邯鄲の夢エッセイ










 香港、シンガポール、マレーシアの中華料理店に行くと、最後のデザートとして、黒っぽい焦げ茶色のゼリーが出てくることがある。スプーンですくうと、弾力性があって、プリン・プリンとしている。蜂蜜や、レモンと砂糖からできているような甘酸っぱいシロップを掛けて食べるが、それがないと、苦くてあまり美味しいものではない。初めて食べたときは、あまりに薬くさいのでこれは漢方薬ではないかと思ったら、案の定その通りで、亀苓膏(きれいこう:亀ゼリー:Herbal Jelly)と言うらしい。亀の甲羅を粉末にしたものをベースに、甘草、仙草、土茯苓(どぶくりょう)、麻の実などの漢方生薬から抽出した液体を混ぜて蒸し、ゼリー状に固まらせたものだそうな。

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 要するに、薬膳の漢方薬というわけだ。どういう効能があるかというと、体内毒素の排出(デトックス)、二日酔い、便秘、解熱、美肌、美顔など、諸々である。実は、私は健康なときにこのデザートを食べるものだから、何らかの効能があると感じたことは一度もない。もともと、中華料理のコースの最後に出てくるデザートだし、それほど美味しくもないことから、とりわけ好きだというわけでもない。それでも、しばらく食べないでいると、何やら懐かしくなって口に入れたくなる。

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 先日、クアラルンプール市内のメガ・モールを歩いていたときのこと、専らこの亀ゼリーを食べさせるチェーン店を見つけた。「恭和堂」という。早速入ってみた。いかにも漢方薬を売っているような漢字がいっぱいの広告がある一方、そうした広告の中に若い女性の写真を使うなどなかなか洒落た雰囲気のお店である。メニューを見ると、亀ゼリーの大が日本円で約300円、小が約225円、熱いままのものと、冷やしたものがある。冷たい大を頼むと、結構なボリュームである。シロップを掛けて、口に入れると、ああ、この薬くさい味だ。真面目に作っている。冷やっとしているので、どの季節も夏のこの国には、ぴったりのデザートである。

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(平成28年9月15日著)
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悠々人生・邯鄲の夢





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