悠々人生エッセイ



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 大谷石と餃子と葡萄( 写 真 )は、こちらから。


 宇都宮市の山中にある大谷資料館に行ってきた。いうまでもなく、建築材料である大谷石の産地に出来た展示施設である。そのHPの説明によれば、

採掘地下坑入口


 「大谷石とは、栃木県宇都宮市大谷町付近一帯から採掘される、流紋岩質角礫凝灰岩の総称です・・・一般の人々の目に触れることなく『未知なる空間』と呼ばれた、地下採掘場跡。その広さは、2万平方メートル、深さは、30mにもおよびます。石肌には、手堀り時代のツルハシのあとが残り、ずっしりと年輪の重さを感じさせ、地下の巨大建造物を思わせる景観は、この地ならではの圧巻です。また、この巨大地下空間ではコンサートや美術展などが開かれたり、地下の教会として利用されるなど、イベントスペースとしても注目を集めています。この『未知なる空間』を、公開しております」ということである。

大谷石地下採掘場跡


 実は、北陸地方にある私の実家は、半世紀前に建てられたものであるが、家の周囲にある塀は、この大谷石でできている。やや薄緑の味のある色をしていて、特に雨が降るとその緑色がますます濃くなって、綺麗だなぁと思っていた。

 ところが、築後30年ほど経つと、そんなことをいっておられなくなってきた。大谷石は凝灰岩なので、水を吸って膨れて来たのである。特に二つの塀が交わる角の部分の上部が外へと張り出してきた。このままでは、地震の時などに外側に倒れて通行人に危害を与えるおそれがある。そこで、工務店に頼んで修理をした。

 しかし、事はそれでは収まらなかった。それから更に10年ほど経ったとき、冬に屋根に積もった雪が自然落下して、それが大谷石の塀を直撃し、塀が崩れてしまったのである。幸い、一人住まいだった母がたまたま不在だったので良かったものの、もし在宅していたら、大きな音がして驚いたはずだ。

 ということで、塀といえば、単なるコンクリートブロックを積上げたものという時代から、このように薄緑色で品の良い大谷石を使った時代へとなったのであるが、大谷石は、元々は凝灰岩なので、崩れやすく雨に弱いという致命的な欠陥がある。これが大谷石を長年使ったときの大きな欠点である。

大谷石地下採掘場跡


 再び、先ほどのHPに戻ろう。「採掘が本格的に始められた江戸時代の中頃から、機械化になる1960年(昭和35年)頃までの道具といえば、数本のツルハシ類と、石を運ぶときに使われた背負子ぐらいしかありません。ここでは採掘の方法、道具などを中心に構成しました。当時の苦労の様子がしのばれます。

 大谷石の採掘方法には、『平場掘り』と『垣根掘り』という2つの掘りかたがあります。この2つの採掘方法を組み合わせ、『露天掘り』、『 坑内掘り』というような採掘場の形態がみられ、採石が行われています。

 手堀り時代には、150kgもある石を1本1本背負って、採掘場から運び出していましたが、機械化後の現在では、モーター・ウインチにより、巻き上げられています。輸送方法も、筏、馬の背中、馬車、トロッコから、鉄道やトラックへと変わり、今ではほとんどトラック輸送が中心です。現在では、色々な採掘や裁断が機械で出来るようになり、大谷石採掘に産業革命というべき、一大変革をもたらしました」
とのこと。

 いま見ているこの地下空間は、高さは30m、広さは2万m2で、野球場が一つ入る大きさで、1919年から86年までの約77年間に渡って採掘され、累計1,000万本もの大谷石が切り出されたそうだ。私の塀の大谷石は、ここから来たに違いない。いわば、実家の塀の故郷というわけだ。そう思うと、親しみが湧く。

大谷石地下採掘場跡


 ちなみに、この地下空間の気温は12度で、猛暑の炎天下から来た身には、とても涼しく感じた。また、この独特な景観を活かして、映画の撮影などが行われているそうだ。結婚式を挙げる人もいるようである。

 この大谷資料館に行こうとして調べてみたら、東北新幹線を使って宇都宮まで行ってそこから路線バスで資料館へ行くことになる。東北新幹線は片道4,500円もかかる。往復だと9,000円だ。いささか高い上にその次に乗る路線バスでは時間が有効に使えないと思っていたら、東京から9,800円のバスツアーがある。新宿発で、寝ていれば連れて行ってくれるらしい。ということで、これにした。

宇都宮「来らっせ」


宇都宮「来らっせ」


 すると、このツアーには、宇都宮で餃子を食べて、しかも梨狩りと葡萄狩りが付いていた。そこで、全く想像もしていなかったが、宇都宮で「来らっせ」という餃子の食べ比べができるお店に入り、「さつき」というお店で餃子を食べた。餃子をいただくなんて、何十年ぶりだ。お味は、まあそれなりに美味しかったが、それよりLINEで順番待ちの番号を管理していたのが目新しく感じた。こんなことも出来るのかと、驚いた次第である。時間が余ったので、それから、目の前の「二荒山神社」の長い階段を登って、お参りをした。なかなか風格のある社であった。

葡萄ピオーネをひと房、切らせてくれた


マスカットのタルト


 梨狩りは、もう季節が終わって、ただお土産に2個いただいただけ。でも、葡萄は、ピオーネをひと房、切らせてくれた。ぶら下がっている袋に透明な窓が空いていて、熟し度合いが一目でわかった。なかなか良いアイデアである。そこの売店で、マスカットのタルトを食べたら、まあその美味しかったことといったら、なかった。





(令和4年9月17日著)
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