昨年来、ネット上で、「動作が遅くなった古いiPhoneのバッテリーを交換したところ、駆動時間が伸びただけでなく、アプリがサクサクと動いて、購入した直後のような快適な状態に戻った。」ということが話題になった。これは、iOSのせいではないかと疑いの目で見られ、それに答える形でアップルが、「バッテリーが経年劣化した古いiPhoneの速度を状況により意図的に落としていたことは事実であるが、その目的は不意にシャットダウンすることを防ぐためだった」と回答したことから、騒ぎが広がった。これは、古いiPhoneを買い換えさせるためではないかという邪推(?)まで生み、各国で訴訟騒ぎまで起きたほどである。 iPhone7plusを使っていた私も、昨年秋頃から、どういうわけかアプリの動きが鈍くなった上に、電池容量が18%と、まだ少しあるはずなのに突然シャットダウンしてしまって、困ったことがしばしば起きるようになった。だから以上のような経緯により、要はアップルがiOSを勝手にいじくって、こういうことになったのかと、ようやく納得した。一方、アップルは、こうした状況に対応して、2018年1月20日、「iPhoneのバッテリーとパフォーマンス」という文書を発表した。その一部を引用すると、 「バッテリーの充電残量が少ない、化学的経年劣化が進んでいる、周囲温度が低いといった状況下では、突然のシャットダウンが起きる可能性が高くなります。極端な場合は、シャットダウンが頻繁に起こり、その結果、デバイスが不安定になって使えなくなることもあり得ます。iOS 10.2.1 (2017 年 1 月リリース) には、旧モデルの iPhone でこういった突然のシャットダウンが起きるのを防ぐための機能改善が盛り込まれました。これには、iPhone 6、iPhone 6 Plus、iPhone 6s、iPhone 6s Plus、iPhone SE で、パフォーマンスの瞬間的なピークをダイナミックに管理し (ただし必要な場合のみ)、デバイスが突然シャットダウンするのを防ぐ機能が含まれています。この機能は、その後、iOS 11.2 を搭載した iPhone 7 や iPhone 7 Plus にも拡大されました。(ところがその結果、次のような問題が発生した。) ・ App の起動に時間がかかるようになった。 ・ スクロール中のフレームレートが低くなった。 ・ バックライトが暗くなった (コントロールセンターで設定の変更が可能)。 ・ スピーカーの音量が小さくなった (最大でマイナス 3dB)。 ・ 一部の App でフレームレートが徐々に低下する。 ・ さらに極端な場合は、カメラのフラッシュがカメラの UI に表示されているにもかかわらず使用できなくなった。 ・ バックグラウンドで更新されるはずの App が起動中に再読み込みされる場合がある。」 要するに、純粋に技術的なバッテリー対策であって、悪気はなかったというのである。ところでアップルは、この文書中で、「バッテリーの化学的経年劣化が相当進んでいる場合は、電源管理がもたらす変化が長期間続くことがあります。これは、充電式バッテリーはすべて消耗品であり、その耐用年数に限りがあり、最終的にはサービスかリサイクルが必要になる性格のものであるからです。お使いの iPhone に上記のような変化が見られ、そのパフォーマンスをもっとよくしたいとお考えの方は、バッテリーの交換をご検討ください。(中略)バッテリー交換をご希望の方は、こちらからサービスオプション (配送修理または持ち込み修理) をお選びになってお手続きをしてください。」として、「バッテリー交換プログラム」を公表した。Web上でそれを開いてみると、希望があればバッテリー交換をする、保証期間内なら無料、それ以外なら3,200円というのである。同じWebサイト中で近くのアップル・ショップ(アップル製品修理センター)の位置まで検索できて、空いている日と朝10時から夕方7時頃までの予約時間が示されて、その場で予約もできた。 その予約日時となり、アップル製品修理センターに行ってみた。ビックカメラの中にある。受付番号を引いて待つと、直ぐに案内された。私は、自分の名前で2台契約しており、そのうち1台を家内に使ってもらっている。だから、2台のバッテリー交換するつもりで行ったが、「iPhone7plusのバッテリーがそもそもあまりないし、1回に1個しか交換しない。」と言われた。そんなことは、どこにも書いていなかったが、そう言われればやむを得ないので、とりあえず使わないもう1台については出直すことにして、家内に使ってもらう256GBを先に交換してもらった。まず、診断ソフトでチェックしてもらうと、バッテリーの健全度97%(だから、劣化度3%)、これまでの充電400回と出た。使った期間は約1年半だから、そんなものだ。係員は、「普通なら、交換する必要はないですね。交換基準は、健全度80%なのですからね」と言う。私が「これはもう1年半くらい使っているけど、そうすると何回充電すれば交換しなければいけないことになりますか」と聞くと、「500回か600回ですね」と言うので、「ではあと少しということだから、この際、替えて下さい」と頼むと、何か、色々と言う。まるで、断念させるための説明のようだ。 一番妙だった説明は、「可能性は1%もないと思いますが、万が一、バッテリーの取替えで何か事故があったら、(この端末はアップルケアの保証が切れているので)38,000円の修理代金がかかります。」と言ったことだ。私が「しかし、取り替える過程で事故があったのなら、それは修理した人の瑕疵担保責任の範囲内で、そういう修理上の危険を持ち主に負わせるのは、筋が通らない。」と理屈を言うと、(これはかなわないと思われたせいか)「アップルの正規ショップなら、多少は融通性が利きますが、ウチは代理店なもので」などと訳の分からないことを言う。私が「代理店だろうがなんだろうが、例えばバッテリー交換の途中で画面が割れてしまったら、そういう危険まで依頼主に負わせるのは、おかしいでしょう。」などと言うと、「そうですね。」と言いながら、(断念させることを諦めたのではないかと思ったが)それ以上の話はしないで、交換のためにiPhone本体を持って奥に引っ込んだ。 10分もしないうちに戻ってきて、交換が終わったようだ。それで私の目の前でパソコン本体と繋いで、チェックを始めた。画面のチェック、音のチェックなどと、時間がかかる。途中で、色々な話をしたが、中でも面白かったのは、「交換したのが新しい電池にもかかわらず、充電率が17%と、なぜ低いのかというと、かつてサムスンのスマホのリチウムイオン充電池が発火して以来、航空会社は充電率が30%以下のものしか受け付けてくれないから、そうなっているのです。」とのこと。また、最近のiPhone修理依頼の8割が、このプログラムによるバッテリー交換だそうだ。先ほどの「ウチは代理店なもので」という言葉の裏を読むと、まるでアップルの正規ショップに直接、行ってくれとでも言わんばかりである。 それやこれやで、単なる交換だから10分もかかわらず終わると思っていたが、実際には終わった時点で時計を見たところ1時間も掛かっていた。支払いは、3,456円。まるで語呂合わせのようだが、3,200円に消費税を足すと、確かにそうなる。最後には、修理完了のペーパーをくれた。加えて、もう1台のiPhone7plusのバッテリー交換のための注文書もくれたが、それから1週間経つというのに、何の連絡もない。こんな調子では心配なので、しばらく待って連絡がなければ、銀座のアップルショップに直接行こうかと思っている。なお、iPhoneXのバッテリー交換も気になるが、こちらの方は今月購入したばかりだから劣化とは無縁だし、今年12月まで交換してくれるようなので、当面このまま使うことにして11月頃までに交換すればよいと考えている。なお、こちらの方は、アップルケアに入っているので、無料のはずである。 【後日談】もう1台のiPhone7plusもバッテリー交換終了 上記のように、「しばらく待って連絡がなければ、銀座のアップルショップに直接行こうか」などと考えていたところ、そういう日に限ってタイミングよく連絡が入るものだ。「では、直ぐに行きます。」と返事してその日のうちに予約をとって、交換に行った。すると、2台目ということもあって、無駄な説明は全くなしに淡々と取り替えてくれて、45分ほどで完了した。バッテリーの交換そのものは10分もかからないが、交換前後の動作確認にそれ以上の時間がかかる。御礼を言って帰ろうとすると、同じようにバッテリー交換を求めるお客が2組も待っていた。
(平成30年1月27日著) (お願い 著作権法の観点から無断での転載や引用はご遠慮ください。) |
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