A券 2枚)×1点 計400円
 (8) 鉄製の棒
  @400円(A券 2枚)×1点 計400円
  ⇒台所とリビング間のスクリーン



9.引越し直後の出来事

(1)引越しの直後は、新居のあちらこちらに積み上げられた段ボール箱の山を前に呆然としていた。しかし、千里の道も一歩からだとばかり、最初の段ボール箱を開く。すると、思いのほか簡単に片づけられた。よしよし、この調子だ。そうやって台所に積み上がった段ボール箱は順調に片づけていった。というのは、台所の流しの下や、新しく買った台所のボードの中に収納することができるからだ。ところが、私の部屋の私の下着などは、ベッドが来るまでは、ひとつも片づけられなかった。つまり、このベッドには収納する引き出しがついていて、箪笥並みの収容力があるというのが売りである。だから、これがないと片づけられないからだ。そのうち数日して、そのベッドが到着し、やっと収納することができた。これでかなりすっきりした。

積み上げられた山のような荷物にしばし呆然


 ベッドといえば、これが来たおかげで、私が寝ていた布団が不要になる。これらと、予備のために持っていた余分な布団をまとめて、台東区の粗大ごみ回収に出すことにした。7つもある。それに、新居では不要になった余分なスノコも捨てよう。ということで、第10弾となるが、これについて申し込むと、かなり先の2月21日になった。なお、スノコは板類で、一つにつき5枚までだそうだ。ああ、細かい、、、細か過ぎるルールである。それでいて、妙なところで大雑把なのだから、利用者が混乱するのは当たり前だ。

第10弾(2月21日)
 (1) 布団
  @400円(A券 2枚)×7点 計2800円
 (2) 板類(ガラス板 鉄板類除く)(対角1m以下は5枚まで)
  ⇒スノコを5枚と3枚の二組に分ける
  @400円(A券 2枚)×2点 計800円

 かくして、数日が経過すると、段ボール箱が目に見えて減ってきて、だんだん普通の暮らしができるようになった。そういう段階で、息子一家を呼ぶことにした。新居の鍵も預かってほしいからだ。そこで更に力を入れて段ボール箱減らしに務めて、目に見える所からはなくしてしまった。よしよしと、、、そこで、引越しの日の次の週の日曜日に来てもらった。

 新学期から小5と小1になるこの姉と弟は、手作りのお土産を持ってきてくれた。姉はなかなか凝ったお花の造花である。弟のは一見してわからなかったので、「これは何かな?」と聞くと、ホットドックだそうだ。なるほど、確かにそれらしいと笑ってしまった。それにしても、食い意地が張っていると、また笑う。

孫たちのお土産


窓からの眺望
 そして二人は、居間に入るなり、「ウァー」と歓声を上げて窓辺に駆け付けた。そして、真下に見える上野動物園のキリンやフラミンゴ夢中で見入った。息子たち大人は、真正面に見える東京スカイツリーの雄姿に感動していた。それから子供たちは、家中を探索し始める。すべての部屋に入り込み、引き出しがあったら引き、ドアというドアを開け、お風呂にまで入り込んだ。

 息子の奥さんは、台所のシンクの所で「ああ、これ、家と同じです」と言うので何かと思ったら、生ゴミ処理用のディスポーザーだ。私も初めて使うので、これは好都合とばかりに、使い方を教えてもらった。要するに、蓋をひねると回転し、それと連動して水栓から自動的に水が出てくる。なるほど、教わって良かった。

 午後3時を回った頃、下の男の子(直系くん)が、やや照れながら「お腹すいた」と言うので、笑ってしまった。そういえば、おやつの時間だ。そこで「よしよし、待っていてね」と言って、「カレーライスを食べる?」と聞いた。すると、二人揃って首を縦に振る。なんと、孫娘ちゃんもそうなんだ。そこで、レトルト食品のカレーをひと箱出してきて、それをお湯で温めると同時に、これもレトルトのご飯のパックを出してきて、電子レンジで加熱した。それを2つに分けて、二人の子供に食べさせた。

 すると、「辛い、辛い」と言う。私は「これは元々、大人用として買ってきたので、残念ながら『中辛』なんだよ、『甘辛』でなくて、ご免ね」と言うと、直系くんが「これは、大人の『中辛』かもしれないけど、ボクにとっては『激辛』なんだよ」と答えるので、びっくりしてしまった。何と、この子の頭の中では、甘辛→中辛→激辛という方程式があって、しかもそれを子供と大人用にずらして考えられるようだ。成長著しく、これは頼もしいと考えた次第である。

 水をガブガブと飲みながらそれを食べ終わっても、直系くんは何かまだ手持ち無沙汰のようだ。「もう少し、何か食べる?」と聞くと、うなづいている。そういえば、冷凍庫の中に、焼き芋が入っていたことを思い出した。それを電子レンジで加熱して、ほかほかの状態にし、皮を剥いて、それを与えたら、これまた猛烈なスピードで平らげてしまった。いや、すごいなぁと感心していたら、孫娘ちゃんも台所を一周して、葡萄パンを見つけた。それで「これ、食べていい?」と聞くので、「どうぞどうぞ」と言うと、これまたむしゃむしゃと手早く食べてしまった。うーん。成長期だ。そういえば、孫娘ちゃんは、お母さんの背の高さに近づいている。二人とも、背が高くなることを心から祈っている。

 かくして、息子一家は風のように現れて、我が家にストックしておいた食べ物を食べつくして、あっという間に去っていった。これからは、この子たち用に、ちゃんとした食事を用意しておかないといけない。嬉しい悲鳴というわけだ。

(2)私は、旧居では洗濯機を取り囲むように、「ランドリーラック」を設置していた。これがないとタオルや洗濯ネットを置く所がないからである。旧居のそれは、洗濯機の上に3段の棚のある簡単なものである。ちなみに、その日の午後は、まさにその古いランドリーラックを解体して粗大ゴミに出す作業をしてきたばかりだ。

 新居でも、その洗濯機の周りに「ランドリーラック」を置くことにし、Amazonで買った。昔と違い、これを買うのにいちいちホームセンターに行くまでもないので、便利になったものだ。5千円台から2万円のものまで色々あるが、比較したが、どう見ても2万円の方がしっかりしている。横幅も合っている。川口工器 頑丈 ステンレス 棚 ランドリーラック(棚3段)という。

 ラックの両脇にある縦の枠と、それを繋ぐ棚の横1本の棒だけを付けて、取り敢えず洗濯機の所へ持って行った。すると、、、水道栓が邪魔して入らない。なんたることか。やむを得ず、三つ付けるはずの棚を一つだけ付けた状態で水道栓を何とか回避してラックの枠を押し込んだ。その状態で、残る二つの棚を付けていった。

 組立ての途中で、もしボルトを落としてしまったら、洗濯機を持ち上げないといけないので、それだけはないようにと、細心の注意を払いながら作業したつもりだが、ああ、、やっぱり落としてしまった、、、これは困ったと思って洗濯機と壁の隙間をのぞいてみたら、幸いにも下のパンまで落ちずに、途中で引っかかっていた。でも、こんなものどうして回収するのか、、、隙間は狭いので、手が入らない、、、と思っているうちに閃いたのが、赤いドライバーを使う手だ。このドライバーは、先端が磁石になっているから、もしかしてそこにくっついてくれるかもしれない。中指と人差し指の先端にドライバーを挟んで、それをボルトに近づけてみた。先端が触れると、ボルトがくっついてくれた。よしよしこの調子だ、、、そろーり、そろりと手前に持って来ようとしたが、途中で何かに引っ掛かる。それを慎重に避けながら、ようやく手元に回収できた。

 次の問題は、既存の水道栓に繋がる洗濯機のホースが邪魔で、このままではラックの枠が歪むことだ。仕方がないので、ホースを水道栓から外そうとしたが、あれあれ、、、外れない。あれこれやっているうちに、どういうわけかポロリと外れてしまった。自分でも、どうやって外したのか、全く説明できない。まあともあれ、外れたから支障なく枠が入り、うまく収まった。それで、先ほどのホースを戻すために水道栓に繋ごうとしたが、繋げない、、、いや、これは困った。これから洗濯したいのに、なんたることか、、、

 仕方がない。朝になって、近くの電気屋を呼ぼうかという考えが浮かぶが、面倒だとそれを打ち消す。ではどうするか、、、そうだ、インターネットで調べてみるかと思って検索窓に「洗濯機 ホース 水道栓」と打ち込んだ。すると、YouTubeの動画が出てきて、それを見てわかった。ホース側のボタンを下に下ろしながら押し込めば、よいのだ。やってみたら、すんなりと入り、動かしてみたら、問題なく給水された。もう、YouTube様々である。

(3)ガスを初めて使用した。ところが、火を止めたというのに、ピッピッピーと鳴って鳴りやまないのである。それも60秒ごとだから、うるさくてかなわない。何とか止めようと思ってインターネットで取扱説明書を検索して読んだのだが、原因がさっぱりわからないから、止めようがない。うーん、これは困ったと思って、電池切れかと考え、近くのコンビニエンスストアで単1電池2本を買ってきて、取り換えた。すると、2回ほど、まだ鳴っていたが、しばらくして止まった。おお、やはり電池切れかと思ったが、取り換えてもまだ鳴っていたのは気になったものの、ともかく止まったので、成功だと考えた。

 ところが、その翌日、ガスを使って再び栓を閉めたところ、また鳴り出したので、再び頭を抱えることになった。その日は平日だったので、そのメーカーのお客様センターに電話した。すると、オペレーターとのやり取りの中で、「栓はちゃんと閉まってますかね」と言われたので、そういえばと思って隣のガス栓の位置と比べてみたところ、私が使ったコンロの方が2ミリほど低い。これが原因かと思って、その栓を下まで押し下げると、隣のガス栓と同じ位置になった。幸いその栓の上にあるガス供給量のコントロールはゼロにしてあったから良かったものの、もしそうでなかったら、ガス漏れが起きるところだった。危ない。危ない。私は、取扱説明書など読まずに何でも操作するクセがあるが、それが裏目に出た感がある。

 お風呂の設備は、旧居と同じメーカーなので、全く同じ感覚でできるから便利だ。それに、浴室も浴槽も、一流ホテル並みとなったので、足を延ばして水槽に浸かることができる。これは嬉しい限りである。特にテニスの後は、ややぬる目のお湯に浸かって、身体を十分にほぐすことができる。引越しのおかげである。

(4)カーテンと照明について、詳しい記録を残しておこう。まずカーテンは、引越しの1か月前に、ニトリに行って頼もうとしたら、紙のメジャーを渡されて「これで自分で測ってください。時々、切れることがあるので、2本お渡しします」という。どうも、フックに引っ掛けて測るだけでよいらしい。それはご親切なのだが、面倒くさい。何でも自分でやる若者向けだ。さりとて既製品は、高い窓があるのでダメだ。それに、置かれているカーテンの種類が乏しくイメージしているカーテンとは違う。こう言うと申し訳ないが、仮住まいの部屋のイメージである。私の場合、「せっかくそれなりの額のお金を出すつもりなのに、これではなあ、、、」という気がして嫌気がさし、同じ新宿の大塚家具に行ってきた。

 こちらは、カーテン売り場は、なかなか充実していた。バラエティーに富んでいる。ヨーロッパ風のシックなものから、垢ぬけたモダンなデザインのものもある。これらの中から悩みに悩んで、とあるセンスの良い奥様が選んでくれたものにした。朝方の東の光が当たると綺麗だ言われたが、本当にその通りだった。職人に計測を頼んできた。

 すると職人さんが測りに来て、作業をし、帰って行った。「カーテンレールが緩んでいるから、施工の時に締めておきます」と言ってくれるなど、なかなかきっちりとした仕事ぶりだった。別の職人だが、実際に取り付けにきてみると、ピッタリだったし、カーテンレールもちゃんと引き継ぎされているらしくて、「聞いていますから」と言って直してくれた。ここに頼んで良かった。

 次に、照明の部門に行ったら、何か良くない予感がした。まず、展示されている照明が少な過ぎる。やはり、カタログに頼った販売だ。これなら、Amazonでも良かったし、その方が安い。でも、お店の人と相談しながら買いたいので、ここに来ている。

 ところがその販売員のおじさんは、どうにも頼りないのである。私が「これが良いのでは」と言う、「ああそうですね」と同調し、別のものを指差すと、それにも同調するという始末。これでは相談にならない。仕方がないので、自分で決めた。これなら、Amazonで買うのと変わらない。ただ、同じデザインで3つの部屋の大きさにそれぞれ合う照度のものにした。

 新居に照明が運び込まれたその当日のことである。3つの照明が全て同じ型番と荷姿のため、運び屋さん(大塚家具の人)に、どれがどれかと聞いても「私は運ぶだけですから、分かりません」と言う。これは困ったと思いつつも、中を開ければ分かるだろうと思って開けてみても、皆同じで、何も書いていない。仕方がないので、三つ全てを適当にセッティングして点けてみたら、二つの部屋は灯るけれど、一つの部屋は、全然点かない。これは、不良品を受け取ったかと思い、大塚家具に電話した。ところが、担当者がいない。

 代わりに出てくれた女性に事の顛末を説明すると、「その点かない照明の製品番号を知りたい」という。「どこに書いてあるのか」と聞くと、製品本体だと言う。面倒な、、、せっかくセッティングしたというのに、また外さないといけない。仕方がない。外してその番号を言うと、先方には分かるらしくて「ああ、それはいちばん小さな部屋ですね」とのこと。何だ、よりによって一番大きな部屋に取り付けてしまった。取り付け済の他の照明を調べると、見事に全部間違っていた。なぜ送付してくれる時に言ってくれないのか、本当に不親切な会社だ。でも、その点かない照明の代替品を送ってくれるという。ただし、その日は日曜日なので、手配は明日になるそうだが、まあ良い。しかし、考えてみると、照明が壊れている可能性のほか、スイッチが壊れている可能性もある。

 そういう事の次第を不動産会社に話した。すると、担当者が早速来てくれて、私が最初に付けた照明を点けようとし、それが点かないのを確認した。やはり、この照明が不良品ではないか。ということになった。それで、一緒に部屋を出ようとして、担当者が何気なく廊下近くの3つのスイッチを触ったところ、なんとまぁ、、、点かなかった照明が点いたではないか。最初からスイッチの位置を間違えていた。これでは点かないのは当たり前だ。すると、リビングルームで私が触っていたスイッチは何かというと、どうやらテーブルの上にあるプチ照明のものらしい。そこにはまだ照明を付けていないので、分からなかったのだ。非常に紛らわしい。
 念のため、点かないと思っていたその照明を別の部屋に持って行って点くことを確かめた。すぐに家具屋さんに電話して謝り、照明には問題がなかったと伝えた。でも振り返ってみると、この一件がなかったら、不適切な照明を不適当な部屋に付けていたので、家具屋さんを巻き込んで騒いだだけのことはあったと思う。

(5)そうそう。NHKには、ビックリした。どこでどうやって調べたのかはわからないが、引越しの翌日にはもう、私の部屋宛てに「受信料のお支払いはお済みですか」というハガキが来た。部屋番号だけ書かれていて、受取人は「記名なし」のものだ。素晴らしく効率がよいと感嘆する。しかし、一体どこから「誰かが住み始めた」という情報を得たのか、気になる。電気とガスの供給とインターネットの開始を頼んだauからか、それとも管理人からかに違いない。管理人なら氏名は知っているはずだから、やはりauか、、、それはともかく、放置しておくと面倒なことになりかねないので、インターネット経由で住所変更をしておいた。 

 電気屋さんがセッティングしてくれたおかげでテレビが使えて視聴しているのだが、衛星放送をみると、左下に邪魔な大きな表示が出てくる。せっかく受信料を払っているのだから、これを消したい。しかし、引越し直後でどうにも疲れていて、しばらくやる気が失せていた。

 引越しから1週間経ったので、ようやくやってみる気になり、テレビのリモコンを手にした。青いボタンを5秒押せというのでその通りにすると、昔で言うと、B-CASカードの情報が出てきた。その脇のQRコードを読み取り、NHKの画面を開いて、氏名、住所、電話番号、メールアドレスと、このカードの情報を入れたら、手続が終わった。信号を送るので、10秒間、NHKのBS放送にチャンネルを合わせよという指示があった。その通りにしてみると、邪魔な大きな表示は消えた。やってみると至極簡単なことだった。


10.引越しの後日談

(1)1月19日に引越しをしてから、ひと月が経った。昨年11月下旬から準備を始めたので、かれこれ3ヶ月もかかってしまったが、あと数日で最後の家具が来て、これで一連の引越し作業がお仕舞いになる。めでたし、目出度しというところである。

 振り返ってみると、まず何と言ってもあの膨大なゴミの山を、我ながらよく片付けられたものだ。古い家具に加えて45リットル入りのゴミ袋が100個以上もあったから、まるで、ゴミと同居していたようなものだと呆れるばかりである。

 断捨離の本の宣伝によると、衣類については、「買った時の経緯や値段に拘泥すると、いつまで経っても捨てられないので、今の時点でその服を見て、『胸がキュン』とするかどうかの視点で残すものを選べば良い」とある。

 でも、私の場合は、写真、勲章、卒業証書だけは別だが、あとは当面使わないものは、捨ててしまった。男と女の違いかもしれない。それにしても、買った物全てに「胸がキュン」となったらどうするのだろうという気もしないでもないが、やはり何らかの類型的な基準がいるのだろうと思う。もっとも、私の場合は写真だけはスキャナーでデジタル化してしまった。

 さて、今は窓の外のキリンさんやフラミンゴと、動物園を訪れている小学生の団体さんの黄色い帽子の群れを眺めて、ゆっくりとお茶を飲む。理想的な日々だ。東向きだから、午前中はカーテンを閉めないと眩しい。しかし、お昼以降は上野公園の緑や東京スカイツリーが日光を浴びて綺麗だ。引越ししてきて、本当に良かった。それにしても、引越しには膨大なエネルギーが必要だ。私には、まだ「体力」があって良かった。それに、たまたまタイミング良くこのマンションに巡り会って、「時の運」もあったのだろうと思う。それというのも、抽選に外れた湯島の新築マンションの購入話が引越しの導火線になったのだから、振り返ってみるとこの一連の流れは、全て無駄にはなっていない。世の中とは、面白いものだ。


(2)エアコンのリモコンには参った。元々は、不動産屋から「小部屋のこのエアコンは、残置物としますか? それとも撤去しますか」と聞かれたので、壁に掛かっていた日立製のリモコンを動かしてみたところ、ちゃんと動いた。本体の表示を見ると、9年目の製品だ。取替の時期ではあるが、引越し直後で面倒である。では、壊れたら取り替えればよいと思って、残置してもらった。

 そこまでは良いのだけど、ある日、帰ってみると、エアコンのリモコンがフロアに転がっている。どうしたのかと思ってリモコンがあった壁を見ると、石膏ボードにすり鉢状の穴が空いていて、ネジが1本、やはり転がっていた。なんとまあ、このリモコンにはフォルダーがなくて、ただ1本のネジに引っ掛けられて置いてあっただけなのだ。そのネジが落ちたら、リモコンも落ちるのは当然だ。では、どうするか。

 こういう場合は、Amazonを調べるほかないというわけで、日立のリモコンを検索してみた。すると、同じ型のものがあった。でも、それを注文したら、そのフォルダーが付いてくるとは限らない。いや、困ったなと思っていると、ELPAというリモコンのメーカーが、国内主要メーカー13社のエアコンに合うという製品を売り出していて、しかもその商品説明の写真にはフォルダーが付いているではないか、、、主なボタンの配置や色も似ている。22%割引の2,300円だから、そんなものだろう。ああ、これだと思って注文した。

 翌日、商品が届いて包装を開けてみた。単4電池を2本入れて、動かそうとした。ところが、設定が必要らしい。ボタンがそれぞれのメーカーに対応するように割り当てられていて、しかもいくつかのチャネルを順に試していかないといけないらしい。面倒だが他に方法はない。最初のチャネルはダメだった。しかし、次のチャネルでエアコンは動いた。「停止」ボタンで、ちゃんと止まる。これでよしと、、、その次は肝心のフォルダーを壁に取り付けないといけない。

 ネジのせいで壁に空いたすり鉢状の穴は、強力接着剤で埋めて、その痕跡を隠すようにフォルダーを付ける。そのせいで取付位置がちょっと高めになったが、致し方ない。固定には、2本のネジが必要だが、落ちたネジよりは小型かつ2本なので、フォルダーはしっかりと壁に固定された。リモコンを置いてみると、なかなかよろしい。これで、一件落着だ。


(3)私のベッドがある部屋が、どうにも乱雑なので気になる。それと言うのも、ウォークイン・クローゼットに入り切らない私の四季の衣類を、むき出しのハンガーラックに吊るしているからだ。それに、各種バッグや鞄を2段の安っぽい棚に置いてある。この棚は元々押し入れの中にあったものだから、外に置くと美観を損ねるし、このままだと空間が開きすぎてもったいない。この二つを合体できないかと探したところ、ディノスにそれらしきものを見つけた。

 頑丈ハンガーラック2段がけハイタイプというもので、幅91cm、奥行55cm、高さ220cmというサイズなので、置こうとする空間にピッタリの大きさだ。白い洗えるカバーが付いているから、それを閉めてしまえば中のものは全て隠れるし、ホコリも防げる。白いから圧迫感がない。というわけで、それを注文した。でも、これが来るまでにウォーキング・クローゼットの中のものを整理するか、あるいは使わない季節のものを洗濯屋さんに預かって貰う必要がある。

 さて、使わない季節のものを整理し、ハンガーラックが余った。これらをどうしようと思って、倉庫を覗いたら、段ボール箱を二つほどどかせば、入りそうだ。やってみたら、残念ながらあと5cm分、はみ出てしまってドアが閉まらない。いやこれは困った。このハンガーラックは高さは調節できて90cmまで低くできるが、土台は調節できない代物だ、、、さりとて、捨ててしまうのは、いささか躊躇うものがある。そこで、やむなく段ボール箱を全部取り除いて、そこにハンガーラックを置き、それを土台にして段ボール箱を積んでいった。こうすると、衣類をハンガーラックに仕舞うことはできないが、これを捨てるまでもないことになる、、、というわけで、まるで綱渡りのようだけど、それなりに収まってしまったから面白い。


(4)あらら、また問題が起きた。このマンションに越してきた時、洗濯機は新たに買わずに、以前から使っていたものをそのまま持ち込んだ。日立製のこの横型ドラム式洗濯機が優れているのは、洗濯と乾燥まで一気にやってくれて、しかも乾燥後は、ほとんどそのまま収納できる、つまり干す必要が全くないのである。これは、マンション暮らしには誠に有難いもので、正に必須の機能といえる。もちろん、洗濯物が多かったり、冬の季節などは、生乾きという場合もあるにはあるが、その時はお風呂の乾燥機能で十分に乾かせるので、大丈夫だ。

 そういう便利な機械なのだが、昨日まで順調に動いていたかと思ったら、ある日、突然、異常が生じた。洗濯が止まって丸い蓋をあけると、びしょびしょなのである。さては、排水が上手くいってないのかと思い、排水栓に手を伸ばすと、廃水が出てきて下のバンが水浸しとなった。併せて、下水の臭いが立ち込めた。慌てて水を拭い取り、どうしたものかと考えを巡らせた。これは自分の手に余るから、ネットで公開されている取扱説明書をみて、その連絡先を調べ、修理を依頼した。日曜日だったが、二日後の火曜日に来てくれることになった。毎日使っているものだから、早く来てくれるのは、本当に有難い。

 来てくれるまで、どうしたものかと思ったが、洗濯物の量が多かったかもしれないと考え付いた。事件が起きた時の洗濯槽の7割から8割というのは、いかにも多い。それを3割ほどにしてやってみたら、なんの問題もなく洗濯と乾燥まで終わった。それを3回ほど繰り返して、いずれも大丈夫だった。

 さてはこれかと思いながら、日立家電の方が来る日となった。実直そうな人がやって来て、毛布様の布を敷いて、チェックを始めた。まずは前面下部のカバーを取り外す。そして、「確かに、水が漏れた跡がありますね」と言う。そして洗濯槽のホースとバンの排水口が繋がっているのを確認し、洗濯機を動かし、あれこれやってくれた。そして曰く「何らかの『詰まり』が原因と思われますが、その後3回動いたということは、それが流れて行ったものと思います。ですから本日は、出張費の3,850円だけをいただきます。もし何かあったら、また呼んで下さい」

 私が「どこか掃除をしないといけないんですかねぇ」と聞くと、「洗濯槽のクリーニングを、お勧めします。最近、されましたか」と言うので、「いや、家内の体調が悪くて、少なくともこの数年は全くしてません」と答える。そうすると「あれは3ヶ月おきにするのを推奨してます」と言うので、ビックリすると同時に、これが原因かと気が付いた。

 直ぐにAmazonで専用のクリーニング剤を購入し、11時間のコースを走らせた。すると、もの凄い塩素の臭いが立ち込めた。これは相当なものだ。廊下にも漂ってくる。自分が寝ている部屋のドアを閉めた。11時間は相当長かったが、時間が経つのを待ったところ、ようやく朝方に終わった。それからはこの洗濯機を普段通りに使っている。


(5)しばらくするうち、トイレの蓋の脇に赤ランプが点滅しているのに気が付いた。傍の説明を読むと、設置後10年を経過した時に点滅するので、保守点検をするようにとのこと。全くご丁寧な機械である。その書いてある電話に掛けたところ、リクシールの人がやってきた。そして、「20分から30分ほどかかります」と言ってトイレの機械にパソコンを繋ぎ、点検を始めた。

 何十項目もの点検をして、「大丈夫です。どれも正常に作動しています。赤い点滅は消しておきます」と言い、9,600円余りを請求して、帰っていった。一体、何だったのだろう、これは、、、私が甘いのか、それともリクシールが上手なのか。


(6)今度は、浴室の乾燥暖房換気扇から、ポタポタと水滴が垂れるようになってきた。そんなに頻繁ではないし、真下が浴槽なので、当面は実害はない。もっとも、洗濯乾燥機を動かして、乾燥がもう少し足りないなと思う時にはこの浴室の中に干すので、そうすると洗濯物を置く位置によっては洗濯物が濡れてしまうことになる。だから、この際、取り替えてもらうことにした。保証期間は10年で、過ぎてしまっている。確か前のマンションでも、修理を繰り返して、とうとう20年経って取り替えたことを思い出した。仕方がない。

 これには連絡先が書いてないので、マンションの管理室経由で、住友不動産お客様サービスに繋いでもらって作業を依頼した。そうすると、ニチエネという会社の人がやってきて、「これは、松下の製品で、東京ガスが取り付けたものです」と言う。私が「なぜ東京ガスが?」と聞くと、「これにはミスト機能が付いていて、そのため温水の配管があるからです」と言う。私が「ミスト機能はいらない。あんな細かなミストが肺の中に入ると、健康に悪そうだ。暖房と乾燥だけでお願いします」と頼むと「はい。それでは、そうします。お客さんの中で、『ミスト要らない』という方が約半数はいらっしゃいます。これは、脱衣場とトイレにも繋がるタイプですから、、、3室用ですね。リクシール製とリンナイ製なら、当社で用意できます」というので、ノーリツを頼むことにした。

 その作業員がカタログを示してくれて、製品名は、BDV-4106AUKNC-J3-BLというもの。希望小売価格は、194,040円とある。これは、相当高いのではないか。機械自体は、単に乾燥、送風、暖房に過ぎない。決して高度なものではない。これに作業代を入れれば、20万円を越すではないかと思っていたら、作業員が渡してくれた打ち合わせ記録なるものを見ると、機械代が117,000円とある、、、どうなっているのだろう。結局、170,500円でやってくれることになった。しかし、、、それでも、高い感覚が残る。

 昔の記録を引っ張り出してみると、あった、、、2016年3月31日に、三菱電機製の風呂場乾燥換気扇V130BZE2というものを取り替えている。部品代は110,000円で、これに作業代や消費税として30,000円を加えて、請求料金は140,400円だ。これは17年前のことだから、今回の170,500円というのは、まあそんなところなのかなと納得した。それにしても、色々と壊れたりするものだ。

転居に際して購入した家具など


転居に際して購入したルンバ コンボ j7+




(令和5年1月31日著。3月10日、6月27日追加)
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悠々人生エッセイ





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