東京都北区にある旧古河庭園には、春と秋の薔薇のシーズンになると、もう何度となく訪れて、美しい薔薇の数々を撮ってきた。でも、新型コロナウイルスの緊急事態宣言が出された今年の5月は、さすがに行く気がしなかった。それでも、秋薔薇のシーズンである10月になったので、久しぶりに薔薇を見て来ようという気になったのである。これまで、都合4回も行ってみたのだが、残念ながら最初の3回は早すぎたか、薔薇はそれこそバラバラに少しだけ咲いていた。最初の回は「マダム・サチ」、次の回は「シャルル・ドゴール」、3回目は「きらり」しかダメだな、という調子で、ガッカリした。しかし4回目となる本日は、やっと薔薇園のあちこちで、美しい薔薇の多くの種類がいっぱいに咲き誇っていて、いささか安心した。たまたま秋らしい真っ青な空が広がり、その下に洋館があり、さらに手前に赤い薔薇が咲き乱れるという、いつもの構図である。ところで、気になるのは薔薇園の隅に何の薔薇の木もない一角があるなど、手入れが行き届いていない所があった。これも、新型コロナウイルスの影響なのだろう。
というわけで、その日は薔薇にはがっかりした。でも、その代わり良いものを見た。数は僅かだが、曼珠沙華(彼岸花)を見つけたのである。それも、広がった花の咲きには花粉が付いていて、まさに満開である。ただ、これほど撮りにくい花はない。背景が緑の芝生や青空なら、花の赤色が引き立つ。でも、なかなかそういう場面にはお目にかからない。「まあ、こんなものかなぁ」と思いつつ、何枚かを撮ってみた。
2回目は、10月11日で、この日は天晴れと言いたくなるほどの秋晴れで、空の青さが実に美しい日だった。そこで、薔薇は「バニラ・パフューム」、「カリフォルニア・ドリーミング」、「アンジェラ」などを撮り、それから日本庭園まで行って、緑の木々、池面に映る青空の青などを楽しんだ。
3回目は10月18日である。それでも薔薇は、まだ6割程度が咲いているかどうかという程度である。少しがっかりしたが、「万葉」、「イングリッド・バーグマン」、「ラブ」、「ピース」、「リオ・サンバ」、「アロマテラピー」などを撮った。なかでも気に入ったのは「リオ・サンバ、」と「アロマテラピー」である。全般的に、この古河庭園の薔薇は、最近は手入れがあまり良くないのではないかと懸念している。まあ、新型コロナウイルス騒ぎが終わって落ち着いたら、旧に復することを期待したい。
その日は、日本庭園にまた立ち寄り、さあ帰ろうかというとき、滝壺に綺麗な鳥がいるのに気がついた。あれあれと思ってよくみると、これはなんと、翡翠(カワセミ)である。こんな都会の真ん中にいるなんて、まるで予想もしなかった。そこで、「どうか飛んで行ってしまわないように」と願いつつ、カメラを向けたのだが、残念ながら最大200ミリの望遠レンズしか持ってきていなかった。それでも、どうにかして撮ったのが、この写真である。これしか撮れなかった。誠に残念無念といったところである。それを拡大してみると、次の写真となる。それにしても、この鳥は水辺に集まってくるのか、今回も滝壺のすぐ前にいる。
ところで、私はどういうわけか、野生の鳥に出くわすことが多い。昨2019年、ペルーのマチュピチュ遺跡に行ったときは、ハチドリがいきなり飛んできて、目の前の蜜を吸い始めた。本来なら連写モードでシャッター時間を短くして撮るべきなのだが、そのときはまさかそういう展開になるとは夢にも思わず、風景を撮るモードだったから、それを今からスポーツ・モードにしている暇はない。だから、うまく撮れなかったと未だに口惜しい。
その次は、2015年、富山県の立山連峰の室堂付近(標高2,600m)を散歩中、登山道の脇に、ひょっこりと雷鳥のつがいが現れた。びっくりして撮っていると、ものの5分と経たないうちに、あたりが白い霧に覆われて、何も見えなくなってしまった。だから、現れたのだろう。私は小躍りしたくなるほど嬉しくなり、その写真を額に入れて私のオフィスに飾っていたところ、スタッフの一人がそれを見て、驚いていた。彼は登山が好きでしばしば高い山に登っているが、雷鳥をこんなにはっきりと、しかも間近に見えたことは、一度のないという。まあ、私の場合、ビギナーズ・ラックというものかもしれない。。
さて、念のためと思って、10月27日に、今月4回目の入園をしてみると、今度は前3回とうってかわって咲いている花の数が多く、種類もたくさんあり、豪華絢爛で非常に素晴らしい景色だった。なかでも、「恋心」の赤色は上品だ。「アロマテラピー」のピンクは実に魅力的だ。おやおや、アロマテラピーの花にカマキリ(蟷螂)がとまっている。やってくる虫を待ち受けていると見える。
「ピース」は、その名の通り、1945年に作出され、いかにも平和が来たという思いが伝わる優しさだ。「ライラック」は、もうとろけるような淡い紫色をしている。「ダブルディライト」は、まさに白と赤の感動をダブルで味わえる。「カトリーヌ・ドゥヌーブ」は、一時期のフランス人女優の名前だが、確かに品の良い妖艶な感じがする。
(令和2年10月27日著)
(お願い 著作権法の観点から無断での転載や引用はご遠慮ください。) |