1.花を愛でる年齢になってしまった
若い頃の私は、花にはあまり関心を持たなかった。ところが50歳を過ぎる頃から(あまり言いたくはないが)年齢のせいか、季節ごとに移り変わる花や木の葉が美しいと思うようになった。私の住んでいる東京の下町・谷根千では、家々の軒先に様々なお花が植えられていたり、加えて4月は播磨坂や小石川植物園の桜、5月は根津神社の躑躅、6月は白山神社の紫陽花、7月は不忍池の蓮、10月は古河庭園の薔薇、11月は六義園の紅葉に湯島天神の菊、12月は東大本郷の銀杏の黄葉と、花ごよみができるほど豊富に花があるのが幸いしている。
私の父も、退職後は、庭にいろいろな木々や花々を植えてそれを写真に撮ったりして楽しんでいた。春は桜と木蓮と躑躅、秋は子供の頭ほどもある実に立派な菊である。父がばりばりのビジネスマンであった頃のことを思えば本当に大きな変わり様である。私も、父の足跡を踏襲しているようだ。ただ、自分で育てないで、写真を撮って済ませるというのが、私らしい。
2.若くとも熱帯の花と果実には感激
それはともかく、若い頃の私でも、実はこれは綺麗だと感激した花々がある。それは、熱帯地方の植物である。とりわけ東南アジアのマレーシアで暮らした経験があるので、そのときの熱帯の花々と果実に対する印象は強烈である。一年中じりじりと焼き付ける太陽の下で咲き誇る原色そのものの花は、その形と色だけをとっても、日本にいてはなかなか見られない風物である。いや、今や正確には「見られなかった」というべきか、ごく最近では、運送技術が進んで、日本の花屋さんの店先にも並ぶようになったし、通販でも簡単に手に入る。
ただその時分は、熱帯の花といえばブーゲンビリアやオーチャード(蘭)程度しか知られていなくて、まだ日本ではさほど一般化していなかった。だから私はクアラルンプールで住みはじめたとき、家の庭先にある色とりどりの花々に驚いた。ちょっと背伸びをして借り受けたその家は一軒家で、25メートル四方の前庭が付いていた。もちろん庭には芝生が敷き詰めてあったが、周囲は生け垣となっており、その内側に様々な花と木が植えてあった。その木とは、ランブータンが生る木である。「ranbut」というのはマレーインドネシア語で「髪の毛」という意味で、直訳すると「髪の毛のようなものが付いている果物」ということになる。
年2回あるその実が生る季節になると、木にはいっぱいランブータンの赤緑の実が生る。薄い緑の本来の色にやや赤みががった小型の果物で、周囲には確かに髪の毛のようにもじゃもじゃと巻き毛のようなものが生えている。最初は、こんなもの食べられるかと思ったほどであるが、その毛のようなものが付いている表皮を手ではがすと、白い実が現れる。それは薄茶色の大きな種を包んでいるが、その周辺の白い部分はほんのり甘くてしかもなかなかジューシィでおいしい。ちょうど、中国南部のライチーの実と似ている。外見は全く違うが、皮をむくと同じような中身が出てくる。これは私も好きで、ときどき庭に行っては枝を折ってきて、食べたものである。ただ、これは木によって甘いのとそうでないのとがあり、特に玄関の門の脇にある木が美味しかった。
そのほか、庭の生け垣の周囲には、赤や白、そして黄色の花が咲いていた。あるとき、日本の椿のような白い見事な花が咲く小木を眺めていた。そのうち、何か変な気がしたのである。それもそのはずで、よくよくその木を見ると、一本の木の中に、今は盛りと咲き誇っている花、萎れかかっている花、すっかり萎れてしまった花、それと花の蕾が同居しているのである。つまりその木は、日本の花のように季節を限って一挙に咲いてほぼ同時に枯れるのではない。それどころか年がら年中花を咲かせているために、一本の木の中でいろいろな状態の花の姿を同時に見せているというわけである。まるで、人間界と同じだと思った。ところ変われば、花も変わる。
しばらくして、私は花の名前が知りたくなった。そこでインド人の庭師をつかまえて聞いたが、何も知らない。ある夜、たまたま現地の知識人を家に招いたので、庭の黄色い花を指さして「あの花は、なんという名前ですか。あちこちでよく見かけるけど」と尋ねた。するとこの人は、「Oh! Yellow Flower」と言った。私は一瞬「何だ、黄色い花だから、 Yellow Flowerなのか、単純なネーミングだな」と思ったが、もしかしてという気持ちが働いて、その隣の赤い花を指さして同じ質問をした。すると彼は悪びれる様子もなく、「Oh! Red Flower」と言うではないか。聞いて損をした。
要するに、現地の人で花の名前などに関心を持っている人は、ほとんどいないのである。赤や白や独特の形で美しければ、名前などは何でもいいのである。こんなことで、普通の人が図鑑を買ってきたり、図書館に行って調べるなどというのは、彼らの想像もつかない行動なのである。日本人の潔癖性と探究心の現われなのかもしれない。
3.主に国内で写真を撮りためる
そうした花を写真に撮ったりはしたのだが、昔のことだから残念なことにカメラの性能が今ひとつだった上に、30数年の間にフィルムが劣化していて、当時の写真はほとんど使えない。そこで、その代わりに、最近のデジタルカメラで主に国内で撮った写真を整理しておくことにした。撮った場所は、神代植物公園、夢の島熱帯植物館、板橋熱帯植物環境館、川口グリーンセンター、ペナン植物園、そしてご近所の谷根千である。
それでは、そうやって撮りためた「熱帯の花々(写 真)」コレクションの写真を、順にご覧いただければ幸いである。
(1)ヘリコニア
この花は、今から30数年前、クアラルンプールにある大使公邸の玄関先に、1メートルほどの長さで、ぶら下がっていたのを見たのが最初の出会いである。ヘリコニアの中でもロストラータと言われるこの種は、まるでザリガニの爪が繋がってぶら下がっているように見える。これを初めて見たときは、誰しもがその妙な形と赤と緑と黄色の組み合わせにほれぼれとして、しばし見入ってしまうだろう。私も例外ではなく、その姿が実に面白くて、また美しいと思った。
実はこれも、シャルケシアというヘリコニアの一種で、ペナンの極楽寺を訪ねたときに、ある門の脇に植えられていたものである。
(2)ストレリチア(極楽鳥花)
1998年2月に、私が南アフリカのプレトリアにあるヒルトン・ホテルに宿泊した時、その玄関先に、熱帯の鳥とそっくりな形の花がたくさん生けられていて、目を奪われた。鮮やかなオレンジ色の羽のように見えるのは萼で、青いのは花弁だそうだ。これらが合わさると、まるで鳥が羽ばたいているように見えるではないか。世の中に、こんな鳥そっくりの花があるのかと、まだ若かった私は感激した。珍しい花だと思っていたら最近ではそれがどんどん輸入されるようになって、ご近所にも植えられている。
(3)釣浮草と小海老草と浮釣木
釣浮草(ツリウキソウ、正式にはフクシア)は、どう見ても釣りをするときの浮きを連想するし、小海老草(コエビソウ)は、エビのような外観をしているし、浮釣木(ウキツリボク、正式にはアブチロン、通称チロリアンランプ)は、どれも個性的で誠に面白い。しかも、ご近所で何食わぬ顔でごく普通に咲いているのが、これまた愉快だ。
釣浮草は、この赤紫色と紺色の組合せが最もよく見かけるが、他にもピンク一色とか、八重のようになっているものとか、色々ある。以前、松江フォーゲルパークに行ったときには、様々なフクシアの鉢が天井から吊り下がっていた。
小海老草も、ご近所によく植えられている。よく見ると、花の咲き始めの最初の頃は、色が薄い。しかし、日が経つにつれて次第に赤く色づいてきて、しまいには茹で上がったエビのような形になる。
浮釣木は、またどうしてこんな形の花が出来たのかと、全く不思議に思うほどである。赤いランプシェードの先に黄色いスカートをはいているその姿に、チロリアンランプという名前を付けたのは、まさに言い得て妙だ。
(4)プルメリア
プルメリアは、実に美しい花だと思う。5枚の花びらがあたかも船のスクリューのように軽く捻れている。その色も、白と黄と赤が柔らかなグラデーションを作っている。一つの花だけでなく十数個のこんもりとした花の塊も綺麗だ。香りも非常にエレガントである。
ハワイの「レイ」に使われていたし、ラオスの国花でもあり、バリ島では寺院に供えられる花である。しかし、どういうわけかマレーシアでは墓地や幽霊を連想する花となっていて、イメージはよろしくない。
(5)山丹花(イクソラ)
マレーシアでよく見かけたのが山丹花で、あちこちに自生している。低木であまり高くならないし、年がら年中咲いているので、街路樹や一軒家に植えられていることが多かった。花の先が尖っているのは「イクソラ・コッキニア」、花の先が丸っこくなっているのが「イクソラ・キネンシス」である。ほとんどが赤い花だが、たまに黄色い花を見かけたことがある。
(6)砲丸の木
砲丸の木は、実に不思議な花である。高い木から紐のようなものがあちらこちらに出て、その先にこんな姿の花が咲く。しかもこの花が実になると、直径20センチもの巨大な茶色いボールとなる。まさに、キャノンボール(砲丸)なのだ。しかし、臭くて食用にはならないという。この写真はペナン植物園のもので、ほかにカンボジアの王宮やタイのハートヤイでも見かけた。日本では、京都府立植物園の温室にあるらしい。
(7)ブーゲンビリア
花が小さめなので、遠くから何か咲いているということしかわからないが、近づくと、「なーんだ、ブーゲンビリアか」というわけで、あまり記憶にとどまらないという損な役回りの花である。しかし、高速道路の中央分離帯や大きな庭の花としては欠かせない。何よりも全体として美しいし、もちろん年中咲いていた。
(8)エンジェルズ・トランペット
これは、エンジェルズ・トランペットで、日本では木立朝鮮朝顔と言われる。下向きに咲き、花の色は黄、ピンク、白である。夕方から夜にかけて、すごい香りを放つ。嗅ぐと頭がクラクラするくらいだ。ペルーに行った時、これが咲いていると思ったら、どうリで中南米原産とのこと。ただし、インド原産という説もある。有毒で、食べるとおう吐、けいれん、呼吸まひなどを起こして、死ぬこともあるそうだ。
(9)燭台大蒟蒻
ショクダイオオコンニャクは、インドネシアのスマトラ島の熱帯雨林にのみ自生し、高さが3メートルに達する大型の植物である。花が咲くのは最短でも2年に一度で、それもわずか2日間だけ、しかも咲いた時には非常に強烈な腐臭を出す。
私の家からそう遠くない東京大学小石川植物園で咲いたという報道があったので、早速駆け付けて撮ったのがこの写真である。我ながら物好きだと思う。確かに酷い臭いがした。
(10)ハイビスカス
ハイビスカス(仏桑花)は、その色といい形といい、いかにも南国の花である。昔はハワイや東南アジアのどこにでも見かける花で、沖縄にもあったなどとと感激していたものである。それから30数年経つと、それどころか最近では、東京のご近所でもあちこちで見かけるようになった。
いかにも南方の花という感じで、優雅さと気品を感じる。だから、人々に愛されるのだろう。色も、濃い赤、白、ピンクからこれらが交配した混ざったものまで多種多様である。5枚の花弁が開き、真ん中から愛嬌のある花柱が突き出ている。誠に愛らしい熱帯の花といえる。
(11)旅人の木
旅人の木(オウギバショウ)は、東南アジアでよく見かける。なぜそう言われるのかと言うと、喉が乾いた旅人がこの木の扇の各枝の根元に穴を開ければ、水が飲めたからだという説と、この木を植えると東西方向に広がるので、方角がわかるからだという説がある。
私はその昔、シンガポールのラッフルズホテルが近代的な建築に生まれ変わる前の植民地様式だった頃に、泊まったことがある。そのとき、ホテルの車寄せに生えていたのが、この木であり、誠に優雅に見えた。だから、ああ立派なホテルだと感激して受付に向かったことを覚えている。
なお、板橋熱帯植物環境館で、この旅人の木の「種」を見て驚いた。なんとまあ・・・青色なのである。そんな色の植物の種は、これまで見たことも聞いたこともない。やはり、変わった木なのだと思った。
(12)ミズフトモモ
ミズフトモモ(ミズレンブ)を見て、「ああ、懐かしい。食べてみたい」と思ってしまった。現地では、よくマーケットで売っていて、おそるおそる口に入れるとシャキシャキとして水っぽかった。それ以来、あたかも水を飲むような感じでかじっていた。味は、決して美味しいわけではないが、暑い気候の下で食べると、水分補給にちょうど良いからだ。
(13)ヒスイカズラ
翡翠葛(ヒスイカズラ)も、その名の通り淡い緑の翡翠のような神秘的な色の花を付ける。フィリピン原産らしい。個々の花は、何というか長く伸ばした怪獣の爪のような形である。それが、まるでバナナのような房状にぶら下がっている。こんな色の、こんな形の花は見たことがない。これがマメ科植物で、受粉はオオコウモリにより行われると聞いて、やはり変わった花だと思った。
(14)スパイダーリリー
ヒメノカリス(通称:スパイダーリリー)は、初めて見た時はこれが暗い所で咲いていたので、何かお化けのような印象を受けた記憶がある。熱帯の花にしては線が細くてどこか弱々しく儚げな感じである。中央には朝顔のようなラッパがあり、そこから6本の花弁が細長くまるで蜘蛛のように出て垂れ下がっている。
(15)大紅合歓
大紅合歓(オオベニゴウカン)は、まるで化粧パフのような花を咲かせる。丸くて大きいので、かなり目立つ。花弁は中心にあり、周りに糸のように無数に飛び出しているのは雄蕊だという。一度見たら、忘れられない花だ。ネムノキ科だそうだ。そういえば「合歓」と付けられている。
(16)アンスリウム
アンスリウム(ベニウチワ)は、サトイモ科だという。葉はハート形で、赤い花弁のように見えるものは苞らしいがそれもハート形で、しかも艶々して綺麗だ。そこに尻尾のように黄色や白色の花がニョッキリと突き出している。なかなか愛嬌がある。
(17)パキスタキス・ルテア
日本でいえば軽井沢に相当するキャメロン高原(マレー半島)というリゾート地で撮影したのがパキスタキス・ルテアで、誠に不思議な形をしている。真ん中のとうもろし風の黄色い造形(花穂)だけでも面白いのに、それに羽のような白いもの(実は、これが花)が出ている。おとぎの国から来た花のようだ。パキスタキス・ルテアという名で、メキシコからペルーにかけてが原産地だという。もし、許されてこの花の名を私が付けるとしたら「ウィング・コーン」とでもするところである。
(18)アメリカデイゴ
毎年6月になると、近くの聖テモテ教会に、アメリカデイゴ(海紅豆:かいこうず)が咲く。「デイゴ」って、何だろうと思ったら、「梯梧」で、私の辞書(大辞林)には「マメ科の落葉高木。インド原産。江戸時代に渡来。観賞用に暖地で栽培する。葉は互生し,大形。5,6月,枝先に総状花序を出し,緋紅色の蝶形花を密生する」とあった。
(19)ダースベイダー
これはもちろん愛称で、正式には「アリストロキア・サルバドレンシス」というエルサルバドル原産の花だ。それにしても、スターウォーズの悪役ダースベイダーそっくりだから、これを神代植物公園で見たときには、思わず笑ってしまった。何でこういう形なのと言いたくなるが、馬の鈴草科に属しているというのも、どこか人を食っている。
(20)孔雀サボテン
以前、このように書いたことがある。「不忍通り沿いで、月下美人そっくりの花を見つけたときには、まさかこんな昼間に咲いているのかと、びっくりした。ネットで調べてみると、いやいや月下美人ではなくて、孔雀サボテンというのだそうだ。しかも、白と鮮やかな赤紫の色をしている。花の中心部には、風車のような雄しべらしきものがある。面白くて、ついつい見入ってしまった。こんな花が、この世の中にあるとは、まあ、何と愉快なことだろう。特にこの雄しべ、まるで深海で小魚を引き寄せる提灯鮟鱇の提灯ヒゲのようで、傑作ではないか。」
(21)グズマニア
グズマニアは、いかにも南国風の植物である。四方八方に広がる葉の中から花が咲く。その花の周りを覆う苞状の葉は、赤、紫、黄色で美しい。しかも数ヶ月も長持ちするから人気がある。ところでこの花苞、どこかで見たことがあると思ったら、パイナップルだ。それもそのはず、パイナップル科グズマニア属だった。
(22)ドリアン
果物の王様であるドリアンについては、私は「荒々しく突き出たトゲに卵が腐ったような地獄の臭い、それでいてとろけるような天国の味」と評したことがある。そのエッセイとドリアン図鑑を、別途ご覧いただければと思う。
(23)スターフルーツ
スターフルーツ(五歛子:ゴレンシ)は、熱帯地方ではおなじみのフルーツで、水っぽい上にビタミンCが豊富なのでよく食べた。味は淡白で、やや酸っぱい。我々外国人は、この実を横に輪切りにしてその形が星型だと確認して満足している。ところが現地の人は、これを縦に切って縦長にして食べる。なるほど、こうすればしっかり食べられると、目を見張った。
(24)パパイヤ
パパイヤ(パパイア)とマンゴーは、日常的によく食べた。私は中でもパパイヤが好きだった。現地では、30センチくらいの立派なパパイヤを売っていた。もうこれくらいになると、1個食べたら、お腹が一杯になる。事実、現地の人が失業した時に、庭に植えて実がなったこればかりを食べて過ごしていたというのを聞いて笑ってしまった。
ちなみに、完熟したパパイヤには、ポリフェノール、ビタミン、β-カロチン、カリウム、パパイン酵素など、熱帯に不足する栄養素が豊富である。
(25)源平カズラ
源平カズラは、真っ白い萼と真っ赤な花冠が対照的な愛らしい花である。白と赤なので源平の旗に見立ててこの名前が付けられた。清楚な感じの花である。
(26)碁盤の脚
なぜこの花が「碁盤の脚」なのかと不思議に思っていたら、花ではなくて実を見て付けられた名前だという。ただ、私はまだ実の形を見たことがない。ちなみに私が見たのはこの花で、夜に咲いて、もう翌朝には落ちてしまう一日花だった。まるで西表島のサガリバナと同じだなと思ったら、同属だった。
(27)熱帯睡蓮
神代植物公園に行って、その温室で様々な種類の熱帯睡蓮を見てきた。ティナ(087)、セントルイス・ゴールド(089)、リンジー・ウッズ(090、上の写真)、アフター・グロー(091)、エルドラド(092)、クイント・ブライアント(093)、アメリカン・ビューティ(094)などと、品種改良や新しい品種の作出が行われ、自由な名前が付けられている。バラと同じだ。
(28)ポインセチア
このポインセチアは、マレー半島のキャメロン高原で撮影したものだが、遠くから見ると、赤い団扇を丸くつなげたような形をしているが、その中心部付け根には、とってもかわいい「ポッチ」のようなものが出ているという愛嬌ある形をしている。当時いろいろな植物図鑑にあたって調べてみたのの名前がわからなかったが、最近になって、板橋区立熱帯環境植物館で同じものを見つけ、ポインセチアと判明して、うれしかった。
(29)蘭(オーチャード)
蘭(らん:オーチャード)は、空港などで売っているお土産品としても有名であるが、実際には栽培が難しくて、現地では庭や道端などの身近には、ほとんど生えていなかった。しかし、栽培種としては実に多種多様で、ここでは、カトレア(109)、パフィオパディルム(110)、リカステ(113)、胡蝶蘭(115)、バンダ(117)、オンシジューム(119)の写真をお示ししている。
聞くところによると、蘭という花は約3500万年前に熱帯雨林に出現した。花の中では新参者であったこもから、ランが誕生した頃には熱帯雨林のめぼしい場所は、既に他の植物に占められていた。そこで蘭がとった戦略は、色鮮やかな花弁や匂いで虫たちを引き付け、特異な形をした構造物で虫の体に花粉を付けて遠くに飛ばすことだったという。それでこの美しい色と形と香りが生まれたらしい。
(30)緋牡丹
緋牡丹は、サボテン科ギムノカリキウム属の球状サボテンである。頭が真っ赤なのでこの名が付けられたと思うが、それにしてもピッタリな命名だ。
(平成14年9月8日著、令和3年8月21日追加)
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