悠々人生・邯鄲の夢エッセイ



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 ベトナム伝統音楽人形ショー( 写 真 )は、こちらから。


 先日、私の職場にベトナムの人たちがやって来られて、国際交流の一環として見学の後に懇談をし、意見交換を行った。私は、昨2018年12月にダナンとホイアンを訪れて写真を撮ってきたばかりなものだから、この懇談をことのほか楽しみにしていた。すると、たまたまダナンから来た偉い人がいて、最近の現地の話題で話が弾んだ。

 実は、私は8年前にこんな文章を書いている。「これでも私は、ベトナムに1回だけ行ったことがある。しかし、20年ほど前のハノイなので、仕事以外で見たものといえば、ホーチミン将軍の遺体と、科挙の合格者を祭った孔子廟、それに例の水中人形劇だけ・・・である。しかし、そんな昔話はもうすっかり過去のことで、現代のベトナムは、これからますます発展するだろう。中国を挟んで東の日本と西のベトナムは、安南節度使を勤めた阿倍仲麻呂以来の縁がある。いずれも、国民が勤勉で人口も多い点(ベトナムは約8600万人、日本は約1億2752万人)、国が南北に長い点、米が主食である点など、共通点が多い。これから、日本が大事にしていきたい国のひとつである。(2011年9月18日)」

 今も「日本が大事にしていきたい国」という認識は変わらないが、この間、大きく変わったと思うことがある。それは、ベトナムがここ最近、大いに経済発展を遂げ、それが人々の態度や立ち居振る舞いに良い影響をもたらして、どことなく余裕を感じさせるようになったことだ。見方を変えたら、90年代のバブル経済崩壊後の日本経済が沈滞してほとんど経済成長がみられなかった一方で、ベトナムなどのアセアン諸国が順調に発展していっただけのことかもしれない。ともあれ、それと同時に、かつて高度経済成長を成し遂げた日本人としては、かつての栄光はどこに行ったのかと自問したい気がする。

 そうした経済発展を遂げつつあるベトナムのような国は、文化の面でも余裕が出てきたものとみえて、最近、かなり進歩したのではないかと感じる。というのは、平成23年に代々木公園で「ベトナム舞踊・アオザイショー」を見たときは、特に舞踊は、まだまた粗削りだなと思ったものである。ところが、今回、同じ代々木公園で行われた「Vietnum Traditonal Music Puppet Show」(ベトナム伝統音楽人形ショー)は、ベトナム人の器用さと洗練された伝統芸が程よく混ざりあって、なかなか芸術水準が高くなったと感じる。もちろん、芸術性の善し悪しは、これを演じるパフォーマー集団の質に左右される。その点、今回のパフォーマーは、ベトナム文化スポーツ観光省から派遣されたと言っていたから、それだけに演技がよかったのかもしれない。ただ、惜しむらくは、演目や内容についての説明が全くないものだから、我々観客も、どういう踊りなのか理解が今ひとつだったことだ。こういう点は、公演のパンフレットかホームページにでも載せておいていただければよかったのではないかと思う。

 ということで、私が勝手に命名した踊りの順序に従って、以下に写真を並べていきたい。なお、私はカメラを「キヤノン EOS70D」から、「ソニーα7III」のフルサイズに切り替えたので、この写真がEOS70Dで撮る最後の写真となる。早い動きにも、結構付いていくことができて満足している。

 余談だが、今回のフェスティバルでは、メインステージのほかに特設舞台でベトナムの水上人形劇(ムアゾイヌオック)が披露されたようだが、私は既にハノイや平成26年9月に横浜で見学しているので、今回はパスをした。また、会場では私の好物のドリアンが売られていた。やや小ぶりのものの値段を聞くと、重さを測ってくれて3,250円だという。現地価格の3倍だが、日本で売られている売価の半値だ。それならばと購入し、その場で食べてみた。ところが収穫してから日が経つせいか、やや乾燥が進みすぎて匂いは弱い。肝心の味はといえば、ドリアン特有の、あの高級チーズのようなねっとりとした感触があまりない。やはり、値段相応の味だった。


(1)蝶踊りと旗振り


旗振り


 さて、メインステージでのベトナム伝統音楽人形ショーの様子である。最初は、男性が出てきて、カラフルな旗を両手に持ってそれを振る。どういう意味があるのかわからない。だから、「旗振り」としか表現できないのだけれども、共産国らしくマスゲームを行うときなどに使われるのかもしれない。

旗振り


蝶踊り


蝶踊り


 次に、腰周りに蓮の花のようなピンク色の花びらを付けた華やかな女性ダンサー5人が登場し、優雅な踊りを見せる。ピーターパンに出てくる妖精ティンカーベルのようで、なかなか美しい。1人で両手を左右に動かしたり、5人が横に並んだり縦になったり、まるでマスゲームの小型版だ。次に場面転換のようで、男性が出てきて、笛で鳥のさえずりのような音を出す。耳が痛くなるほど大きな音だ。

蝶踊り


蝶踊り


 それが終わると、再び男性による旗振りがひとしきりあってから、また女性ダンサーが登場した。今度は蝶の羽根のようなものを見に付けている。これは優雅としか言いようがない。ただ、惜しむらくは蝶の羽根が内側に描かれていることで、外側にも全く同じように描くと、もっと見栄えがするのではないかと思った。


(2)カルメン人形


カルメン


カルメン


 突然、カルメンの曲が流れてきた。ベトナムとカルメンとは結びつかないなと思っていたら、上下が黒でスカートが赤の女性ダンサーが現れて、スペイン風の踊りを始めたから、一瞬、違和感を覚えたが、なかなか上手なので、面白いと思って観ていた。

カルメン人形


カルメン人形


カルメン人形


カルメン人形


 すると、男性が操り人形を持って登場した。それを合図に、3人の女性ダンサーがいずれも「カルメン人形」を持って踊りだした。なるほど、これがこの劇団の本業のようだ。ダンサーたちは、人形を操りながら、しかも自分で踊らなければならない。踊るだけでも大変なのに、一人で踊り手と操り手の二役をこなすという活躍ぶりだ。しかもよく見ると、例えば、人形がスカートの端を持ってたくしあげたりするほどの細かい操作をやったりしている。おっと、人形を振り回し始めた・・・色々とやるものだ。加えて、ダンサー全員が左手を上げてポーズをとっていた場面があったが、実は人形の方も同じポーズをし、そのためにダンサーは左手に操り糸を持っているという芸の細かさだ。それを客席には笑顔を振りまきながら行うのだから、これはこれでかなりの修練が必要だろうと思う。感心してしまった。

ベトナム女性人形


ベトナム女性人形


ベトナム女性人形


 やがて場面が変わって、今度は主役がカルメン人形からベトナム女性人形になった。女性と男性の操作者が、腰位の高さの人形を操る。今度の人形はベトナムの農民がよく被る日よけ傘(ノンラー)を持っているから、それだけ操るのが難しい。ところが、この日よけ傘が表現のポイントであるから面白い。それを身体の前に密着させて持つか、それとも片手でやや上向き加減にするかで、受ける感じが全く異なってしまう。私は飽きずに、その日よけ傘の持ち方を眺めていた。

ベトナム女性人形





(3)ろうそく踊り


ろうそく踊り


ろうそく踊り


 次の出しものは、私もこれを何と言うか表現するに困って、「ろうそく踊り」とでも言っておこう。宗教的意味がありそうなのだが、例によって説明がないので、よくわからないのが残念なところである。舞台の真ん中に「ろうそく」が添えられた花籠が恭しく置かれて、その前でグリーン色の衣装に身を包んだ一人の女性ダンサーが踊る。そのうち、花籠から両手に3本ずつ、火を灯したろうそくを持って踊る。まるで、巫女さんのようだ。やがて、ピンク色の衣装の3人の踊り手がそれを支えるように一緒に踊る。それから、先程の花籠を頭に載せて踊り出す。そのうち、鉦を持ったオレンジ色の踊り手も入ってくるといったものである。ともかく、優雅で賑やかで、カラフルで陽気で、かつ楽しいひと時を過ごすことができた。主催者と出演者に深く感謝したい。

ろうそく踊り


ろうそく踊り


ろうそく踊り








(令和元年6月9日著)
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