悠々人生・邯鄲の夢エッセイ








 年末の横浜を家内と散歩( 写 真 )


 12月も中旬に入った。気温は10度ぐらいで少し寒いが、まだ寒さに震えるほどではない。天気が良いから、どこかへ行こうと思った。先週は、近場の銀座と日比谷だったから、今週は、遠出して横浜へ行き、とりあえずホテルニューグランドのスパゲティ・ナポリタンとケーキのサバランでも食べに行こうかということになった。ちなみに、そもそもこのホテルはナポリタンの発祥の地だし、ブランデーたっぷりの美味しいサバランをだしてくれる。いずれも、我々が好きなものだ。

 千代田線の明治神宮前駅で、副都心線のみなとみらい線直通の電車に乗り換える。家から1時間と十数分で、終点の元町・中華街駅に着く。そこから山下公園に面するホテルニューグランドまでは、歩いて僅か数分だ。港からの冷たい風を頬に受けながら歩き、ホテルのイル・ジャルディーノに行った。ところが、休日のために満員で、何と10組も待っている。係の人と相談して、サバランが食べられるザ・テラスに行くことにした。ただし、イル・ジャルディーノのサバランがブランデーたっぷりなのに対して、こちらのサバランは紅茶ベースとのこと。まあ、良いかと思ってそのメニューを見た。すると、アフタヌーンティーセットが目に入った。とっても、美味しそうだ。ナポリタン+サバランとは大違いだが、家内も、これで良いというので、注文した。こういう、行き当たりばったりの方が、休日の過ごし方だ。お茶は何にするかというので、それぞれミントティーとカモミールティーのハーブティーにする。他に、紅茶を頼んでも良いそうだ。

 それで、やっと周囲を見渡す余裕ができた。まず、我々の座っているのが、中世イタリア風のゴテゴテっとした装飾椅子で、濃紺のクッションと背もたれだ。身体を沈み込ませて休むのにはよろしいが、周りのおしゃべりがややうるさいので、何か話そうとすると、背中を背もたれから離して前かがみにしないといけない。一見優雅な椅子だが、こういう騒がしい環境では、良し悪しだ。我々の右隣はカップルで、星の誕生やら何やらという天文学の話をしている。左隣は、お歳を召した母親とその娘たちらしい3人組だ。


アフタヌーンティーセット全体


アフタヌーンティーセット中段


 家内とたわいのない話をして待っていると、ハーブティーを持ってきてくれた。ミントティーはあの鋭い味がするし、家内が飲むカモミールティーのフレーバーの香りが誠によろしい。ひとしきりその話をしているうちに、優雅な手つきでウェィトレスさんがアフタヌーンティーセットを運んで来る。上段はフルーツ、中段はスイーツ、下段はサンドウィッチである。二人とも、何となく中段から手を出した。一口サイズのケーキなどがいくつか載っている。とても美味しい。それを話題に、また二人の話がはずむ。ハーブティーがなくなったので、ウェィトレスさんが、何か別のものはいかがと聞いてくれるので、別途メニューの中から好きな紅茶を選ぶ。家内はディンブラを頼んだ。あまり飲んだことがないからだという。

 私は、「憎っくき」アールグレイだ。なぜかと言うと、あるときロンドンのホテルで「アールグレイ」を頼もうとしたのだが、2回言っても通じなくて、往生したことがあったからだ。かなりの巻き舌にして3回目にやっとわかってもらった。30数年ほど前のことだが、若い頃のほろ苦い記憶である。ただ、「R」と「L」の発音を練習するきっかけとなったから、転んでもただでは起きなかったのが、唯一の救いかもしれない。それから、あたかも臥薪嘗胆のごとく、紅茶といえば、アールグレイを頼むこととしている。


アフタヌーンティーセット下段


 中段が終わり、下段のサンドウィッチに進む。しばらく食べていくうちに、サンドウィッチの上に、変なものが乗っていることに気がついた。どう見ても食べ物ではない。1cm四方ほどの厚手で黄緑色のプラスチック片だ。どうやら異物らしい。上の写真にも写っている。ウェィトレスさんを呼んで、「これが入っていましたよ」と告げると、調理場に一度報告に戻った後、「すみません。取り替えます」という。「そこまでしなくとも」と言うと、「いいえ、取り替えさせていただきます。」とのこと。そういうわけで、また持ってきてもらったが、おかげでサンドウィッチを1.5人前いただくことになった。

アフタヌーンティーセット上段


 それから、最後に残っている上段のフルーツを食べる。色んなフルーツをちょこちょこと切って、見た目良くプレートに乗せてある。冬だからフルーツに期待はできないが、それでも赤と濃紺色のベリーに、慣れ親しんだ味がした。これは、新鮮な証左である。その上、紅茶をお代わりして今度はウバのミルクティーを頼んだから、それを飲んでしまうと、いやもう、お腹がいっぱいになった。ちなみに、キーマン、ダージリンとともに、ウバが世界三大紅茶の一つということだ。

氷川丸


赤い靴をはいた女の子の像


公園内のインド門


 家内と「お腹がいっぱいだ。これは歩かなきゃ太りそうだ。」と言いつつ、山下公園に向かい、暮れなずむ公園内に足を踏み入れた。氷川丸が係留されている。港内には、夏には群れていた海鳥が、ほとんどいない。それはともかく、遠く海に目をやると、実に雄大な気持ちになる。赤い靴をはいた女の子の像が可愛い。それから、公園内のインド門の脇を抜け、山下臨港線プロムナードを「ぷかり桟橋」方向へ、ぶらぶらと歩いて行った。港に向かって突き出している「象の鼻パーク」に行き、大桟橋に停泊中の豪華客船を見ているうちに、だんだん暗くなってきた。ああ、あの客船は、「飛鳥II」である。聞くところによると、私の高校の同窓生が船長をしているようだ。煙突から煙が出ていると思ったら、午後5時になって出航した。名古屋に向けてワンナイトクルーズに行くらしい。それを見送って、ふと、プロムナードの左手を見ると、屋根の上の塔が四角い神奈川県庁(キング)、屋根の上の塔が丸くてなだらかな横浜税関(クイーン)があったが、横浜市開港記念館の塔(ジャック)は、残念ながらそこからでは見えなかった。

塔が四角い神奈川県庁(キング)


塔が丸くてなだらかな横浜税関(クイーン)


客船「飛鳥II」


横浜赤レンガ倉庫


 橋を渡ると、「横浜赤レンガ倉庫」である。短い方の棟の前にはスケートリンクが設けられている。そこを過ぎて、両方の建物の真ん中の大きな通りの両脇には、露店が軒を連ねている。それらの上には、サンタクロースやトナカイ、東方の三賢人に見守られたマリアとその赤ん坊のイエスキリストなどが据え付けられて、既にクリスマスのムードがいっぱいである。全体をドーム型に覆うように、大きな電飾が取り付けられて、その突き当たりには、巨大なクリスマスツリーがある。そこを二人連れ、家族、若者たちが行き交う。私と家内は、ノンアルコールのワインと、ドイツのクリスマス時のお菓子シュトーレンを買って食べた。どちらも甘くて、もう夕食は要らなくなったほどだ。クリスマスツリーのところまで行って、いまたどって来た道を振り返ると、両脇に赤レンガ倉庫、真ん中にツリー、その向こうに電飾が瞬き、気温は低いが、心まで暖まる気がしてくる。少し早いが、クリスマスだ。今年も、家内をはじめ、家族ともども幸せに過ごすことができた。感謝しなければならない。

横浜赤レンガ倉庫のクリスマスマーケット


横浜赤レンガ倉庫のクリスマスマーケット


サンタクロースとトナカイ


東方の三賢人に見守られたマリアとその赤ん坊のイエスキリスト


横浜赤レンガ倉庫のクリスマスマーケット


横浜赤レンガ倉庫


 さて、もう午後6時を過ぎた。桜木町駅や「みなとみらい21地区」に行くのはまた次回にして、馬車道駅から帰るつもりで歩き出した。しばらく行くと、右から横浜コスモワールドの観覧車、クイーンズスクウェア、ランドマークタワーが並んで見える橋まで来た。特に、大観覧車は、カラフルな色が次々に光り、見ていて飽きない。そのうち、中心から端に向けて、光が放射状に走るようになった。家内が「あれは、花火に見立ててあるのよ」という。なるほど、それは思いつかなかったが、確かにそのように見える。しばらく眺めて、ビデオを撮ったりした。それからほどなくして、馬車道駅に着き、東急線から千代田線に乗り継いで帰ってきた。

見かけた馬車


横浜コスモワールドの観覧車、クイーンズスクウェア、ランドマークタワー








【参 考】 ホテルでの紅茶のメニューから

ダージリン(Darjeeling)  世界三大銘茶の一つです。マスカットフレーバーと評される芳香が特徴で、「紅茶のシャンパン」とも呼ばれています。爽やかな香りと味をたのしむには、ストレートティーがお勧めです。

アッサム(Assam)  クセがなく、強い味と芳醇な香りがあるアッサムは、濃厚で飲みごたえがあり、ミルクとの相性が抜群です。

ディンブラ(Dimbula)  マイルドで渋味が少なく、花のようなやわらかな香りを持っています。ストレートティーまたはレモンティーがお勧めです。

ウバ(Uva)  世界三大銘茶の一つです。メンソール系の清々しい香り・コク・渋みを持つウヴァは、ミルクティーに最適です。

アールグレイ(Earl Grey)  柑橘系のベルガメットで香りづけされた、英国の伝統的なフレーバードティーです。華やかなベルガメットの香りをお楽しみください。

アップルクイーン(Apple Queen)  スリランカ産オレンジペコーをベースに、グリーンアップルで香りづけしたフレーバードティーです。甘酸っぱい香りと優雅な風味をお楽しみください。









(平成29年12月10日著)
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