悠々人生エッセイ



根津神社の茅の輪くぐり




 今年の秋に自動車運転免許証の更新時期が来ると思っていたところ、半年前になって警察庁運転免許本部から葉書が来た。更新に必要な「高齢者講習」というのを予め受講せよという内容である。しかも、リストにある自動車教習所に電話して、自分で予約せよという。

高齢者講習(警察庁運転免許本部から葉書)


 当たり前だが、自動車教習所というのは都心にはない。文京区に一番近いのはどこだろうと思って探すと、足立区に足立自動車学校というのがあるのを見つけた。しかも北千住駅から専用のバスがあるというので、地下鉄千代田線一本で行けるから好都合だ。電話してみると、混み合っていて2ヶ月先しか空きがないという。仕方がないので、それで良いからと、申し込んだ。

 7月1日の当日になった。北千住駅西口で待っていると、教習所のバスがやってきた。それに乗り込んで約20分弱して到着した。受付で5,100円を支払い、待合場所に座って待つ。若い人が多く、新型コロナウイルスが気になるが、この際やむを得ない。

 時間になり、「高齢者講習」という表示のある教室に招き入れられた。まず3枚のペーパーに名前や住所を書き入れる。私は、「ずっーとペーパードライバーで運転していない」と正直に申告すると、係員から「大丈夫ですか。まあ、ここは学校の敷地内で運転するだけですから」と言われた。やってみないとわからないが、「まあ、大丈夫、大丈夫」と言って、その場を凌ぐ。

 それから1時間ほどビデオを見せられた。正式には「運転適性検査(30分)」と「双方型講義(30分)」ということらしい。その間、一人一人が脇にある衝立てに招き入れられ、そこで機械による視力検査が行われている。それは、機械による静止視力と動体視力の検査だという。

 静止の方は、いつもお馴染みのランドルト輪だったが、動体はどうするのかと思っていたら、なんとそのランドルト輪が遠くから手前に近づいてくる。その輪が切れている方向が分かったら、その方向にレバーを倒すという仕掛けだった。うかうかしているとあっという間に近づいてくるので、ボーッとしている暇がない。それやこれやで、あまり成績はよくなかったが、別に今回の講習の修了には関係がないらしい。ともかく、それが終わったら「実車指導(60分)」に移る、それで合計2時間だ。

 説明の中で気になったのが、75歳になった時のことである。認知症(dementia)の検査を30分ほど受けて、その結果、(1)問題なしとなれば、今日と同じ「高齢者2時間(合理化)講習」を受けて更新できる。(2)認知機能低下の恐れあるいは(3)認知症の恐れありとなった場合は、いずれも「高齢者3時間(高度化)講習」を受けなければならないという。2時間講習と比べて何が違うかというと、更に1時間、「個別指導(60分)」が加わるらしい。

 高齢者は大半が元気であるにもかかわらず、ごくごく一部の高齢者がとんでもない事故を起こすたびに、こうして高齢者一般に対する規制がどんどん強化されていき、有り体に言えば大変な迷惑となっている。しかし、理屈上はどんな人でもいつ何時、認知症になるかもしれないので、網羅的に規制するのは仕方がないか・・・などと考えているうちに、1時間の講習は終わり、テストも何もなくて、次の実車指導に移る。1台の車に1人の教員と2人の受講者が乗る。

 2人1組で私と組んだ人が先に運転することになり、私は後部座席からその運転を見ていた。フートブレーキを踏み、サイドブレーキを倒し、ギヤをDレンジに入れて出発だ。外周を半周してから右折して中に入る。左折し、クランクに入り、障害物を避け、また外周に戻り出発点に帰ってくる。いやあ、簡単、簡単。それもそのはずで、車庫入れもやらないし、坂道発進もない。踏切もない。

 こんなことで良いのかと思うところだが、今度は私が運転する番だ。楽な方がよい。同じように外周に出て、クランクに入ろうとすると、あーあ、私の前を行く高齢者講習の車が左手の縁石に乗り上げた。すると、あせったのか今度は右の縁石にまた乗り上げている。あんなことをしないように、外側へいったん車を振ってからクランクに入り、次もまた同じようにして、難なく乗り切った。それから、広い外周に出ようとするとき、一時停止の標識に気がついたが、止まった位置が標識より20センチほど出ていたらしく、初めての注意を受けた。でも、本日は別にテストではないからというので、それ以上のお咎めはなく無事に修了した。それで講習は終わり、最後に「シニアドライバー用教則本」と、肝心の「高齢者講習終了証明書」(東京都公安委員会名)をもらって、帰途に着いた。やれやれだ。

高齢者講習終了証明書


 ところで、自動車学校の中に「カートレーチャー室」とあるから何かと思ったら、Wikipediaによれば、「トレーチャーとは・・・自動車の運転装置の操作手順を学ぶ為のシミュレーター装置」とのことだった。ドライビングシミュレーターと違うのかと思ったら、トレーチャーは技能教習のごく初期の段階で、シミュレーターはその中盤で模擬運転をする装置のようだ。当然のことながら昔はこんな装置はなかったので、つい興味を持ってしまった。

 次は、本番の免許証の更新手続だ。誕生日の1ヶ月前になったら、神田運転免許更新センターに、免許証、この証明書、2,500円を持って行かなければならない。そのときは、適性検査だけらしい。受付時間は、午前8時半から午後4時までだが、午後3時以降が比較的空いているとのこと。地下鉄千代田線大手町駅C1出口から、川を越えて徒歩5分のところだ。忘れないようにしないといけない。事前にまた、葉書が来るだろう。






【後日談】 本番の免許証の更新はスムーズで簡単

 誕生日の1月以上前に、免許証更新の案内の葉書が来た。そこで、誕生日前の平日に、その葉書と上に書いた証明書などを持って、神田運転免許更新センターに行った。行ってみると、新型コロナウイルスのこともあったのか、ほとんど人はおらず、受付で一連の書類を出したときにその場で視力検査があり、それが終わると写真を撮られてしばらく待っていた。そうすると、「はい」とばかりに、新しい免許証が手渡された。わずか数十分で、全てが完了した。この免許証は、75歳の誕生日まで有効である。


厳しくなる高齢者の運転免許証更新(令和6年)






(令和3年 7月 1日著)
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