悠々人生エッセイ



湯島天神の梅




 根津・湯島・神田三社と白鷺( 写 真 )は、こちらから。


1.新型コロナウイルス禍の散歩

 新型コロナウイルスに対する緊急事態「再」宣言が出されて、はや1ヶ月半が経過した。経過は順調で新規感染者数は1月8日の7,947人から、減少の一途をたどって、2月18日には1,537人と、2割余りに減少した。しかし、東京都の重症者用ベッド占有率は、一時の107%というとんでもない水準からは脱したものの、未だに86%と、なお高いレベルである。これを半分以下に下げなければ安心できない。

 そのような中、人と会うこともままならないし、そもそも人混みを避けなければならない。1年前の最初の緊急事態宣言のときは、することがないので、毎日、近所で人気(ひとけ)のないところを歩き回った。それなりに新しい発見があって面白かったが、それを1年も続けていると、飽きが来ないのが不思議なくらいである。それでも、この間の新型コロナウイルスについての経験と知識で、要は「ウイルスは、他人と触れ合わなければ、そうは易々とはうつされない」ということが判明してきたので、その限りで徐々に活動領域を広げつつある。もっとも、そうは言っても15分以上の電車での移動や、もちろん新幹線の利用は絶対にしないようにしているので、やれることは限られている。

 ある日、あまりにもすることがないので、私の家の近くの湯島天神、神田明神、根津神社の三社を一気に訪ね、その途中の不忍池にも立ち寄ろうと思った。歩くだけなら片道30分で行くことが可能だ。ゆっくりと写真を撮るなら、2時間以内で終わるだろう。そういうことで、平日の昼食後に出掛けたが、ともかく驚くほど人が少ないではないか。思った以上に僅かな人しか歩いていない。確かに、例えば湯島天神に受験の願をかけにきて新型コロナウイルスをもらってはたまらないからだろう。


2.湯島天神


湯島天神本殿


 最初に行った湯島天神は、もともとの御祭神が「天之手力雄命(あめのたぢからをのみこと)」だったものが、1355年に「菅原道真」を祭神に加えたそうだ。だから、地元の商売繁盛の神だけではなく、学問の神様でも有名である。どこの天神様もそうだが、こちらにも頭をなでる「丑」の座像がある。ところが、残念ながら目下の新型コロナウイルスを警戒してか、近寄れないようになっている。

湯島天神の牛


湯島天神の絵馬


 さて、受験のシーズンともなると、絵馬があたかも牛の背のように鈴なりに吊り下げられているのが例年の馴染みの風景であるが、今年は、ざっと見てその半分である。またこの頃は湯島天神を全国的に有名にした「梅の花」の季節である。でも、この日はそれもまだ半分くらいしか咲いてはいなかった。どういうわけか、紅梅の方が先に咲く。白梅の方はもう咲いているものも一部にあるが、全体的にはまだ半分も咲いてはいなかった。そういうわけで、寂しい写真風景となった。


3.神田明神


神田明神の楼門


 次は、南のお茶の水方向に進んで神田明神まで行った。こちらは、元々、大黒様(国土経営、夫婦和合、縁結びの神様)と、恵比寿様(商売繁昌、医薬健康、開運招福の神様)を祀っていたのが、途中で平将門も祭神に加わったようだ。この辺りは、誠に融通無碍である。しかも神田明神は、東京の他の神社とは一風変わっているところがある。それというのも、近くの中小企業から大手町の大企業まで幅広く産業界からの尊崇を集め、祭にしても境内の整備にしても、企業家精神に満ち満ちていて、お金を潤沢に使うという印象である。これは、土地柄のなせることなのだろう。

神田明神の大黒様


神田明神のおみくじ掛けはハート形


 社殿も、関東大震災後に当時は珍しかった鉄骨鉄筋コンクリート造りにして、東京大空襲にも耐え抜いたという。平成30年には、神田明神文化交流館「EDOCCO」をオープンした。また、附属の資料館には、神田祭や江戸東京文化に関する資料とともに、アニメや漫画などの現代文化に関する絵巻まであるから、これは確かに変わっている神社である。それで、境内で写真を撮ろうとしたが、実はどのアングルもどの場所も、面白みに欠ける。この神社の神髄は、やはり江戸っ子が支える神田祭にあるようだ。


4.根津神社


根津神社の鳥居


 不忍池から約15分のところにある根津神社は、私が毎日のように通っているところで、およそ350年前に建てられた楼門と、その脇の斜面にある躑躅園がとても良い。とりわけ毎年恒例のつつじ祭りの時期は、ひときわ素晴らしい。最近では楼門の手前に池と太鼓橋ができて、ますます景観が良くなった。毎日午前中に来ると、近くの保育園から園児たちが遊びに来ていて、その賑やかなことといったらない。私が気に入っている日常風景である。

根津神社の楼門


根津神社の躑躅園





5.不忍池


不忍池での蓮池にいた白鷺


 根津神社に行く途中の不忍池での蓮池で、たまたま白鷺を見つけた。沼地を「抜き足、差し足、忍び足」で、ゆっくりと歩き、小魚を探していた。それをひとしきり追いかけたが、どうも満足する写真を撮ることは出来なかった。餌となる小魚も、さほどいないのかもしれない。

不忍池でのボート池




 ということで、写真の方はありきたりのものになってしまったが、私が日常暮らしている地元の風景である。







(令和3年2月18日著)
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