スタートレック・シリーズとしては4番目となる「ヴォイジャー」は、1995年から2001年の間に放映されたアメリカのテレビドラマである。しばらく経って日本のケーブルテレビでも放映され、私は毎晩、その時間が来るのを楽しみにしていた。その魅力は2つある。 第1はSF映画としてのストーリー展開の巧みさである。特異点、ワームホールなど、仮説を含めて最新の科学上の知見を取り入れており、しかも事件や事象への対処が非常に科学的で理論的なのである。残念ながら情緒やムードが優先する日本のテレビや映画界では、このような映画は、決してできないと思われる。加えて、ストーリー展開がなかなか読めないようになっていて、あっと驚くような結末が待っていることが多い。これを見るだけでも、このテレビ映画は価値があると思うのである。 第2に、単なるSFの域を超えて、人間ドラマをじっくり描いていることである。リーダーシップとはどうすべきか、エンジニアの誇りとはどういうものか、規則にただ従うのではなく臨機応変にいかにすべきか、世慣れた人物がつい漏らす心の内など、人間の苦悩、誇り、愛憎、偏見、勇気、弱さ、優越感や劣等感が垣間見える。こうした点には、ほとほと、感心している。 今は2016年であるから、最初のヴォイジャー・シリーズが始まってから、もはや21年も経っている。しかし、大量破壊兵器をいかに考えるのか、人権とは何かなど今日的話題も多く取り上げてあり、少しも古びた感じがしない映画である。先日ふと思い立って、アマゾンで検索したところ、全シリーズが7シーズンに分けて合計40枚に収められたDVDが売られていたので、一度に買い求めた。これを観るのを今年の夏休みの楽しみにしていたが、このたび全てのエピソードを観賞し終ったので、各回の5段階評価と、粗筋、そして私の感想を書き残しておきたい。 宇宙船ヴォイジャー【目 次】
(注)各回冒頭の表記のうち、「第1」は「シーズン1」を、「@」はディスク1に含まれていることを、「001回」は通し番号を、「(守護神の寿命:Caretaker)」は、(私が付けた題名:英語の原題)、「総合評価 ★★★★☆」は、ストーリーと人間描写などを総合した5段階評価中の4を、それぞれ表す。 宇宙船ヴォイジャー【第1シーズン】 第1@−001回 (守護神の寿命:Caretaker) 総合評価 ★★★★☆ (ストーリー ★★★★☆) (人間の描写 ★★★★★) 惑星連邦艦隊の新鋭調査艦USSヴォイジャーは、キャスリン・ジェインウェイ女性艦長の指揮の下にある。ある日、深宇宙第9基地から、2週間の予定で出航した。その任務は、プラズマ嵐の荒れ狂うバッドランドで消息を絶った反乱軍のマキの船に、スパイとして乗っていたトゥヴォック連邦士官を救出するためだった。ところがヴォイジャーは不思議な力で、マキの船とともに、地球から7万光年も離れたデルタ宇宙域へと、一気に飛ばされてしまった。地球に帰還するには、最高スピードを出し続けても、75年もかかるところだ。 ヴォイジャーをこの宇宙の果てまで飛ばしたのは、「Caretaker」つまり「守護神」なる別の銀河からきた宇宙人で、自分たちが砂漠の星に変えてしまったその償いのために、その星に住む主要部族のオカンパ人に地下都市を作って住まわせ、食料や水を定期的に供給していた。ところが歳をとってその責任を果たせなくなったことから、その仕事を引き継いでくれる子孫を残すために銀河のあらゆるところから異星人を集めて自分のDNAに適合する者を探し出そうとしているところだった。 しかし、その願いは果たせないまま、守護神はその寿命を終えて亡くなった。ジェインウェイ艦長たちは、その宇宙ステーションの中で、自分たちをこの地まで転送してきた設備を見つけたが、それを起動する間もなく、その砂漠の星の異人種のケイゾン族に襲われ、止むを得ずその宇宙ステーション自らの手で破壊せざるを得なかった。ジェインウェイ艦長は、マキの艦長だったチャコチィを副艦長に、マキのメンバーのベラナ・トレスを士官に、そして操縦の腕は確かなのにかつて罪を犯して受刑していたトム・パリスを操縦士として、全員で地球を目指して帰ろうと、乗組員の士気を鼓舞するのだった。 [ キム少尉は、艦隊アカデミーを卒業したばかりで、このヴォイジャーが最初の任務だった。そのエピソードについて、いたく感心した。それは、こういうものだ。キムはヴォイジャーが係留されていた深宇宙第9基地(DS9)で飲んでいたところ、商売上手のフェリンギ商人から、がらくたの宝石もどきを売りつけられそうになった。キムがつい、「フェリンギ商人には気をつけろと、アカデミーの教官に言われた。」と呟いた。それを耳ざとく聞いたフェリンギ商人が「それは、聞き捨てならない。その教官の名前を教えろ。連邦の委員会に抗議してやる。」と凄んだので、キムが驚いてその場を取り繕うとして、「もういいよ。全部で幾らだ。」と答えた。そういうところへ、トム・パリス操縦士が現れて、うまくフェリンギ商人をいなし、キムの窮地を救ってくれた。このエピソードは、真っ当だがまだ世慣れない新人士官の初々しい姿と、それを手玉にとる商人の商売のあくどさ、後に親友となるパリスの機転を描写している。] 第1@−002回 (ブラックホールからの脱出:Parallax) 総合評価 ★★★★☆ (ストーリー ★★★★☆) (人間の描写 ★★★★★) 生粋の連邦艦隊士官学校出のヴォイジャーの乗組員と、元反乱軍マキからヴォイジャーの乗組員となった者どうしの軋轢が表面化しつつあった。そうした中、マキ出身のベラナ・トレスが同僚の連邦士官を殴る事件が起きた。これを契機に不穏な噂が駆け巡ったが、その時、ブラックホールにどこかの宇宙船が捕捉されそうになり、ジェインウェイ艦長の決断でヴォイジャーが救出に向かう。 ところが、ヴォイジャーは途中で衝撃波に逢い、抜け出せなくなった。そのうち、救出対象と思っていた宇宙船が、実はヴォイジャーそのものであることがわかった。この困った事態に、ベラナ・トレスが自分たちは氷の下にいるのと同じで、氷に写っている自分自身の姿を見ていると説明した。次いで、これを抜け出すには、いま通ってきた穴をまた通るほかないと言い出した。ところが、その穴は再び閉じようとしていて、それをこじ開けるために、艦長とベラナ・トレスが小さなシャトルで出発した。 2人だけになったところで、艦長はベラナ・トレスの艦隊士官学校での成績を褒め、中退したのは皆に惜しまれたと語った。すると、ベラナの固かった心が打ち解け、昇進話を受ける方向に気持ちが傾いていった。一方、シャトルは、脱出できる程度の穴をこじ開けるのに成功し、ヴォイジャーは危地を脱した。実力を発揮したベラナ・トレスは、機関部長に任命された。 [ 2つの、しかもライバル関係や敵対する状況にある組織の融合というのは、会社の合併を見てもわかるように、難しいものだが、それをよく描写している。最後は、トレスのように、実力をもって、示すしかない。] 第1@−003回 (亜空間の歪み:Time and Again) 総合評価 ★★★☆☆ (ストーリー ★★★★☆) (人間の描写 ★★★☆☆) ヴォイジャーは通常航行中に、急な衝撃波を受けた。その原因となった星は、居住可能なMクラスの惑星で、ついその前日に文明全体が消滅するほどの大爆発を起こしたばかりだった。ジェインウェイ艦長とパリス操縦士はその調査に向かったが、廃墟を調査中に、艦長とパリス操縦士だけが、爆発前の世界に入り込んでしまった。爆発で生じた亜空間(サブスペース)の歪みが原因らしい。このままだと、二人は大爆発に巻き込まれてしまう。ヴォイジャーのチャコチィ副艦長とトレス機関部長たちは、徐々に閉じていく亜空間を広げて、二人を救い出そうとする。 大爆発前の地上の世界に現れた艦長たちは、極性エネルギーを使った特殊な発電所への反対運動に巻き込まれる。艦長らを政府のスパイと疑った反対派は、発電所占拠計画を1週間早める。その決行で、発電所内部に入り込んだ反対派が工作中に、ヴォイジャーの副長たちは、亜空間を広げて艦長らを救出しようとする。しかし、実はそれが大爆発の原因だった。それに気づいた艦長は、亜空間の歪みにビームを浴びせ、拡大中の亜空間を打ち消した。すると、ヴォイジャーは、あたかも何事もなかったように、元の時間の状態に戻った。 [ 現代の原子力発電所反対運動を思い起させるようなエピソードである。一つの星系を一挙に消滅させるような大爆発の原因が、実はそれを調べようとしたヴォイジャー自身にあったとは、何たる皮肉か。ストーリーの巧みさに脱帽する。] 第1A−004回 (種族を蝕む病気:Phage) 総合評価 ★★★☆☆ (ストーリー ★★★☆☆) (人間の描写 ★★★☆☆) 小惑星で燃料のダイリチウムを探していたヴォイジャーの乗組員中のニーリックスが、何者かに襲われて肺を盗られた。そのままでは直ちに死ぬところ、緊急医療用ホログラム・ドクターの機転で、レプリケーターで肺を複製してひと息ついた。そこで、本物の肺を取り戻すべく、敵の衛星に進入したヴォイジャーは、その敵を捕らえた。 ところがそれは、疫病のフェイジに悩む種族のヴィディア人で、他の種族から体組織を奪って、生きながらえているもので、ニーリックスの肺も既に移植してしまったとのことだった。そこで、罪滅ぼしにその進んだバイオ技術を使って恋人のケスの肺をニーリックスに移植して、何とか問題の解決が図られた。 [ 未来の臓器移植を彷彿とさせるエピソードである。盗まれた肺をレプリケーターでホログラムの形で複製してはめ込むという発想、しかも患者は動かせないという巧みなストーリーに、これまた脱帽する思いである。] 第1A−005回 (星雲の正体:The Cloud) 総合評価 ☆☆☆☆☆ (ストーリー ☆☆☆☆☆) (人間の描写 ☆☆☆☆☆) ダイリチウム燃料を補給するつもりで、通りかかった星雲に入ったヴォイジャーは、その星雲と思っていたものが実は生命体であることを知った。そこで、それに進入する時に開けた大きな穴を塞いでその生命体を救い、自らも脱出した。 [ 生命体との交流その他、何か面白いものがあるかと思ったら、わずかにヴォイジャーが開いた穴を塞ぐ程度で、そういうものは何もなく終わってしまった。敢えて言えば、駄作の類いである。] 第1A−006回 (駱駝の針の穴:Eye of the Needle) 総合評価 ★★★★★ (ストーリー ★★★★★) (人間の描写 ★★★★★) 航行中、ヴォイジャーは、たまたまワームホールを発見した。入口がわずか直径30センチで、小さすぎて宇宙船が通り抜けることはできないが、探査機で探れば向こう側の事情が分かるかもしれないと、そのワームホールの中へ送り込んだ。すると、先方に誰かがいて、しかも探査機をスキャンしている形跡がある。先方がヴォイジャーのやって来たアルファ宇宙域にいる可能性はわずか25%にすぎないが、そのわずかな可能性に賭けて、先方と通信を試みた。 すると、先方は、うまい具合にアルファ宇宙域にいるが、連邦と敵対しているロミュラン国の宇宙船であることがわかった。通信が出来るようになり、ビデオも繋がった。その画面を見ながら、罠かスパイではないかと警戒する相手のロミュラン船の船長に、ジェインウェイ艦長は必死の説得を試みた。「あなたにも、家族はいるだろう。我々は7万光年も遠くの地にいて、いつ会えるかもわからない。せめて、乗組員の家族へのメッセージくらいは預かってほしい。」最初は態度が固かったロミュラン船の船長も、次第に軟化していった。 そのうち、トレスが、この電波を使えば、ヴォイジャーの乗組員をロミュラン船に転送できることに気がついた。その準備を終え、まずロミュラン船の船長に転送でヴォイジャーに来てもらった。全員が帰還できると大喜びする。しかしそれは、ぬか喜びに終わった。トゥヴォック保安部長が「このロミュラン人は、20年前の時代から来た。」と気づいたからである。そのワームホールは、空間だけでなく、別の時間に通じていたのである。20年前には帰れない。泣く泣く帰還を諦めるほかなかった。 それでも、そのロミュラン人に、乗組員のメッセージを託し、20年後に連邦艦隊に届けてほしいと頼んだ。すると、必ず届けると快諾してくれた。しかし、トゥヴォックがデータベースでその人物を調べたら、今から16年後つまり、20年まで残すところあと4年という時点で亡くなっていた。 [ 二転三転する驚くべき事態の推移に、ただただ感心するばかり。ワームホールが、別の空間と繋がっているだけでなく、別の時間と繋がっていたとは、最高のどんでん返しである。さらにロミュラン人が20年の経過を待たずに亡くなっているとは、凡人には、とても考えつかない落ちである。] 第1A−007回 (殺人現場の記憶:Ex Post Facto) 総合評価 ★★★★★ (ストーリー ★★★★★) (人間の描写 ★★★★★) ヴォイジャーからシャトルでベニーン星へ向かったパリス操縦士とキム少尉は、そこの科学省長官の家に招かれ、年若い妻に会う。ところがパリスは、その妻を殺したという罪で有罪となった。罰として、被害者が殺される直前の映像を14時間ごとに繰り返し見せられる措置を受けた。ところが、その処罰のせいで、パリスが弱っていき、もう長く持たないという状態に陥った。ジェインウェイ艦長は、トゥヴォック保安部長に事件の解明を委ねる。そうこうする中、ベニーンと戦闘状態にあるニューミリ星所属の宇宙船から、ヴォイジャーが攻撃を受けるが、マキの戦術を駆使して逃れる。 トゥヴォック保安部長は、パリスの相手となった妻を尋問し、パリスと精神融合までして真相を解明しようとする。その殺人の瞬間の映像を見て、何かを掴んだトゥヴォックは、殺人現場の長官の家に関係者を集めた。パリスを長官の横に立たせて、映像と異なり、パリスの方が妻より背が高いことを指摘した。次に、映像中に軍事機密の数式が含まれていて、これをパリスの脳に含まれる形でニューミリ側へ渡そうとしている者がいる。これらが出来るのは、本件の捏造された記憶をパリスの脳に移植した医師だけであることを指摘した。その医師に部屋のドアを開けさせると、客には吠えるはずの飼い犬が、医師 に慣れた様子でじゃれ付き、医師も観念した。 [ まるでポアロなどイギリスの探偵小説の種明かしを見ているような、見事なストーリー展開で、上質のミステリードラマを見たような新鮮な感覚がした。] 第1B−008回 (来世の本当の姿:Emanations) 総合評価 ★★★★☆ (ストーリー ★★★★☆) (人間の描写 ★★★★★) ある小惑星帯の星を囲む輪の中に、247番目にあたる新元素を発見した。これで宇宙船を作れば太陽の中でも大丈夫となる。その調査に向かったチャコチィ副艦長、キム少尉とトレス機関部長は、有機体に包まれて放置された多くの死体を見つけた。新元素は、これらの死体が崩壊する過程で生じたものらしい。転送でヴォイジャーに帰ろうとした3人のうち、キムだけが別の星へ飛ばされてしまった。気が付いたら葬儀場の棺の中で、それを開けると、来世の存在を信じている異星人と出会う。キムと入れ替わりで、死んだばかりのその種族の若い女性がヴォイジャーに転送されてきた。その棺は、一種の転送装置になっているらしい。 若い女性を蘇生させることができたが、彼女は、「来世では既に死んだ家族などに会えて、宇宙のことは何でもわかる高次の意識を持つ存在になると信じていたのに、これは一体どうしたというの。」と、嘆くばかり。一方、キムは、来世から来た人間だと思われ、あの世のことを聞かれた。小惑星で経験した通りのことをありのままに言うと、「そんなはずはない。来世の信仰を汚すのか。」と反発され、遂には、監禁されそうになる。そこで、その葬儀場で知りあった身障者の男性が、「キムの話を聞いて、死ぬのを思い直した。山中で一人で暮らしたい。」と言うのを聞き、棺の中で身代わりになることを思い付く。一時は本当に死ぬことになるが、ヴォイジャーで蘇生できることに賭けて、棺に入り、身代わりとなって、その死体はヴォイジャーに転送された。 ヴォイジャーで医療措置を受けたキムは、無事に蘇生して意識を取り戻した。そして、直ぐに勤務に戻ろうとするが、あまりに衝撃的だった出来事にまだ気持ちの整理がつかない。その様子を見て、艦長が語りかける。「あなたほど若いと、日々の雑事に追われてあまり気がつかないかもしれないけれど、人生には、時々立ち止まって自分の考えをまとめておいた方がよいことがあるのよ。あと2日間、ゆっくりと休みなさい。」 [ 死んだ後はどうなるのだろうかという、誰もが抱く疑問を、この星の人たちは、精神だけでなく肉体もさらに高次元の存在になると信じている。そういう考え方もあるかと思うが、実は死んだ肉体が小惑星にゴロゴロと転送されていたとは、ミステリアスな話である。見方によっては単なるホラーストーリーになるところだが、最後にジェインウェイ艦長がキムに示す暖かな心遣いが、何とも素晴らしい。] 第1B−009回 (おもてなしの裏に:Prime Factors) 総合評価 ★★★★☆ (ストーリー ★★★★☆) (人間の描写 ★★★★☆) ヴォイジャーは、おもてなしの精神で有名なシカリス星に立ち寄り、ジェインウェイ艦長たちは、長い航海の疲れを癒していた。そのとき、キム少尉がある女の子と仲良くなり、転送装置によって遠い星に飛んで一緒に夜明けの風景を楽し んでいた。ところがそれは、4万光年も先の世界で、この空間を折り曲げる転送装置を使えば7万光年も離れた故郷への道が一気に開けると、皆が喜んだ。 その技術の提供をシカリス星の行政官に申し入れたが、法律を盾にして断られた。ジェインウェイ艦長は、シカリス人が好きな物語のライブラリーと交換することを思い付く。そういう時に、キムがブローカーから、ライブラリーと交換なら転送装置を提供するという申し入れを受ける。キムは持ち帰って、ジェインウェイ艦長らに相談する。艦長は、シカリスの法律に従って諦めるか、それとも闇のルートで転送装置を入手するかという難しい選択に迫られる。艦長はまず、行政官を説得して、連邦の物語ライブラリーと交換に、転送が終わったら装置を破壊するという条件でどうかと申し入れるが、断られる。次に、装置や技術はいらないから、乗組員だけ送ってくれないかと頼むが、これも断られ、喧嘩別れに終わる。 埒が明かないとみたトゥヴォック保安部長は、独断でシカリス星に行って転送装置を入手し、それをトレス機関部長に渡し、艦長に報告するまで動かすなと言ってブリッジに向かった。その間、トレスたちは、勝手に転送装置を起動した。ニュートリノの数値が上昇し、さあ転送に入ろうというとき、この装置はシカリス星の核を利用しているので、シカリス星を離れては動かせないことがわかった。ブリッジからのヴォイジャー発進の命令に反してそのまま動かしていたところ、突然、機関が暴走し始めた。連邦のテクノロジーと合わなかったのだ。 失意のトレスとトゥヴォックは、艦長の元へ行って、命令違反の全てを打ち明けた。トレスには、本来なら軍法会議ものだが、事情も考慮し、人員に余裕がないということもあり、これを許した。トゥヴォックには、「長い間の友人で頼りにしていたのに、なぜこんなことをしたのか。」と聞いた。するとトゥヴォックは「論理的にはルールを守るか、それとも破るかしかない。ところが、艦長の立場を考えると、ルールは破れない。しかし、それしか道はない。だから、艦長に代わって行動した。」と答えた。それを聞いたジェインウェイ艦長は、「わかった。次に何かするときは、私に言ってね。」と言った。 [ おもてなしの裏には何かあるというわけで、結局シカリス人は、自分たちが満足するだけで、相手のことは何も考えていないと、ジェインウェイ艦長が喝破する。確かにその通りである。また、ジェインウエイ艦長は、乗組員の士官たちが命令違反の行動に出たときに、事情を汲んでそれを許す。つまり規則か人情かという選択をしなければならない局面で、アメリカ映画には珍しく、人情を選ぶ。こういうところが、このヴォイジャーのシナリオ・ライターは、人間というものをよく分かっていると思った。] 第1B−010回 (裏切者の末路:State of Flux) 総合評価 ★★★☆☆ (ストーリー ★★★☆☆) (人間の描写 ★★★★☆) ヴォイジャーの乗組員は、とある星で食料となる植物を探していた。マキ出身のセスカ乗組員が行方不明となったが、敵対するケイゾン人が徘徊する中を、チャコチィ副艦長が探索に出て、撃たれるがセスカと一緒にヴォイジャーに帰る。その頃、ヴォイジャーの近くに敵対するケイゾン・ニストリムの宇宙船がいた。ところが、そこからの救難信号を受けた。罠かもしれないと思いつつ、ヴォイジャーは救援に向かう。 到着してみると、その宇宙船はひどく損傷していて、デッキで大爆発事故が起こっていた。その原因を調査したところ、それはヴォイジャーから持ち出された連邦の装置によるものと判明した。乗組員の誰かが、ケイゾンに渡したものらしい。では、誰が裏切ったのか、犯人探しが始まった。誰かわからないが、機関部からケイゾンに通信した形跡がある。ケリー中尉を読んで尋問するが、答えは出ない。 一方、機関部員のセスカを呼ぼうとするが、セスカは大爆発事故を起こした宇宙船に勝手に行き、負傷する。証拠隠滅ともとられかねない行動である。医務室に運び込まれたセスカは、血液検査の結果、ベイジョー人ではなく、実はカーデシア人であることがわかる。つまりチャコチィ副艦長はマキのとき、連邦のスパイであるトゥヴォックとカーデシアのスパイであるセスカに囲まれていたというわけで、ショックを受ける。スパイをあぶり出すため、罠を仕掛けたところ、セスカの名前で操作する者がいた。チャコチィ副艦長はセスカだと確信する。セスカは遂に認め、自分を船外に転送してしまった。 [ 部内のスパイ探しという気の重いテーマだが、論理的に追及していくと、セスカしかいないという結論になり、やはりその通りだった。この地球から遠く離れた宇宙域まで飛ばされて、帰る望みもほぼなくなったことに絶望して、裏切りを起こしたらしい。一方、チャコチィ副艦長はトゥヴォックに『二人に騙されるなんて、俺はそれほど人が良いのか?』と問う。しかし自分を騙していた相手に対するその問い自体が、いささか哀れというか、皮肉にも、それこそチャコチィの人の良さを表している。] 第1B−011回 (ドクターの初任務:Heroes and Demons) 総合評価 ★★★☆☆ (ストーリー ★★★☆☆) (人間の描写 ★★★★☆) ある星から光るサンプルを転送で収集しているとき、キム少尉がヴォイジャーにいないことが判明した。その直前にはホロデッキにいたはずだ。チャコチィ副艦長とトゥヴォック保安部長が捜索に向かった。中では、キムが作ったベオウルフ物語のホログラム・プログラムが動いていて、なぜか停止できない。そこに登場する光る怪物に襲われ、キムだけでなくチャコチィとトゥヴォックまで、消えてしまった。 ジェインウェイ艦長は、普通の人間では危ないと考え、医療用緊急ホログラムであるドクターに、調査を命じた。初の任務である。ドクターは、ベオウルフ物語の中に入り込み、どうにかこうにか任務を果たす。その結果に基づいて解析したところ、ヴォイジャーがたまたま星から収集した光るサンプルは、実は生命体であることがわかった。すると、その報復として、3人が誘拐されたのではないかと思われた。そこで、ドクターにもう一度、ベオウルフ物語の中に入ってもらい、その光るサンプルを解放したところ、3人が無事に帰ってきた。 [ もともと、緊急医療用ホログラムに過ぎなかったドクターに、医務室以外で初の任務を与えたものである。それまでは人並みには扱われていなかったドクターが、これを契機に、ヴォイジャー内で大いに活躍することになる。] 第1C−012回 (魂が肉体から離脱:Cathexis) 総合評価 ★☆☆☆☆ (ストーリー ★☆☆☆☆) (人間の描写 ★★☆☆☆) チャコティ副艦長とトゥヴォック保安部長が乗ったシャトルが、とある暗黒星雲の近くで何者かによる攻撃を受け、トゥヴォックは軽症だったがチャコティは脳から神経エネルギー反応がない状態でヴォイジャーに戻ってきた。いわば脳死状態である。同時に、船内には何者かが侵入していることが探知された。しかもこの謎の侵入者は、人間を含む有機体に入り込むことができ、入り込んだらその人間を自由に操ることができる。艦長を含め、乗組員全員が疑心暗鬼になった。 やがて、ヴォイジャーは暗黒星雲の中へと誘導されていく。そして遂に、トゥヴォックが侵入者に操られていることが判明する。その星雲内に住む生物が、通りすがりの宇宙船の乗組員から神経エネルギーを吸い取って、それを食料代わりにしているというのである。艦長はヴォイジャーの中である種のエネルギーを発生させ、トゥヴォックに入り込んだ侵入者を追い出すのに成功したが、星雲から脱出する道がわからない。そのとき、チャコティの身体から抜けた魂が、脱出ルートを示してくれたので、ヴォイジャーは星雲から逃れることが出来た。間もなく、チャコティも目を覚ました。 [ いわゆる臨死体験、例えば、瀕死の重傷を負ったとき、自分の身体から魂が抜け出し、気がついたら横たわる自分の身体を天井近くから眺めていたなどと、死に直面した人が魂と肉体との分離を経験するというが、それに近いテーマである。確かに、誰の身体がエイリアンに乗っ取られるかわからないという恐怖は、ホラー映画にも通じるところがあって、そういう意味では際物である。しかし、最後にジェインウェイ艦長がチャコティを労う場面だけは、女性艦長のヴォイジャーらしさが出て、良いと思う。なお、「Cathexis」というのは、「フロイトの用語。心的エネルギーがある特定の観念や人物などに向けられること。対象にある感情や関心を注ぐこと。」(大辞林)らしい。] 第1C−013回 (トレスが2つの体に分離:Faces) 総合評価 ★★★★☆ (ストーリー ★★★★☆) (人間の描写 ★★★★★) ベラナ・トレス機関部長は、勇猛をもって知られるクリンゴン人の母と地球人の父との間の混血の女性である。それが、ある惑星への上陸任務中、パリスとダーストとともに行方不明になった。惑星の地下を調べると、何者かがフォースフィールドを設けて偽装している。3人は、その中に閉じ込められているらしい。 実は、その中にいるのは、第1A−004回 (種族を蝕む病気:Phage)に出てきたヴィディア人で、何とベラナ・トレスを純粋なクリンゴン人と地球人に分けて2人にしてしまった。そして、クリンゴン人のベラナに彼らが苦しむ疫病に感染させ、病気への耐性を見ようとしていた。この病気に打ち勝つためには、クリンゴン人が最適だと思っているらしい。一方、パリスたちは、収容所に入れられて作業をさせられており、役に立たなくなったら、臓器を盗られて移植させられるという悲惨な状況である。そこへ地球人のベラナが放り込まれてきた。 クリンゴン人のベラナが地球人のベラナと脱出しようとしているとき、ヴィディア人に扮したチャコティ副艦長が合流し、パリスとともに脱出してヴォイジャーに転送されたが、その時にクリンゴン人のベラナが撃たれて死んでしまう。のこった地球人の方の遺伝子操作をして、ベラナは元に戻った。 [ 混血の1人の身体にある別人種由来の2つの遺伝子を分離して、2人の身体を作ってしまうという奇想天外な話である。分離する前は時に粗暴な行動をとっていたのに、純粋な地球人となったベラナは、実は弱虫で臆病者だった。しかし、元に戻ったベラナは、これからも2つの人格を持ちながら生きていくつもりだと語る。このエピソードは、人の人格というものを深く考えさせられる。] 第1C−014回 (大量破壊兵器メトリオン爆弾:Jetrel) 総合評価 ★★★★★ (ストーリー ★★★★★) (人間の描写 ★★★★★) ハーコニアの宇宙船が近付いてきて、ニーリックスに用があるという。ニーリックスは、初回にヴォイジャーがオカンパ人の住む星を訪れたときに、オカンパ人女性のケスとともに志願して、ヴォイジャーの乗組員となった異星人である。ハーコニアの宇宙船の船長がジェトレル博士だと知った途端、ニーリックスが強く反発し、あれは大量破壊兵器メトリオン爆弾を開発して、ニーリックスの故郷のライナックス星を攻撃し、30万人の大虐殺を行った張本人だという。戦争をしていたニーリックスの母星は、その爆弾のせいでハーコニアに降伏した。 その博士がなぜニーリックスの健康診断をしたいかというと、ニーリックスは防衛隊員として爆発直後のライナックス星に入り、そこでメトリオン放射線を浴びて原子結合が崩壊する不治の病に冒されていないかどうかを調べたいということらしい。博士が調べたところ、ニーリックスはこの病気に罹っていた。その時、博士はヴォイジャーの転送装置に着目した。これがあれば、ライナックス星を覆う原子雲から、この病気の薬を作ることが出来るかもしれない。そこでヴォイジャーは、ライナックス星に向かった。 ニーリックスと博士は、大量虐殺責任について言い争う。 ニーリックス「なぜあのような大量破壊兵器を作ったのか。あのせいで自分の両親や兄弟を含めて30万人も一挙に亡くなり、美しかったライナックス星が廃墟になった。お前を決して許さない。」 博士「私は自分の国と科学のために開発しただけだ。たとえ私がやらなくとも、科学は進歩するから、誰か別の人間がやっていたはずだ。それに、あの爆弾を使うというのは、政府と軍部が決定したことで、私のあずかり知らぬ問題だ。」 ニーリックス「人のいない所に落とすなど、いくらでもやり方があったはずだ。」 博士「単なる威嚇では、効果がないと思ったのだろう。」 ライナックス星に到着してみると、そこはまさに死の星で、いまなお放射能雲に覆われていた。そこから転送で、放射能雲のサンプルをヴォイジャーに取り寄せた。博士はそれを材料に研究を始めるが、ホログラムドクターを消して秘密に行うなど、何やら様子がおかしい。その直前だったが、再びニーリックスと博士が言い争う。 ニーリックス「自分の家族は、あの爆弾で皆死んだ。お前のせいだ。」 博士「自分の場合も、死んではいないが、似たようなものだ。爆弾が爆発した直後、家に帰ると、妻が変なものを見るような目付きで私を見て、体に触れようとすると逃げていき、そのうち3人の娘を連れて家を出ていき、それ以来、会っていない。」 これを契機に2人の距離は縮まった。他方、博士がライナックス星の放射能雲を使って何かの実験を行い、そのまま転送室で作業を始めた。それに気づいたジェインウエイ艦長たちは転送室に駆けつけた。そこで博士がしようとしたのは、ライナックス星を覆う放射能雲から、ヴォイジャーの転送機能を使って元の人間などの有機体を復活させられないかということだった。しかし、何十億もの散らばっている粒子から探して統合しなければならない。これが成功すれば、自分は殺した人々を生き返らせ、罪を償うことが出来ると博士は訴える。難しいが、やってみる価値はあるものと艦長は同意し、試してみた。ところが、あと一歩のところで失敗してしまう。博士も、メトリオン放射線病のために、危篤となる。死の間際、ニーリックスは博士に「お前を許すよ。」と語りかけ、博士はあたかも肩の荷を降ろしたような様子で死出の旅へと出立した。 [ 広島・長崎への原子爆弾の投下のような話である。それを意識してシナリオが練られてのは間違いなく、重いテーマをじっくりと掘り下げて取り組んでいる。科学者はただ科学の発展ということしか頭になく、政治家と軍部は相手国をねじ伏せるのに最も効果的な使い方をするということしか考えない。だから、その大量破壊兵器で何十万人もの人間の生命と平和な暮らしを永久に奪ってしまうということまで、思いが至らない。その筆舌に尽くせない大きな被害を埋め合わせるように、転送装置で亡くなった人々を蘇らせようとするのは、アメリカのSF映画ならではの発想である。これを、このシーズン1の最高のエピソードとして評価したい。] 第1C−015回 (バイオ神経回路の不調:Learning Curve) 総合評価 ★★★★☆ (ストーリー ★★★★☆) (人間の描写 ★★★★★) 宇宙船としてのヴォイジャーのいわば中枢神経を構成するバイオ神経回路、通称ジェルパックは、一種のバイオテクノロジーによる回路の部品であるが、それに異常が生じた。元マキのメンバーであったダルビーは、勝手にそのジェルパックの交換修理をした。それを見つけた元艦隊アカデミー教官であるトゥヴォックが、ダルビーなどの元マキのメンバーを集めて艦隊式の訓練を始めた。しかし、彼らにとってそれが厳しいものだったので、トゥヴォックの指導に従わず、トゥヴォックは悩み始める。 他方、ジェルパックの異常はますます拡大していき、ついにヴォイジャー全体に影響が出始めた。ドクターがジェルパックを検査したところ、何かのウイルスに感染していた。ジェインウエイ艦長は感染経路の調査を命ずるが、どうやら調理場のニーリックスが作ったチーズが原因らしいことがわかった。しかし、この病原体をジェルパックから駆逐する方法がなかなか見つからない。 トゥヴォックが、倉庫で元マキのメンバーを訓練しているとき、ジェルパックの異常で扉が開かず、閉じ込められてしまった。一人のメンバーにジェフリー・チューブ経由で調べに行かせたそのとき、倉庫に有毒ガスが放出され、そのまま留まっていると危険になった。トゥヴォックは、一人を救うより皆が逃げるのが艦隊規則だと言って、元マキのメンバーの皆を逃がすが、自分は残されたその一人のメンバーを探しに行った。そして、気を失ったそのメンバーを抱えて脱出する途中で力尽きて倒れてしまう。 ドクターは、助手のケスのアイデアで、ジェルパックを加熱すればウイルス対策の殺菌できることを発見した。そこで、ジェインウエイ艦長は、生命維持装置向けを含めて船内のあらゆるエネルギーを使って船体を80度に加熱し、辛くも除菌に成功した。その頃、元マキのメンバーはトゥヴォックともう一人を助け出し、トゥヴォックに「艦隊規則では、見殺しにするはずだが、なぜ助けたのか?」と聞いた。トゥヴォックは、「艦隊規則も場合によっては、曲げる必要がある。」と答えた。すると元マキのメンバーは、「それじゃあ、俺たちは反対に艦隊規則を守ろうとするか。」と言った。 [ ヴォイジャー自らの船体を加熱してジェルパックを除菌するというアイデアも面白いが、それ以上に、反抗的な元マキのメンバーをトゥヴォックがどうやって訓練するかと悩み、結果的に従わせてしまったストーリーの巧みさには、感心してしまった。] 宇宙船ヴォイジャー【第2シーズン】 第2@−016回 (1937年に姿を消した人々:The 37's ) 総合評価 ★★★★☆ (ストーリー ★★★★☆) (人間の描写 ★★★★☆) デルタ宇宙域の宇宙空間に、1930年代のフォード・トラックが浮いており、微かなSOSを受信したヴォイジャーは、その発信源の惑星に向かった。干渉波が強くて転送もシャトルで行くこともできないので、ジェインウェイ艦長はヴォイジャーを着陸させた。発信源は、昔の地球のアルミニウム製の古ぼけた飛行機で、誰もいない。地下に施設があるので降りて行くと、冷凍保存された8体の人間を見つけた。そのうちの一人は、アメリカ人のアメリア・エアハートで、南太平洋で行方不明となった女性飛行士である。これら8人を覚醒させたところ、いずれもジェインウェイ艦長の話を信じず、アメリアのパイロットは、銃で艦長たちを脅す始末である。 艦長たちを救出に来たチャコチィ副艦長とトゥヴォック保安部長は、何者かに襲われて身動きがとれなくなる。そこを艦長が救うが、襲ってきた者たちは、自分たちも地球人で、正確にはその子孫だという。その説明によれば、ブリオリ人という異星人が今から400年前の1937年に、たくさんの地球人を誘拐し、この星に連れてきて、奴隷として働かせた。ところが、やがて地球人奴隷が反乱を起こして、ブリオリ人を追い出すことに成功した。今ではその子孫が3つの都市に、10万人も住んでいる。美しい都市だから、見に来てほしいという。 都市を訪れたジェインウェイ艦長たちは、あまりに地球と似ているので、ここに残るべきか、それともヴォイジャーで地球を目指すのか、迷い始める。乗組員にも、残りたい者は残ってよいと伝え、 皆の決断に任せる。残りたいと思う乗組員は、貨物室に集まるようにと言い、その時間に貨物室のドアを開けた。ところが、誰一人、残留希望の者はいなかった。 [ UFOに誘拐されたという話から着想を得て、ストーリーを膨らませたような話である。このまま、この星に住み着くか、それともヴォイジャーに乗ってあくまでも故郷を目指すのかという、乗組員の揺れる心を描いている。] 第2@−017回 (成年の儀式:Initiations) 総合評価 ★★☆☆☆ (ストーリー ★★☆☆☆) (人間の描写 ★★★☆☆) チャコティ副艦長が単独でシャトルで出て、先祖の霊に祈っているとき、突然、ケイゾンの宇宙船の攻撃を受ける。それを操縦していたのはケイゾンの少年カーで、戦士の称号を得るためのものだった。それに失敗した少年カーは、囚われたチャコチィとともに母船に戻ったところ、ケイゾンの指導者から敵を殺すのをしくじったとなじられ、もはやお前の居場所はないと言われる。そしてチャコティはケイゾンから、少年カーを殺せば自由の身にしてやると提案される。もちろん、チャコチィにはそんなことはできないので、隙を見てケイゾン指導者の銃を奪い、少年カーとともに、シャトルでケイゾン船から脱出する。ところがシャトルでは逃げ切れず、辛うじて惑星に転送する形で逃れた。 惑星では、少年カーは戦士となるためにチャコチィを殺そうとするが、殺せない。そこへ、ケイゾンの指導者とジェインウェイ艦長らが共同で捜索に来た。チャコチィは少年カーを戦士にしてやるため、「自分を殺せ、2分以内ならヴォイジャーで蘇生してくれる。」という。すると少年カーは、意外なことにケイゾンの指導者を撃ち殺し、「これで戦士になった。」と叫ぶ。他のケイゾンたちもこれを認め、自分の船に戻って行った。 [ まるで原始時代の好戦的部族相手にしているようなもので、その発想を逆手にとったようなものである。] 第2@−018回 (ホログラムの暴走:Projections) 総合評価 ★★★☆☆ (ストーリー ★★★☆☆) (人間の描写 ★★★★☆) 緊急医療用ホログラムのドクターは、プログラム起動直後に、ヴォイジャー船内に生命体が誰もいないことに気がついた。しかもプログラムの投影にすぎないはずの自分の身体に脈拍があり、血まで出てきて、痛いという感情があるのに驚いた。生身の人間になっていたのである。そのときヴォイジャーはケイゾン族に攻撃され、ジェインウェイ艦長とトレス機関部長だけが残って修理したが、後の乗組員は緊急用の脱出ポッドで逃げたものの、皆がケイゾンに捕まったという。 一方、ドクターの面前に、見知らぬ艦隊士官レジナルド・バークレーが助手だと名乗っていきなり現れ、「あなたは、木星の宇宙基地にいるドクター・ジマーマンで、もちろん生身の人間だ。放射線の影響でホロデッキが暴走して出られないから、救出に来た。このままでは、放射線の影響であなたは死んでしまう。これを逃れるには、ヴォイジャーの船体を破壊するしかない。」と言われる。ドクターは混乱するが、次第にその男の話を信じ始める。 他方、ホロデッキにチャコチィ副艦長が現れ、「放射線の影響でシステム不具合が生じた。救出するので、もう少し待ってくれ。」とドクターに告げる。引き続いて、ドクターの前にケスに似た女性が現れ、「私は、あなたの妻。どうか、この人の言うことを聞いて。」と、バークレーの言う通りヴォイジャー破壊するようにと繰り返す。混乱の極みに達したとき、ドクターは、医務室で目覚め、バークレーと妻を名乗る女性のいうことが嘘だったことを知る。これらは、ドクターのプログラムが生み出した幻影のようなものだった。 [ 幻影が、誠に真に迫っていて、思わず、どちらがどれかわからなくなるほどの出来で、真実を見抜くのはなかなか難しいものだと、改めて思った。] 第2@−019回 (一生に一度の発情期:Elogium) 総合評価 ★☆☆☆☆ (ストーリー ★☆☆☆☆) (人間の描写 ★☆☆☆☆) ヴォイジャーが宇宙空間で不思議な生物に出会った。ものすごいスピードで飛び、 無機体から直後、栄養を取り入れている。それに囲まれたとき、オカンパ人女性のケスの身体が影響を受け、一生に一度の発情期を迎えた。この機を逃すと、二度と子供ができない。 ヴォイジャーは、この生物に囲まれて脱出できない。それどころか、ヴォイジャーの船体に付着してきた。そのうち、もっと大きな身体の生物が現れて、ヴォイジャーに体当たりを始めた。これは、ヴォイジャーを恋敵と見なした生物の攻撃ではないかと考えたチャコチィ副艦長の提案で、負けたように装ったところ、船体に付着した生物は離れていった。 ケスに子供を作るように迫られたニーリックスは、最初は自信がなくて断るが、トゥヴォック保安部長と話して父になる自覚が生まれ、ケスに告げる。しかし今度はケスの方がまだ早すぎるのではないかと心配し始める。そうこうしているうちに、この生物の生息地を抜け出したところ、ケスの発情が収まった。ドクターによれば、将来、本物の発情期を迎えることができるそうだ。 ジェインウェイ艦長のところに、ある女性士官が来て、何か言おうとする。艦長は、「妊娠したの?」と聞くと、やはりそうだった。 [ オカンパ人女性は、そういうものだとしても、それに妙な宇宙生物と結びつけるところに、かなり無理がある設定である。駄作の典型。] 第2A−020回 (サンフランシスコでの幻:Non Sequitur) 総合評価 ★★★★☆ (ストーリー ★★★★★) (人間の描写 ★★★☆☆) キム少尉が目覚めてみると、そこはデルタ宇宙域のヴォイジャーではなく、24世紀のサンフランシスコの自宅で、しかも婚約者と一緒だった。これは夢か現(うつつ)か、婚約者とも、全く話が合わない。朝起きて近くのコーヒーショップへ行くと、イタリア人のオーナーが親しげに話しかけてくる。そこへ同僚が現れ、午前9時から艦隊で新型艦の説明だと言って、キムを連れて行く。その機関の設計をキムが担当したらしいが、説明ができないので、病気ということでその場を出た。なぜこの日時にこの場所にいるのか納得できないキムは、ヴォイジャーの記録を知ろうとファイルにアクセスするが、機密事項になっていた。 そこでキムがヴォイジャーのコードで入ると、乗船したのは自分ではなく、バードで、しかもトム・パリスは乗船していない。そのトム・パリスの現在地はフランスのマルセイユというので、キムは彼のいるバーに行ってみた。すると、パリスは呑んだくれてビリヤードの最中だった。パリスが言うには、「ジェインウェイ艦長がニュージーランドの矯正施設までやって来て、乗組員になるつもりでDS9基地まで行ったが、フェリンギ人と諍いを起こして牢屋に入れられ、ヴォイジャー勤務の話も取り消された。」という。 サンフランシスコに戻ってみると、キムは機密事項に無権限でアクセスしたとして、艦隊の査問を受け、足首に監視装置を付けられる。婚約者に事情を説明するが、結婚に迷いが出たのかと思われる。混乱して自宅の周りを歩くと、コーヒーショップのイタリア人のオーナーが実は異星人で、キムを監視していたという。キムがヴォイジャーからシャトルを使って任務で出ていたときに事件が起こって転送され、その特殊な条件が重なったときに時空連続体に乱れが起こり、たまたま同じ時間のこの場所に飛ばされたと説明する。 キムがその異星人に、もといた時間と場所に戻してくれと頼むが、「それは特殊な条件下で起こってしまった現象だから、非常に難しい。どうしてもというなら、これを使え。ただし、戻る保証はできない。場合によっては10億年の未来へ行くかもしれないし、太陽系が出来る前の過去に行く可能性もある。」といって、バッチのようなものをくれた。しかし、再現するならシャトルのような船がいる。しかし、操縦士がいないかと思っているときに、トム・パリスが現れる。艦隊の保安部に追われる中、シャトルを奪って一緒に宇宙に出るが、艦隊の宇宙船に捕捉されそうになる。もう最後だというその瞬間、キムは自分を宇宙に転送し、無事にヴォイジャーへと戻った。 [ これは、時空体というものが何であるかを考えさせられるテーマで、量子力学の本質に迫る問題である。量子力学によれば、我々は、各瞬間にあらゆる可能性に分岐していくという。これをこの場合に当てはめると、分岐した一つの世界がキムがヴォイジャーに乗らなかったという設定である。しかし、現実は過去から未来へ向けて続く時間の流れがあり、それは決して覆らないし、飛びもしない。そうすると、分岐した世界は、それはそれでどんどん分岐していく。その結果、それぞれの世界で物質があり、人の営みがあり、文明が出来ていくのかということになる。その世界どうしでは、絶対に行き来ができないはずだ。それを可能にしてしまったのが、この回のテーマだから、キムが戸惑うのも、無理はない。] 第2A−021回 (空間の歪み:Twisted) 総合評価 ★★☆☆☆ (ストーリー ★★★☆☆) (人間の描写 ★★☆☆☆) ヴォイジャーは前方に空間の歪みを発見したが、回避できずにそのまま突入してしまった。すると、妙な現象が起こった。船内の部屋の位置が変わり、いつまで経っても、目的の場所にたどり着くことができない。ジェインウェイ艦長は、空間の歪みに巻き込まれて、失神してしまった。皆はホロデッキに集合して、対策を話し合う。しかし、何をやっても上手くいかない。結局、何もしないことも一つの対策だと、空間の歪みに身を任せる。 場合によっては、全員が押しつぶされるかもしれないという恐れがあったが、しばらくして、元に戻った。幸い、全員が無事である。船の中に多量のデータが残される一方、ヴォイジャーのデータも、全てダウンロードされていた。 [ 何もしないというのも、一つの対策だというのは、アメリカ人にそういう発想があるとは、思わなかった。] 第2A−022回 (地獄の星:Parturition) 総合評価 ★☆☆☆☆ (ストーリー ★☆☆☆☆) (人間の描写 ★★☆☆☆) ケスに惹かれるパリスに対して、ニーリックスが焼きもちを焼き、食堂で取っ組み合いの喧嘩をする。そのとき、ジェインウェイ艦長が2人を呼び、Mクラスの惑星で食糧を集めて来るように命じる。その惑星では転送装置が使えないので、シャトルが利用できない。惑星に墜落したパリスとニーリックスは、洞窟に入り、殻を割って出てきたばかりの爬虫類の赤ちゃんを発見した。その世話をするうちに、2人は仲直りして、通り抜けられる穴が開いている間に、転送でヴォイジャーに戻ってきた。 [ あまり、印象に残らないエピソードである。強いて言えば、卵から生まれたばかりの赤ちゃんの世話を通じて、それまで仲違いしていた2人が仲直りしたということか。] 第2A−023回 (幻覚に悩まされ:Persistence of Vision) 総合評価 ★★☆☆☆ (ストーリー ★★☆☆☆) (人間の描写 ★★★☆☆) ジェインウェイ艦長は、少し疲れ気味で、あまり機嫌が良くなかった。ドクターから休むように命じられ、休むためにホロデッキに向かうが、その登場人物たちがホロデッキ以外でも見えてしまう。その頃、ヴォイジャーはボーサ人の領域に入り込んだ。顔を隠したボーサ人の司令官から警告と検査の通告を受ける。 やがて、他の乗組員たちも幻覚に悩まされるようになる。どうやらこれは、ボーサ人による攻撃のようだ。やがて、幻覚はそれぞれの乗組員に広がり、全員が動けなくなる。ただ、ホログラムのドクターとケスだけが例外で、ボーサ人を追い出すべく、ドクターの指示でケスが機関部で奮闘する。ところが、そのケスにもボーサ人による幻覚が見え始める。ケスはそれに耐え、幻覚を消す衝撃波を発生させて、皆を救う。 [ 人を攻撃するのに、精神に入り込んでその人を操るというのは、あながちあり得ないことではないと思わせるエピソードである。] 第2B−024回 (父の思い出:Tattoo) 総合評価 ★★☆☆☆ (ストーリー ★★☆☆☆) (人間の描写 ★★★☆☆) チャコティ副艦長は、上陸任務の際、自分が十代だった頃、父と中央アメリカで同族のアメリカ・インデアンを探していたときに目にした模様を見つける。これは、天と地の生霊を敬い、焚き火ができたことを感謝する印だ。それがこんな星にあると驚いた。その焚き火の主の航跡を追い掛けていくと、別の惑星に至った。そこには、ヴォイジャーを修理できる鉱物が地下にあった。それを探索するためにチャコティらがシャトルで上陸すると、ジャングル中に誰かがいた痕跡があるが、姿が見えない。大嵐が起こったので急いで逃げる途中、トレスとニーリックスだけがヴォイジャーに転送されたが、チャコティは倒れてきた木の下敷きになって気を失った。 目を覚ましたチャコティは1人で住人を探しに出かけた。ある洞窟の中でその種族に出会った。それは、「自分たちの祖先は、4万5千年前に2世代をかけて地球に到達し、そのとき出会ったアメリカ・インデアンが自分たちと同じく自然を敬う気持ちがあるのに共感し、自分たちの遺伝子を分け与えた。だから、お前は自分たちの子孫だ。」という。 一方、チャコティを収容すべく、ヴォイジャーで着陸しようとしたところ、猛烈なハリケーンに襲われて、ヴォイジャーが墜落しそうになる。あと10秒で墜落というところで、チャコティとその種族とが出会ったおかげで嵐は収まり、ヴォイジャーは窮地を脱することができた。 [ チャコティと父の思い出とが重なる形で、この星の種族とチャコティが属するアメリカ・インデアンとの関係が明らかになっていくという設定だが、4万5千年前にそんなワープ技術を持っていたのなら、もっと近代的な社会になっているはずなのに、逆に再び未開の生活に戻っているなど、納得がいかない。アメリカ・インデアンの歴史に焦点を当てようとしたことは是とするが、ストーリーの持って行き方に難がある。] 第2B−025回 (女性守護神:Cold Fire) 総合評価 ★★★☆☆ (ストーリー ★★★☆☆) (人間の描写 ★★★★☆) 10ヶ月前にヴォイジャーはアルファ宇宙域から7万光年先のデルタ宇宙域まで飛ばされた。それは、オカンパ人の守護神だった者の仕業だった。ところが、守護神は帰る方法を教えることなく、死んでしまった。そのとき守護神は、「かつて仲間が2人いたが、もう1人は自分のやり方に反対して去ってしまった。」という。ところがこの去ったもう1人の守護神サスピリアが、ある宇宙ステーションにオカンパ人とともにいたのである。 ジェインウェイ艦長は、その女性守護神に、アルファ宇宙域まで帰る方法を教えてもらえるかもしれないと、期待して宇宙ステーションに近づいた。ところが、そこのオカンパ人の責任者は友好的ではなく、攻撃をしてきた。乗組員の中で唯一のオカンパ人であるケスが姿を見せると、そのオカンパ人はヴォイジャーにやってきて、ケスの超能力を呼び覚まそうとする。ケスは、植物を大きく成長させたり、カップを動かしたり、水を沸騰させたりするが、誤ってトゥヴォック保安部長を加熱するという失敗もして、自信をなくした。 一方、女性守護神サスピリアが、亜空間から現れ、「ヴォイジャーは、守護神を殺してその宇宙ステーションを破壊し、あちこちでケイゾンの領域に侵入している危険な存在だ。」という。それは誤解だとジェインウェイ艦長が説明するが、聞き入れずに攻撃をしてくる。密かに守護神に効果のある麻酔薬を開発していたので、それを使って守護神を閉じ込めた。しかし、ジェインウェイ艦長は、サスピリアをそのまま放免した。 [ いろいろな感想があるが、一つは、噂というのは、たいてい悪い形で伝わるものだということだ。これは、防ぎようがない。二つ目は、ケスの超能力のように、パワーというものは、十分に制御できるようになってから使うもの。三つ目は、ケスが「自分には、悪い闇の声があることに気づいて、驚いた。それを抑えたいが、どうすればいい?」とトゥヴォックに聞いた。するとトゥヴォックが「誰でも闇の声がある。そのままにしておいたらよい。それを無理に抑えようとすれば、闇はますます大きくなる。」と答えたのは、まさに、その通りだと思う。] 第2B−026回 (ケイゾンの謀略:Maneuvers) 総合評価 ★★★★☆ (ストーリー ★★★★★) (人間の描写 ★★★★☆) セスカは、以前はマキのメンバーでヴォイジャーの乗組員だったが、裏切ってヴォイジャーの技術をケイゾンに渡して姿を消した。そのセスカが、ケイゾンのある部族と手を握って、連邦の信号をヴォイジャーに送り、おびき出した。そしてヴォイジャーの弱点を突いてケイゾン戦士が乗り込んできて、転送装置を盗み出した。これがあれば、この部族はケイゾンを統一するのも、夢ではない。 チャコチィ副艦長は、通信でセスカに馬鹿にされ、またセスカをヴォイジャーに引き入れた負い目もあって、ジェインウェイ艦長に無断でただ1人、シャトルでケイゾンの船に向かう。囚われて、艦隊のセキュリティ・コードを教えろと拷問される。ケイゾンは、ヴォイジャーのレプリケーターと反応速度の速いバイオ神経回路も入手したがっている。 チャコチィが容易に自白しないので、他の部族の協力を得ようとしたそのリーダーの立場が危うくなり、仲間割れしそうになる。その連中を一挙にヴォイジャーまで転送して、チャコチィおよびシャトルと、これらの部族のリーダーとの交換を持ちかける。無事にヴォイジャーに帰ったチャコチィに、セスカが衝撃的なメッセージを送ってくる。何と、チャコチィの遺伝子をとって、それを使って妊娠したと言うのである。 [ ケイゾンとの取引が水際だって鮮やかだったこと、チャコチィが副艦長なのに艦の規律に反して行動したこととその収め方、最後に裏切り者のセスカがチャコチィの子供を産むというどんでん返しなど、次々に見せ場が出て来て、息をもつがせない、異色のエピソードである。] 第2B−027回 (レジスタンスの男:Resistance) 総合評価 ★★★★★ (ストーリー ★★★★★) (人間の描写 ★★★★★) ヴォイジャーは機関部に必要な元素を入手するため、ある星のマーケットに上陸班を送る。しかし、モークラの兵士に襲われた。ニーリックスだけはその元素を持って帰ったが、トゥヴォックとトレスが捕まってしまって刑務所に送られ、ジェインウェイ艦長は年老いた男によって匿われた。その男は、レジスタンスのようで、ジェインウェイを実の娘と信じて、刑務所に囚われている妻を救い出そうとする。ジェインウェイは、刑務所に潜入しようとするが、その刑務所は脱獄したことがないという難攻不落のところだった。 一方、ヴォイジャーはモークラの行政官から、退去を命じられた。2分以内に従わなければ、砲撃すると脅された。その間、チャコチィ副艦長は上陸班を転送で収容しようとするが、刑務所は厳重に守られていて、歯が立たない。退去期限が過ぎて、ヴォイジャーは砲撃を受ける。 地上では、ジェインが娼婦を装って刑務所に入り込み、レジスタンス仲間と破壊工作を行い、トゥヴォックとトレスを救うが、ジェインウェイを娘と思っている男が撃たれる。その時、モークラの看守が、「この男の妻は、14年前に刑務所で死に、娘も脱出用のトンネルを掘っている時に死んだのに、まだ生きていると思って刑務所に侵入を繰り返す哀れな奴だ。」という。それを聞いたジェインウェイは、「お父さん、母さんは、手紙を読んで喜んでいたよ。」と語りかけ、男は満足そうな顔をして、死んでいった。 [ 全編が、レジスタンスの哀れな男の身の上につながる話に収斂していく。誠に感傷的な人間のドラマである。アメリカ映画でも、こういう描き方があるのかと、感激すること、請け合いである。最高評価を差し上げたい。] 第2C−028回 (ロボットの反乱:Prototype) 総合評価 ★★★★☆ (ストーリー ★★★★★) (人間の描写 ★★★★☆) 宇宙空間に漂う未知のロボットを回収したヴォイジャーでは、ベラナ・トレス機関部長が修理にやっきになっていた。一番の課題はパワー・モジュールだったが、これも何とか直し、ロボット(ユニット3947)が甦った。ロボットは、「有機体の創造者が自分たちを造ってくれたが、今やその創造者も死に絶え、自分たちの仲間もどんどん動かなくなってきた。そこで、仲間を複製しようとしているが、パワー・モジュールだけはいくら忠実に複製しようとしても、動かない。だから、我々を複製してくれれば、ありがたい。」と語る。トレスは技術者としての腕を活かせると、ジェインウェイ艦長に願い出るが、艦長は艦隊の規則に反するとして却下する。 ロボットの母船が近づいてきて、ロボットの収容をすることとなった。トレスは修理したロボットに艦長命令で複製はできない旨を伝える。ところがロボットは、失神させたベラナを抱えて、母船に戻った。母船でもトレスは、司令ロボットに複製を強要されるが、断る。そのときヴォイジャーは、トレスを取り返そうとしてロボットの母船を攻撃するが、逆に反撃されて痛手を受ける。その修理に手間取っているとき、別のロボット船が現れて、ユニット3947の母船を攻撃する。母船内でトレスは、複製に成功し、新しいロボット(ユニット0001)が動き出した。そのとき、ユニット3947が衝撃的なことをベラナに漏らした。 「あの攻撃してくるロボット船は何なの?」というトレスの問いに対して、ユニット3947は「あれは我々の敵で、創造者から攻撃するようにプログラムされている。」と答える。「創造者がいなくなってしまったのなら、和平をすればよいのでは?」とベラナ。ユニット3947は、「我々の創造者たちもお互いに和平したが、そうすると我々の仕事がなくなる。それは我々の敵となったことを意味するので、我々が創造者を抹殺した。」と答えた。そこで初めて、トレスが気が付いた。パワー・モジュールだけが複製できなかったのは、実は創造者が意図的に行ったもので、数が自然に減るように仕組んだことだった。ベラナは、自分が作り出したユニット0001を破壊した直後に転送され、シャトル経由でヴォイジャーに戻った。 [ 科学者やエンジニアの作り出すものが、それがどういう社会的影響を与えるのかということを踏まえて行動しなければならないという事例である。アシモフのロボット3原則(@ 人間に危害を加えないこと、A 人間に服従しなければならないこと、B 自分の身を守ること)が思い出される。] 第2C−029回 (同盟交渉:Alliances) 総合評価 ★★★☆☆ (ストーリー ★★★☆☆) (人間の描写 ★★★☆☆) ケイゾンの部族から連続して攻撃を受け、ヴォイジャーは3人の乗組員を失った。チャコチィ副艦長は、これを契機にジェインウェイ艦長に、艦隊規則に縛られていては、生き残れない。今は生死を分けるときだから、ケイゾンのどこかの部族と同盟を結んではどうかと提案する。ジェインウェイは、これを受け入れ、セスカのいるケイゾン部族と同盟しようとするが、わずかの条件の違いで物別れに終わる。 一方、ニーリックスは別のケイゾン部族と交渉しようとするが、捕まってしまう。そこに同じく捕らえられていたのは、トレイブ人の一族である。それが逃げ出すのと一緒に、ニーリックスも逃げ、ヴォイジャーに帰る。トレイブ人の指導者と話をした艦長は、かつてトレイブ人はケイゾン人を動物のように扱っていたが、あるとき反乱が起こり、すべて乗っ取られて、今はケイゾン人に追われながら安住の地を求めて宇宙を旅していることを知った。ヴォイジャーの境遇と似ていることから、艦長は、このトレイブ人と同盟することにする。その上で、トレイブ人指導者の提言を受け、ケイゾンの全部族の指導者を集めて和平協定締結のためのトップ会談を提案する。 当日、ある星で行われたトップ会談で、主張が対立する中、トレイブ人指導者は、ジェインウェイト艦長とともに席を外そうとする。実は、その直後にトレイブ人の船が会議場を襲い、ケイゾン部族の指導者たちを皆殺しする手筈だった。ヴォイジャーに帰り着いた艦長は怒り、トレイブ人とは組めないと伝えた。 [ 一瞬、信頼できると思ったトレイブ人だったが、やはり仁義なき戦いの一当事者であることがわかったというわけだ。] 第2C−030回 (限界最高速度ワープ10超え:Threshold) 総合評価 ★★☆☆☆ (ストーリー ★★☆☆☆) (人間の描写 ★★★☆☆) 量子力学、ワープ航法、亜空間エンジンを活用した地球の科学では、最高速度はワープ10である。ところがパリスは、画期的な技術を開発し、シミュレーションで成功させた。それを実機で実現すべく、シャトルで宇宙に出た。理論的には、ワープ10を越すと、宇宙のあらゆるところに存在できる。シャトルは、ワープ9.8、9.9とスピードを増し、遂にワープ10を超えた。その瞬間、シャトルは静寂に包まれ、全ての時間と場所がパリスの前に現れた。シャトルはヴォイジャーに戻り、皆から人類史上初の快挙と祝福される。 ところがそのパリスの身体に異変が起こる。心臓が2つできたり、臓器の位置が変わったり、ものすごいスピードで次々に変化を起こし、ドクターにも止められない。そのうち、危篤状態に陥るが、再び蘇る。そうこうするうち、怪物に変化したパリスは、ジェインウェイ艦長を抱えてシャトルに乗り込み、再びワープ10を越す。それを捜索するヴォイジャーは、3日後にシャトルをある惑星で発見する。そこで見つけたものは、原始的な四つ足動物のつがいと、2匹の赤ん坊だった。 ドクターによれば、ワープ10を超えたことにより、過去400万年の間に人類が進化した過程が24時間で一挙に起こり、それで内臓の位置が定まらなかったり、形態が大きく変わったりしたからだという。2人の身体のDNAから変化した部分を追い出し、元の部分にしたら、やっと自分の身体を取り戻した。 [ ワープ10を超える技術の最初の開発者であり実験者になるのは、飛行機のライト兄弟、ワープ航法のジェームズ・コクリンに次ぐ名誉あることだと、パリスの気持ちは昂ぶる。これで、劣等生で艦隊をドロップアウトした自分も自信が持てると思う。それが、思わぬ事故で打ち砕かれるが、ジェインウェイ艦長の言葉で、乗り越えるべきは他人が自分をどう思うかではなく、結局は自分自身だということに気付く。それはよいのだが、2人の赤ん坊の四つ足動物が産まれるというのは、いささかグロテスクな結末である。] 第2C−031回 (精神融合:Meld) 総合評価 ☆☆☆☆☆ (ストーリー ☆☆☆☆☆) (人間の描写 ★☆☆☆☆) ヴォイジャーの機関室で殺人事件が発生し、乗組員のスーダーの犯行と判明した。その犯行の動機が、よくわからない。トゥヴォック保安部長は、それを調べるため、バルカンの手法でスーダーと精神融合を試みた。ところが、スーダーの影響を受けて、凶暴になってしまった。自室で物を破壊し、スーダーを処刑しようとする。医務室でドクターの処置を受け、いつもの落ち着きと冷静さを取り戻した。 [ 何を訴えようとしているのか、その意図がよくわからないエピソードで、シリーズ中で一番の駄作である。] 第2D−032回 (ドレッドノート・ミサイル:Dreadnought) 総合評価 ★★★★☆ (ストーリー ★★★★★) (人間の描写 ★★★★☆) ヴォイジャーは、大量破壊兵器のドレッドノート・ミサイルの痕跡を見つけた。マキが戦っていたカーデシアのもので、最新の人口知能を備え、星を一つ破壊できるほどの威力を備えている。実はそれは、ベラナ・トレスがマキにいた時に、カーデシアから奪ってその燃料庫を狙うように改造を加えたもので、39通りもの攻撃パターンから身を守ることができるものだった。それが、ヴォイジャーと同じ頃にバッドランドから守護神によって一挙にこのデルタ宇宙域まで飛ばされてきたらしい(第1回参照)。 トレスは、転送でそのドレッドノートに乗り込んだ。ドレッドノートは、最初、トレスを歓迎するが、ここがアルファ宇宙域ではなく、デルタ宇宙域だということを頭から信じず、元々のターゲットと似た惑星に向かう。そこには、300万人もの知的生命体が住んでいる。トレスが再プログラムして止めようとするが、ドレッドノートの人口知能はトレスが誰かに操られているのではないかと疑って、容易にはさせてくれない。 ヴォイジャーのジェインウェイ艦長は、その惑星の首相と連絡をとる。首相は、最初、「ヴォイジャーについては、あちらこちらで戦争を仕掛けるという噂がある。」として不信感を抱いていた。そして、艦隊を出してヴォイジャーとともにドレッドノートを攻撃させるが、失敗する。トレスは再びドレッドノートに乗り込み、プログラムを変えようとするが、人口知能は疑い深くて、なかなか応じない。それどころか、生命維持装置まで切られてしまった。そこでトレスは、人口知能にシミュレーションをしようと誘う。その時、たまたま昔のカーデシアのファイルを見つけ、それを動かした。すると、そのファイルが人口知能に入り込み、一時は2つの指令が並立する事態となる。その混乱に乗じてトレスはドレッドノートの機関室に入り込んだ。 一方、宇宙空間を飛び続けたドレッドノートが、惑星の破壊まであと41分という位置まで来てしまった。首相は船が足りずとても避難できないといい、遂にジェインウェイ艦長は、300万人の人口を救うためにヴォイジャーを自爆させて惑星を救うことを決断し、20分後に自爆装置が起動するようにセットした。そして、脱出ポッドでトゥヴォック保安部長以外を退避させた。 ドレッドノートにいるトレスは、これを破壊するようにフェイザー銃を打ち続ける。ところが、生命維持装置が切られているために、意識が遠のく。やっと、オーバーロードに持ち込み、ドレッドノートが爆発する瞬間、ヴォイジャーに転送されて助かった。ヴォイジャーも、自爆する1分前までいったが、これを回避することができた。 [ 自分が作った人口知能プログラムとの知恵比べで負けそうになるが、たまたま見つけた昔のファイルを呼び出して助かったという話である。最近は、囲碁の世界チャンピオン李セドルが、グーグルのAIソフトウェアであるアルファ碁に負けてしまったが、これからはコンピューターでは考えつかないような、人間の持つ創造性を磨かないといけない。もうそういう時代になりつつあるのではないだろうか。それにしても、ジェインウェイ艦長がヴォイジャーを自爆させて惑星を救うという決断をするとは思わなかった。その後、惑星に立ち寄ったかどうか、気になるところである。] 第2D−033回 (Qの自殺願望:Death Wish) 総合評価 ★★★☆☆ (ストーリー ★★★★☆) (人間の描写 ★★★☆☆) ある彗星の核のサンプルを取ろうとヴォイジャーに転送したところ、妙なおじさんが現れた。それは超生命体Qの一員で、自殺願望を持っていた。そこへ、これまで連邦艦隊を悩ましてきたいつものQが現れた。「自殺などされると、『Q連続体』の世界にどんな影響があるかはわからない。だから、自殺をさせないため、あの彗星に300年間、閉じ込めておいた。」という。そして再び閉じ込めようとするから、その自殺願望のQは、「連邦艦隊に保護を求める。」という。そこでジェインウェイ艦長は、思わぬことに、いわば裁判官となって、いつものQと、自殺願望のQとの両者の話を聴いて判断を下す立場になる。自殺願望のQには、トゥヴォック保安部長が弁護人として付いた。 そこで明らかとなったのは、自殺願望のQが地球の歴史のあらゆる場面に現れて色々とその歴史を変えてきたことだ。昔のエンタープライズ号のライカー副艦長の先祖が南北戦争で負傷したとき、戦場から救い出した。ニュートンが林檎の木で万有引力の法則で着想を得たとき、その林檎を落とした。(次のエピソードが私にはよくわからないところだが)コンサート会場に遅れそうになった照明係が間に合うようにして会場で停電が起きないようにしたり、といった具合である。 ところが、他方で、「Q連続体」の実態も明らかになる。ジェインウェイたちは、砂漠の一本道の脇にある家に案内された。そこには、何人かがいるが、何も喋らずに一日中過ごしている。自殺願望のQによれば、「これでも1万年ほど前までは、各地での珍しい経験などを大いに話していたそうだ。ところが、何しろ不老不死で全知全能で時間も空間も超越している存在なので、もう語ることもなくなってきた。その結果、飽き飽きして、もう自分自身を抹殺したいと思うようになった。ぜひ、自殺させてくれ。」という。旗色が悪くなったいつものQは、ジェインウェイの居室に現れて、「自分を勝たせてくれたら、ヴォイジャーを直ちに地球に帰還させてやる。そうなると、サンフランシスコでパレードだ。どうだ。」と誘う。 翌朝、調停室に現れたジェインウェイは、「あらゆる人種の自殺に関するレポートを読んだ結果、自殺願望のQの主張を認めることにする。」と決定した。いつものQは、自殺願望のQの超能力を奪い、希望通り自殺を認め、併せてジェインウェイに「これで、パレードの話はなくなったな。」と言って、消えてしまう。 [ このスタートレックのシリーズで、「Q」と「Q連続体」という存在は、全く謎の存在である。一瞬にして何十億年もの過去や未来に飛ばしたり、空間を自由に移動したりするところを見ると、あたかも全知全能の神の如くである。しかし、現実に目の前に現れるいつものQは、皮肉屋でへそ曲りで、しかもまるで理屈の通じない妙なおじさんであって、それが超能力を自在に操るので、誠に危なっかしい。それがまた、現れてしまった。] 第2D−034回 (ドクターの恋の相手:Lifesigns) 総合評価 ★★★★☆ (ストーリー ★★★★★) (人間の描写 ★★★★☆) 小型船に瀕死のヴィディア人女性タナラ・ペルが1人乗っていた。ヴォイジャーに転送して、ドクターが治療する。神経が崩壊しそうなので、一時的にホログラムで複製した身体を作った。すると、疫病のフェイジに罹患していない美しいホログラムの女性が現れた。ドクターは、何とその女性に恋をしてしまった。ところが、恋の告白に慣れていないドクターの恋の告白は、ケスには、とても見ていられない。ドクターはパリスの力を借りて、ようやく良い感じになっていく。 タナラ・ペルは、たとえホログラムであっても、病気になっていない美しい自分の顔と身体を取り戻せて、人生で最高の幸福を味わっていた。ドクターとホロデッキに行って、地球のクラブや火星の景色を楽しんでいた。ところが、本当の自分の身体に治療が進展し、疫病のフェイジは治らないものの、トレスから脳細胞の移植を受けて重体から脱しつつあるとき、またその身体に戻るのが不安に思えてきた。つい、そうした自分自身の身体を傷付けようとするが、ドクターの「どんな顔や身体でも、君を愛している。」という言葉に感激して、治療を受けようという気になり、いよいよ自分の星に帰る日を迎えたそして、疫病のフェイジに罹ったままの顔で、ドクターとホロデッキでダンスをするのだった。 [ 初めての恋の告白に戸惑うドクターの姿は喜劇そのものだが、疫病のフェイジに苦しむタナラ・ペルの悩みはまさに悲劇であり、患者の苦しみをよく言い当てている。まさに、ヴォイジャーにしては、異色のエピソードである。] 第2D−035回 (裏切り者の捜査:Investigations) 総合評価 ★★★★★ (ストーリー ★★★★★) (人間の描写 ★★★★★) 自称「船内の士気を向上させる士官」であるニーリックスは、船内で毎日放送している「ニュース番組」の材料を求めて、船内の取材を行っていた。キムはニーリックスに対し、「料理やエンターテインメントだけでは軽い。自分はアカデミーのとき、マキがカーデシアに対して最初に攻撃した事実を亜空間通信でつかみ、教授の了解なしに、その特ダネを報道した。それがジャーナリスト精神だ。」と焚きつける。ドクターもニーリックスの依頼を受けて、定期的に医学情報を話すよう考えることになった。 その頃、宿敵ケイゾンに対して、ヴォイジャー船内の裏切り者が連絡をとり、ワープコアを故障させる。ヴォイジャーはその修理のため、修理の材料がある近くの星に向かうことになった。一方、ニーリックスが特ダネを求めて船内を歩いていると、トム・パリスがヴォイジャーを降りてタラクシアの貨物船に乗るという噂を聞いた。それを確かめるべく艦長のところに行き、その事実を放送する。ニーリックスは、「最初トム・パリスを見たとき、嫌味なヤツだなと思ったが、この船内で彼に助けてもらった乗組員の数は多い。」などと感動的な話を語る。いよいよパリスが船を去るとき、ニーリックスは別れを惜しみ、涙が止まらない。ところがしばらくして、タラクシアの貨物船がケイゾン部族のニストリムに襲われ、貨物ではなく、パリスだけが連れさらわれた。 一方、ニーリックスは、ヴォイジャーの機関室で、トレスに亜空間通信のログを見たいと頼み、ワープコアの修復に忙しいトレスは、やり方だけを教えて去った。その通信ログを見ていたニーリックスは、妙なことに気付いた。この1ヶ月間だけ、データが幾つか飛んでいる。ただし、発信者がわからない。その事実をジェインウェイ艦長とトゥヴォック保安部長に報告したところ、トゥヴォックから「これからは、保安部が引き受けるので、手を引いてほしい。」と言われる。ニーリックスは内心、真実を伝えることこそ、ジャーナリストたる自分の役割だとばかりに、ますます張り切る。 他方、ケイゾン部族のニストリムに拉致されたパリスは、裏切り者のセスカからパイロットとしての腕とヴォイジャーの機密を教えるように協力を求められる。ケイゾンは、ヴォイジャーを手に入れたら、この宇宙域で最も強力な勢力となると考えている。パリスは隙を見てヴォイジャー船内の裏切り者と通信している場面を見て、ヴォイジャーの乗組員の中で誰が裏切り者かを知る。パリスはケイゾンの船から脱出し、その裏切り者の名前を知らせ、無事にヴォイジャーに転送されて戻ってくる。ちょうどその頃、ニーリックスは機関室で裏切り者と格闘中で、裏切り者は、ワープコア中に落ちて死んでしまう。 全てが終わったとき、ジェインウェイ艦長はチャコチィ副艦長に対して、実はパリスをスパイとして潜入させる芝居だったことを明かす。チャコチィは、「ここしばらく、パリスがギャンブルに凝ったり、よく遅刻したのは、そのせいですか。なぜ自分には教えてくれなかったのですか。」と聞くとジェインウェイは、「だってそうしないと、迫真の演技にならないでしょ。」という趣旨のことを言うので、憮然とする。パリスはニーリックスの番組に出演して、「そういうわけなどだけど、この演技で不快な感じを持たれた人には、心から謝ります。特に、チャコチィ副艦長にはね。でも、楽しかった。」と言う。 [ 敵を騙すには、まず味方からということで話が進み、全編がミステリー仕立てだが、そうは思わせないという誠に洒落たエピソード。しかも、どんでん返しあり、ユーモアありの、極めて上質な内容である。最上級の評価を与えたい。] 第2E−036回 (ヴォイジャーのコピー:Deadlock) 総合評価 ★★★★☆ (ストーリー ★★★★★) (人間の描写 ★★★★☆) 航海中に多くのヴィディア船を発見したヴォイジャーは、これを避けるためにプラズマ星雲の中を迂回しようとした。すると、ワープコアが停止し、船内に多くの亀裂が生じて航行ができなくなり、乗組員中に大勢の負傷者が出た。ジェインウェイ艦長自身も負傷している。キム少尉は修理中に宇宙空間に放り出されて死に、出産したばかりの乗組員の赤ちゃんまで死んでしまった。ケスは、負傷者の手当てに向かう途中で、忽然と消えてしまう。 調べた結果、もう一つ、ヴォイジャーがいることがわかる。プラズマ星雲の中に分岐ができて、同じ空間と時間に存在しているらしい。ヴォイジャーのコピーというわけだ。ただし、反物質だけは複製されていないものの、その他は船体も、乗組員も、ホログラムドクターまで全く同じである。しかも、こちらの赤ちゃんは無事である。両方のヴォイジャーが連絡をとり、健全な方のヴォイジャーのジェインウェイ艦長が、そちらに迷い込んできたケスとともに、崩壊寸前のヴォイジャーのジェインウェイ艦長を訪問する。両者が協議して、このままでは両者が共倒れになるので、崩壊寸前の方が自爆することになる。 ところがそのとき、健全な方のヴォイジャーに、ヴィディア船が近づいてきた。ヴォイジャーは武器システムが使えず、ヴィディア人が乗り込んできた。そして、ヴォイジャーの乗組員を次々に殺して内臓を奪っていく。ジェインウェイ艦長は、ヴォイジャーを自爆する決断をする。ジェインウェイは同時に、キム少尉に赤ちゃんを連れて、もう一つのヴォイジャーに行くよう命令する。やがてブリッジにヴィディア人が乗り込んできたとき、ヴォイジャーが大爆発し、ヴィディア船も巻き込んだ。もう一つのヴォイジャーだけが残り、修理して、地球に向けて航海を続ける。 [ ヴォイジャーにコピーが生まれるとは思わなかった。それも、船体だけならともかく、乗組員もそっくりそのままという設定には、恐れ入った。でも、ワープコアに使われている反物質だけはコピーできないので、身体は2つで心臓が1つという不思議な状況である。そういう中、ヴィディア人に襲われて乗組員の内臓が奪われていくというホラー映画のような状況になる。ところが、ジェインウェイ艦長の決断でヴォイジャーを自爆させ、もう一つのヴォイジャーの生き残りに掛けるというのは、なかなか考え付かないストーリーである。秀作の類いである。] 第2E−037回 (無邪気な子供たち:Innocence) 総合評価 ★☆☆☆☆ (ストーリー ★☆☆☆☆) (人間の描写 ★★☆☆☆) ある星にトゥヴォックのシャトルが墜落し、乗員1名が死亡した。壊れたシャトルをトゥヴォックが修理していると、3人の子供たちが現れた。同じように電離層の乱れで、乗っていた宇宙船が墜落したという。子供たちは、夜になると怪物モロックが洞窟から現れて自分たちを連れて行くと怖がるので、トゥヴォックは守ってあげると約束する。ところが、翌朝、3人の内の2人が突然、姿を消した。 ヴォイジャーでは、この近くの星の種族と交流しようとする。その星の指導者はヴォイジャー船内に招待されるが、「自分たちはかつて科学の発展に努めて次々に新しいものを発明していたが、科学が次第に人間を追い抜くようになって疑問に感じ、曽祖父の時代に生き方を変えた。それ以来、他の人種とは交わらないようにしている。」と説明していた。ところが、「聖なる星の地上で問題が起きている。」との連絡で、そそくさと帰っていった。 それはトゥヴォックが聖なる星を汚したというもので、ジェインウェイ艦長には、理解できない。星の地上に降りて、聖職者と話した。すると、10歳くらいだと思った子供は実は96歳で、普通の人種とは歳のとり方が違っていて、だんだん無邪気になっていくというのである。その実は96歳の子供は、トゥヴォックを頼りにするので、聖職者はトゥヴォックを最後の死出の同行者と認める。 [ 歳をとるごとに若返っていき、この人は子供に見えるがもう96歳で、亡くなる直前の姿という設定には驚いた。あり得ないので、やや無理なストーリーだが、歳をとるほど無邪気になることがあるというのは、その通りである。トゥヴォックの誠意が認められた。] 第2E−038回 (道化の支配する世界:The Thaw) 総合評価 ★★☆☆☆ (ストーリー ★★☆☆☆) (人間の描写 ★★☆☆☆) 太陽フレアによる大規模な気候変動で、19年前に40万人もの人口が壊滅した星があった。ヴォイジャーからスキャンしたところ、地下に5人の冬眠カプセルがあり、うち2人は死亡しているが、残る3人は生きている。冬眠に入る前の通信があり、気候変動から15年後に冬眠から覚めるはずなのに、既に4年が過ぎている。冬眠カプセルをヴォイジャーに転送し、その理由を探ることになった。すると、身体は冬眠しているが、意識はコンピューターに繋がり、いつでも目覚めるはずになっていたが、おかしなことに、全然目覚めないし、死んだ2人の死因は、心臓麻痺である。その原因を探るために、キム少尉とトレス機関部長が、空いている2つのカプセルに入って冬眠状態に入り、まだ眠っている3人の生存者の精神の中に入って行った。 するとそこは、道化たちに支配されている世界で、生存者3人は、なす術もなく、そのされるがままだった。しかもこの道化たちは人間の脳と数分遅れでリンクしているので、その思考が読まれる。何とかトレスだけが返してもらった。思考が読まれないドクターを送り込んで交渉するが、埒が明かない。ヴォイジャーで対策を考え、道化を一人一人消していくが、途中で読まれて生存者の1人が道化によって殺された。 ジェインウェイ艦長は、ドクターを再び送り込んで、生存者2人とキムという人質と、ジェインウェイ自らを交換しようと提案する。道化は了解し、ジェインウェイは冬眠装置に入り、脳をリンクした。その上で、道化の世界に行った。道化は、恐怖の化身だった。ジェインウェイは、人質たちを救出した上で、道化に「自分は、ドクターと同じで艦長のホログラムだ。」という。道化は、「そんなはずはない。脳がリンクしている。」という。実は、ジェインウェイは脳だけをリンクさせ、身体は冬眠には入っていなかったのである。道化は「怖い」という言葉を残して、消えてしまった。 [ 道化の世界が、実はヒューマノイドが持つ恐怖心から無意識のうちに生み出された恐怖が支配するところだったという、誠に怖い話である。ホラー映画のようなものだから、当然のことながら、見終わった後は、あまり良い心地はしない。] 第2E−039回 (トゥーヴィックス:Tuvix) 総合評価 ★★★★☆ (ストーリー ★★★★★) (人間の描写 ★★★★☆) トゥヴォックとニーリックスは、植物が豊かな衛星に降りて植物のサンプルを採集し、転送でヴォイジャーに戻ろうとした。ところが、ヴォイジャーに戻ってきたのは、1人だけで、しかもそれは2人が融合してしまった者だった。ドクターは、2人を元に戻すのには何年かかるか分からないと言う。本人は、自分を「トゥーヴィックス」と呼んでほしいという。仕事をさせてみうと、戦術士官としてもトゥヴォックと同等で、料理の腕もニーリックスより上手だった。それだけでなく、ニーリックスの恋人ケスに愛を告白する始末で、ケスは混乱し、大いに悩む。 2人を元に戻すために研究を続けたところ、これは異種を混合させる植物を持っていたからではないかと気がつき、一方のDNAに目印付けて分離する方法を考えついた。実験をしてみると、成功した。それで、2人を分離しようとしたら、肝心のトゥーヴィックスが反対した。2人に分離するということは、自分が死ぬことを意味するからである。 ジェインウェイ艦長は悩んだものの、結局は分離することにした。トゥーヴィックスは抵抗するが、誰も助けてくれないから、遂に観念する。医務室に行くが、ドクターは患者の意思に反することはできないと言って、施術を拒否する。止むを得ず、ジェインウェイ自ら手術を行い、トゥヴォックとニーリックスが戻ってきた。その代わり、トゥーヴィックスは永久に消えてしまった。 [ これも、奇想天外な物語である。2人が転送装置の異常で融合するというのも驚いたが、分離して元に戻そうとしたら、本人が自分は死ぬと言って抵抗するというのは、確かにあり得ない話ではない。ストーリーの巧みさに、脱帽するばかりだ。] 第2F−040回 (ヴィディア人の協力:Resolutions ) 総合評価 ★★☆☆☆ (ストーリー ★★☆☆☆) (人間の描写 ★★★☆☆) ジェインウェイ艦長とチャコティ副艦長は、そろって昆虫に刺されてしまい、治療法がわからない。仕方なく、2人そろって、その惑星に残ることになった。その惑星の環境であれば、病気は進行しないようなのだ。2人は、キャンプして、同時に治療法を研究しようとするが、大嵐で研究器具が壊れて、研究を続けられなくなる。チャコティは、もう諦めようとするが、ジェインウェイはなかなか諦めない。それでも、もう潮時かという弱気が出ないわけでもない。 一方、2人を置いてアルファ宇宙域に向けて航行を続けるヴォイジャー内では、日が経つにつれて、だんだん士気が下がり、艦長となったトゥヴォックに対する風当たりが強くなる。トゥヴォックは迷うが、引き返し、宿敵のヴィディア人の協力を求めることにした。幸い、ドクターがヴィディア女性のタラナ・ペル(34回参照)と連絡がとれ、ワクチンをもらえることとなった。 ところが、ヴィディア船との合流点に着いたとき、ヴォイジャーは複数のヴィディア人に取り囲まれ、集中攻撃を受けた。罠だった。ところが、タラナ・ペルはドクターに連絡してきて、攻撃するとは知らなかったといいつつ、ワクチンを送ってくれた。ワクチンを入手したヴォイジャーは、ジェインウェイとチャコティを迎えに行った。 [ 捕まれば殺されて臓器を取られてしまうという恐ろしいヴィディア人を相手に、決死の覚悟で協力を求めたが、結局、最後にものをいったのは、タラナ・ペルとの人間関係だったという話である。] 第2F−041回 (ケイゾンの罠 前編:Basics, Part I ) 総合評価 ★★★☆☆ (ストーリー ★★★☆☆) (人間の描写 ★★★☆☆) ヴォイジャーの宿敵であるケイゾンのニストリウムにいる裏切り者のセスカから、通信が入った。指導者のマージ・カラが、チャコティの子供を殺そうとしているという。ヴォイジャーは罠と疑ったものの、遂に決断して救出に向かう。1隻で数隻に囲まれることになるため、事前にホログラムで味方のタラクシア船が何隻かいるように見せかけたりして準備を整えた。 ケイゾンに向かう途中で破壊されたケイゾンの小型船に出会い、そこにいた瀕死のケイゾン人を救出するが、それはセスカの下にいて、かつてチャコティを拷問した兵士だった。セスカが殺されたので、自分も逃げてきたという。ところが、ヴォイジャーが多くのケイゾン船を相手に戦闘中、ヴォイジャーの船内で自爆し、それを契機にケイゾンの兵士が乗り込んできて、ヴォイジャーは乗っ取られてしまう。チャコティの子供は無事で、セスカはマージ・カラにこれは強姦されてできた子供だと説明し、カラはそれを信じて、子供をケイゾンの兵士として育てるつもりらしい。 ヴォイジャーの乗組員は、カラによって全員、未開の惑星上に連れて行かれ、そのまま放置されてしまった。その惑星には、未開の原始人が住み、火山が噴火している。ジェインウェイ艦長は乗組員に対し、「サヴァイヴァルがあなたたちの任務だ。」と、士気を鼓舞しようとする。 [ 罠だと思いながらそこへ突っ込んでいくのは、ヴォイジャーらしいところだが、それにしても、今回はかなり無謀な感がする。総攻撃を受けたときに脱出して行方不明になったパリス、ヴォイジャー内に留まったドクターと理由なき殺人で拘束されている乗組員ロン・スーダーの行く末が気になる。] 宇宙船ヴォイジャー【第3シーズン】 第3@−042回 (ケイゾンの罠 後編:Basics, Part II ) 総合評価 ★★★★☆ (ストーリー ★★★★★) (人間の描写 ★★★★☆) ケイゾンから総攻撃を受け、からくも脱出したパリスは、タラクシア船に助力を求めた。タラクシアの司令官は、ヴォイジャー相手では勝ち目はないと渋るが、パリスは自分はヴォイジャーの弱点を知っていると説き伏せる。そして、ヴォイジャー内に留まったドクターと連絡をとり、ある武器回路のバックアップを戦闘直前に破壊せよと依頼する。一方、ドクターはセスカの赤ん坊を診察し、これはチャコティの子ではなく、ケイゾン人の子だという。セスカは驚いた様子である。一方、疑り深いセスカは、ドクターが反乱を起こさないようにその起動装置を破壊してしまう。ヴォイジャーの船内には、理由なき殺人で拘束されている乗組員ロン・スーダーだけが残され、ヴォイジャーの運命を担う。しかし彼は、トゥヴォックの導きでようやく殺人の衝動を抑えることができるようになったのに、敵とはいえ再び人を殺さなければいけないのかと悩みに悩む。 他方、未開の惑星上に連れて行かれて放置されたジェインウエイ艦長以下のヴォイジャーの乗組員全員は、生き延びるために昆虫を食べようとしたり、必死の活動を続けていた。そこへ、恐竜のような怪物が現れ乗組員の1人が犠牲になったり、ニーリックスとケスが原始人たちに拉致されたり、火山が噴火して溶岩流が流れてきたりと、命に関わる重大な事件が次々と起きる。ところが、原始人の女性が溶岩流に取り残されそうになったとき、チャコティ副艦長がこれを助けたことから、原始人たちとの関係が良くなった。 ヴォイジャーに対して、タラクシア船が攻撃を仕掛け、その隙にパリスの操縦するシャトルがヴォイジャーの船体下部を攻撃した。そのとき、機関室に忍び込んだロン・スーダーは、並み居るケイゾン人たちをなぎ倒し、パリスに指示された作業を行って成功するが、その時に撃たれ、残念ながら亡くなった。パリスのシャトルを攻撃しようとしたヴォイジャーは、その工作のせいで全艦内にショック電流が走り、セスカを含め、大多数のケイゾン人は死亡し、生き残ったマージ・カラとその赤ん坊は、ヴォイジャーから退避せざるを得なかった。パリスはそのまま惑星へ艦長たちを迎えに行き、ヴォイジャーは通常の航海に戻った。 [ ヴォイジャーの艦長以下の乗組員全員の運命が、かつて殺人を犯して精神を病んでいるロン・スーダーにかかっているという極限的な設定の下で、うまく話が進んで行って、結局は元に戻るといういつものパターンになっている。でも、最後までどうなるのだろうと気をもんでしまい、結局はシナリオ・ライターの術中にはまってしまった。] 第3@−043回 (フラッシュバック:Flashback) 総合評価 ★☆☆☆☆ (ストーリー ★☆☆☆☆) (人間の描写 ★★☆☆☆) ある青い星雲にヴォイジャーが差しかかったとき、トゥヴォックは、少女が谷に落ちる夢を見て精神的な異常を起こした。ドクターによると、脳内に抑圧された記憶があって、それが問題だという。その記憶を呼び起こして問題を解消するため、トゥヴォックはジェインウエイ艦長と精神融合を行う。すると、そこに出てきたのは80年前のトゥヴォックの最初の配属先である宇宙艦エクセルシオールだった。艦長は、かの伝説的なヒカル・カトーで、これからクリンゴン帝国領内に囚われたピカード艦長とドクター・マッコイを独断で救出に行くところだった。トゥヴォックは、クリンゴンとの戦闘によってその艦内で同僚が死亡したとき、その少女が谷に落ちる悪夢が蘇る。 一方、ドクターは原因を探るが、分からない。そうこうしているうちにトゥヴォックが危険な状態になったので、最後にもう一度、精神融合をさせてジェインウエイ艦長とともに、宇宙艦エクセルシオールに戻った。すると今度は、ジェインウエイの姿がカトー艦長に見られるようになってしまった。それでも同じ死亡事件の現場に出会うが、再び少女が谷に転落する場面を見る。 医療室では、ドクターが、トゥヴォックの悪夢の原因がウイルスであることを発見した。しかもそれが、ジェインウエイ艦長に転移していく。それを放射線の放射で殺菌し、2人は正常に戻った。 [ 幻影はウイルスのせいだというだけのことで、昔の宇宙艦が出てきたりして、ストーリーに無理がある。しかし、カトーをはじめ昔のスタートレック艦隊士官の制服が出てきたりして、懐かしい気がした。] 第3@−044回 (地獄での友情:The Chute) 総合評価 ★☆☆☆☆ (ストーリー ★☆☆☆☆) (人間の描写 ★★☆☆☆) キムとパリスは、ある星にいるとき、テロリストと間違われて有罪の宣告を受け、刑務所に投獄された。そこは、囚人どうしが殺し合い、食事も満足に与えられないような非人道的な所だった。しかも各囚人の頭には器具が埋め込まれ、それが囚人どうしを争わせ、常に不愉快にさせ、身体を痒くさせる原因だった。 ヴォイジャーのジェインウエイ艦長は、2人を救出しようと、その星の当局と交渉するが、相手はヴォイジャーの燃料を使って爆弾の材料を作ったのではないかと疑い、2人の釈放には応じない。一方、キムは地下300メートルにあるというその刑務所から脱出するためのパイプを作った。その頃、パリスが囚人に腹を刺されてしまい、そのパイプを使って脱出を試みる。投獄されるときに放り込まれたチューブの穴から脱出することにした。首尾よくフォースフィールドを解除し、チューブを上がって行って地上に着いたと思ったら、意外にもその監獄は、地下にあるのではなく、宇宙に浮かぶ船体だった。脱出の希望を失い、頭に付けられた器具のせいもあって、キムは自暴自棄になり、脱出用のパイプを壊してしまったパリスを殺そうとまでする。 ジェインウエイ艦長は、その星を発着する宇宙船の中で、爆弾の材料を作った船を見つけて乗員を拘束し、その星の当局と再交渉するが、不調に終わった。そこで、トゥヴォックらに刑務所船に突入させ、2人を取り戻す。そのときは、2人を殺そうと他の囚人が迫り、キムが「これは、大事な親友だ。手を出させないぞ。」と言っているときだった。ヴォイジャーに帰ってきたキムは、パリスに対して言う。「今回のことは、本当に悪かった」。パリスは、「いいんだ。気にするな」。キムは、「でも、一度は『おまえを殺す』とまで言ったんだ」。パリスは、「自分の頭の中では、『大事な親友だ。手を出させないぞ』と言ってくれたことだけが、未だに残っているよ。」と答えてくれた。 [ 設定としては、まるで暴力映画だが、その中で友情の大切さを描いているようなのだけれども、暴力場面が多くて、あまりお勧めできない。] 第3@−045回 (ドクターの物忘れ:The Swarm) 総合評価 ★★★★☆ (ストーリー ★★★★★) (人間の描写 ★★★★☆) ヴォイジャーは、異星人の領域に差しかかった。ニーリックスによれば、この領域は、他の種族とは没交渉の特異な種族に支配されており、ここに入った宇宙船は、全て消息を絶っているという。仮にここを迂回するとすれば、15ヶ月も余計に掛かってしまう。もし領域内の最短距離をとると、僅か4日で通り抜けることができる。ジェインウエイ艦長は、躊躇なく強行突破することを選ぶ。異星人から連絡が入るが、翻訳できないので、何を言っているのかわからない。 ヴォイジャー船内では、ドクターの物忘れが激しくなり、記憶回路が崩壊を始めていた。元々1500時間程度の連続運転することしか想定していないのに、もう2年間も動いているからである。ヴォイジャーの艦内には、ドクターを作った木星基地のホログラムがあり、その診断用ホログラムは、ドクターとまるで瓜二つの姿形をしている。それに診てもらったところ、現在のドクターには、緊急用医療ホログラムとして当初は全く想定していなかったような、友情、愛情、オペラの知識など、医療行為には不要な知識がたくさん入っているからだという。リセットをすれば、元に戻るが、それではこれまで培ってきたドクターの人格まで消えてしまう。 異星人の領域内に入って2日目、異星人たちは小さな船だが、まるで昆虫の大群のように押し寄せてきて、ヴォイジャーに取り付いてそのエネルギー奪うとともに、乗り込んできた。ヴォイジャーは奮戦し、敵の弱点を突いて、全ての船を爆破させた。 戦闘が落ち着いて異星人が去った頃、ドクターはますます物忘れがひどくなり、姿まで不安定になる。そのドクターの治療方法について、ケスが良いアイデアを出した。ドクターと瓜二つの診断用ホログラムを、ドクターと合体させることである。試してみると、ドクターは、機嫌良くオペラを歌い出して、元に戻った。 [ 全く異なる2つの話が同時並行的に進む。小型宇宙船の大群がヴォイジャーの船体にたくさん取り付くというのは、あたかも昆虫の群れに襲われるような恐ろしさがある。一方、ドクターのエピソードは、ホログラムを初期化すれば元の融通の利かないドクターに戻るが、しかし過去2年間に他の乗組員とりわけケスとの交流の記憶が全部消えてしまうという二律背反の問題である。ドクターの方がだんだん物忘れがひどくなっていくのはご愛嬌だが、やはり深刻な問題だ。それを、診断用ホログラムとの合体という方法で解決するのは、素晴らしい着想である。感心してしまった。] 第3A−046回 (神様の正体:False Profit) 総合評価 ★★☆☆☆ (ストーリー ★★☆☆☆) (人間の描写 ★★☆☆☆) ヴォイジャーは、不安定なワームホールを発見した。その入口がアルファ宇宙域へ通じているようである。その近くの惑星には、2人のフェレンギ人がいて、レプリケーターを持ち込んでいた。これを使って、まだ青銅器時代にいるその星の人たちを騙して神様になりすまし、金儲けに勤しんでいる。ジェインウエイ艦長は、この2人を転送させ、星の人たちを騙すのをやめさせようとするが、説得できない。そこで、フェリンギにはフェリンギの文化を使えということで、ニーリックスをフェリンギの指導者の使いに仕立て上げて、2人のフェレンギ人を帰らせようとする。 ところが、ニーリックスは、帰りたくない2人のフェレンギ人に殺されそうになり、正体を見破られた。一方、ヴォイジャーでは、そのワームホールの出口を固定できそうになった。星の地上では、聖なる詩に従い、民衆によってニーリックスを含め、2人のフェリンギが焼かれそうになる。その直前にヴォイジャーに転送されて助かる。 ヴォイジャーに再びやって来た2人のフェリンギ人は、自分たちのシャトルに飛び乗って逃げようとし、ワームホールの引力に引っ張られていく。それに抗うように使った放射能線のために、2人のフェリンギ人のシャトルはワームホールの中に入って行くが、入口が移動してしまったために、ヴォイジャーはワームホールには突入できなかった。 [ デルタ宇宙域に、アルファ宇宙域にいるはずのフェリンギ人がいるとは意外だったが、そんなものを無視して、ヴォイジャーのさっさとワームホールに突入させればよかったのにと思うので、やや割り切れないエピソードである。でも、異なる宇宙域に来ても、やはり金儲けに勤しむとは、やはりフェリンギ人である。] 第3A−047回 (エナラ人の記憶:Remember) 総合評価 ★★☆☆☆ (ストーリー ★★☆☆☆) (人間の描写 ★★★☆☆) 植民星から、母星に帰るエナラ人たちを乗せて、ヴォイジャーは航行中である。エナラ人は、友好的で科学技術が進んでいて、ヴォイジャーとの間で技術の交流をするほどだった。ところが、トレスが毎晩、実にリアルな夢にうなされるようになった。ボーイフレンドと密会したりする夢だったが、そのうち、政府高官で植民を進める父を持つ娘の役割を務めるようになった。父は、アカデミーのようなところで優秀な成績を収めた娘を誇りにするが、その落ちこぼれのボーイフレンドには近づかないように言う。ところが、ボーイフレンドが再び娘のところにやってくるので、父は逮捕し、処刑する。トレスは目を覚ますが、ドクターによればエナラ人は強いテレパシー能力を持つので、そのうちの誰かの記憶が移転させられているらしい。しかし、乗船しているエナラ人は誰もが、自分ではないと否定する。それは、法律で禁じられているらしい。 また同じ夢を見たトレスは、あるエナラ人高齢女性が倒れているのを見つける。もう亡くなりかけているが、死ぬ前に誰かに真実を知ってもらいたいと、記憶をトレスに植え付けたという。それを聞いて、エナラ人の植民行為の真実を暴露すべく、ヴォイジャーに乗船中エナラ人に訴えるが、皆関わりたくないので、知らぬ顔をする。ジェインウエイ艦長に相談したトレスは、機関部にいる若いエナラ人女性に、その記憶を移転した。 [ 植民は、厄介者を処分したり追放したりする口実だったというのが真実で、それを他人に伝えようとして、死ぬ間際にトレスに記憶を移転したものだが、よく考えると、トレスにとっては、ひどくはた迷惑な話である。] 第3A−048回 (聖霊の怒り:Sacred Ground) 総合評価 ★★★☆☆ (ストーリー ★★★☆☆) (人間の描写 ★★★★☆) ある惑星で神殿に案内されていたヴォイジャーの乗組員のうちケスが、祭壇に近づいて電流に打たれたようなショックを受けた。昏睡状態に陥り医務室に運び込まれるが、手の打ちようがない。神殿の聖霊の怒りだと言われるが、その星の行政官は、宗教界には力が及ばないという。ニーリックスが必死になって過去の文献を調べ、昔、王子が同じような状態になったとき、王が聖霊に一生懸命にお願いして、王子が生き返ったという故事があったことがわかる。ジェインウエイ艦長は、自らが聖霊にお願いする儀式を行うことを決心した。宗教当局も反対はせずに、むしろ歓迎して、ガイドを付けてくれることになった。 当日、ジェインウエイは、数々の試練を乗り越えて儀式を終え、遂には36時間も昏睡状態になって聖霊に会おうとするが、「実はあなた自身の中で解決できる。」と言われた。ヴォイジャーに帰り、ドクターが数々の医学知識を元に、ジェインウエイ自身の身体の変化を使ってケスを覚醒しようとする。しかしどういうわけか、もうすぐというところで成功しない。ジェインウエイは、再び神殿を訪れ、そこの3人の賢者たちと話をする。賢者は、「あなたたちは何でも科学で解決できると信じているが、ここではそんなものは何の役にも立たない。あなた自身が、迷いなく神殿に入り、お願いすれば、道は開ける。」と言う。 ジェインウエイは、ケスとともに神殿に入ることにする。チャコティ副艦長はそんな非合理的なことをいうなら、艦長を解任するとまで言うが、ジェインウエイは決心を変えず、ケスを抱いて神殿に向かい、電流らしきものに打たれる。しかし、幸いジェインウエイ自身は無事で、ケスも覚醒した。ヴォイジャーで、ドクターがもっともらしい科学的解説をするが、ジェインウエイには、何か違うような気がする。 [ ジェインウエイが、部下のためにそこまでするかというほど、宗教の儀式に奮闘するが、結局のところ、科学がいかに進んだとしても、科学的知識ではとうてい及ばない世界が、世の中にはあるということを言いたかったのだと思う。] 第3A−049回 (未来世界の終末 前編:Future's End, Part I ) 総合評価 ★★★★★ (ストーリー ★★★★★) (人間の描写 ★★★★★) ヴォイジャーは、突然現れた29世紀から来た時間パトロール船に攻撃された。29世紀に太陽系が全て消滅するほどの時空の大爆発が起こり、その原因となったヴォイジャーを消滅させるためだという。ヴォイジャーの反撃で、ヴォイジャーと時間パトロール船は空間の歪みに巻き込まれた。気が付いてみると、ヴォイジャーは1996年の地球の軌道上にいた。時間パトロール船はアメリカのロサンゼルス近郊に墜落する。ジェインウエイ艦長らは、時間パトロール船の船長を探しに行った。そこで見つけたのは、ホームレスのおじいさんだった。それは探していた船長のなれの果ての姿で、ヴォイジャーより30年早く墜落したらしい。その墜落現場には、アメリカ人の若者、ヘンリー・スターリングがいた。 ヘンリー・スターリングは、その29世紀の時間パトロール船を手に入れ、その技術を生かして、今や巨大企業のオーナーとなっていた。その会社の建物内に、時間パトロール船を整備して置いていた。時間パトロール船の元船長の話を聞くと、ヴォイジャーも未来世界の大爆発に関与しているが、どうやらスターリングがもっと関係しているようだ。スターリングの部下は、フェイザー銃のようなものを使って、トム・パリスやトゥヴォック攻撃し、それは当たったものを消滅させるほどの威力があった。 [ 悪役スターリングは、典型的なシリコンバレーの開発者兼ビジネスマンのょうに描かれていて、面白かった。パリスと友達になった天文台の若い溌剌とした女性も、いかにも最近の若者らしい初々しさがあり、なかなか良かった。] 第3B−050回 (未来世界の終末 後編:Future's End, Part II) 総合評価 ★★★★★ (ストーリー ★★★★★) (人間の描写 ★★★★★) ジェインウエイ艦長とチャコチィ副艦長は、ヘンリー・スターリングの会社に乗り込み、スターリングが時間パトロール船のほとんどの技術を入手したことを知る。スターリングをヴォイジャー転送するが、反対に転送を戻されて、逆にヴォイジャーのデータの20%を奪われてしまう。その中にはドクターのプログラムもあった。ドクターはモバイル・ホログラム・エミッターを付けられて起動され、医療室とホログラム室以外で、初めて活動することになった。 一方、ヴォイジャーは、データが盗まれたせいで、武器システムなどが動かなくなった。スターリングを問い詰めると、時間パトロール船からはもう技術を盗み尽くしたので、あとは29世紀に出かけて新しい技術をもらうしかないという。そして、時間パトロール船を発進しようとする。どこから船が発進するかを知らないと、阻止できない。大型トレーラーが出てきて船の反応があるので、それを追って砂漠の中で破壊するが、おとりだった。 スターリング本人は、会社の建物内に置いていた29世紀の時間パトロール船に乗り込み、発進する。ヴォイジャーはそれを追うが、武器システムが働かない。止むを得ずジェインウエイ艦長は、自ら武器システムを手動で動かして負傷するが、時空の歪みに突入する直前で時間パトロール船を破壊することができた。 新たに、時空の歪みから、時間パトロール船が現れ、ヴォイジャーに呼びかけてきた。それは、最初に見たのと同じ船長で、ジェインウエイ艦長が「30年後のあなたに会いましたよ。」というと、「それはまた別のタイムラインだ。時間委員会は、ヴォイジャーが間違った時間にいるので、これをデルタ宇宙域の元の時間に戻すことにした。」という。ジェインウエイ艦長が「同じ時間のアルファ宇宙域にしてはもらえないだろうか。」と頼むと、「だめだ。それは規則に反する。」として、断られてしまった。 [ まるでアメリカ映画のロボコップを見ているような面白さがあり、悪役スターリングとの手に汗を握るアクション、パリスの恋、ドクターの活躍など、どれも生き生きと魅力的に描かれている。] 第3B−051回 (暴力的な王の星:Warlord) 総合評価 ★☆☆☆☆ (ストーリー ★☆☆☆☆) (人間の描写 ★☆☆☆☆) ヴォイジャーは、攻撃を受けた小型宇宙船から、3人の異星人を救い出したが、その内の1人が、死んでしまった。そのとき、死者の精神が看護していたケスの身体に乗り移り、支配されてしまう。それは、200歳にもなるかつての暴力的な王で、現在の王の先祖によって追い出された人物だった。ケスの身体を持つ暴力的な王は、王宮に突入して、現在の王を殺し、1人の王子を傀儡に仕立て上げ、実権を握った。ところが、ケスの精神を完全には消すことができず、頭痛などに苦しむ。ケスは、身体の中で暴力的な王と戦い続け、ようやく、これを追い出すことができた。 [ いつも爽やかで女性らしいケスが、暴力的な王を演じるので、妙な気がする。] 第3B−052回 (QとQ連続体:The Q and the Grey) 総合評価 ★★★★★ (ストーリー ★★★★★) (人間の描写 ★★★★★) 超新星爆発を間近に見ることができて、ヴォイジャーの乗組員全員が感激していた。艦隊で3番目の記録である。ところがその晩、ジェインウエイ艦長が自室に戻って休もうとしたとき、超生命体のQが再び現れた。そして、ジェインウエイに、自分の子供を産んでくれと迫る。もちろん、ジェインウエイは断るが、しつこく迫って来る。そこへ、女性のQが現れて、「40億年も付き合っておきながら、今更ほかの女に手を出すのか。」と怒る。そんなことを意に介さずにQがジェインウエイに迫る。何か裏があると感じた彼女は、Qを問いただし、「Q連続体の中で内戦が勃発している。それを収めて平和を導くのが、我々の子供の役割だ。だから君は平和の象徴の母となる。」と迫る。 QとともにQ連続体に行ったジェインウエイは、南北戦争の真っ只中に放り込まれる。肝心のQは、肩を撃たれて負傷してしまった。この内戦の原因は、第2D−033回で自殺したQにあり、これをきっかけに自分が自由と個人主義を訴えて立ち上がり、保守派内戦になったという。その影響は銀河のあちこちで超新星爆発という形で現れ始めた。ジェインウエイは、内戦を終わらせるために相手陣営に単身で乗り込み、停戦交渉をする。ところが相手の司令官はこれを聞き入れず、見つかったQとともに処刑されそうになる。 そこへ、女性Qに導かれて、ヴォイジャーの乗組員が駆けつけ、からくもQとジェインウエイを救出し、停戦も実現させる。Qと女性Qとの仲が復活し、子供を産むことになった。やがてヴォイジャーに、赤ちゃんを連れたQがやってきて、ジェインウエイに見せて去っていった。 [ まるでいい加減で信頼できないQがまた現れて、ひと騒動起こすエピソードだが、ジェインウエイに迫る全能の存在たるQが、ジェインウエイを口説こうとするものの、全く相手にされないので、他の乗組員に相談したりするのが、実におかしい。また、内戦を南北戦争で表すというのも、なかなか気が利いている。面白いエピソードである。] 第3B−053回 (マクロウィルス:Macrocosm) 総合評価 ★★★☆☆ (ストーリー ★★☆☆☆) (人間の描写 ★★★★☆) ニーリックスとともに、ある星に交渉に行ったジェインウェイは、ニーリックスの外交手腕に感心しながら、ヴォイジャーとの合流点に着いたが、ヴォイジャーが来ていない。1.4光年も離れたところにいるので、そちらに向かった。ヴォイジャーからは応答がない。中に入ると、乗組員が誰もいない。2人で艦内を進んで行くと、ニーリックスが何者かに襲われ、粘つく液体を残してどこかに消えた。 ジェインウェイは、怪物に襲われながら医務室にたどり着き、ドクターにどうしたのか尋ねた。ドクターは、ある星の炭鉱から救援の要請があり、病気が蔓延しているという。ドクターが転送で現地に到着し、診察した。すると、ウィルスはごく小さいものだから、普通は目に見えるはずがないのに、それが猛スピードで大きくなって、人を襲うようになっていた。ドクターが転送でヴォイジャーに戻ってきたとき、そのウィルスが船内に紛れ込んだ。それが、乗組員を襲い、全員が息も絶え絶えの状態になったという。 ドクターに治療をしてもらったジェインウェイは、出来上がったワクチンを自分の体で効果を確かめ、環境コントロールシステムを通じてそれを全艦内に散布しようとする。ところが、システムを修理して動かそうとした瞬間、異星人の攻撃を受けた。治療法のないこの病気を根絶するため、ヴォイジャーを破壊して消毒するというのである。ジェインウェイはその艦長と取引し、ワクチンを開発したので、待ってくれれば差し上げるという。艦長は、「分かった。1時間だけ待つ。」ということになった。その間、ジェインウェイは環境コントロールシステムを使わない代替手段として、赤外線に集まるマクロウィルスの特性から、ホロデッキの人物を襲わせた。そこに、ワクチンを入れた爆弾を爆発させ、ウィルスを根絶した。 [ 疫病が蔓延して不安に思うのは、敵が目に見えない病原体であるからというのも、その一因だが、しかしこのように大きくなって人を襲ってくるというのもまた怖いものである。それにしても、ジェインウェイ艦長が、まるでシルベスタスタローンのような出で立ちで、1人で大奮闘するとは思わなかった。] 第3C−054回 (小さな嘘:Fair Trade) 総合評価 ★★★☆☆ (ストーリー ★★★☆☆) (人間の描写 ★★★☆☆) 怪しげな星雲に近づいたヴォイジャーは、その端に位置する宇宙基地に立ち寄った。そこで乗組員は、必要な物資を入手しようとしていた。ニーリックスもその1人で、タラクシア人の旧友に会う。再会を喜び合い、一緒に星雲の地図と希少な補給物資を入手しようとした。ところがそれは実は麻薬取引で、旧友のタラクシア人が取引相手の売人を連邦のフェイザー銃で撃ち殺してしまった。 宇宙基地の管理者は、その事件の直前にチャコティとパリスがその売人にたまたま出会っていたことから、2人を殺人犯として逮捕する。一方、ニーリックスはこの麻薬取引事件を艦長に報告しようかと悩みつつ、旧友の誘いで今度はヴォイジャーのワープコアのプラズマを引き渡す取引に誘われる。旧友は、これをギャングに渡さないと、殺されると心配する。板挟みになったニーリックスは、基地の管理者に取引を持ちかける。自分と旧友が、いわば囮となって、ギャング一味を一網打尽にする計画である。その代わり、自分と旧友を放免してくれというものである。管理者は同意し、2人は取引に向かう。 取引のとき、ニーリックスはギャングにプラズマを渡すが、混ざり物が多くて使い物にならないことが見破られた。銃口を向けたギャングに対し、ニーリックスは「さっき、容器を少し開けておいた。銃を撃てば、それに引火して、ここにいる皆は全員が死ぬぞ。」と脅かす。そこへ基地の保安要員が現われて、ギャングを逮捕しようとした。銃が発射され、爆発が起こった。ニーリックスは火傷をしたが、医務室で手当てを受けて回復した。 そのニーリックスに対して、ジェインウェイは、「なぜこんなことをしたの?あれほど信頼していたのに、本当に残念だ。」と問いかける。ニーリックスは、「ここから以降は自分の知らない世界で、もう案内ができない。だから、ヴォイジャーのために星雲の地図が入手したかった。」。そこでジェインウェイが言う。「先のことを知らないのは、皆同じよ。」。 [ サスペンス仕立てで、小悪党に取り込まれるニーリックスの心の葛藤がよく描かれている。彼は、最初は星雲の地図を入手したいという軽い気持ちで艦長や仲間に報告せずに取引に同行し、そこで事件に巻き込まれる。そこからは、つるべ落としに悪い方に事態は展開していく。ところが最後に、ニーリックスの起死回生の手が奏功した。] 第3C−055回 (1人で守る宇宙基地:Alter Ego) 総合評価 ★★☆☆☆ (ストーリー ★★☆☆☆) (人間の描写 ★★★☆☆) 珍しい反転星雲の近くを通りかかったヴォイジャーは、星雲の中で何かが働いて、星雲が燃え尽きるのを防いでいることを発見したが、その原因がわからない。一方、キムがトゥヴォックのところに行き、「ホロデッキのマリーナに恋をした。」という。トゥヴォックはキムに、「忘れるのが論理的だ。」と言い、キムに瞑想を教えた。一方、トゥヴォックはマリーナのいるハワイ風のホロデッキに行き、マリーナと話すが、そのホログラムとは思えないほど豊かな見識に驚き、畏敬するようになる。翌日も行き、バルカン風のチェスをする。それをキムに見られ、キムは嫉妬する。 一方、ヴォイジャーの中で、機関には異常がないのに、ブリッジの操縦には反応しなくなり、その原因が全くわからない。そうこうするうちに、マリーナがトゥヴォックの部屋に現れる。そして、トゥヴォックに自分と一緒にいてほしいと願う。そのうち、この信号が星雲の宇宙基地から出ていることがわかり、そこへ転送でトゥヴォックが行った。そこにいたのは、1人の異星人女性で、その星雲が故郷の星の人によく見てもらえるようにと、基地に単独でいて、守っているのだという。そして、トゥヴォックに残ってほしいと願う。トゥヴォックは、「早く他の人に代わってもらい、自分の国に帰った方がいい。」と説得し、それが功を奏した。異星人女性は納得して、トゥヴォックとヴォイジャーを解放した。 [ 考えてみたら、たった1人で宇宙基地を守る哀れな女性の話である。たまたま、通りかかったヴォイジャーのホロデッキに入ったら、(キムではなく)トゥヴォックという大人の男性に出会い、急に一緒にいてほしくなったというのである。] 第3C−056回 (臨死体験:Coda) 総合評価 ★★★☆☆ (ストーリー ★★★☆☆) (人間の描写 ★★★★☆) ある惑星にシャトルで墜落したジェインウェイとチャコティは、ヴィディア人に襲われて死亡する。ところが、しばらくして助かり、また死亡するという体験を繰り返し、これは時間のループに入ったのではないかと考えたが、そのようなものは見つからない。とうとう、ジェインウェイは、ヴィディア人に襲われたときの彼らの疫病であるフェイジに罹って死亡する。そのとき、ベッドに横たわる自分の姿や、葬儀のときに悲しむ乗組員の様子を見ている。自分の元に、光の中から父の姿をした男がやって来て、現世に諦めをつけて、自分と一緒にあの世へ行こうと、しつこく誘うが、ジェインウェイは、きっぱりと断る。 そのとき、シャトルが墜落した現場では、チャコティとドクターが、ジェインウェイを蘇生させようと必死だった。ドクターは、ジェインウェイの大脳皮質に何らかの生命体が寄生していて、それがジェインウェイの蘇生を妨げているという。ジェインウェイが夢の中で、自分を霊界に誘うその男と対決し、ついに諦めさせたところ、大脳皮質から生命体が消え、ジェインウェイは蘇った。 [ これは、人の死に際して見るという、いわゆる臨死体験を暗示するようなエピソードである。ジェインウェイの心の強さに、さすがの生命体も、勝てないで消えていった。葬儀のときの、ベラナとキムの艦長を送る言葉が、とても感動的だった。] 第3C−057回 (バルカンの性の衝動:Blood Fever) 総合評価 ★☆☆☆☆ (ストーリー ★☆☆☆☆) (人間の描写 ★☆☆☆☆) バルカンの若い士官が、バルカン族特有の7年毎の性の衝動に駆られ、トレスをその相手に選んだが、拒絶される。しかし、バルカン士官に顔を掴まれたことから、トレスにもそれが移った。近くの無人の星の鉱物を探索中、その衝動が現れてパリスに迫るが、パリスは紳士的に振る舞う。 一方、その星の鉱物資源を得るため、鉱山跡に入ろうとしたヴォイジャー乗組員一行は、数十年前に徹底的に破壊された村の遺跡を見つけた。その鉱山跡に入って行った一行は、住民らしい者たちに囲まれた。たった1時間で破壊され尽くしたその村の住民の生き残りだという。チャコティが、必要なら、物資や防衛システムを提供するというと、銃を下ろした。それから、ヴォイジャーが必要とする鉱物と交換したが、その村を襲ったのは、ボーグだとわかった。 [ 筋があるような、ないような話である。こんなところにも、ボーグの脅威が及んでいたとは・・・ヴォイジャーの行く手の困難さを思い起こさせる。] 第3D−058回 (元ボーグの人々:Unity) 総合評価 ★★★★★ (ストーリー ★★★★★) (人間の描写 ★★★★★) チャコティは、シャトルで探査中に連邦の救難信号を受け、救助に向かった。その惑星に着いた途端、何者かの襲撃を受け、チャコティは頭を負傷した。しかし、地球人の女性に助けられる。一方、ヴォイジャーはボーグ・キューブに遭遇して緊急警報を出すが、そのボーグ・キューブは停止しており、5年間も宇宙を漂っていたようだ。宇宙空間で強烈な放電現象に遭い、全艦が停止したらしい。 一方、チャコティは地球人の女性に介抱されるが、彼女を始め周りにいる人物は全て、元はボーグの集合体を形成していたドローンだったことを知る。その話によれば、「宇宙空間での放電現象でボーグ・キューブが故障し、集合体から切り離され、この惑星で住み始めた。ところが、資源に限りがあるので、人種やグループに分かれて、相争っている。」という。そのうち、チャコティの負傷箇所が悪化し、その元ドローンたちは、自分たちと小さな集合体リンクを張れば、頭の負傷を治せるという。チャコティは、死ぬよりはと受け入れた。数人が集まり、リンクを張ると、チャコティの頭には、その周りにいる元ドローンの人々の記憶や知識が共有され、不思議な感覚におちいったが、頭の傷は治った。 その地球人の女性がチャコティとともにヴォイジャーに乗り込み、物資の補給を要請するとともに、ある難題を持ちかけた。それは、「この惑星にいるボーグの元ドローンたちに、再びドローンのリンクを張りたい。そうすれば、今は血で血を争う抗争を行っているこの惑星の住人が、元のように平和に共存できる。そのためには、故障しているボーグ・キューブの中のリンク装置だけをこの惑星に向けて動かせばよい。」というのである。ジェインウェイは、「第1に、それはあまりにも危険だ。何が起こるかわからない。第2に、それではボーグに戻りたくない人々も無理矢理また集合体に入れることになる。」と言い、断った。 惑星に物資を送り届けたチャコティは、トレスとともにシャトルに乗り込んでヴォイジャーに帰る途中、ボーグにリンクされ、その指令を受け取る。「休止しているボーグ・キューブに乗り込み、リンク装置を惑星に向けて動かせ。」というのである。チャコティは、その通りに行動する。ヴォイジャーの乗組員もボーグ・キューブに入ってチャコティの後を追う。チャコティは指令された通り、リンク装置を動かすが、どういうわけか、ボーグ・キューブの全体が動き出した。緊急転送でその場を逃れた乗組員を収容してヴォイジャーが脱出しようとしたとき、ボーグ・キューブは自爆してしまった。惑星から通信があり、「自分たちがボーグ・キューブを破壊した。チャコティには、申し訳ないことをした。」と。 [ 久しぶりにボーグの恐ろしさを感じた。ボーグは、ボーグ・クイーンの統率の下、一個の集合体を形成し、ヒューマノイドを襲って精神的、肉体的にドローン、つまり意のままに動かす駒のようなロボットにしてしまう怖い存在である。その集合体へのリンクからたまたま逃れて個々の自由を取り戻した人々が、争いを避けるために再び集合体を作りたいというのは、全く皮肉な話である。よく出来たストーリーだと思う。] 第3D−059回 (もう1人のドクター:Darkling) 総合評価 ★★☆☆☆ (ストーリー ★★☆☆☆) (人間の描写 ★★★☆☆) ヴォイジャーがある星で休息中に、ケスはその星の孤独な旅人に恋をして、ヴォイジャーを降りてもよいとまで思うようになった。その頃、ドクターは、歴史上の偉人たちの性格を自分の中に取り込もうと、サブルーチンを追加した。ところがこのサブルーチンは、いくつかの人間の性格を混在させたものだから、むしろ悪いところを引き出す結果となり、凶暴で邪悪なドクターを生み出してしまった。 そのドクターが、トレスを麻痺させたり、ケスを人質にとって、悪事を企む。ケスの必死の説得にもかかわらず、2人で谷底へ落ちるが、その途中でヴォイジャーに転送されて、事なきを得た。 [ いかに偉人であっても、光の対極に闇があるということを気がつかせてくれる。それにしても、悪人ドクターは、なかなか怖かった。演技が上手い。] 第3D−060回 (リニア・エレベーター:Rise) 総合評価 ★★★★☆ (ストーリー ★★★★☆) (人間の描写 ★★★★☆) ある惑星に隕石が衝突して全滅しそうになり、ヴォイジャーがそれを破壊して助けようとするが、飛んでくる小惑星を撃っても、蒸発しないで破片が地上を直撃した。それを調べると、異星人作成の回路が見つかった。人工の隕石だった。地表では、その星の博士がいて、ヴォイジャーに乗船中のその星の大使に隕石のことで何かを伝えたかったようだが、回線が切れた。 トゥヴォックとニーリックスが、その星の大使の従者とともに博士を探索する任務中にシャトルが墜落した。墜落現場に博士と鉱夫が現れて、一緒に行動することになった。シャトルが修復できないので、近くにあったリニア・エレベーターに乗り、成層圏を越えてからヴォイジャーに転送してもらうことにした。リニア・エレベーターに着いたら、鉱山で働く女性がいたので、彼女も含めて5人で乗り込んだ。ニーリックスの操縦で上昇する途中、一時は不安定になったが何とか乗り越えたものの、片方の酸素供給装置が壊れた。 酸素不足の中、博士が「上に大事なものが。」という言葉残して死んでしまった。トゥヴォックは、これを毒殺と判断した。ニーリックスはその言葉が気になってリニア・エレベーターの上に行って確認しようと主張するが、トゥヴォックがそれは非論理的な発想だと却下する。しかし、ニーリックスは、時には直感で動くのが正解のときがあると訴えたので、トゥヴォックは止むを得ず外に出て調べに行き、異星人のデータが入った装置を見つけた。大使の従者が追ってきてトゥヴォックをエレベーター外に落とし、全員を従わせようとするが、ニーリックスがトゥヴォックを戻し、従者は地上に落ちていった。エレベーターは成層圏を抜け、全員がヴォイジャーに無事に転送された。実は、これは異星人が、自然現象に見せかけて隕石で攻撃する惑星侵略の一環であった。 [ 論理のトゥヴォックと直感のニーリックスとの対比が面白く、それにリニア・エレベーターや隕石衝突を組み合わせた、なかなか知的好奇心が刺激されるサスペンス仕立てのエピソードである。] 第3D−061回 (女護が島:Favorite Son) 総合評価 ★★☆☆☆ (ストーリー ★★☆☆☆) (人間の描写 ★★★☆☆) ヴォイジャーの行く手に3隻のナサリ船が現れて、奇襲攻撃を仕掛けてきた。キムがそれを直感で見破り、艦長にはからずに独断で攻撃した。この事件でベラナが瀕死の重傷を負ったが回復し、キムが謝った。ヴォイジャーを襲ったナサリ船に対して、タレーシアの船が攻撃し、これを追い払った。タレーシアの女性司令官は、ヴォイジャーの乗組員、特にキムを歓迎し、「キムはタレージアンで、そのDNAを持っていて、故郷に帰って来たのだ。」という。現に、キムの顔には、タレージアンの斑点が出るようになった。そして、多くの美しい女性が、キムを取り巻き、その関心を惹こうとする。 ヴォイジャーのジェインウェイ艦長は、半信半疑で艦に戻り、軌道から離れて3隻のナサリ船と交渉をする。タレージアンとしてのキムがいないので、友好的に話し合うが、なぜタレーシアを攻撃するのか、要領を得ない。また軌道に戻ろうとするが、タレーシア側の妨害に合って、戻れないし、キムと連絡がとれなくなった。一方、キムは美しい女性たちに囲まれた1人の男性に会うが、一晩明けてその部屋を訪れると、彼は精力を全て吸い取られて干からびた骸骨のようになっていた。キムは逃げ出し、ヴォイジャーに転送された。キムが近くの星に上陸した時に、ウイルスを仕込まれたらしい。 [ 真面目なキム少尉が、たくさんの美しい女性に囲まれる話で、ヴォイジャー版アマゾネスか女護が島である。最後にキムが、ギリシャ神話のオデッセイ中にあるセレーンの船乗りへの誘惑の話をするが、まさにその通りである。] 第3E−062回 (お婆さんのケス:Before and After) 総合評価 ★★★☆☆ (ストーリー ★★★☆☆) (人間の描写 ★★★☆☆) ケスが気がついてみると、坊やがいて、おばあちゃんの9歳の誕生日だという。寒気がしてまた気がつくと、ケスの娘がいた。寒気がするたびに、若返っていく。どうやら、クレニム人の攻撃でクロニトン放射を浴びたせいで、時間を遡っているらしい。この攻撃で、ジェインウェイ艦長、ベラナ・トレスなど大勢が死んだようだ。ケスはパリスと結婚し、その間に生まれた娘がキムと結婚していて、この坊やを産んだという。 ケスの時間の遡りを治療するには、クロニトン爆弾の正確な周波数が必要だが、それが分からないので困ったと思ったときに再び時間の遡りが起きて、ケスはその爆弾が撃ち込まれた時間にいた。それで決死の覚悟で爆弾に近づき、周波数を記憶した。次いで時間の遡りが生じたとき、ケスはドクターの治療を受け、夢の中で子供時代や産まれた時まで遡ったが、やっとクロニトン放射能の影響を除去して、元に戻った。 [ 若くて美人のケスが、お婆さん顔になるハリウッドのメーク技術は驚くほどである。最初は筋書きが今一つわからなかったが、ケスが2回ほど時間を遡ってからは理解できた。] 第3E−063回 (ドクターの理想の家族:Real Life) 総合評価 ★★★★★ (ストーリー ★★★★★) (人間の描写 ★★★★★) ヴォイジャーは、空間と亜空間の間の危険な竜巻のような現象に遭遇してその科学的調査を行っていた。一方、ドクターは自分の家族のホログラム・プログラムを作成したが、それは非の打ち所がない完璧な理想的家族だった。しかしトレスは、そんなものはまやかしだと思い、もっと現実的なものにしようと、プログラムに手を加えた。すると途端に、妻は家を散らかし放題にするし、息子はクリンゴンの不良と交際して家出しようとするし、娘は勝手な要求をするなど、家庭の中が滅茶苦茶になった。ドクターは頭を痛め、仕事も手につかない有り様である。そのうち、ドクターに最も懐いていた娘が、転んで頭を強打して危篤になった。ドクターが手を尽くしたものの、いつ息を引き取るかという段階になった。ドクターは、余りの悲しさに、プログラムを停止して、もう見ないことにした。 他方、現実のヴォイジャーでは、特殊なプラズマを収集しようとしてパリスがシャトルで空間と亜空間との境界に突入して行き、一時行方不明となる。しかし、何とか生還し、ドクターが手当てをして健康体になった。そのパリスがドクターに、家族のプログラムはどうなったと聞いた。ドクターは、「もうあれは見ないようにしている。」というと、パリスは「それだと、本当の人間関係を学んだことにならない。良いことも悪いことも、共に喜び、悲しむことが本当の家族だ。」と諭す。ドクターは、それを聞いて再びプログラムの娘が死ぬ直前の場面に戻り、娘を看取り、妻や息子と一緒に、悲しみにくれた。 [ このシナリオ・ライターは、家族というものを深く理解している熟練の職人だと思う。こんなシナリオは、なかなか描けるものではない。このシリーズの中でも白眉の出来だと思う。] 第3E−064回 (遠隔地起源説:Distant Origin ) 総合評価 ★★★★★ (ストーリー ★★★★★) (人間の描写 ★★★★★) ヴォイジャーに、遮蔽技術を使った侵入者が2人現れた。惑星ヴォスの科学者ゲイガン教授とその弟子である。ゲイガン教授は、自分たち爬虫類族の起源がヴォスではなく、銀河はるかに遠くの地であることを証明しようとしていた。ところが、ゲイガン教授の説は、爬虫類族こそ惑星第一の種族と信じているヴォスの支配層にとっては非常に危険な考え方で、その公表を防ごうとしていた。ヴォイジャーに現れた2人のうち、助手はヴォイジャーに捕らわれたが、ゲイガン教授はチャコティを連れて自分の船に戻り、チャコティに事情を話した。ヴォイジャーでは、この爬虫類族が本当に地球由来か調べたところ、DNAが人類のものと47箇所で一致し、その他地球の300の生物と一致する特徴があった。やはり、ヴォイス教授の遠隔地起源説は、正しいようだ。 ヴォイス教授はチャコティとともに惑星ヴォスの元老院で裁判にかけられ、大臣から、遠隔地起源説のような危険な説は間違いだった認めよと強く迫られる。ヴォイス教授は、真実は曲げられないと抵抗する。チャコティは、脇から、「皆さんの先祖は、隕石衝突、火山活動などの自然災害か逃れるため、宇宙飛行の技術を開発して、危険を冒して地球を出発し、宇宙を長年彷徨った挙句に、このヴォス星に到着した偉大な種族である。教授の説を否定することは、そうした偉大な先祖の功績をも否定することになるのではないか。」と助け船を出す。ところが、大臣には聞いてもらえない。それどころか、教授とヴォイジャーの乗組員を抑留キャンプに入れると言われる。教授は遂に、自説は誤りだったと認めざるを得なかった。 [ あたかも、ガリレオ・ガリレイの地動説に対する宗教裁判をモデルにしたと思える筋書きである。迫力ある大臣とヴォイス教授とのやり取り、チャコティの演説など、見どころが一杯のエピソードである。] 第3E−065回 (消えゆく乗組員:Displaced) 総合評価 ★★★★☆ (ストーリー ★★★★★) (人間の描写 ★★★★☆) ヴォイジャーに突然、異星人のニリヤ人が現れ、「なぜ自分はここにいるのか?」などと乗組員に聞いてくる。それ同時に、乗組員の1人が消えていった。こうして、9分20秒ごとに、ニリヤ人とヴォイジャーの乗組員が入れ替わっていく。やがてジェインウェイ艦長も消えてしまった。入れ替わったニリヤ人たちは、暑くて暗い環境を好む。乗組員が十分に少なくなったところで、ニリヤ人たちは、本性を現してヴォイジャーを乗っ取ってしまう。残されたチャコティ副艦長は、もう1人残された乗組員とともに、破壊工作をし、ドクターのホロ・エミッターを連れて最後に消えた。 ヴォイジャーの艦長以下、乗組員全員が転送された先は、地球と同じ環境だった。そこへ現れたニリヤ人は、「ヴォイジャーは貰う。レプリケーターも用意するなど、この居住区で一生を過ごすように取り計らった。逃げることは考えない方がいい。」などという。ジェインウェイが、「それでは、まるで捕虜ではないか。」と抗議すると、「我々は、戦って手に入れるのではないから、これは文明的なやり方だ。」と答える。 ヴォイジャーの乗組員は、部品を寄せ集めてフェイザー銃を作り、ドクターをトリコーダー代わりにして脱出口を探し、二手に分かれて探索した。するとそれは、100近い居住区のある宇宙船で、それだけの数の船が乗っ取られていた。ヴォイジャーはその1つだった。ベラナとパリスはニリヤ人に追われたが、彼らが寒い環境に弱いことを利用して、零下20度の居住区に逃げ込んで抵抗した。ジェインウェイはそのコントロール室に侵入し、乗組員を転送した仕組みを解明した。それを利用して、ニリヤ人指揮官を降伏させ、ヴォイジャーの乗組員を元に戻し、居住区に閉じ込められていた全員を解放した。 [ シナリオがどう展開していくのか、全く予想ができない面白さがある。ストーリーメイキングが、実に上手である。] 第3F−066回 (最悪のシナリオ:Worst Case Scenario) 総合評価 ★★☆☆☆ (ストーリー ★★★☆☆) (人間の描写 ★★☆☆☆) トレスは、ホロデッキで面白いプログラムを見つけた。それは、チャコティたちがヴォイジャー内で反乱を起こすという内容である。早速トレスとパリスは、それで遊び始め、夢中になった。ところが、そのプログラムは途中で止まってしまい、それ以上は進まない。パリスは、続きを自分で書こうとした。一方、そのプログラムの素性と作者が明らかになった。ヴォイジャーの航行初期で、まだマキのメンバーと艦隊の正規の士官とがあまり融和していなかった頃、万が一の反乱を想定して保安部長のトゥヴォックが作った訓練用のものだった。乗組員の間で評判になり、ジェインウェイ艦長も、続きができるのを楽しみにしているという。 そこでパリスとトゥヴォックは、そのプログラムを動かして自分たちで続きを作ろうとした。ところが、1年前に反旗を翻してヴォイジャーを離れた挙句に死亡したセスカが、既にその続きを描いていて、それでプログラムが止まらなくなり、しかも安全装置が外されて非常に危険なものとなっていた。そのプログラムの中で、パリスとトゥヴォックはセスカの反乱一味に追われ、艦内を逃げ回る。それに気づいたジェインウェイ艦長やトレスは、ホロデッキの外からプログラムを改変しようとするが、セスカのプログラムがそれを打ち消してしまい、救い出せない。とうとう、パリスとトゥヴォックが追い詰められて、セスカの一味に殺されそうになったとき、外からやっと、救出することができた。 [ セスカがあたかも厄病神の亡霊のように現れて、再びヴォイジャーの乗組員に禍をもたらすという内容である。ジェインウェイが、プログラムの進行を先回りして改変していくという設定が面白い。] 第3F−067回 (前門の虎・後門の狼 前編:Scorpion, Part I ) 総合評価 ★★★★★ (ストーリー ★★★★★) (人間の描写 ★★★★★) ヴォイジャーは、恐ろしい敵のボーグの領域に入っていった。通り抜けるのに半年はかかりそうで、しかも迂回することも出来ない。調べたところ、北西航路をとれば、ボーグが少ないことがわかった。その航路を進んでいたところ、ヴォイジャーの前にボーグの戦闘艦であるキューブが突然出現したが、戦闘に入ることなく、ヴォイジャーをスキャンしただけでそのまま通り抜けてしまった。狐に包まれた思いでいたところ、しばらくしてこれらのボーグ・キューブが全て破壊されているところに差し掛かった。どうやら、ボーグよりもはるかに強い敵がいるらしい。 その敵は何かを調べるため、チャコティたちは、半壊のボーグ・キューブの中に潜入した。そこで発見したのは、全てが有機体でできている異星人の船で、恐ろしい異星人、つまりボーグが「生命体8472」と呼ぶものが乗っていた。そこでキムが襲われ、その生命体8472の細胞が乗り移り、キムの細胞を食べようとしていた。ドクターがこの細胞の活動を止めるワクチンを開発し、キムの命を救った。一方、オカンパ人のケスは、そのテレパシー能力を通じてその恐ろしい生命体8472の考えを知ることができたが、彼らには強い悪意が感じられた。 ここで、ジェインウェイは、生命体8472を撃破するか、ボーグを突破するかを選ぶ究極の選択を迫られる。苦悩の末、思いついたのは、ボーグは現在、生命体8472に対抗する有力な手段を持たず、一方的に攻撃されっ放し状況なので、ドクターが開発したワクチンを生物兵器として使うことである。つまり、対抗できる生物兵器の共同開発と引き換えに切り札のナノプロープを最後に渡し、領域の安全な通過を認めさせることだった。チャコティは、ボーグ相手では危険すぎると反対したが、ジェインウェイは自分の決定だとして、自らボーグと交渉に臨んだ。 [ 前門の虎か、後門の狼かという究極の選択を迫られた結果、狼と組んで虎に当たろうというのがジェインウェイの一か八かの戦略である。慎重なチャコティには、とても付いて行けないものだった。2人の指揮官の性格の違いが浮き彫りになる。チャコティは語る。「アメリカ・インディアンの自分の部族に言い伝えれられている話に、こんなものがある。増水した川を、サソリが渡ろうとしている。ところが、刺されるのを恐れて、誰も背中に乗せてくれない。そこでサソリは、『川を渡るときに、自分は乗せてくれる動物を刺すはずがない。そんなことをすれば、自分も死ぬだろう。』と。これに納得した動物は、サソリを背中に乗せて川を渡り始めた。ところがサソリは、その動物を刺してしまった。動物が『なぜだ』と聞いた。するとサソリは、『それが自分の本能だ。』と答えた。だから、ボーグの本能が変わらない以上、危ない。」とジェインウェイを説得しようとする。これに対してジェインウェイは、これは最終決定だと答える。このエピソードの中での山場である。実は私も、チャンスがあれば、それに賭けて全力で一か八かの勝負に出る方なので、ジェインウェイ流の選択をすると思う。残念ながらチャコティのやり方は、残念ながら、あくまで凡人の域にとどまる。] 宇宙船ヴォイジャー【第4シーズン】 第4@−068回 (前門の虎・後門の狼 後編:Scorpion, Part II ) 総合評価 ★★★★★ (ストーリー ★★★★★) (人間の描写 ★★★★★) ヴォイジャーとボーグが生命体8472に対抗する生物兵器を作る共同作業をするため、ボーグの「セブン・オブ・ナイン」と名乗るドローンがヴォイジャーに乗り込んできた。共同作業中、特異点が開いて生命体8472のたくさんの攻撃艦が現れ、セブン・オブ・ナインのボーグ・キューブ戦艦とヴォイジャーを攻撃してきた。ボーグ・キューブ戦艦はヴォイジャーの盾になる形で破壊され、その生き残ったドローンたちはヴォイジャーの貨物室に転送されて、そこをボーグ・キューブの中のように改造していった。 一方、この戦闘でジェインウェイ艦長は瀕死の重傷を負い、やむなく指揮権をチャコティ副艦長に委ねた。ボーグが40光年、5日航海分も逆行させようとしたことから、チャコティはジェインウェイの方針に反して、ボーグとの同盟継続を拒んだ。そこで、船内に入り込んだボーグのドローンたちは、ヴォイジャーを乗っ取ろうとした。セブン・オブ・ナインは、空間をこじ開け、ヴォイジャーをあの恐ろしい生命体8472の住む世界に飛び込ませた。そこで多くの生命体8472の戦闘艦に襲われたが、これらに対して発射した生体分子弾頭兵器の効果は抜群で、戦闘艦を全て破壊した。 通常の空間に戻ったヴォイジャーでは、ドローンたちが船を乗っ取ろうとしたので、貨物室を減圧してドローンたちを放り出した。しかし、セブン・オブ・ナインだけは助かり、ボーグと連絡を取ろうとした。その頃、ジェインウェイが艦長に復帰して再び指揮をとり始めた。セブン・オブ・ナインのボーグ集合体へのリンクを絶とうとして、チャコティが小さなリンクでセブン・オブ・ナインの気を引いている間に作業をし、リンクの遮断に成功した。 [ 息も継がせない戦闘の連続で、手に汗を握る場面が続く。生命体8472は、最初に我々の銀河を攻撃してきたのではなく、むしろボーグが、最も進歩した生命体を同化しようと、彼らの世界に侵攻していったのだというストーリーには、ただただ驚くばかりである。ところが、予想よりもはるかに強く、ボーグはそれまでに400万人のドローンの犠牲を出したという。ともかく、このエピソードは、セブン・オブ・ナインが主要な乗組員の1人になる最初の顔見せという点にも意味がある。ジェインウェイが、自分の方針に反してチャコティが指揮をしたことに対し不満の意を伝えたとき、艦の外でも中でもこうやって戦闘していたのでは勝てないといい、再びボーグとの共同作戦を進めることにしたのは、まさに熟練の指揮官のやり方である。] 第4@−069回 (セブンの誕生とケスとの別れ:The Gift) 総合評価 ★★★★☆ (ストーリー ★★★☆☆) (人間の描写 ★★★★★) セブン・オブ・ナインの身体からボーグの要素をできるだけ取り除く手術を行い、彼女は身体が次第に元の人間になりつつあった。ところが、心はまだボーグのままで、集合体に返せとジェインウェイ艦長に迫る。ジェインウェイは、「あなたを返すと、ヴォイジャーの乗組員を危険にさらすことになる。あなたは、元々はアニカという人間なのだから、我々人間と一緒に暮らしなさい。」と諭す。その一方、ボーグがいじくりまわしたヴォイジャーの機関の修理に手を焼いたジェインウェイは、セブン・オブ・ナインの協力を求めたが、彼女は協力するフリをして、亜空間通信でボーグ集合体と連絡をとろうとした。 他方、ケスの身体に、大きな変化が起きていた。未だかつて経験したことのないような力で、物資、エネルギー、思考が融合するもので、分子や原子どころか、素粒子より更にその先が見える「より高次な存在」である。ケスが透視でボーグ集合体と連絡をとろうとするセブン・オブ・ナインを見て、これにショックを与える。それどころか、ケスの居る所や彼女自身が、物資結合が弱くなって揺らぐ有り様である。 危険を感じたケスは、ヴォイジャーからシャトルで離れ、その際にお世話になったヴォイジャーへの恩返しとばかりに、故障した機関を一瞬の内に直すとともに、ヴォイジャーを9,500光年も離れたところまで飛ばしてくれた。これで、帰還が10年早まったことになる。 [ ボーグ集合体の中で長年育ったセブン・オブ・ナインをいかにして人間性を取り戻させるか、3年もの長い間ヴォイジャー乗組員として苦楽を共にしてきたケスの突然の別れが同時進行する筋立てである。なぜ、ケスが去らなければならないかが、今ひとつ納得できないが、実質的には、レギュラーメンバーが、ケスからセブンに代わったことになる。] 第4@−070回 (クリンゴンの名誉の日:Day of Honor) 総合評価 ★★★★☆ (ストーリー ★★★★☆) (人間の描写 ★★★★☆) セブン・オブ・ナインは、実に美しい人間の容姿を取り戻し「セブン」という名で呼ばれるようになり、ボーグ集合体から完全に切り離されて、ヴォイジャーの一員となった。睡眠や栄養補給はアルコーブというボーグ式の部屋でとるが、勤務をしたいというので、機関部で働き始めた。一方、トレス機関部長は、クリンゴンの伝統行事である自己鍛錬の「名誉の日」を前にして、何をやってもうまくいかない。親切に声をかけてくるトム・パリスも遠ざけてしまう。また、新しい実験プロジェクトを試みても、失敗して最も大事な船のワープ・コアが爆発しそうになり、やむなく宇宙空間に放出する。そのワープ・コアを回収に行ったトレスとパリスは、宇宙空間に浮遊したまま取り残され、しかも酸素があとごく僅かとなる。 他方、ヴォイジャーは宇宙を放浪する数十隻、数千人を乗せた異星人の集団に遭遇した。数百万人の人口があった母星がボーグに襲われて同化され、やっと難を逃れたのは、これだけだという。それも、皆、栄養失調に苦しんでいる。代表者がヴォイジャーに物乞いに来て、ジェインウェイ艦長は、できる限りの物資の援助をした。 彼らは感謝して去って行ったはずなのに、ヴォイジャーが放出したワープ・コアを横取りし、再びヴォイジャーに戻ってきて、ヴォイジャーがワープ・コアがなくて動けない窮状を利用して、「もっと食料や燃料を寄越せ、ボーグに復讐したいから、セブンを引き渡せ。」と要求してきた。これに対し、セブンが、彼らの使う燃料の複製技術を提供することを提案して、彼らも納得して、引き下がった。 宇宙空間に浮遊したままとなっていたトレスとパリスは、酸素がほとんどなくなったという極限状態で、トレスがパリスに対し「愛している。」と告白して、気を失ってしまうが、その直後にヴォイジャーが到着して、2人を収容した。 [ トレスの名誉の日が散々な日になったこと、異星人の物乞いが強盗に変身したようなものだという話、トレスがパリスに愛の告白したこと、セブンの集合体的な考え方など、盛りだくさんのエピソードである。] 第4@−071回 (ヴォリ兵チャコティ:Nemesis) 総合評価 ★★★★☆ (ストーリー ★★★★☆) (人間の描写 ★★★★☆) 地表探索任務中のチャコティのシャトルが突然撃ち落とされた。チャコティは自らを地表に転送し、かろうじて助かった。ところが、地表では2つの勢力が交戦中で、チャコティを守ってくれたヴォリ防衛隊第4分隊の兵隊が次々に倒されていく。敵は恐ろしい顔をして、兵隊も老人も子供も見境いなく襲う。しかもヴォリ人の伝統的宗教感に基づく「死者を裏返して安置し、天国に行かせる」というその習慣も無視する。チャコティは、世話になった村の少女たちが襲われるのを見て以来、いつの間にかヴォリ人に成りきり、共に戦っていた。 一方、ヴォイジャーでは、チャコティの救出方法を探り、現地政府の協力を求めていた。そこで協力してくれたのは、何とチャコティが戦っている、まさにその相手だった。チャコティには、助けに来たトゥヴォックまで敵に見えた。トゥヴォックの案内でチャコティが見たものは、その世話になった村で、あたかも前日のチャコティなど忘れたように、再び歓迎してくれる村人たちだった。 敵と思った現地政府によると、ヴォリ人は、こうして異星人に幻影を見せて兵隊に仕立て上げているとのことで、チャコティもそうしてまんまと兵隊にさせられたというのである。 [ 戦争というのは、一方から相手を見ると、第二次世界大戦時の鬼畜米英のように、とんでもなく悪辣非道のように思い、そうしたプロパガンダが繰り広げられるものであるが、それの実に手の込んだやり方である。ちなみに、ネメシスとは、復讐の神である。] 第4A−072回 (ホログラムの反乱:Revulsion ) 総合評価 ★★☆☆☆ (ストーリー ★★★☆☆) (人間の描写 ★★☆☆☆) ヴォイジャーが航行中、異星人の船から救難信号が入った。生命体ではなく、ホログラムの人物からである。同じホログラムということで、ドクターがトレスとともに救援に行った。船に着いてみると、男のホログラムが起動していて、「6人の乗組員がいたが、伝染病で全員が死んだ。自分の身体も不安定になってきているから、修理してほしい。」という。 ドクターが自分の境遇を話し、今やヴォイジャーの乗組員と同等だというと、男のホログラムが非常に羨ましがる。トレスが修理にかかっていると、男のホログラムは、人間を含めた有機体に対して、敵意をむき出しにする。妙だと思ったトレスは、男のプログラムにアクセスしようとして、妨害されるばかりか、殺されそうになった。近づいて襲ってくる男をやっとのことで消滅させた。調べてみると、6人の乗組員全員がこの男に殺されたことがわかった。 [ アシモフのロボット3原則を思い出させるような話である。これからの時代、コンピューターやロボット技術が進歩するにつれ、人間との平和な共存関係を構築することが大切になると思う。] 第4A−073回 (セブンの過去:The Raven ) 総合評価 ★★☆☆☆ (ストーリー ★★☆☆☆) (人間の描写 ★★★☆☆) セブンは、キムと共同作業をするようになり、キムは女性としてのセブンに惹かれていく。しかし、セブンの余りのボーグ的で直截的な表現に、辟易する。そうして、セブンが次第に人間性を取り戻しつつある日、自分がワタリガラスのような大きな鳥に襲われる悪夢を見るようになった。それが、次第にボーグの夢に転じていった。手のひらにも、ボーグの細胞が現れてくる。遂にセブンは、シャトルを奪ってヴォイジャーを飛び出した。トゥヴォックとパリスが別のシャトルでこれを追った。トゥヴォックだけがセブンのシャトルに行って止めようとしたが、セブンは従わず、ボーグ集合体が待っていると信じている星に向かった。 そこには、セブンを引き寄せた信号が出ている宇宙船の残骸があった。20年ほど前のものである。実はそれは、セブンと両親が乗っていた船で、ボーグに捕まって同化されたときのものだった。それがトラウマとなって、セブンの脳裏に甦ってきたのである。そのとき、2人のいた宇宙船の残骸が当該領域を支配する異星人の宇宙船に攻撃されたが、協力して辛うじて逃げ出すことができた。 [ セブンが両親の宇宙船の残骸を見つけるというのは、とてもあり得ないようなストーリーだが、一緒に観ていた家内が、途中で先にズバリとそれを言い当てたので、驚くとともに、少しくやしい気もした。] 第4A−074回 (見えない異星人の侵入:Scientific Method ) 総合評価 ★★★★☆ (ストーリー ★★★★☆) (人間の描写 ★★★★★) ジェインウェイが数日前から頭痛がして体調が悪い。チャコティが突然、老化症状を起こし、髪が抜け、視力が低下した。ニーリックスも倒れて先祖の顔が出てきて、歩くのも難儀する有り様だった。ドクターは患者のDNAに何者かのタグが付けられているのを見つけたところで、ドクター自身のホログラムが消されてしまった。ドクターはホロデッキから、セブンの神経回路を通じて直接セブンを呼び出し、その視覚インプラントを調整した。そうすると、セブンには、ヴォイジャーに侵入している見えない異星人が見えるようになった。見えない異星人たちはそこら中にいて、ヴォイジャーの乗組員に何らかの医学テストを行っていた。 セブンとドクターは、ヴォイジャーの乗組員に異星人が見えるようにするため、艦内に強力なエネルギーを発散しようとした。セブンが機関部で隠れてその作業をしていたところ、トゥヴォックに見つかった。そこへ見えない異星人が数人、集まってきたので、セブンがトゥヴォックの銃を借りて1人を確保した。その異星人をジェインウェイが尋問したところ、「同胞のために、人体実験をしている。これで数百万人の健康データを整えられる。あなた方は、多少不快になるか、ごく僅かの被害で、少し死者が出るくらいだ。」などと、実に勝手なことを言う。 セブンとドクターの見えない異星人を追い出す作戦は、異星人の妨害に合って失敗した。そうこうしているうちに、機関部員の1人が、急性高血圧で倒れて死亡した。とうとうジェインウェイは、堪忍袋の緒が切れた。デッキに行き、近くの双子のパルサー星に進路を向けた。ヴォイジャーの船外温度は9,000度にも達し、なお高温の星に向かって高速で突っ込んで行った。まるで、異星人を道連れにした、自殺行為である。トゥヴォックは、「我々の生き残る確率は、5%もない。」と警告したが、ジェインウェイは止めない。見えない異星人は、たまらず、ヴォイジャーから離れて行った。ヴォイジャーは、そのまま燃え盛る双子のパルサー星の間を通り抜け、反対側の宇宙空間に出た。 [ 自分たちの医学データを得るために、ヴォイジャーの乗組員を実験台にして、色々なデータ収集を行い、ヴォイジャーの乗組員がたとえ死のうと、数百万人の同胞がその医学データで助かればよいという、実に勝手な言い草である。それにしても、ジェインウェイ艦長が、これほど果敢に『無謀な』行動に出るとは思わなかった。やるべき時に、やるものだと、アメリカ魂を見た思いである。なお、本文に書き忘れたが、「クリンゴンの名誉の日」以来、トレスとパリスが恋に落ち、まるで未成年の少年少女のように愛し合うようになった。] 第4A−075回 (地獄の1年 前編:Year of Hell, Part I ) 総合評価 ★★★★★ (ストーリー ★★★★★) (人間の描写 ★★★★★) ヴォイジャーは、とある星系に差し掛かった。その星系には、友好的な種族が住んでいたが、星系に入ろうとすると、別の種族であるクレニムの船に攻撃された。その船は、時空兵器の魚雷を装備していて、ヴォイジャーのシールドを突き破って船体を破壊するものだった。これによって、ヴォイジャーは大きな被害を受け、大勢の死傷者が出た。セブンが不発魚雷を調べて、時空兵器に対するシールドを作り出した。その頃、近くで時空の歪みの衝撃波が襲ってきて、ヴォイジャーが飲み込まれるが、そのシールドのおかげで助かった。 この時空の歪みの衝撃波は、別の時空にいるクレニム船が作り出した時空侵略兵器によって生み出されたもので、1つの星系の何千という種族や生態系や人工物を一挙に壊滅させる恐ろしいものだった。それを操るアノラックス指揮官は、遠いアルファ宇宙域に帰ろうと孤独な旅を続けているヴォイジャーに興味を持ち、チャコティとパリスを誘拐して自分の船に連れてきた。アノラックスは、綿密な計算を繰り返しては時空侵略兵器を起動し、かつて自分がこの兵器で消し去ったクレニム帝国の領土を復活させようと、もう200年もこの作業を繰り返していた。一時は、帝国領土の98%回復させたが、どういうわけか彼が関心を持つキアナ・プライムだけは、何度やっても回復できなかった。 チャコティは、アノラックス指揮官に接し、そのやっていることは大虐殺だと非難するが、次第に時空を操ることの難しさを知り、アノラックス指揮官の苦悩を理解するようになる。一方、ヴォイジャーは大きく損傷を受けた。武器も尽き、シールドダウンし、ワープ・エンジンも使えない。ジェインウェイ艦長は、これ以上、乗組員全員を艦に留めるのは危険と判断し、上級士官を残して他の乗組員は、シャトルや脱出ポッドで脱出させた。 [ セブンとキムの協力で新しい天体ラボが完成したと喜んでいたのも束の間のことで、クレニムの戦闘領域に入ったところから、ヴォイジャーはほぼ1年間にわたる地獄の年に突入した。問題はクレニムが時空兵器の魚雷を装備していることで、これがヴォイジャーの船体を直撃して次第に消耗していった。最後は、ジェインウェイ艦長は大火傷を負いながら指揮をとり続けるが、生き残った乗組員のうち上級士官だけを残して船体を放棄せざるを得なかった。まさに、散々な年となった。ジェインウェイ艦長以下の壮絶なまで粘りに感銘を受ける。] 第4B−076回 (地獄の1年 後編:Year of Hell, Part II ) 総合評価 ★★★★★ (ストーリー ★★★★★) (人間の描写 ★★★★★) アノラックス指揮官の船では、アノラックスがチャコティに対し、ヴォイジャーの情報を提供すれば、ヴォイジャーを元の時間に戻してやろうと持ち掛けてきた。チャコティが、もしヴォイジャーが、とある彗星に出会わなければ、クレニム領に入らなかった可能性が高いので、その彗星を消し去ろうとして、シミュレーションを行ってみた。すると、彗星を消しただけで、何千の文明の何百億人もの人々を消し去る結果が出た。彗星は、あらゆる生物の元となる有機体を含んでいることから、それを消滅させただけで、それほどの数の文明や人口の過去と現在と未来が、一瞬にして消えてしまうのである。チャコティは、結果の重大性に愕然とする。そして、アノラックスの悩みの本質を知る。アノラックスは、自分が消してしまった妻が住むキアナ・プライムを復活させたかったのだ。 アノラックスの船では、200年間もこのような不毛なことを続けていることに、乗組員の誰もが反感を持つようになってきた。まるで、戦艦バウンティー号の反乱のような不穏なムードが漂っていた。パリスはそこに付け込み、ヴォイジャーにアノラックスの船を攻撃させようとする。その頃、ボロボロになったヴォイジャーは、幾つかの異星人の船とともにアノラックスの船を攻撃させようとしていた。ジェインウェイ艦長は、残った上級士官をそれらの船に移し、時空侵略兵器に対抗できるようシールドを装備させた。ジェインウェイ艦長はただ1人、ヴォイジャーに残り、アノラックスの船を目掛けて自爆攻撃を敢行した。 アノラックスの船が大爆発した直後、驚いたことが起こった。アノラックス自身は、キアナ・プライムにいて、妻と楽しく暮らしていた。ヴォイジャーも、この地獄の1年が始まる前の状態に戻った。 [ アノラックスが時空侵略兵器で一旦はクレニム帝国を復活させたものの、疫病で5,000万人が亡くなってしまった。あるいはチャコティが彗星を消し去ったら、数多くの文明や人口が一瞬にして消滅してしまった(生物彗星起源説)。事ほど左様に、時間を操るというのは、極めてデリカシーが必要なことで、思わぬところに全く意図しなかった意外な結果をもたらす。時空侵略で自由に時空を操ったつもりでも、実は時間に復讐されて逆にこれに操られているのではないかとアノラックスが感じたとおり、まさにそういう結果となった。ジェインウェイ艦長の捨て身の自爆攻撃が終わると、アノラックスは妻とともに元の時間に戻り、平和な日々を過ごしていた。また、ヴォイジャーも、クレニム船に出会うが、何事もなく航行を続ける。時間というものを、非常に考えさせられるエピソードである。] 第4B−077回 (暴力的記憶の売買:Random Thoughts ) 総合評価 ★★☆☆☆ (ストーリー ★★☆☆☆) (人間の描写 ★★★☆☆) ヴォイジャーの乗組員は、高度な文明のマリ人の世界で束の間の休息を楽しんでいた。マリ人はテレパスで、数世代もかけて暴力的思考を追放し、平和な社会を築いていた。そこで買い物を楽しんでいたジェインウェイとトレスだが、グイルという商人から物を買っているとき、男がトレスにぶつかってきた。トレスは一瞬、強い怒りを覚えたものの、すぐに平静に戻った。しばらくして、その市場でトレスにぶつかってきた男が、誰かを殴るという事件を起こしていた。 マリの警察庁長官は、トレスの暴力的思考が問題を引き起こしたと主張して、トレスを逮捕し、その暴力的記憶を抹消しようとする。ジェインウェイは1日の猶予をもらい、トゥヴォックに捜査を命じた。次の日、再び市場で殺人事件が起きる。この種の捜査に慣れていないマリの警察庁長官は、トゥヴォックに協力を求めた。トゥヴォックは捜査を開始し、市場にいたグイルが、暴力的記憶を売買していることを突き止めた。そしてグイルが、トレスが怒りやすい性格であることを見抜き、配下の男にわざと衝突させて、その怒りを盗み取ったことを解明した。それを通告し、トレスは開放された。 [ 犯罪への考え方には色々なものがあると思う。しかし、それにしても、思考しただけで犯罪になるといは、テレパス社会特有のものかもしれないが、何とも恐ろしい文明である。トゥヴォックの活躍が光った。] 第4B−078回 (空を飛んだダ・ヴィンチ:Concerning Flight ) 総合評価 ★★★★★ (ストーリー ★★★★★) (人間の描写 ★★★★★) ジェインウェイは、お気に入りのダ・ヴィンチのホログラムを動かしていた。フィレンツェで2人は飛行機を作り、一緒に飛ぼうとして墜落して川に落ちた。ダ・ヴィンチは民衆の嘲りの対象となり、「こんなところにはいたくない。フランスに行きたい。」と言い出す。その時、ヴォイジャーに宇宙の海賊が忍び寄り、強力な転送ビームで、コンピューターのメイン・プロセッサー、転送装置、ホロ・エミッターから非常食まで、次々に盗まれてしまい、戦力や機動性は、半減してしまった。それらを取り戻すため、ヴォイジャーは、とある星に向かった。 交易の街の一角に着いたジェインウェイ艦長とトゥヴォックは、突然そこでホログラムのダ・ヴィンチに会う。胸には、盗まれたホロ・エミッターをつけていて、それで動いていた。ダ・ヴィンチには、この国の王子がパトロンになっているという。その王子は、他の宇宙船から盗んだ最新鋭機器を売りさばいていた。ジェインウェイは、トゥヴォックを先にヴォイジャーに帰し、ホログラムのダ・ヴィンチとともに、盗まれたメイン・プロセッサーを探しに行く。ある倉庫に隠されていることを発見し、機械類はヴォイジャーに転送して回収した。ジェインウェイとダ・ヴィンチは、ヴォイジャーに宇宙海賊船が迫る中、なかなか転送できず、2人は建物を出て山の方に逃げた。 宇宙海賊の手下が迫る中、2人は、ダ・ヴィンチが作って隠しておいた手製のグライダーに乗り、空中に浮かんだ。そして、ヴォイジャーに無事に転送された。 [ 宇宙海賊にホログラムのダ・ヴィンチを組み合わせた奇想天外な物語で、やや高尚な趣味である。ジェインウェイとダ・ヴィンチとの知的なやり取りが面白い。最後のダ・ヴィンチ製作の飛行機に乗って逃げるという奇想天外なエンディングには意表を突かれた。素晴らしいエピソードである。それにしても、ジェインウェイが忍耐強くダ・ヴィンチを説得するのには感心した。] 第4B−079回 (偉大な森:Mortal Coil ) 総合評価 ★★★★☆ (ストーリー ★★★★☆) (人間の描写 ★★★★☆) タラクシア人のニーリックスは、死後の世界、つまり、死んだときには偉大な森にある導きの木のところへ死者が導かれ、死んだ両親などが迎えてくれると信じている。そのニーリックスが、星雲からプラズマを採取するミッションの途中で事故によって死亡してしまった。ヴォイジャーに戻ってきたときには、18時間も経っていた。皆が葬儀の話をしていたとき、セブンが、ボーグの技術で生き返らせることができるといい、その血液からナノ・プローブを採取してニーリックスに注射したところ、本当に生き返った。 その日以来、どういうわけたニーリックスは浮かない顔をしている。原因は、タラクシア人が死んだ時に見る偉大な森を見なかったことだ。ニーリックスは、自分が死んだ時に、11年前の大虐殺で亡くなった両親や妹に会えると思ったからこそ、今まで頑張ってきたのに、それが嘘だと分かったときに、生きる気力が萎えてきたのだという。 ニーリックスは、チャコティの種族に伝わる儀式をニーリックスに対して行って、その精神世界を見せようとするが、ニーリックスは、偉大な森の話は嘘だと感じただけだった。遂にニーリックスは、自分を星雲の中に転送して、自殺しようとする。しかし、チャコティの説得や、ニーリックスを慕ってくれる幼女ナオミの存在に、自分を必要としてくれる人々がヴォイジャーにいると感じて、自殺を思いとどまった。 [ どこか、悲しい話である。ニーリックスは、母星タラクシアの植民地で起きた大虐殺の中で、唯一生き残った存在である。その心の支えを何に求めるかという難しい問題に取り組んだ。結局は、ヴォイジャーという疑似家族の中で、暖かく迎えることができた。良い結末である。] 第4C−080回 (悪夢の世界:Waking Moments) 総合評価 ★☆☆☆☆ (ストーリー ★☆☆☆☆) (人間の描写 ★☆☆☆☆) ヴォイジャーが航行中、乗組員全員が不快な悪夢に悩まされ始めた。おかしなことに、艦長をはじめ、どの乗組員の夢にも、同じ異星人が登場するのである。そのうち、キム少尉ほか、乗組員が眠り始めてレム睡眠の状態が続き、起きてこない。チャコティ副艦長が、アメリカ・インディアンに伝わる自己睡眠状態を作り出し、眠った状態で探索に乗り出す。そうすると、その異星人が現れて、「自分たちの領域を出れば、夢から覚める。」といい、その脱出方向を示したので、ヴォイジャーはその方向に向かった。 ところが、それは罠だった。間も無く、乗組員が次々に眠りにつき、異星人に船が乗っ取られた。乗組員全員が貨物室に集められた。チャコティは、それが再び夢の中だと気付き、1人だけ覚醒して、異星人の本拠地に着いた。その夢を操る機器を破壊しようとしたが、フォースフィールドが張られていて破壊できない。そのうちの1人に薬を打ち、覚醒させた。そして、機器を止めないと、異星人の肉体と機器を破壊すると言い、全員を覚醒させた。 [ 私なら、夢を操る機器と異星人の身体を見つけた瞬間、ヴォイジャーから光子魚雷を発射して機器を破壊してしまうところだが、それではストーリーにならないので、取引に持ち込んだのだと思うけれども、これがヴォイジャーらしい点である。いずれにせよストーリー展開にいささか難があり、駄作の類いである。] 第4C−081回 (瓶に入れた手紙:Message in a Bottle ) 総合評価 ★★★★★ (ストーリー ★★★★★) (人間の描写 ★★★★★) ベラナ・トレスは、元ボーグであるセブンの態度が、不遜で傲慢で我慢がならなかった。そのセブンが、天体ラボで異星人の通信ネットワークを使ってアルファ宇宙域にいる宇宙艦隊の船を探知した。しかも、連絡がとれるという。ただ、普通の通信より、まとまったデータを送るしかないというので、ホログラムのドクターのデータを送った。ドクターは無事にアルファ宇宙域にいる、そのプロメテウス号に着いて起動した。ところが、何か様子がおかしい。火傷を負って死にかけている艦隊の乗組員が「ロミュランに乗っ取られた。」と話す。ドクターは、その船の緊急医療用ホログラム・ドクター(EMH2)を起動した。ドクターの改良版だが、まだ試験中らしい。ドクターは、嫌がるそのEMH2を引き込んで、ロミュランからプロメテウス号を取り戻そうとする。 一方、ドクターを送り出したヴォイジャーでは、艦長以下が首を長くしてドクターの帰りを待っていた。4年ぶりに家族と連絡がつくかもしれないと、手紙を書いたりするが、期待と諦めが入り混じっている。パリスは、医務室でドクターの代理を勤めているのに飽き飽きし、キムにドクター代理のホログラムを作るように頼んだ。キムは、「それには、数年かかる。」というが、親友のたっての頼みだからと作ろうとする。ところが、ドクターの外観はできるものの、医療知識を詰め込み過ぎて、医学書の暗唱するものしか作れず、遂に断念した。その頃、トレスが天体ラボで、セブンの設定した数値を無断でいじくったために、ネットワークを管理する異星人に気づかれ、通信が遮断される。ジェインウェイがその異星人に懇願するが、聞いてもらえない。その時、セブンが、元ボーグらしく、ショック電流を送って、問答無用でその異星人を気絶させてしまった。 プロメテウス号のドクターは、ロミュラン人が占拠するブリッジに入り込むが、怪しまれて捕まる。解体に相当するサブルーチンの分離がされそうになるが、EMH2が麻酔薬をまいたので、からくも助かった。2人でブリッジの操縦席に座るが、どうしてよいかわからない。ロミュラン領域まで近くなったので、止めようとしていじくりまわし、何とか止まった。そこへロミュラン船が3隻近づいてきて攻撃され始めた。そのとき、宇宙艦隊の船が来て、助かった。ドクターはヴォイジャーに戻った。そしてジェインウェイ艦長に報告する。「艦隊に全てを話した。14ヶ月前にヴォイジャーは失われたと公式に発表したが、それを取り消した。皆さんがなるべく早く帰還できるように艦隊としても努力する。家族にも伝えた。今や皆さんは、1人ではない。」 [ 見所がいっぱいのエピソードである。まずは、ヴォイジャー乗組員の望郷の思いの強さ、ドクターの改良型ではあるがどこかとぼけた味わいのあるEMH2の個性、それとドクターとの掛け合い漫才のようなやり取り、セブンとトレスの個性のぶつかり合い、ボーグ的なやり方も時には問題解決には有効などというもので、このシーズンで最高の評価を与えたい。] 第4C−082回 (宇宙ハンター・ヒロージェン:Hunters ) 総合評価 ★★★☆☆ (ストーリー ★★★☆☆) (人間の描写 ★★★★☆) 異星人ヒロージェンの通信ネットワークを利用して、アルファ宇宙域から宇宙艦隊のメッセージが送られてきた。それは、4年ぶりの家族からの手紙だった。ところが、通信内容の劣化が激しく、中継基地に近づいかないと数多く受信することができない。ヴォイジャーがその中継基地に接近して調べると、それは10万年前に作られたもので、特異点の周りを覆ってそのエネルギーを利用しているものだった。セブンとトゥヴォックは、シャトルに乗って中継基地に近付き、もっと多くのメッセージを受信しようとした。ところが、そのときシャトルに近づいてきたのは、宇宙ハンターのヒロージェン船で、2人は捕まってしまった。 一方、ヴォイジャーの船内では、乗組員に宛てた手紙が次々に配られていく。ところが、一番欲しがっているキム少尉には来ない。トゥヴォックは、息子が結婚して女の子が生まれ、おじいちゃんになった。とうとう、ジェインウェイ艦長に宛てて、婚約者のマークから来た。ところが、4ヶ月前に、職場の女性と結婚していた。チャコティ副艦長にも友人の女性から手紙が届いたが、それは、カーデシアによってマキが壊滅し、もはや全員が亡くなるか捕まったという最悪の知らせであった。それを聞いて、ベラナ・トレスは荒れに荒れた。とうとうキムにも、待望の手紙が来た。パリスにも父のオーエン・パリス提督から来たが、残念ながら中身は受信できなかった。 捕まってしまったセブンとトゥヴォックは、ヒロージェン船内で狩りの獲物として、剥製にされそうになった。そのほか、3隻のヒロージェン船が近づいてくる。いずれも重装備で、ヴォイジャーには勝ち目がない。ジェインウェイ艦長は、とっさの判断で、中継基地に向けて特殊な光線を発射し、特異点を露出させた。3隻のヒロージェン船が重力の渦に巻き込まれて破壊され、セブンとトゥヴォックを捕まえているヒロージェン船も危なくなるが、特異点に引き込まれる直前に、2人は転送でかろうじて救出された。しかし、この後、ヒロージェンの通信ネットワークは全て壊滅してしまった。 [ 故郷からの便りを待つ乗組員の切ない思いと、宇宙のハンターであるヒロージェンの獰猛さ、冷酷さの対比が何とも言えないエピソードである。それにしても、ジェインウェイとチャコティには、最悪の知らせだった。] 第4C−083回 (慈悲の心:Prey ) 総合評価 ★★★☆☆ (ストーリー ★★★☆☆) (人間の描写 ★★★★☆) 宇宙ハンターのヒロージェンの船が、ボーグとの戦いで1人はぐれた生命体8472を標的にして追い詰めたが、返り討ちにあって1人は死亡し、もう1人は瀕死の重傷を負ってヴォイジャーに転送された。他に6隻のヒロージェン船がヴォイジャーに迫っており、あと4時間でやってくる位置にあった。その頃、生命体8472が、ヴォイジャーに侵入してきた。回復したヒロージェン人は、「生命体8472の狩りを続けさせてくれば、このまま撤退する。さもないと、お前たちが新たに狩りの標的となる。」と脅す。ジェインウェイ艦長はこれを断り、傷ついた生命体8472の希望通り、特異点を開いてこれを故郷に帰そうとする。しかし、特異点を開くことを命令されたセブンは、艦や乗組員に対して危険を招くといって、命令に従わない。 ヴォイジャーは、ヒロージェン船に取り囲まれて集中攻撃を受け、あと5分も持たないというギリギリの局面になり、ジェインウェイの判断を待たずに、セブンは格闘中の生命体8472とヒロージェン人をヒロージェン船に勝手に転送してしまった。 その伏線として、「生命体8472は、ボーグを400万人を殺した最大の敵なのに、なぜ艦長はその敵を助けようとするのかわからない。」と不審顔のセブンに対し、ジェインウェイは、「慈悲の心というのは、人間性の現れだ。」と説く。それにもかかわらず、この命令違反を犯したセブンに対し、ジェインウェイ艦長は、自分の許可なしに船のメインシステムにコンタクトすることを禁ずると通告する。セブンは、「自分に個性を持てと教えてくれたのに、個性を活かしたら罰せられるのか。」と問うが、ジェインウェイは、「船の中には命令系統がある。」と答える。 [ ヒロージェンが迫り、生命体8472をあくまでも守って故郷に帰してやるか、それともヒロージェンに引き渡すかという難しい選択に迫られた。ジェインウェイは慈悲の心をもって守ろうとするが、合理的戦略を重視するセブンには通用しない。これは、現代でもそれぞれの立場があり得るところである。しかし、貧すれば鈍するで、余裕があるときは慈悲の心、追い詰められたときには手段を選ばず、ということになるのではないだろうか。] 第4D−084回 (甦った記憶:Retrospect) 総合評価 ★☆☆☆☆ (ストーリー ★☆☆☆☆) (人間の描写 ★★☆☆☆) ヴォイジャーは、エンサランの武器商人から武器を購入しようとしていた。その頃、ドクターはセブンの体の定期診断をしていたが、セブンが落ち着きをなくしていることから、その原因を探るため、セブンの精神分析を試みる。そうしてセブンが心の深層から呼び起こしたのは、そのエンセランの武器商人がセブンを押さえ付けて、ボーグのテクノロジーを盗み出したことだ。ドクターはジェインウェイ艦長に報告し、ジェインウェイはエンセランの司法当局と協力して捜査に乗り出した。 ところが、その武器商人は、「自分は無実で何もしていない。」と言い張る。そして、船で逃亡を図った。ジェインウェイは司法当局とともにそれを追う。一方、彼の実験室を調べ、セブンの細胞を見つけるが、セブンが銃の暴発事故で再生したものに過ぎないと判明した。武器商人を追ったヴォイジャーから「無実とわかったから、戻ってこい。」と呼びかけるが、武器商人は罠だと言って信じず、船は自爆してしまった。誰もが、嫌な気持ちになったが、この悲劇を背負って行こうと、ジェインウェイは語る。 [ ドクターがセブンの記憶を呼び起こしたが、それが間違っていたことから、1人の命が失われたという重大な結果となった。記憶に頼るより、やはり客観的証拠が重要だということになる。] 第4D−085回 (生死をかけたホロゲーム 前編:The Killing Game, Part I ) 総合評価 ★★★★★ (ストーリー ★★★★★) (人間の描写 ★★★★★) 宇宙ハンターのヒロージェンによって、ヴォイジャーが乗っ取られ、全艦がホロデッキに改造されて、ジェインウェイ艦長ほか乗組員がホロデッキのシミュレーション・ゲームに投入された。安全機能が解除されているので、傷ついたり死ぬこともあり、極めて危険なゲームである。乗組員には神経接続器が付けられて、ホロデッキ中の登場人物だと思い込まされている。ホロデッキ1では、地球の第二次世界大戦が再現されて、ジェインウェイは酒場の女主人、トゥヴォックはそこのバーテン、セブンは酒場の歌手、トレスは女レジスタンスであり、全員がフランスを占領しているドイツへの抵抗運動を行っていた。ドイツ側の司令部員は、ヒロージェンたちである。ホロデッキ2では、ニーリックスがクリンゴン戦士に混じって酒を飲んでくだを巻いていた。 ドクターは、次々に運び込まれる負傷した乗組員の手当てに忙殺されるが、それと同時にブリッジで船の修理のために働かされているキムと呼応して、ジェインウェイ艦長だけその神経接続器を外すのに成功した。次に、セブンについても成功し、この2人が中心となって。全艦に広がったホロデッキのゲームを何とか止めようとする。 一方、チャコティとパリスは、アメリカ軍の中隊長とその部下である。ドイツ軍占領下のフランスの町を攻撃し、ジェインウェイの酒場を本部とする。ヒロージェンの司令官は、狩りを続けたいという部下の希望に反し、このヴォイジャーのホログラム技術は、ヒロージェンを救うのではないかと考え始める。すなわち、「ヒロージェンは、この宇宙域全部に広がって長年、狩りを続けてきたが、次第に種族としての統一性をなくし、あと1000年もしにいうちに絶滅するおそれがある。その点、このヴォイジャーのホログラム技術があれば、狩りの本能を満たすことができるし、種族の絆に役立つのではないか。」と。 [ 最初からジェインウェイがクリンゴンの真似をして激しく戦っているから、よくストーリーが飲み込めなかったが、かなり経ってからヴォイジャーが乗っ取られて神経接続器なるもので意識も操られていることが明かされて、納得したが、やや無理な設定である。しかし、ヴォイジャー乗組員がナチス・ドイツに抵抗するフランスのレジスタンスと、フランスに上陸したアメリカ軍の役を演じているというのは、ホログラムの中とはいえ、てても面白い発想であるといえる。それにしても、セブンが歌手になるとは思わなかった。なかなか、魅力的である。] 第4D−086回 (生死をかけたホロゲーム 後編:The Killing Game, Part II) 総合評価 ★★★★★ (ストーリー ★★★★★) (人間の描写 ★★★★★) 今や全艦がホロデッキと化したヴォイジャー内のいたるところでヴォイジャー乗組員のフランスのレジスタンス+アメリカ軍と、ヒロージェン+ナチス・ドイツ軍との戦いが繰り広げられている。その中でジェインウェイは、乗組員全員の神経接続器を外し、ホロプログラムを止めようとしている。それとともに、ヒロージェンの司令官と交渉して、ホログラム技術を供与する代わりに、停戦することに合意した。 停戦命令を受けたヒロージェンの部下は、ホログラムのドイツ人将校の扇動に乗り、ドイツ帝国の戦争を続けたいと、自分の司令官を殺してしまった。ホロデッキ1では、ドイツ軍が優勢となり、ヴォイジャー乗組員たちが窮地に陥った。そこへホロデッキ2から、ニーリックスに率いられたクリンゴン戦士たちが乱入してきて、ナチス・ドイツ軍兵士たちと白兵戦を繰り広げる。キムがホログラムをオーバーロードさせたので、やっとホロプログラムを停止させることに成功した。 ヴォイジャー側とヒロージェン側との停戦が成立し、ジェインウェイ艦長からヒロージェンのリーダーにホログラム技術を供与して、ようやく戦いは終わった。 [ ヒロージェンの兵士がナチス・ドイツの将校に洗脳されて、自分たちの司令官を殺害してしまうという予想外のハプニングがあったことは、ストーリーに深みを与えている。ヒロージェンの将来を見据えた司令官の決断も、なるほどと納得できるもので、見応えのあるエピソードである。] 第4D−087回 (身体を乗っ取る異星人:Vis a Vis) 総合評価 ★☆☆☆☆ (ストーリー ★☆☆☆☆) (人間の描写 ★☆☆☆☆) ヴォイジャーの前に空間を折り畳んで高速で飛ぶ多重ドライブの船が現れ、異星人パイロットのカマロが1人で乗っていた。多重ドライブがオーバーロードして爆発する直前で、トム・パリスがそれを止めた。それがきっかけで、パリスはカマロの船の修理を手伝うことになった。修理が終わった頃に、カマロはパリスの身体に乗り移った。カマロは、互換性のある他人の身体に乗り移ることができる異星人だった。異星人の身体になったパリスは、そのまま多重ドライブの船で飛ばされ、国境警備隊に囲まれたかと思うと、「自分の身体を返せ」という異星人に追い掛けられた。 一方、ヴォイジャーの乗組員として過ごし始めたパリスは、ベラナと上手く付き合うが、次第に窮屈に思えて本性を現し、セブンなどから見破られそうになる。医務室でパリスは意識をなくして横たわり、それをジェインウェイ艦長以下が心配して見守る。そのとき、カマロの本当の身体の主である異星人と、入れ替えられた他人の身体のパリスがヴォイジャーの下に帰ってきて、身体を返せという。すると、ジェインウェイ艦長が医務室のパリスを見に行き、そのままシャトルで逃げ始めた。実は、異星人はジェインウェイの身体に乗り移ったのである。それを他人の身体のパリスが追跡して捕まえ、ヴォイジャーに戻り、皆が元の身体を取り戻した。 [ ストーリーに無理がある奇妙な話であり、駄作の類いだと思う。] 第4E−088回 (オメガ分子破壊指令:The Omega Directive) 総合評価 ★★☆☆☆ (ストーリー ★★☆☆☆) (人間の描写 ★★☆☆☆) 突然、ヴォイジャーが止まり、画面に「Ω」(ギリシャ語のオメガ)の文字が現れた。ジェインウェイ艦長は、宇宙艦隊の機密事項だとして内容を明かさず、それを破壊しようとする。ただし、セブンは元ボーグ時代にその話は聞いていた。たった一つの分子で途方もないエネルギーを出すから、広い宇宙域の亜空間を破壊し、ワープ航行をできなくするという恐ろしい存在である。だからジェインウェイ艦長は、これを見つけ次第、破壊しなければならないという。ところがセブンは、オメガ分子は、完璧な存在であるとして、保存したいと思っている。しかし、やむなくジェインウェイの指示に従って、オメガ分子を収容する容器を作成する作業に入った。 ヴォイジャーは、オメガ分子のある星系に到着した。その星の地上では、建物が大爆発をしていた。そこへ降り立ったジェインウェイたちは、科学者らがオメガ分子を合成していたことを知る。彼らは、「自分たちの星系はエネルギーが枯渇しており、これが最後のチャンスだから、作っている。だから、それを破壊するなど、とんでもない。」という。しかしジェインウェイは、かつての原爆のように、これは使ってはいけない技術だと信じて破壊の方針は変えない。そして、研究所での爆発から残ったオメガ分子をヴォイジャーのセブン作成の容器に転送する。 そこへ異星人の船が2隻現れ、オメガ分子と研究者を返せと迫る。ジェインウェイは、オメガ分子を中和できるから保存したいというセブンの懇願にもかかわらず、半分ほど中和した時点でオメガ分子をヴォイジャーから放出した。放出の瞬間、セブンは自然にまとまる神のようなオメガ分子の姿を見た。そうして放出されたオメガ分子の入った容器は、ヴォイジャーの放った魚雷で粉々に破壊された。 [ 原爆のエネルギーのように、大量破壊兵器にも使える高度な新規エネルギーは、開発してはいけないということを言いたいのかもしれないが、それにしては、途中の話の持っていき方が、どうもあまり納得のいかないストーリーである。] 第4E−089回 (忘れられない人:Unforgettable) 総合評価 ★★☆☆☆ (ストーリー ★★☆☆☆) (人間の描写 ★★☆☆☆) ヴォイジャーは、戦いの最中の戦場にいた。そのうち、大破した宇宙船から女性の声で呼びかけがあり、「チャコティ、助けてちょうだい。」という。チャコティたちはその宇宙船に救助に行き、美しい女性を助けてヴォイジャーの医務室に転送した。ケリンと名乗るその女性は、かつて逃亡者を追跡するためにヴォイジャーに乗っていたとき、チャコティに会って恋に落ちたという。それだけでなく、ジェインウェイ艦長や他の乗組員についても詳しく知っている。チャコティは疑うが、「自分の種族は、身体からフェロモンを出して他の種族の記憶が残るのを防ぐ」というケリンの話を聞くうちに、次第に信じるようになって手放したくなくなり、ヴォイジャーに残ってほしいと願うようになる。 ところがそこへ、ケリンの母星の追跡者が乗船してきて、ケリンに光線を浴びせた。それは、この数日間の記憶を消し去るものだった。記憶が薄れる前に、ケリンは、今まで起こったことを私に話してほしいと、チャコティに頼む。ケリンが記憶をなくした後、チャコティが2人が愛し合っていたことを話すが、ケリンは「あなたは、とても魅力的な人だけれど、とても信じられない。」という言葉を残して、去って行った。 [ 真面目で堅物のチャコティに、やっと恋人ができた、しかもヴォイジャーに残るというから、どんな乗組員になるのかと期待したが、あっさり去って行ってしまった。ストーリーも、途中でどうなるのかと期待したものの、単なる失恋話で終わってしまい、少し、残念である。] 第4E−090回 (700年後のドクター:Living Witnes) 総合評価 ★★★★☆ (ストーリー ★★★★☆) (人間の描写 ★★★★☆) ある星の歴史博物館で、ヴォイジャーのジェインウェイ艦長や乗組員が、キリアン人指導者を殺しただけでなく、生物兵器で自分たちの住民を何百万人も大量虐殺した悪逆非道の存在のように描かれていた。その星では、今に至るまで、キリアン人とヴァスカン人が対立し合っていた。つい最近、その館長が発掘したデータから、ドクターが起動された。しかしそれは、ヴォイジャーがその星を通り過ぎてから、700年も経っていた。ドクターはその博物館の再現映像を見て非常に驚き、これは、真実と違うと主張する。 真実は、ヴォイジャーがヴァスカン人の大使と医療物資と燃料にダイリチウムを交換する話し合いをしていたときに、突然キリアン人に襲われ、機関室に侵入されて乗組員が数人殺され、それだけでなくセブンなどが人質に取られてしまった。そのとき、キリアン人の指導者はヴァスカン人の大使に殺されたというのである。キリアン人の館長は、最初はそのドクターの話を信じなかったが、次第に真実を知りたいと思うようになった。 ドクターの話が知れ渡ると、博物館がヴァスカン人の暴徒に襲撃された。これを契機にキリアン人とヴァスカン人の対立がひどくなった。ドクターはこれを憂い、「こうなったのは自分のせいだ。自分を永久に消してくれ。」とキリアン人館長に頼む。館長は、「それでは解決にならない。また700年後に同じことが起こる。今、真実を証明しておかないといけない。」と説得する。ドクターは納得し、それを証明するためのトリコーダーを探す。 それから何年かたち、その博物館には、新たな展示が行われた。ドクターはヴォイジャーの真実を証明し、館長はそれを見届けてこの事件から6年後に帰らぬ人となった。ドクターは長い間、厚生大臣を勤めた後、ある日、小さな宇宙船に乗って、アルファ宇宙域を目指して航海に出た。故郷への思いが募ったのだろう。 [ 歴史というものは、容易にねじ曲げられるものだという気がするエピソードである。ドクターのそれを正そうとする意思と、少年時代にヴォイジャーに憧れ、今また真実を知るために公平な目で見ると約束する館長の思いが一致したエピソードである。] 第4E−091回 (デーモンクラスの惑星:Demon) 総合評価 ★☆☆☆☆ (ストーリー ★☆☆☆☆) (人間の描写 ★☆☆☆☆) ヴォイジャーの燃料であるデューテリアムが足りなくなり、燃料を節約しなければならなくなった。あと1週間で燃料が切れるというギリギリの段階で、デューテリアムがある惑星を見つけ、ヴォイジャーはそこへ向かった。ところがそれは、宇宙艦隊でいう「Yクラス、通称デーモンクラス」の惑星で、高温と毒ガスのために、長時間の探査が難しいところだった。しかし、燃料確保のために、キムとパリスはシャトルで地上に降り立った。デューテリアムを豊富に含む液体の金属様のものを発見したが、キムがその中に落ちた。パリスがそれを助けたが、2人の防護服が壊れ、倒れてしまった。 ヴォイジャーは地表に降下して着陸し、チャコティとセブンがキムとパリス捜索に行ったが、何とパリスは、防護服なしで、人間がとても住めないはずの環境に適応していた。キムも見つかり、ヴォイジャーに転送収容した瞬間、キムとパリスは息ができなくなったが、惑星の大気を入れた途端、回復した。原因を探るため、環境に適応したキムとともにチャコティとセブンが再び惑星探査に向かい、倒れている本物のキムとパリスを見つけた。一方、ヴォイジャーの直下に金属の沼のようなものが滲み出てきて、どんどん沈んでいく。 ジェインウェイは、偽物のキムの話を聞くと、「自分たちは長い間、実体のない本能だけの存在だった。ところが、このキムの身体で、初めて実体を持ち、生まれたばかりのような爽快な気分を得た。だから、仲間を作る必要があるので、ヴォイジャーを行かせるわけにはいかない。」。それを聞いたジェインウェイは、このまま行かせてもらう代わりに、ヴォイジャー乗組員のDNAを提供するという交換条件を持ち出して納得させた。ヴォイジャーが飛び立った後には、乗組員のコピーの一団が残った。 [ これは一種の流動体生物なのだろうか。なんとも気味の悪い話である。自分たちのコピーをこうしたデーモンクラスの惑星に残していくというのは、心残りではないのかなど、納得できない点もあり、収まりの悪いエピソードである。] 第4F−092回 (セブンの孤独:One ) 総合評価 ★★★☆☆ (ストーリー ★★★☆☆) (人間の描写 ★★★★☆) ヴォイジャーの行く手に広大な星雲が広がる。それは、危険な放射能を含む星雲で、普通の人間は数分もいれば火傷をして死んでしまうほどの難所だった。これを迂回すると1年かかるが、直進すれば1ヶ月で向こう側に行くことができる。ジェインウェイ艦長は、放射能の影響を受けないドクターとセブンに任せて、あとの乗組員全員は、休眠状態で星雲を突っ切ることを決断した。 当初2週間ほどは、順調に航行を続けていたが、そのうち、艦内のバイオ・ネットワークが放射能の影響を受けて劣化するなど、あちらこちらに異常が起こった。セブンは、異星人の男の幻覚をしばしば見るようになった。ところが、それを指摘してくれたドクターも、機器の異常で消えてしまった。それからセブンは、ひとりだけで孤独な航海を続けるが、幻覚がますます強まり、ヴォイジャーの異常もひどくなる。生命維持装置の電源を切ってエンジンに回すというギリギリのところで、ようやく星雲を抜け、セブンは起きてきた艦長たち乗組員に助けられた。 [ 元々、ボーグの集合体にいたセブンは、孤独を極端に怖がる習性があるが、今回はそれが正面に出てしまった。それにしても、ちょっとした、ホラー映画並みの怖さがあった。どうも、私の趣味ではない。] 第4F−093回 (帰還に仕掛けられた罠:Hope and Fear ) 総合評価 ★★☆☆☆ (ストーリー ★★☆☆☆) (人間の描写 ★★★☆☆) ヴォイジャーは、言語を4,000語も知っているという異星人を、次の星系まで送るということで乗船させた。ちょうどその頃、宇宙艦隊からメッセージが届いたが、なかなか解読できない。そこで、その異星人に依頼して解読に成功した。それは、新型の宇宙艦隊所属の船USSドーントレス号で、量子ストリームを利用した新型エンジンを積載している。解読したメッセージによれば、「これを使って地球に帰るとよい。3ヶ月もあれば帰還できる。」という。ヴォイジャーの乗組員は皆、喜びに湧いた。ところが、セブンだけは冷静で、ジェインウェイ艦長は、あまりのお膳立ての良さに、懐疑的になりつつあった。 ヴォイジャーでは、ドーントレス号の量子ストリーム新型エンジンの技術を応用して現在のエンジンを改良するとともに、乗組員全員がドーントレス号に習熟するべく訓練をしていた。そんなある日、ジェインウェイが艦隊のメッセージの再解読に成功した。それは、異星人の解読とは異なり、「艦隊で色々と研究したが、残念ながらヴォイジャーを早期に戻す方法は見つからない。」というものだった。つまり、異星人はこの帰還話を捏造したのである。一方、ドーントレス号の中でも、異星人の技術が使われているのを発見した。 ジェインウェイはドーントレス号に行き、そこでブリッジにいた異星人を詰問した。ところがその異星人は、ジェインウェイとセブンを拘束して、量子ストリーム新型エンジンを使って逃走を図った。ヴォイジャーのチャコティは改良エンジンを使ってそれを追いかけた。ジェインウェイがその異星人に、なぜこんなことをするのかと聞くと、異星人は「ヴォイジャーがボーグと同盟を結んでその最大の敵である生命体8472を追い払ったために、自分の種族をはじめ多くの種族が同化されてしまった。だからこれは、ヴォイジャーに対する復讐だ。」という。そう言ってそのままボーグが支配する領域に向かった。自分も含め、ジェインウェイとセブンを同化させようというつもりである。ジェインウェイは説得しようとするが、異星人の決意は変わらず、ボーグが支配する領域に入る直前に脱出して、転送でヴォイジャーに戻った。異星人の船はそのままボーグ領域に入り、その異星人はボーグに同化されてしまった。 [ 筋立てはわかりやすく、善人と思った者が、実は悪人だったという話である。地球帰還が間近になり、心が揺れ動くセブンの心情がよく描かれている。] 宇宙船ヴォイジャー【第5シーズン】 第5@−094回 (放射能廃棄物処分場:Night ) 総合評価 ★★★★☆ (ストーリー ★★★★★) (人間の描写 ★★★★☆) 前方に広大な暗黒空間が広がっており、抜けるには2年もかかる。星ひとつ見えない。来る日も来る日も何の変化もないので乗組員の士気は低下し、ジェインウェイ艦長もかつて守護神のステーションを破壊してデルタ宇宙域に残る原因を作った自分の行為を反省し、部屋から出て来ようとしない。ところがある日、ヴォイジャーは突然、暗闇の中で停止し、ワープコアを始めあらゆるものが停電して動かなくなった。そこへ暗闇の異星人が侵入してくる。1人は負傷して、医務室に運ばれた。一方、その異星人たちの船を、突然現れたマロン船が追い払った。マロン船の船長は、「その異星人を引き渡せ。そうすれば、この暗闇の先に出られる空間の渦のある場所を教えよう。」と提案してきた。ジェインウェイは不思議に思い、その理由を聞こうとするが、教えてくれない。 負傷した暗闇の異星人は、放射能で汚染されており、マロン船がやってきて、放射能廃棄物を捨てに来るという。ジェインウェイ艦長は、「ワープコアから出る放射能廃棄物は、それを処理して無害化し、エネルギーとして再利用するから、捨てるのを止めなさい。」といって、処理方法を教えようとする。ところがマロン船の船長は、「そんなことをすれば、自分の仕事がなくなる。暗闇の先に出られる空間の渦は、これがあるから通常の廃棄物船の半分の時間で処分できる。その場所は自分と部下しか知らない。この処理技術は、どうか秘密にしてくれ。」と、聞く耳を持たない。 ジェインウェイ艦長は、その暗闇の先に出られる空間の渦を通り抜けてからこれを破壊しようとするが、それは入り口側からしか破壊できないことがわかった。そこで、ヴォイジャーが通り抜けてから艦長の自分が1人、シャトルに乗って空間の渦を破壊することにした。ジェインウェイは、上級士官を集めてその旨を伝えるが、皆、その命令に従わない。代案として、ヴォイジャーが空間の渦に入った直後に魚雷で後方から破壊して、その衝撃波を推進力にして通り抜けることにした。そこに立ちはだかったマロン廃棄物船は、暗闇の異星人船が破壊してくれた。空間の渦に入ったヴォイジャーは、魚雷を発射し、相当な衝撃波を受けながらも、やっとのことで向こう側に出た。そこで見えた星や星雲は、とても美しかった。 [ 危険な航海はそれはそれで大変だが、暗闇の空間で何もないところの航行は、それよりもっと大変だという逆説的な話であるが、それと廃棄物処理の話とを組み合わせて、なかなか見応えのあるストーリーになっている。] 第5@−095回 (進化した未来のボーグの悲劇:Drone ) 総合評価 ★★★★☆ (ストーリー ★★★★☆) (人間の描写 ★★★★★) 探査任務中の緊急転送で、ドクターの29世紀製ホロ・エミッターと、セブンのボーグのナノプローブが混信してしまい、偶然にボーグの赤ん坊が産まれてしまった。しかもこの子供は、1日で成人になってしまった。その中枢神経には、ドクターの29世紀製ホロ・エミッターが使われている。つまり、5世紀も進化した未来のボーグ・ドローンである。セブンの指導の下に、膨大な知識を吸収し、ヴォイジャーの機能強化に目覚ましい働きをする。自分で「ワン」と名付けたこのドローンは、ヴォイジャーの生活に馴染み始めるが、再生中に予備の回路が意図せずに働いて、ボーグの信号を発してしまう。 ボーグ艦が近づいてきて、ヴォイジャーをトラクタービームで捕らえたとき、ワンは単身でボーグ艦に乗り込み、それを操縦して星雲内の爆発しているところへ誘導し、これを撃破した。ボーグ艦の破片の中で大きく負傷しながら、ワンはヴォイジャーに転送収容された。ドクターが治療しようとすると、ワンはセブンに、「自分はここにいてはいけない存在だから、このまま死なせてくれ。」と頼み、息絶えた。セブンは、悲しみにくれた。 [ 非常に心に響くエピソードである。たまたまエミッターとセブンのナノプローブが繋がり、未来のボーグが産まれてしまうという設定も非凡である。しかしそれ以上に、そうして産まれたドローンのワンが、自分の存在意義を知って、むしろこの時代に生きていてはいけない存在だと自覚し、負傷したまま蕭然と死ぬ道を選ぶというのは、崇高な感じさえする。] 第5@−096回 (ベラナ・トレスの鬱:Extreme Risk ) 総合評価 ★★★☆☆ (ストーリー ★★★☆☆) (人間の描写 ★★★☆☆) ヴォイジャーが探査機を使用して探査を行っていたとき、マロン廃棄物船がそれを奪おうとした。そこで、ジェインウェイは、探査機をガス惑星の中に退避させたが、浮上して来られなくなった。そこで、トム・パリスが設計した新型シャトルを急遽製造して、探査機を回収しようとするが、並走するマロン廃棄物船も、同じように小型機を作成中であった。しかもマロン船の方が、2日早く完成する。 一方、最近、ベラナ・トレスの様子がおかしい。会議に出席しても上の空だし、恋人のトムとも話をしない。それどころか、ホロデッキに入り浸って、セイフティ・モードを解除して、生傷が絶えないが、隠している。チャコティが問い詰めると、「自分は家族を亡くし、艦隊からも追放され、せっかく家族同様だったマキも全員が死んでしまった。だからもう、自分には家族がいない。」という。ドクターは、鬱状態だと診断する。 新型シャトルが完成し、ベラナも志願して乗り込んだ。マロン廃棄物船の小型機の後を追ってガス惑星に突入した。マロン機の攻撃をかわしたが、ガス惑星の圧力でシャトルの壁に穴が開きそうだ。ベラナ・トレスが、あり合わせの物をかき集めてフォースフィールドを作って、事なきを得た。これをきっかけにトレスは立ち直った。 [ いつも元気で威勢の良いベラナ・トレスが沈んだ表情をして、口数も少ない。しかも、隠れて自傷行為に走る。やはり、鬱状態だった。これから抜け出すには、自分への肯定感が一番だというが、このストーリーは、まさにそれを地で行っている。] 第5@−097回 (偽の宇宙艦隊本部:In the Flesh ) 総合評価 ★★★★★ (ストーリー ★★★★★) (人間の描写 ★★★★★) チャコティは、まるで地球のサンフランシスコにある宇宙艦隊本部そっくりの建物、敷地、各人種とそこにいる艦隊士官まで寸分の違いもなく同じ光景を目にして驚きを隠せなかった。そこで、ある女性士官と懇意になり、午後7時にデートする約束をする。シャトルに戻ろうとしたとき、1人の士官に見つかり、やむなく彼を伴ってヴォイジャーに帰った。彼を尋問しようとしたとき、彼は自殺をしてしまう。その正体は、生命体8472だった。ジェインウェイらは、生命体8472が地球の侵略をするために、艦隊本部を何から何までそっくりなものを作って研究しているものと推測した。 チャコティは、もっと情報を得るために、午後7時のデートに行く。すると、その女性士官は、地球の文化に触れ、「人間というのは、野蛮な種族と思っていたけれど、その文化は実に多様で、深みがある。」という。そして、形態を人間に変換する注射を打っていた。キスをしたとき、チャコティは本物の人間であることがわかり、その生命体8472が化けた「偽の」艦隊士官たちの尋問を受ける。 一方、ジェインウェイ艦長は、場合によっては生命体8472との全面戦争になることも覚悟して、セブンに前回の戦いで有効だった生物兵器を大量に用意するよう命じる。それとともに和解の道を探り、生命体8472である「偽の」艦隊士官たちとヴォイジャーで話し合う。最初は、ヴォイジャーが自分たちを攻撃しに来たと思っていたが、ジェインウェイが「ファーストコンタクトが良くなかった。ボーグと戦争中とは知らなかったから、一方的に脅威に感じた。」といい、ヴォイジャーの攻撃体制から生物兵器の弾頭を外して、誠意を見せる。生命体8472もジェインウェイの態度を見て軟化し、ヴォイジャーの生物兵器の技術を渡すなら平和協定を結んでもよいといい、ジェインウェイも、生命体8472の形態変換技術の提供を条件に合意した。 [ 地球の宇宙艦隊本部そっくりで、しかも本物と寸分たがわぬ艦隊士官が大勢歩いているのには、驚いた。まるで、旧ソ連の国内に作られたアメリカ偵察のために再現された町のようなものだ。ストーリーの着想に感心した。ジェインウェイ艦長の交渉術、生命体8472とデートするチャコティの魅力、ラブストーリー仕立てなど、人間味に溢れている。] 第5A−098回 (昔々あるところに:Once Upon a Time ) 総合評価 ★★☆☆☆ (ストーリー ★★☆☆☆) (人間の描写 ★★☆☆☆) パリス、トゥヴォック、そして6歳の娘ナオミの母であるサマンサ・ワイルドマン少尉の3人は、デルタフライヤーで調査任務中にイオン嵐に巻き込まれ、火山惑星に不時着したが、地上から数十メートルの地下に埋まってしまった。しかもワイルドマンは、重症を負った。 ヴォイジャーでは、ニーリックスがナオミの親代わりをしていて、ホロデッキで「フロッターの冒険」という子供向けのホロノベルで気を紛らわせていた。ニーリックスは、家族を亡くした経験から、ナオミにも同じ思いをさせたくなくて、母親が苦境にあることを知らせずにいた。 ヴォイジャーでは、デルタフライヤーの現在地をようやく割り出したが、それを転送するのには、岩盤の下に穴を開けなければならなかった。その作業中、ヴォイジャーにはイオン嵐が近づいてくる。デルタフライヤーの中では酸素が足りなくなり、あと数分で窒息死をするというギリギリの段階となって、ようやく救出に成功した。 [ 6歳の幼女を余り心配させまいと、ニーリックスが様々な工夫で気を紛らわせようとするが、こういう場合は、包み隠さずありのまま伝えるほかないという、見本のようなものである。] 第5A−099回 (過去の誤りの修正:Timeless ) 総合評価 ★★★★★ (ストーリー ★★★★★) (人間の描写 ★★★★★) 防寒服を着た2人の男が、氷の下にある宇宙船の残骸を捜し出し、中に入った。宇宙船はヴォイジャー、2人の男は、歳をとったチャコティとキムである。ドクターを起動し、セブンの死体を自分たちの小型機に転送した。小型機には、チャコティの恋人が待っていて、2人を支えている。この3人は、宇宙艦隊から小型機と、大破したボーグ艦より入手した過去への通信機の、2つを盗み出した疑いで追われている身だった。艦隊の戦艦が追ってきて、あと6時間で追いつかれる。計画を急がなければならない。 15年前のことである。デルタ宇宙域にいたヴォイジャーは、量子ストリーム技術やボーグ技術を応用して、新しいエンジンを試していた。これを使えば、明日にも自分たちの故郷であるアルファ宇宙域に帰ることができる。お祝いをしている最中に、重大な欠陥が判明する。量子ストリームの中に入って飛行している途中で不安定になって、ストリームから放り出されるのである。新型エンジンでの飛行は中止するかどうかを議論しているうち、キムが提案した。「誰かがデルタフライヤーでヴォイジャーの2〜3秒先を飛び、修正値をヴォイジャーに送ればいい。そうすると、量子ストリームから放り出されることはない。」と。ジェインウェイ艦長は、これを聞いて、予定通り飛行することを決断した。朝8時、チャコティとキムが先行するデルタフライヤーに乗り込んで飛行を開始し、ヴォイジャーがそれに続いた。途中で案の定、量子ストリームが不安定になり、キムが修正値を送るが、その効果なく、ヴォイジャーは氷の惑星に墜落して全員が死亡してしまった。デルタフライヤーはそのまま飛び、地球に帰還した。大歓迎と勲章を受け、当時の提督の1人から、娘婿にという話まで来た。 ところが、キムは「生き残った者の罪悪感」に苛まれる。どうやっても、逃れられない。チャコティも同様だ。唯一の希望は、墜落したヴォイジャーを捜し出すことだが、艦隊では、捜索開始から9年目で、見込みがないとして中止にしてしまった。キムは提督全員に頼みに行ったが、娘婿にといってくれた提督ですら、会ってくれなかった。それで、退役した。そこへ、過去へ通信ができるボーグ通信機のことを聞いた。これを使って墜落直前のヴォイジャーに正しい修正値を送れば、墜落を免れることができる。そう思って、計画を実行に移した。 ドクターの協力を得て、セブンの死体から墜落直前の正確なボーグ時間と、死亡時間を得た。宇宙艦隊の追っ手が迫る中、過去の墜落直前の時間に、セブンに向けてボーグ通信機から修正値を送った。ところが、その修正もやはり失敗に終わった。絶望するキムに、ドクターが「これができるのは、君しかいない。しっかりして、もう一度送ればいい。」と励ます。キムは、「正しい修正値が割り出されないのなら、量子ストリームを打ち消す修正をすればよい。」と瞬間的に考え、その修正値を過去の墜落直前のセブンに送った。操縦席にいるチャコティは、宇宙艦隊の戦艦と交戦し、3人の小型機が爆発する数秒前に、キムはそれをヴォイジャーに送った。そうすると、過去の時間にいるヴォイジャーとデルタフライヤーは量子ストリームから放り出されたが、墜落は免れた。実験的な新型エンジンは失敗に終わったが、それでも帰還を10年ほど短くすることができ、乗組員の士気は上がった。問題は、誰が修正値を送ったかであるが、未来のキムから現在のキムに宛てて、その経緯を説明するビデオメッセージが残されていた。 [ このように、過去に遡って間違いを正し、未来である現在も変えてしまうというストーリーはあり得るとは思ったが、それにしてもまさに劇的な手に汗を握る展開である。15年間のこの世界の変換はどうなるのだろう。例えば、チャコティとその恋人はまた会えるのだろうかなど、疑問が山のように浮かぶが、そんなものは大したことがないように思えるほど、人を惹きつける。このシリーズで最高の評価を与えたい。] 第5A−100回 (多重人格:Infinite Regress ) 総合評価 ★★★☆☆ (ストーリー ★★★☆☆) (人間の描写 ★★★☆☆) セブンに突然、ボーグの多数の声が聞こえてくるようになり、そのたびに別の人格が現れてくる。あるときは地球人、フェリンギ人、クリンゴン人と、めまぐるしく変わる。その頃、ボーグ艦の破片を見つけた。その中に、ボーグ集合体を形成する最も重要な装置を見つけた。それが、セブンの多重人格の原因になっていると考えたジェインウェイは、その集合体装置をヴォイジャーに転送し、機能を止めようとした。ところが、自己修復装置が働いて、止められない。しかもその中に、有機体のウイルスがいて、これがセブンの多重人格の原因らしい。 ヴォイジャーは、最後に同化された種族のところに行き、ウイルスの治療法を聞いた。すると驚いたことに、「これはボーグ集合体を攻撃するために、13人がこのウイルスを持って同化され、集合体装置に植え付けたものだ。」という。そして、「あのまま置いておけば、何百というボーグ艦を破壊できたのに、余計なことをしてくれた。装置を返せ。」と言い、断ると攻撃をしてきた。その頃、医務室では、トゥヴォックがセブンと精神融合を試みて、多重人格から救おうとしている。機関部では、その集合体装置を切る作業をしていて、やっと止めることができた。セブンは、ようやく元の人格を取り戻した。 [ セブンが色々な人格になるのは、それなりに面白いが、だんだん深刻になってきてそれどころではなくなった。でも、ボーグ対策で同化を通じてウイルスをばらまく種族がいるとは思わなかった。生物化学兵器は、まさに捨て身の貧者の兵器ということか。] 第5A−101回 (寄生生物と医学倫理:Nothing Human ) 総合評価 ★★★★☆ (ストーリー ★★★★★) (人間の描写 ★★★★☆) 異様な通信を拾ったヴォイジャーは、その発信源に向かったところ、見たことがない異星人の船を発見した。そこには、ヒューマノイド型ではないサソリのような外観をした生物が乗っていて、生命反応が弱っていた。ヴォイジャーの医務室で治療をしようとしたが、その生物はベラナの身体に飛び付き、その器官や血液を利用して生き延びようとする ベラナはこの寄生生物を抱きかかえる格好で医務室に横たわった。ドクターがその寄生生物をベラナから引き離そうとするが、双方とも死にそうである。 ドクターは弱り果て、データベースから宇宙生物学の権威を、ホログラムにして呼び出した。それは、カーデシア人の医師だった。腕は良いが、彼には大きな問題があった。カーデシアがベイジョーを占領していた時代に、ベイジョー人を実験台にして、多数を虐殺したからだ。もちろん、その医学的成果を元にして、流行病の治療法を編み出して多くの人の命を救ったが、その虐殺の事実は消えるものではない。 ヴォイジャーの乗組員の中で論争がおきる。チャコティは、「そういう倫理に反することをやった医師のアドバイスを元にベラナを治療するのは、いけないのではないか。」といい、ベラナの恋人のパリスは、「そんなことより、ベラナの命を救うことをまず考えるべきだろう。倫理の話はその次だ。」と主張する。ベラナ自身もそういうカーデシア人医師の手術は受けたくないという意向である。ジェインウェイ艦長は、「どちらも正しいが、まずはベラナの命を救うことが優先する。」と言って、ドクターにカーデシア人医師と共同で引き離しの手術を命じた。 手術は成功し、ベラナは助かり、寄生生物も自らの仲間のところへと戻って行った。しかし、ベラナの心は、晴れなかった。 [ 寄生生物が取り上げられているが、本当のテーマは、医学の倫理という重い課題である。他人を実験台の犠牲にして得られた治療法など、医学の倫理に反するから、そういうものは一切拒絶するか、それとも目の前の患者の命を救うためには、倫理に目をつぶってその治療を続けるかという重い選択となった。深く考えさせられるテーマである。] 第5B−102回 (義憤の末:Thirty Days ) 総合評価 ★★★★☆ (ストーリー ★★★★☆) (人間の描写 ★★★★☆) ジェインウェイ艦長が、「トム・パリス中尉、本日をもって少尉に降格。禁固30日を命ずる。」と宣言する場面から始まった。拘束室で、パリスが父に向けて、なぜこうなったかのボイスメッセージを作成する。ヴォイジャーは、全てが水で覆われた惑星を通りかかった。その惑星には、300年前から住民が8万人ほど住みつき、海中に都市を作って海と共生しながら生きていた。ところが、最近、海の水の減少が気になるという。残念ながらその住民の技術では、海中に100kmしか潜ることはできない。そこで、パリス、キム、セブンが住民の技術者とともにデルタフライヤーで海に潜り、原因を探った。 水深600kmで見たものは、驚くことに、10万年前に作られた人工重力発生装置であった。そのデータを解析したところによると、この海の水は、他の星から人工重力発生装置で持ってきたことがわかった。しかも海の体積は減少を続け、あと5年でなくなる。海の水の量が減少している原因は、住民が設置している酸素発生装置による汚染であることがわかった。住民の執政官にその事実を伝えたが、礼は言うものの、自分の立場が危うくなるのを恐れて、何もしないつもりであることは、明らかだった。義憤にかられたパリスは、艦長に無断で行動を起こし、住民の技術者とともにデルタフライヤーで海中に入り、その酸素発生装置を破壊しようとしたが、ヴォイジャーに阻止された。 [ パリス中尉が少尉に降格の上、30日の拘束室とは、何をしでかしたのだろうと思ったが、直情径行のパリスらしい後先を考えない行動である。しかし、軍隊組織では、あるまじき命令違反には違いない。それにしても、自分の住む惑星の危機より、自分の地位を心配する執政官とは、誠に情けないが、いかにもありそうな設定である。そういう意味でも面白いエピソードである。] 第5B−103回 (カシック検査官:Counterpoint ) 総合評価 ★★★★★ (ストーリー ★★★★★) (人間の描写 ★★★★★) ヴォイジャーは、デボア帝国の領域を通過中に、テレパスがいないか何度も検査を受けていた。デボラでは、テレパスは他人の心を読むので、社会の秩序を乱すとして、見つかり次第、強制収容所に送られることになっているからだ。ところが、ヴォイジャーには、トゥヴォックなどのバルカン人もテレパスであり、その他に実は貨物船から保護したテレパスのブレナーリ人の子供も含めた10名の亡命者がいた。これらのテレパスは、デボラの検査の間は、貨物室で粒子化して浮遊させているから、検査では見つからなかった。 ところが、数度の検査の後、突然、検査官のカシックがヴォイジャーの前に私服で現れて、亡命したいから自分も保護してほしいと言ってきた。なぜかというと、「ある貨物船で長い間、貨物の中に隠れていた女の子を検査で発見して出した時に『ありがとう』と言われたが、それでも強制収容所に送らなければならなかったことで、良心が痛んだ。」という。そして、救難の輸送船との会合ポイントの変更は実はデボラがさせたものだとか、デボラの検査の裏をかく方法を教えてくれた。亡命者を逃がす方法として、ワームホールが過去6ヶ月間に開いたデータから、ジェインウェイと一緒に次にどこにいつ開くのかを予測したりした。その予測に基づいて次のワームホールに行く途中、デボラの監視基地があり、どうやってそれをかいくぐるかという方法も一緒に考えてくれた。それを試して途中までうまくいっていたが、最後の最後に探知されてしまった。デボラの宇宙艦が2隻迫ってきた。カシックは、「自分が行って、上手に収めてくる。」という。ジェインウェイは、「実は、あなたに乗組員の一員になってもらいたかったの。チャイコフスキーの好きな人は、他にいないからね。」と言い、2人は抱擁する。 カシックは、検査官として戻ってきて、「テレパスが12人、貨物室で粒子化して浮遊しているから、実体化させてこい。」、「前方2万キロのところにあるワームホールに2発、光子魚雷を発射せよ。1発目は広げ、2発目は破壊だ。」と、矢継ぎ早に命じた。完全な裏切りである。ところが、貨物室で実体化したのは野菜で、光子魚雷を発射しても何も起こらなかった。カシックは驚く。それどころか、2隻のシャトルが既に発進済みで、ワームホールの向こうに消えていった。カシックの部下は、「テレパスを逃したヴォイジャーの全員を逮捕すべきだ。」と言うが、カシックは、「やめろ、自分たちの失敗を記録に残したいのか。」と抑える。 2人きりとなったとき、ジェインウェイは、「念のために、用心したのよ。でも、乗組員として来てくれたら良かったのに。あの女の子の話は嘘だったの?」と聞く。カシックは、「正直言って、ヴォイジャーの乗組員になる話には、心動かされたよ。女の子の話は本当だが、自分たちの種族を守るために、強制収容所に入れなければならないと思っている。」と答えた。 [ 途中で、どういう結末を迎えるのか、全く予測できなかった。手に汗を握るサスペンスというか、まるで、極めて上質なスパイ映画である。騙し、騙され、そうして最後にジェインウェイが勝った。このエピソードにも、最上級の評価を与えたい。] 第5B−104回 (ドクターの葛藤:Latent Image ) 総合評価 ★★★☆☆ (ストーリー ★★★☆☆) (人間の描写 ★★★☆☆) ドクターは、ホロ・イメージを使って乗組員全員の健康診断を行っていた。キムの体を調べているとき、18ヶ月前にキムが受けた脳の外科手術の痕跡を見つけた。その方法はドクターが考案したものなので、ドクター以外の人には、できないはずだ。ところがドクターには、その手術に関する記憶が一切ない。さらに、最近の短期記憶にも欠落がある。誰が消したのかという調査を始めたドクターは、実は艦長が消していることを知った。 ドクターはジェインウェイ艦長に抗議するが、取り合ってくれない。それを見たセブンは、自分とどこが違うのかとドクターに同情する。ジェインウェイは「あなたは人間でドクターはホログラムだから。」と言うが、セブンは「自分は半分は人間だが、残りは機械のようなものだ。自分もそのうち、あのような仕打ちを受けるのか。」と言い残して去る。 ジェインウェイは、考えた末に、18ヶ月前にドクターに何が起きたのかを見せた。その日は、美人のアーニー・ジェタール少尉の誕生日だった。ドクター、ジェタール、キムの3人がシャトルに乗って任務に出た。突然、異星人の襲撃を受けて、ジェタールとキムは撃たれてしまった。いずれも瀕死の重傷で、すぐに手術をしないと命の危険がある。ヴォイジャーに戻ったドクターは、2人を前にして、とっさにキムを選んで治療する。キムは助かるが、ジェタールは死んでしまった。ドクターは、なぜジェタールの命を救えなかったのかと葛藤に悩み、見ていられないジェインウェイたちは、ドクターのプログラムのからその部分を消去してしまった。 [ ドクターのプログラムが、どちらの命を救うのをを優先するかという問題で堂々めぐりを繰り返す。それでプログラムが壊れるのを恐れたジェインウェイは、その部分の記憶を消去する道を選ぶが、そうするとドクターの人格の形成が妨げられるということに気づき、何が起きたかを説明する道を選んだが、そのために、ドクターは、いわば精神病患者となり、乗組員の誰かが付き添って、その話を聞いてあげることになった。それから2週間経っても、ジェインウェイが、ドクターの堂々めぐりの話を14時間も忍耐強く聞いていた。] 第5B−105回 (ケオティカの女王:Bride of Chaotica! ) 総合評価 ★★★☆☆ (ストーリー ★★★★☆) (人間の描写 ★★★☆☆) ある地点で、ヴォイジャーが突然、停止してしまった。亜空間の歪みにはまってしまったようだ。しかも、艦の機能が次第に動かなくなっていく。ところが、パリスとキムが動かしていたホロデッキのプログラム「キャプテン・プロトンの冒険」だけは、まだ機能中で、停止できない。そこで動いているのは、宇宙の支配者を自称する「ケオティカ」で、光線銃を装備している。パリスが扮するキャプテン・プロトンがそれを阻止するという役回りである。そのホロノベルに、5次元に住む光子生命体が現れた。そして、ケオティカの軍隊と戦闘になり、55人もの犠牲者を出した。光子生命体がパリスをスキャンすると、普通とは逆に、生きていないとなった。 この戦闘を止めないと、ヴォイジャーも動けない。そう考えたパリスは、ドクターに地球の大統領の役回りをさせ、光子生命体とともに、ケオティカを打倒しようとする。そのためには、ケオティカの城の周りにある防護フィールドを一時無効にしなければならない。それには、アラクティア女王役を誰かが演じなければならないということで、ジェインウェイに白羽の矢を立てる。最初は渋っていたジェインウェイも、芝居が始まると立派に役を演じ、ケオティカを倒したことから、光子生命体も去って行った。 [ まるで喜劇仕立ての奇想天外なストーリーである。それにしても、アラクティア女王を演じたジェインウェイは、実に堂に行っていた。面白いエピソードである。] 第5C−106回 (重力の歪み:Gravity ) 総合評価 ★☆☆☆☆ (ストーリー ★☆☆☆☆) (人間の描写 ★★☆☆☆) 重力の歪みの中へとシャトルが引き込まれ、その中の荒れた惑星に、トゥヴォックとパリスが乗ったシャトルが墜落した。強盗が横行し、食料といえば砂漠の蜘蛛しかない。強盗に襲われたところを助けたことから、2人は、ある異星人の女性と暮らし始めた。その星は、重力の異常で外の1日が1ヶ月に相当するが、その女性は既に季節が14回も過ぎていた。 2人のシャトルを探していたヴォイジャーは、重力の歪みに引き込まれそうになるが、からくも脱出した。そのときに異星人の船が近づいてきて、「この重力の穴は、明日のこの時間に閉鎖することになっている。既に11隻の船が吸い込まれた。これまで、脱出できた船は1隻もない。このままだと、更に被害に遭う船が増えるので、やむを得ず、閉鎖することにした。」という。ジェインウェイ艦長が、「中に入っている人は、どうなるのか。」と聞くと、「歪みの穴の中で、そのまま潰れてしまうが、やむを得ない犠牲だ。」という。 現地の惑星では、トゥヴォックが、自らが助けた異星人女性に愛を告白されるが、妻がいると言って、断ってしまう。ヴォイジャーは、転送で収容するべく作業を進め、現地では他の住人たちに襲われ、まさに危機一髪の状況で救出された。その女性は、ヴォイジャーが母星に送ることになった。 [ 重力の歪みの中の荒野の惑星では、たくさんの宇宙船が吸い込まれて墜落し、その生き残った異星人たちが足りない物資を巡って、相互に盗み盗まれながら暮らしているという過酷な環境である。そういう場面で、トゥヴォックが片思いされるとは、かなり無理なストーリーである。] 第5C−107回 (食虫植物:Bliss ) 総合評価 ★★★☆☆ (ストーリー ★★★★☆) (人間の描写 ★★★☆☆) セブンとパリスが、子供のナオミ・ワイルドマンを連れてシャトルの探査任務を終えてヴォイジャーに帰還した。するとジェインウェイ艦長を始め皆は、地球へ帰ることができるワームホールが見つかり、宇宙艦隊からの通信が入ったと喜んでいる。セブンは、あまりに話が出来すぎていると感じる。天体ラボでそのワームホールの中を探ると、異星人の宇宙船がいて、「ここに近づくな。」と警告を受ける。セブンがその正体を調査しようとすると、トゥヴォックが「そんな通信記録はない。」として、逆にセブンを拘束する。セブンはこれに抵抗するが、ヴォイジャーはとうとうそのワームホールの姿をした有機生命体の中に取り込まれてしまう。 先にその有機生命体に呑み込まれていたその異星人の老人は、「39年前に自分の家族を含めて3,000人がこの怪物の中に呑み込まれて亡くなった。これは、近づく船の乗組員に神経テレパシーでそれぞれに都合のよい夢を見させて消化してしまう食虫植物だ。自分は、こいつと戦って、神経中枢を爆弾で破壊しようとしたら見破られて、こうして胃袋の中に入れられてしまった。」という。確かにこの怪物は、全長2,000kmにも及ぶ有機生命体だった。 セブンと子供のナオミ・ワイルドマンは地球に帰還したいという夢が全くないので、この怪物の神経テレパシーの影響は受けない。ホログラムのドクターも同様である。この怪物ハンターの異星人の老人は、長年の訓練で影響を受けないようにしている。この4人で協力して怪物の胃袋から脱出しようと模索した。ドクターが、「ここが胃袋なら、まずいものを食わせて吐き出させればよい。」と提案した。それに従って、セブンが反物質を放出し、老人ハンターがそれに火をつけた。しばらくしてセブンが脱出したと思ったが、老人ハンターから「それもお前の願いから怪物が創作した幻影だ。」と言われる。もう一度、反物質を放出したところ、やっと脱出することができた。 [ まるでハーマン・ メルヴィルの『白鯨』に出てくるエイハブ船長を思い出させるエピソードである。] 第5C−108回 (ボーグクイーンとの出会い:Dark Frontier ) 総合評価 ★★★★★ (ストーリー ★★★★★) (人間の描写 ★★★★★) ヴォイジャーは、完全に壊れたボーグ艦を見つけ、その破片の中にあった他のボーグ艦の位置情報を手に入れた。それを見ると、1隻の小型ボーグ艦が大破しながら進んでいるのを見つけた。ボーグのトランスワープ技術を盗み出す絶好の機会だと考えたジェインウェイ艦長は、慎重なシミュレーションを繰り返した上でそのボーグ艦に侵入し、トランスワープコアを盗み出すのに成功したが、そのときに連れていったセブン・オブ・ナインが、ここに留まると言い出した。やむなくセブンをボーグ艦に置いてきたジェインウェイは、セブンの奪還の計画を練った。 一方、ボーグに捕まったセブンは、同化されずに、ボーグの中枢であるユニマトリックスワンのボーグ・クイーンのところへ連れて行かれた。クイーンは、「セブン、お前はユニークな存在だ。だから、しばらく同化しないで、そのままでいてもらう。人類を同化するには、これまでのような一律のやり方では効率が悪い。いまナノ・プローブのウィルスを地球にばら撒いて、知らず知らずのうちに、気が付いたら人口の半分をドローンにする計画を進めているから、それに加われ。」と命令するが、セブンは良心が痛み、これを断る。 他方、デルタフライヤーにトランスワープ技術を応用し、ボーグからの遮蔽にかつてセブンの両親が発明した技術を使って、ジェインウェイ、トゥヴォック、パリス、そしてドクターが乗り込んだ。セブンの現在地を探知してそこに向かうと、それはボーグの本拠地だった。クイーンの人類同化計画に反抗したためにセブンがまさに同化されようとしたその時、ジェインウェイが現れて、クイーンからセブンを取り戻した。クイーンに対し、セブンは、ボーグがいつも『我々は一つだ』を決まり文句にしているのを真似て、「ヴォイジャーの乗組員と私は、一つだ。」と言う。デルタフライヤーは、トランスワープ技術で逃げるが、後ろからボーグ艦が追いかけてくる。逃げ切ったと思ったその時、トランスワープの出口に向けてヴォイジャーは光子魚雷を発射し、追跡艦を破壊した。その後、ボーグのトランスワープ技術で航行することで、地球への行程が15年は早まった。 [ ジェインウェイが、ボーグクイーンというボーグの本拠地に乗り込んで、セブンを取り戻すという派手な行動をとる。ただし、無手勝流でするのではなく、それなりの調査と訓練と技術の裏付けがあるというのが、アメリカ映画らしいところである。それにしても、アクション映画のようなハラハラ、ドキドキする場面が続き、よく練られたシナリオである。このシリーズの中でも最高級のエピソードといえる。] 第5D−109回 (恋の病気:The Disease ) 総合評価 ★★★☆☆ (ストーリー ★★★★☆) (人間の描写 ★★★☆☆) ヴォイジャーは、大船団をひとまとまりの構造体にして、もう400年間も宇宙を漂っているヴァーロ族と出会い、彼らの船の修理を手伝った。閉鎖的だった彼らも、ヴォイジャーの乗組員の誠意に、次第に心を通わすようになった。そのようなある日、キム少尉がヴァーロ族の女性タルと恋に落ち、一夜を過ごしてしまった。これは、異星人との性的接触には艦長と医療主任の許可がいるという艦隊規則に明らかに違反している。翌朝、キムの身体が光る異変が起き、事の次第が艦長に明らかになってしまう。キム少尉は、懲戒処分を受けた。チャコティは、いささか重すぎないかと進言したが、艦長の方針は変わらなかった。 一方、ヴァーロ族の船には、微細な亀裂が入っているのが見つかった。その原因を調査していくと、それは合金を溶かす人工のウィルスによるものと判明した。同じ頃、ヴォイジャーにヴァーロ族の密航者が入り込んだ。その取調べで、実はヴァーロ族の船から逃げたがっている者がかなりいることがわかった。人工のウィルスは、船の結合を壊してばらばらにするための破壊工作だったのだ。しかもそのウィルスを作ったのは、キムの恋人のタルだとわかった。ヴァーロ族の船は居住区ごとばらばらになった。多くの人はこれまで通り航海を続けるが、別の道を歩みたいタルのような人には、それも認められることになった。 [ ヴァーロ族という人間と非常に近い種族との交流である。優等生だったキム少尉が珍しく艦隊規則と艦長命令に反し、ジェインウェイ艦長は、失望したが、それも『アカデミーを卒業したばかりで乗船したときのフレッシュな印象』のゆえ、保護者のような気持ちでいたからだそうだ。] 第5D−110回 (ヴォイジャーのコピー:Course: Oblivion ) 総合評価 ★★★★☆ (ストーリー ★★★★★) (人間の描写 ★★★★☆) 新しいワープドライブを試し、このまま天の川運河の中心を通れば、あと2年で地球に帰還できるという計算になった。パリスとベラナは、結婚式を挙げて、皆に祝福される。そういう幸福の絶頂にあったとき、大きな異変が起こった。船の構造も乗組員の細胞も、分子レベルで崩壊し始めたのである。新婚のベラナが死んでしまった。その身体を調べてみると、驚いたことがわかった。人間のコピーだったのである。つまり、ヴォイジャーがデーモンクラスの惑星で、一種の流動体生物から乗組員の複製を作らされたとき、流動体生物はヴォイジャーの複製も作り、それで本物と同じようにアルファ宇宙域を目指して航行を続けていたのである。(91回のデーモンクラスの惑星を参照)。 コピーのヴォイジャーの乗組員は、分子レベルの崩壊を続けて次々に亡くなっていく。ヴォイジャーの船体も崩壊しつつある。それでもジェインウェイ艦長のコピーは、アルファ宇宙域を目指す針路を変えようとしない。チャコティのコピーは、自分たちの本当の故郷であるデーモンクラスの惑星を目指して反転すべきだと進言したが、ジェインウェイのコピーは、なおアルファ宇宙域に固執する。そのチャコティが亡くなったのをきっかけに、ジェインウェイはやっと故郷のデーモンクラスの惑星へと進言変更をした。 ところが、そのデーモンクラスの惑星に到着する前に、とうとうジェインウェイ艦長のコピーも死亡し、キムのコピーが艦長として救難信号を発した。それを聞いて駆けつけたのは、本物のヴォイジャーだった。ところが時すでに遅く、宇宙空間には、流動体生物の残骸が散らばっているだけだった。 [ 91回のデーモンクラスの惑星のエピソードで、残されたヴォイジャーの乗組員のコピーたちはどうなるのだろうかと心配になった。ところが、ヴォイジャーの船体までコピーして、本物と同じようにアルファ宇宙域を目指して実際に航行するとは、私には考えも及ばない発想で、恐れ入った。それにしても、ジェインウェイ艦長のアルファ宇宙域を目指す執念が、コピーにまで、これほど浸透しているとは思わなかった。驚き、びっくりするエピソードである。] 第5D−111回 (カオス・スペース:The Fight ) 総合評価 ★☆☆☆☆ (ストーリー ★☆☆☆☆) (人間の描写 ★☆☆☆☆) ヴォイジャーは航行中、重力の無秩序な変更がある「カオス・スペース」に迷い込んでしまい、センサーも効かずに、このままでは重力による歪みによって船体そのものが壊れる恐れがでてきた。近くに同じように難破した宇宙船があり、記録によれば、1年前にこの中に入ってしまい、船長たちが幻覚を見て脱出できずに乗組員全員が死亡した。 チャコティが、ボクシングの幻覚を見るようになる。どうもそれは、目に見えない異星人からの通信のようだ。頭が痛くなるのも構わずに、チャコティが辛抱しながらその言葉従ってヴォイジャーの針路をとり、カオス・スペースから脱出することができた。 [ よほどのボクシングファンが台本を書いたのかもしれないが、ボクシングの門外漢には、内容が全く理解できなかった。駄作としか思えない。] 第5D−112回 (シンクタンクとの知恵比べ:Think Tank ) 総合評価 ★★★★★ (ストーリー ★★★★★) (人間の描写 ★★★★★) ヴォイジャーが、宇宙の賞金稼ぎのハザリの船に攻撃され、辛うじて難を逃れた。しかし、前途には、何隻ものハザリ船が待ち受けているという絶対絶命の状況に陥った。そこへ、デルタ宇宙域の頭脳集団(シンクタンク)の代表であるクロスが現れた。そこへもう一度、ハザリ船の攻撃を受けたが、クロスの言う通りに反撃したところ、とりあえずは撃退できた。クロスは、この難局を抜け出す策があるといい、代償としてヴォイジャーの情報が欲しいという。 ジェインウェイ艦長がセブンを伴ってクロスの宇宙船に行ったところ、確かに、各分野の専門家が集まっていた。ヴォイジャーの持っている情報を渡し、クロスが選ぶことになった。そしてクロスが持ってきたリストを見ると、その最後に「セブン・オブ・ナイン」とあった。ジェインウェイ艦長は驚き、断るが、クロスはセブンの意向を確かめてほしいという。艦長はセブンの意向を聞くが、「ヴォイジャーのことより、自分の将来のこととして考えてみたら。」とアドバイスする。セブンは難しい選択を迫られるが、ヴォイジャーが自分の集合体だといい、残る道を選んだ。 一方、ヴォイジャーは追っ手のハザリ船を罠で捕らえ、その船長と話をする。彼は、マロン人にヴォイジャーの襲撃を頼まれたと思っていたが、実はその依頼人の正体は、シンクタンクのクロスその人だった。そこで、どうやってクロスを出し抜くかを皆で知恵を絞った。ジェインウェイは、解けないパズルは、ズルすればよいと考えて、セブンをシンクタンクの船に送り込み、セブン自身のリンク装置でその船の遮蔽を解除すればよいことを思いついた。ハザリ船がクロスを呼び出し、約束が違ったから報酬を3倍にせよと通告し、セブンのリンク装置で遮蔽を解いたためにシンクタンクの船が多くのハザリ船から攻撃を受けている隙に、ヴォイジャーはセブンを転送で収容し、その場を立ち去った。 [ デルタ宇宙域最高の頭脳集団と称するシンクタンクの連中が、セブンを仲間に加えようとする陰険な陰謀で、それをジェインウェイ艦長が持ち前の慎重さと粘りで、スッキリと出し抜く話である。いわば、知恵比べでシンクタンクに勝ったというわけだ。非常に面白いエピソードの一つである。] 第5E−113回 (マロン廃棄物船の怪物:Juggernaut ) 総合評価 ★★☆☆☆ (ストーリー ★★★☆☆) (人間の描写 ★★☆☆☆) ヴォイジャーは救難信号を受けて現場に急行したヴォイジャーは、そこにマロンの廃棄物船が難破していた。生き残った2人を転送したところ、廃棄物を運搬中にシステムがダウンして爆発まで6時間しかなく、爆発すれば周囲3光年の範囲が巻き込まれ、ワープコアが不調のヴォイジャーも危険だとわかった。その2人のマロン人、チャコティ、トレス、ニーリックスが廃棄物船に戻り、修理して爆発を防ぐことになった。そのためには、放射能汚染が少ない下のデッキから入って上のデッキへと、汚染を除去しながら上がっていくことになった。途中で、飛んできた物に当たってチャコティが失神し、ヴォイジャーに転送収容された。 残る4人でデッキを上がっていく途中、マロン人の1人が何者かに襲われた。残ったマロン人管理者は、マロン廃棄物船の船乗りの間に言い伝えられている船に住み着く「怪物」のせいかもしれないと言う。そして「自分は、半年はこうして廃棄物船に乗っているが、残りの半年は美しいマロン星で彫刻家として活躍している。」と語る。トレスは、「そんな美しい星にいて、他の星系を汚染してはダメでしょう。」と言うが、「仕方がない。」と答える。また、「この船には最底辺の清掃労働者もいる。10人中8人は死ぬという危険な仕事だけれども、しかし一生分の賃金が貰える。」とも言う。 そうこうしているうちに、やっと船の管制室に着いたが、放射能汚染が充満する中、マロン人の1人とニーリックスが何者かに襲われた。廃棄物船に住み着く「怪物」だ。しかしそれは、実は最底辺の清掃労働者で、船と乗組員を道づれにしてしまおうと襲っていたのである。ベラナはその労働者と戦い、3人でヴォイジャーに戻った。その後、廃棄物船はコロナの中へと向かい、その中で爆発したので、影響は最小限に抑えられた。 [ 廃棄物処理に、最底辺の労働者の人権問題を組み合わせた社会性の強いテーマである。なお、辞書によれは、原題の「Juggernaut」とはインドのクリシュナ神で、人間に盲目的服従や恐ろしい犠牲を強いる絶対的な力または不可抗力のことをいう。廃棄物は、まさにクリシュナ神ということか。] 第5E−114回 (誰かがセブンに恋してる:Someone to Watch Over Me ) 総合評価 ★★★☆☆ (ストーリー ★★★☆☆) (人間の描写 ★★★★☆) ドクターが、セブンが誰かとデートなど、できるわけがないというパリスと賭けをして、セブンに社交、会話、歌などを教えた。セブンは乗組員の中からデートの相手を選び、まずチャップマンとホロプログラムの中でデートをした。ところが、まだ習っていないダンスの最中に、相手の腕を傷付けてしまい、初デートは流れてしまった。 その頃、異星人と交易の交渉中で、その星の代表の1人がヴォイジャーに滞在した。ところがこの人は聖職者であるにもかかわらず、俗っぽい人で、接待係のニーリックスを悩ましていた。その歓迎会で、ドクターにエスコートされたセブンは、冒頭のスピーチをするなどして、それなりにこなしていたが、酔っ払ったその聖職者が絡んできたので、出て行ってしまった。 そうこうしているうちに、ドクター自身がセブンに恋をしていることに気づき、ドクターはパリスのアドバイスを受けながらセブンに告白しようとするが、すれ違いに終わってしまう。 [ まるで、喜劇のようなドクターの失恋物語である。] 第5E−115回 (ミレニアム・ゲート:11:59) 総合評価 ★★★★☆ (ストーリー ★★★★☆) (人間の描写 ★★★★☆) それぞれの先祖の話となり、ジェインウェイ艦長の先祖のシャノン・オドンネルを思い出した。シャノンは、地球で初めての自給自足の巨大構造物であるミレニアム・ゲートの建設に携わり、探検家でもあった。調べてみると、シャノンはNASAに勤めていた技術者で、宇宙飛行士の試験に不合格の後、フロリダを目指していた。途中の街のある書店の前で車が動かなくなり、その書店で暖をとらせてもらった。その店主のヘンリー・ジェインウェイは、ミレニアム・ゲートの建設にただ1人で反対をしていた。ミレニアム・ゲートの開発会社は、期限を区切り、その時までに住民全員が合意しなければ、他の街で建設することにしていた。 シャノン・オドンネルは、ヘンリー・ジェインウェイの人柄に惹かれながらも、自分は探検家タイプで1箇所に居着くタイプではない。それに対してヘンリーは、この書店そのものが世界だという過去に生きていると感じ、超えがたいものがあると思っていた。その頃、開発会社から「ミレニアム・ゲートの建設をヘンリー・ジェインウェイが認めるように説得してくれれば、技術者として雇う。」と言われ、ヘンリーに話したが、当然に断られる。 仕方がなく、シャノン・オドンネルは当初の計画通り、フロリダを目指して出発するが、途中でヘンリーはなくてはならない人だと思い直し、ヘンリーの書店に戻ってくる。そして、ヘンリーに話し、ここに留まること、ミレニアム・ゲートには反対しないことにして、ゲートの建設が始まった。その反対しないことを伝えたのは、開発会社が設定した期限のわずか1分前だった。 [ 先祖は、ファミリー内で言い伝えられているほどには、立派だったわけではないということである。誰しも、そういうものだろうと思う。] 第5E−116回 (破壊工作のタイムトラベル:Relativity ) 総合評価 ★★★★★ (ストーリー ★★★★★) (人間の描写 ★★★★★) 500年後の時間パトロール船であるタイムシップ・レラティビティ号のブラクストン艦長から指令を受け、セブンが竣工直前のヴォイジャーに潜入し、仕掛けられた時間爆弾を探していた。ようやく見つかったが、時間の位相が違うので、処理できない。一方、ヴォイジャーの中ではこの爆弾によって時間の歪みが拡大しており、何とかしなけれがヴォイジャーが破壊されるというギリギリの段階にあった。 爆弾が仕掛けられた正確な時間がわからないため、セブンは、今度は爆弾を仕掛ける犯人を逮捕するようにと言われる。数年前のケイゾン族との戦闘中に現れたセブンは、犯人逮捕に向かう途中で、ジェインウェイ艦長とトゥヴォックに捕まる。セブンが乗組員に加わる前のことだから、ジェインウェイはセブンを知らない。セブンは事情を話し、ジェインウェイの協力を得る。2人で爆弾犯人を捕まえに行くと、それはブラクストン艦長自身であった。 驚いている2人にブラクストンは、「ジェインウェイのせいで3度も酷い目に遭った。いっそのことヴォイジャーを破壊してしまえばと思っている。」という。そう言って、他の時間に逃げてしまった。ジェインウェイとセブンは、いったん、レラティビティ号に戻される。そして、これ以上、セブンが追えば命に関わるので、ジェインウェイが代わって追いかけ、ようやくブラクストンを逮捕した。 [ 1回のタイム・トラベルでもその時間の前後がどうなるのだろうと気になるが、それが何回も起こるので、かなり複雑なテーマである。しかしそれにしても、爆弾犯人がブラクストンだったとは、意外な結末だった。なかなか興味深いテーマである。] 第5F−117回 (大量破壊兵器の人工知能:Warhead ) 総合評価 ★★★☆☆ (ストーリー ★★★☆☆) (人間の描写 ★★★★☆) キムが夜勤でヴォイジャーの艦長席に座っていたとき、救難信号を受けて、その惑星に向かった。地上に降りてみると、1m余りの機械が岩にめり込んでいた。それは、人工知能で、ヴォイジャーに持ち込んで調べたところ、恐ろしい大量破壊兵器であることがわかった。乗組員からは、直ぐに外へ放り出せという声が上がったが、ドクターが「人工知能なのだから、信管を外せば大丈夫だ。」と主張する。その結果、ヴォイジャーの中にそのまま置かれたが、その大量破壊兵器の人工知能は、ドクターを乗っ取り、破壊目標に向かうように艦長に命令した。 セブンがナノプローブでその人工知能の作動を止めようとしたが、反撃されて失敗した。キムが、人工知能を説得する。調べると、大量破壊兵器を発射した本部は、「戦争は終わった。攻撃を中止せよ。」という命令を発している。ところがその人工知能は、容易には信じない。それどころか、自分と同時に33基が発射されたという。その33基は、ヴォイジャーの周りに集まってきた。ヴォイジャーの中では、キムが本部命令の暗号コードを人工知能に示し、ようやく納得させた。しかし、目標から2光年より近づくと、もはや止めることはできない。そこでその人工知能は、自分が止めると言って仲間とともに飛び去り、星や船のいないところで自爆し、他の大量破壊兵器を道づれにした。 [ 大量破壊兵器の人工知能をたまたま乗せてしまったヴォイジャーの苦難である。キムが解決できるとは、彼も成長したものである。] 第5F−118回 (USSエキノックス号 前編:Equinox, Part I ) 総合評価 ★★★★★ (ストーリー ★★★★★) (人間の描写 ★★★★★) ヴォイジャーは、同じ宇宙艦隊所属のUSSエキノックス号からの救難信号を受信した。エキノックスは、ヴォイジャーよりはるかに小さな船で、ワープ速度もヴォイジャーの9.95光年に対して8光年しか出なかった。それにもかかわらず、ヴォイジャーと同じように守護神によってこのデルタ宇宙域に飛ばされ、ここまで生き延びてきた。しかし、その船は空中から現れる異空間生命体の攻撃を受けて大破し、乗組員の多くを失っていた。 ヴォイジャーはその修理を手伝い、エキノックスの乗組員も休息をとるが、何かを隠している。ドクターがイクワノックスの研究室に入って見つけたものは、異空間生命体の死体である。エキノックスは、核エネルギーの塊である異空間生命体の死体を集めて、それを燃料にしてアルファ宇宙域を目指していたのである。 エキノックスのランサム艦長は、「自分たちの船は小さく、速度も遅く、燃料も尽きた状況で、何とか生き延びなければならない。ヴォイジャーとは事情が違う。他に選択肢はない。異空間生命体の死体は、あと66体が必要だ。」と主張する。しかし、ジェインウェイは、「こんなことは決して許されない。」と、エキノックスのランサム艦長以下を拘束する。ところが、エキノックスの緊急用医療ホログラム(ドクター)は、倫理サブルーティンが削除されており、エキノックス艦長らの脱走を手助けする。ヴォイジャーが異空間生命体の攻撃を受けている間、その全員がエキノックスに乗船したところで離脱し、アルファ宇宙域を目指して発進した。 [ エキノックス号には、自分たちの燃料にするために、異空間生命体を捕らえてその身体を利用するというおぞましい秘密があった。貧すれば鈍するというが、こんなことをしていたら、やがて自滅するのは明らかだと思うけれども、それでもやってしまうのは、人間の性とでも言うのだろうか。] 宇宙船ヴォイジャー【第6シーズン】 第6@−119回 (USSエキノックス号 後編:Equinox, Part II ) 総合評価 ★★★★★ (ストーリー ★★★★★) (人間の描写 ★★★★★) ヴォイジャーは、異空間生命体の攻撃を受けて、乗組員2名が死に、多くが負傷した。その間に、エキノックス号を見失った。ジェインウェイは、異空間生命体を「精霊」と崇める異星人の仲立ちで、その異空間生命体と話をし、自分たちには敵意がないと言い、エキノックスを引き渡すことを約束した。一方、エキノックス号では、セブンが暗号コードを明かすことを迫られたが、セブンは断った。ランサム艦長はヴォイジャーのドクターから倫理サブルーティンを削除し、セブンの脳から暗号コードを直接抽出しようとするが、そうすると、セブンの言語中枢が破壊されてしまう。それでも、ランサム艦長は続けようとする。 ヴォイジャーは、エキノックス号の位置を突き止め、追跡した。追い付いたヴォイジャーはエキノックス号を攻撃するが、ヴォイジャー船内にいるエキノックス号のドクターが妨害して、かなりの被害を受ける。エキノックス号自体も大破して航行が難しくなり、ランサム艦長が、もう潮時だと降伏しようとした。何人かの乗組員がヴォイジャーに転送された。すると、エキノックス号の副長が反乱を起こしてしまい、逆に拘束されそうになるが、ランサム艦長の味方の乗組員の機転で助かる。ランサム艦長は1人残ってセブンとドクターをヴォイジャーに返し、自分はなるべく遠いところでエキノックス号の爆発と運命をともにした。反乱を起こした副長たちは、異空間生命体によって殺された。 [ 手に汗を握るような活劇が続いて飽きさせない。小さな船で生き延びるためとはいえ、数々の艦隊規則を犯してきたランサム艦長が、最後は艦隊所属の艦長らしくその船とともに爆発してデルタ宇宙域の空間の藻屑となったという、悲しい話である。] 第6@−120回 (8年前のボーグ船の墜落:Survival Instinct ) 総合評価 ★★★★★ (ストーリー ★★★★★) (人間の描写 ★★★★★) 様々な異星人たちが集まる宇宙ステーションで、ジェインウェイ艦長は、彼らをヴォイジャーに招いて親しく交流をしていた。その中に、セブン・オブ・ナインに近づいてくる人物たちがいた。彼ら3人は、セブンの再生中に再生装置のあるアルコーブに入り込み、セブンの意識とリンクしようとする。そこを保安チームに見つかり、医務室へ運ばれた。ドクターが検査すると、それは集合体から離れたドローンで、ボーグではセブンと同じユニマトリックスにいた、ツー・オブ・ナイン、スリー・オブ・ナイン、フォー・オブ・ナインだった。昏睡から目覚めた3人は、口々に「集合体から離れたはずなのに、この3人の間ではまだ神経リンクが張られていて、他の2人の見るもの聞くもの、それに思考などが頭に入ってきて、耐えられない。セブンならこの事情を知っているのではないかと思って、セブンと神経リンクを張ろうとした。」という。 しかし、セブンがこの3人と神経リンクを張れば、セブン自身に危険が及びかねない。ところが、セブンはそれでもいいと決断して、リンクを張ることにした。そこで見たものは、8年前にセブンたちの乗ったボーグ船が惑星に墜落して、セブン、ツー、スリー、フォーの4体のドローンが生き残ったことだった。惑星上で4人は集合体リンクから外れ、ようやく個人を取り戻した。セブンは非常に居心地が悪く感じたが、残りの3人は「個人であること」を取り戻したので、このままでいたいと脱走を図った。セブンはそれを阻止し、ナノプローブを使って3人のドローンに共通の神経リンクを張った。その後、セブンだけがボーグに再同化されて、今に至ったようだ。つまり、神経リンクは、セブンが作り出したものだった。 ドクターの診立てによれば、神経リンクを切っても生きられるが、それはせいぜい1カ月に過ぎない。これに対してボーグに再同化されれば長く生きられるが、それは個人ではなくて、あくまでもドローンとしてだ。どちらを選ぶかという段階になり、人間らしく生きさせようと、神経リンクを切ることにした。3人は、それぞれの思いを秘めて、ヴォイジャーを後にした。 [ たった1ヶ月間だけだけれども精神の自由を味わえる方にするか、それとも肉体は長生きするが個の自由など何もない機械人間となる方を選ぶかという、究極の選択である。どちらを選んでも悲しい結末が待っているが、人間らしい生活をさせようと、精神の自由を選んだ。人間というものの本質を考えさせられる優れたエピソードであるが、実に、やりきれない思いが残る。] 第6@−121回 (死者の船:Barge of the Dead ) 総合評価 ★☆☆☆☆ (ストーリー ☆☆☆☆☆) (人間の描写 ★☆☆☆☆) 1人でシャトルに乗っていたベラナ・トレスは、イオン嵐に巻き込まれ、危うく命を落としそうになる。そのとき、トレスが見たものは、クリンゴンの伝説にある「死者の船」に乗って地獄へ向かう自分の姿である。ところがその船に、母親もやってくる。娘の不名誉が、母親を地獄に落とすことになるという。 危篤状態だったトレスが、ヴォイジャー内で無事に目覚めた。すると今度は、地獄に落ちそうな母親が気になって仕方がない。ジェインウェイ艦長に願い出て、シャトルの事故時と同じようにしてもらい。再び死者の船に戻った。船長に、母親の身がわりに自分が地獄へ行くと申し出て了解され、母親は天国へ行ってしまった。トレスは、そのまま地獄へ落ちようとするところで、意識が戻った。 [ 日本風に言えば、三途の川の渡し舟のようなものであるが、それにしても何を言いたいのか、さっぱりわからない駄作である。] 第6@−122回 (ドクターの艦長:Tinker, Tenor, Doctor, Spy ) 総合評価 ★★★★★ (ストーリー ★★★★★) (人間の描写 ★★★★★) ドクターはアルゴリズムを自分で弄った結果、白昼夢を見るようになり、セブンやベラナなどの女性乗組員にモテたり、艦長となってボーグ艦を光子砲で木っ端微塵に破壊したりした。しかし、その幻想を異星人がモニターしていた。この異星人たちは、通りすがりの宇宙船を襲い、その資源や技術を奪うことを生業にしていた。ドクターの白昼夢をモニターしていたのは異星人船の調査員で、ヴォイジャー自体のモニターができないことから、その代わりに自分が見た範囲のものを信じて、ドクターが本物の艦長だと思い込んでいた。 その結果、この異星人船、つまりヴォイジャーは価値があると判断し、彼らの上級のヒエラルキーの承認を得て、ヴォイジャーを襲うこととなった。その襲撃の時があと1時間後に迫ったとき、担当の調査員は大変なことに気が付いた。彼がモニターしていたのはドクターの白昼夢にすぎないのに、それをヒエラルキーに報告して襲撃計画を作ってしまったからである。このような間違いは、ヒエラルキーが許すわけがなく、自分は調査員を解任されると心配した。 そこで調査員は思い余ってドクターの白昼夢の中に現われ、「あと1時間後に襲撃が始まる。襲撃パターン3で、船の遮蔽方法と周波数を教える。艦長席にはドクターが座ってほしい。」と頼んできた。ドクターは、それを艦長に報告し、遮蔽に対応してスキャンすると3隻の異星人船が迫っていた。そこでジェインウェイ艦長は、ドクターを艦長席に座らせ、それらしく振る舞わせた。異星人船から通信が入り、交戦後、降伏せよと言われるた。ところが、ドクターが光子砲を撃つと脅したところ、異星人船は退散していった。 [ 珍しくコメディタッチの、ヴォイジャーにしては軽い話題である。異星人がドクターの白昼夢をモニターし、それが本当だと信じて、しかもそれで襲撃計画を作っていたとは、驚きである。それだけでなく、このままだと調査結果と違うと怒られて失職するからと襲撃相手のところに行って、芝居してくれと頼むというのは、どう見ても喜劇としか言いようがない。] 第6A−123回 (アリスの誘惑:Alice ) 総合評価 ★★☆☆☆ (ストーリー ★★★☆☆) (人間の描写 ★★☆☆☆) ヴォイジャーが宇宙のジャンク品を扱う商人のところに立ち寄り、いくつかの品物を購入したが、その中にトム・パリスが気に入ったボロボロの小型機があった。神経インターフェイス付きで、パイロットと一体となって操縦することができるというのが売り文句だった。パリスが勤務もそこそこに、その小型機に「アリス」と名付けて何日もその修理に没頭した。パリスには、アリスの姿が見えるようになり、妻のベラナがアリスの中に入ると、殺されかけた。 やがてパリスは、アリスとともに無許可で発進し、ワープの痕跡も消してしまったので、どこへ行ったのかもわからない。ジェインウェイ艦長は、仕方がなく、売主の商人のところに行って、何か情報を得ようとする。商人は、「あれは腕の立つパイロットを探していて、自分もパイロットにされかけたが、操縦の腕が悪くて役に立たなかった。事前に警告しておけばよかった。申し訳ない。」と言う。 セブンがアリスの航跡を探し当て、ヴォイジャーも向かった。アリスは、極めて稀な天文現象に向かっているところだった。引き止めようとしたが、そこへ突入しそうだ。転送で引き戻すには、船の周りのシールドが邪魔になる。そこで、アリスの木をそらせるため、パリスの脳に妻のベラナの像を送り込んだ。ベラナは、パリスの脳中でアリスと対決し、その隙にシールドを解除して、パリスを転送で取り戻した。 [ 幻影のアリスに、パリスが次第に取り込まれていくという恐ろしいエピソードである。] 第6A−124回 (2つの人格:Riddles ) 総合評価 ★★★★★ (ストーリー ★★★★★) (人間の描写 ★★★★★) トゥヴォックとニーリックスがシャトルで航行中、見えない何者かに襲われた。トゥヴォックは神経麻痺の状態でヴォイジャーに戻って治療を受けるが、まるで頭の中が白紙に戻ったようで、以前の論理的な人間から情緒的な人間に変わってしまった。治療法を探し当てたいジェインウェイ艦長は、近くの異星人の担当官に協力を求めたところ、それはハザラという種族ではないかと語り、これまで12隻の船が襲われ、いずれも同様の症状を呈していたという。 異星人の担当官は、これまでハザラの顔を見たことがない。見られれば歴史的発見だと張り切っている。そしてついに姿を突き止めた。次に遮蔽を破るために光を発したところ、ハザラの船が浮かび上がるが、逃げられてしまう。一方、トゥヴォックは次第に記憶を取り戻すが、性格が一変して、元の厳格で論理的なバルカン人から、陽気で気楽で快楽的な人間になってしまった。ニーリックスが一生懸命に元の性格や戦略士官としての知識を思い出させようとするが、できない。それどころか、このままの方が付き合い易いと考えるようになる。 一方、ジェインウェイ艦長はハザラの本拠地を突き止め、トゥヴォックの治療のため、彼を襲った神経武器を知りたいと交渉するが、教えてくれない。交戦後、更に交渉したところ、こちらからは過去に出会った種族の特徴、先方からは武器の技術を提供し、加えて担当官が得たハザラに関するデータを破棄することを条件に、合意した。 ドクターがその神経武器のデータから治療法を開発し、後はトゥヴォックが医務室にやってくるのを待つだけとなった。トゥヴォックは、「自分はこのままでよい。」と言い出す。ニーリックスもそう思うが、「ヴォイジャーには優秀な戦略士官が必要で、僕1人で仕事をするわけにはいかないんだ。」と言って、治療を受けさせた。トゥヴォックは元の厳格で面白味のない性格に戻り、ニーリックスには割り切れない思いが残った。 [ トゥヴォックをめぐるニーリックスの友情が通じ、束の間だったが、フレンドリーで付き合いやすいトゥヴォックが生まれた。このままでよいとするか、それとも元の厳格で面白味のない性格に戻るか、揺れ動く心がよく描かれている。傑作のひとつである。] 第6A−125回 (ヴァードワー族の男:Dragon's Teeth ) 総合評価 ★★★★★ (ストーリー ★★★★★) (人間の描写 ★★★★★) ヴォイジャーは突然、不思議な空間に入り込んだ。そこは、いわゆる亜空間スペースというもので、僅か5分間で1000光年も進んだ。その中にいたとき、トゥレイ族という種族がヴォイジャーに、「我々を乗船させ、その空間を飛んだときの記録を抹消させよ。」と言ってきた。ジェインウェイ艦長がこれを断ると、どこまでも追ってきた。船体に被害を受けたヴォイジャーがこれを修理しようと、とある放射能で汚染された星に着陸したところ、そこには900年前に核攻撃を受けて壊滅した都市があった。その地下にたくさんの冬眠ポットがあり、そこには異星人たちが眠っていた。セブンが、艦長の許可もなく、そのうちの1人を起こしてしまった。それはヴァードワーという種族で、「60億人もの人口を擁し、亜空間スペースを使って手広く交易を行っていた。それが、今や600人になってしまった。でも、種族を再興するために、どこか適当な星を見つけて移住したい。手助けしてくれれば、亜空間スペースの通り方を教えよう。」という。 生きている全員を冬眠ポットから起こしたヴァードワー族は、早速離陸の準備を始めた。その様子を見ていたチャコティは、「まるでギリシャ神話に出てくる竜の爪の兵隊のようだ。爪が皆、起き上がり、兵隊になって出てくる。」と表現した。一方、ニーリックスは、タラクシアの神話の中に、気になる表現や叙述を発見した。「ヴァードワー」とは、「馬鹿な、無謀な、無分別な」という意味であるし、どこからともなく現れて、全てを破壊し、かっさらって行ってしまうという話ばかりだ。セブンを経由して調べたボーグの情報もその通りだった。 そうして起こされた部隊の指揮官は、ヴァードワー族を再興するには、900年前の技術では他の種族に対抗できないので、ヴォイジャーを奪おうと計画していた。ヴォイジャーの上空には、トゥレイ族、地上にはヴァードワー族がいて、挟まれてしまった。飛び立つヴォイジャーを捕まえようと、ヴァードワー族の部隊が地上から上がってくる。そこでジェインウェイ艦長は、トゥレイ族と交渉して、からくも窮地を脱した。 [ 恩を仇で返すような話である。しかし、セブンが最初に目覚めさせたヴァードワーの男は、セブンを見て、妻のようだといい、最後はヴォイジャーを助けてくれた。そこに、一抹の光が見えるような話である。] 第6A−126回 (人類の最初の一歩:One Small Step ) 総合評価 ★★★★★ (ストーリー ★★★★★) (人間の描写 ★★★★★) 航行中のヴォイジャーの前に、大きな火の玉のようなものが亜空間から突然現れた。ヴォイジャーに近づいてくる。セブンはボーグ時代にこの電磁空間を経験しており、「電磁波に引き付けられるから、それを発するものを切ればよい。」と進言し、ヴォイジャーは危うくこれをかわした。その後、これは人類が2032年10月の火星探検で、火星の軌道上で当時のジョン・ケリー中尉の乗った司令船が行方不明になったときと同じ現象だとわかった。 デルタ・フライヤーのシールドを強化し、チャコティ、パリス、セブンの3人がこれに乗って、電磁空間の中に突入した。その中はオレンジ色で、岩石、金属、有機物などが取り込まれて浮遊していた。チャコティは、400年前にこの中に取り込まれたケリー中尉の司令船を探し当て、トラクター・ビームで引っ張りながら一緒に脱出しようとした。ところが、電磁空間が暗黒物資の小惑星と衝突したために、デルタ・フライヤーが大きな衝撃を受けエンジンがダウンしてしまった。その修理には長い時間かかるが、その間にこの電磁空間は、また亜空間に戻ってしまい、そうなるとデルタ・フライヤーは出られなくなってしまう。トレスが、400年前のその司令船の部品を使えばよいと思い付いた。そのためには、誰かが司令船に行かなければならない。セブンが行き、そこのケリー中尉の最後の記録を見て、遺体とともにヴォイジャーに持ち帰った。 [ 宇宙開拓の草創期のパイロットが遭難し、そのいまわの記録を見て、開拓者の苦難を思うというストーリーが核心で、涙なしには見られないエピソードである。] 第6B−127回 (セブンが紡ぎ出した疑惑:The Voyager Conspiracy ) 総合評価 ★★☆☆☆ (ストーリー ★★★☆☆) (人間の描写 ★★☆☆☆) ヴォイジャーは、重力の歪みを感知してその方に向かうと、そこには宇宙カタパルトがあった。それはテトリオンビームを発射して、カタパルトのように宇宙船を飛ばすもので、一気に5,000光年も飛ぶことができる。それを作っていた異星人は、機械の調整ができなくて、ヴォイジャーの助けを借りて直そうということになり、それでまず自分の宇宙船を飛ばし、もし成功すれば連絡するので、その装置を使ってもらって結構ということになった。 一方、セブンはアルコーブを改良してヴォイジャーのデータをもっと取り込もうとし、実行に移すが、データ量が多過ぎて頭の中で消化できなくなった。その結果、色々な出来事を無理につなぎあわせて怪しいストーリーを作り出すようになる。チャコティには、「この5年間は艦隊の指令を受けてジェインウェイ艦長がデルタ宇宙域を占領する計画を実行したもので、それにマキが巻き込まれた。」といい、ジェインウェイには、「チャコティを先頭にマキが反乱を起こす。」などと吹き込んだ。その結果、マキと艦隊の間の相互不信が再び芽生えてきた。 セブンが突然、デルタ・フライヤーに乗って飛び出し、突拍子もないことを言うに及んで、その不調に気づき、皆がやっと元の鞘に戻ることができた。 [ なるほど、色々な情報を繋ぎ合わせると、こういう解釈もできるのかなどど言っているうちは冗談の範囲内だが、それが本当に乗組員間の離反を招きかねないのなら、それは深刻な問題となる。そういう恐ろしさを秘めたエピソードである。] 第6B−128回 (バークレー大尉の通信計画:Pathfinder ) 総合評価 ★★★★★ (ストーリー ★★★★★) (人間の描写 ★★★★★) 地球の宇宙艦隊基地で働くレジナルド・バークレー大尉は、やや変わり者のエンジニアである。最近はヴォイジャーに熱を上げていて、直属の上司のハーキンス中佐から命じられた研究所での仕事もそこそこに、デルタ宇宙域にいるヴォイジャーと双方向の通信ができないかを研究していた。それは、人工的に極小の特異点つまりワームホールを作る方法で、通常なら何年も掛かって片道しかできない通信が、双方向で即時に可能になるものである。 バークレー大尉は、このアイデアをハーキンス中佐に話すが、そんなものはできないと、端からとりあってもらえない。大尉はこの中佐の態度に不満が募り、ヴォイジャーの艦内と乗組員を再現したホロデッキで束の間の安らぎを得るとともに、友人の艦隊カウンセラーであるデアナ・トロイのカウンセリングを受ける。そういうある日、ヴォイジャーの乗組員であるトム・パリスの父親、パリス提督の研究所視察があった。その際、ハーキンス中佐に事前に止められているにもかかわらず、提督に自分の通信の研究内容を話してしまい、ハーキンス中佐の不興をかう。そして、研究所への出入りとホロデッキの使用を禁止されてしまった。 諦めきれないバークレー大尉は、パリス提督に直訴して、自分の通信計画を手渡し、艦隊本部に検討してもらうことになった。ところが、大尉はどうしても自分自身が試験をしたくて、艦隊本部の研究所に無断で入り、通信基地を立ち上げ、極小のワームホールを作った。それを通じて「こちら宇宙艦隊本部のレジナルド・バークレー大尉。ヴォイジャー、応答せよ。」というメッセージを送ったのである。それがハーキンス中佐に見つかり、大尉はホログラムのヴォイジャー艦内で、保安要員に追われるようになった。 大尉が捕まったところで、パリス提督が「検討させたら、この計画には可能性があると出た。」と言いながら駆け込んで来た。中佐が「残念ながら、失敗しました。」と答え、提督が落胆したところに、ヴォイジャーのジェインウェイ艦長から返信が入った。一同は驚く。ジェインウェイ艦長からは、「艦隊日誌や乗組員のレポートを送る。」、バークレー大尉からは、「この通信方法の技術を送るから、これからは定期的に連絡できるようになる。」という交信の後、提督から「息子を誇りに思う」との発言があり、ヴォイジャー内では、ジェインウェイ艦長がそっとトム・パリスの肩を抱いた。 [ 良いエピソードである。天才と変わり者とは紙一重で、普通の人間には天才のすることは決して理解できないという事例の典型である。これを見て、日本のセーレンという会社のことを思い出した。 いささか長くなるが、創業120年という地元では名門の福井精練加工という会社に入った川田達男氏は、入社早々、この会社には未来がないと感じた。というのは原糸メーカーのいいなりにその注文の色や柄に染めて加工賃をもらうだけのビジネスだったからである。川田氏は最終製品を作らなければダメだと訴えたら、会社の上層部に疎まれて、エリートコースから外れて同期の中で1人だけ、工場勤務となった。これでもう、サラリーマン生活は終わったも同然だった。ところが、この勤務で工場の内容に詳しくなり、しかも後々の仲間もできた。その後も同じことを訴え続けたが、どこでも既存のビジネスに終着する上司に左遷され、行き着いたのが、窓際族の営業開発である。 そこで川田氏は、自動車のシート用に合繊を使えないかというアイデアが浮かんだ。しかし例の通り、上司や会社の上層部は全員反対である。それでも川田氏は諦めず、元の工場仲間と夜間に密かに工場を動かして、合繊で自動車のシートのサンプルを作った。それを自動車メーカーに出荷したところ好評で、会社の売上げの多くを占めるまでになった。そして川田氏は社長となり、その後もチャレンジ精神を失わずに、カネボウの繊維部門を買収したりして、頑張っている。この「夜間に密かに工場を動かして」というところが、バークレー大尉と全く同じなのは、とても面白い。] 第6B−129回 (フェア・ヘブンの恋人: Fair Haven ) 総合評価 ★★★☆☆ (ストーリー ★★★☆☆) (人間の描写 ★★★★☆) ヴォイジャーは中性子の嵐に巻き込まれ、それを抜けるのに数日かかるものと見込まれた。トム・パリスは、ホロデッキにアイルランドの田舎町「フェア・ヘブン」を再現し、乗組員の皆に公開した。そこは、実に居心地の良いところで、ジェインウェイ艦長を始め、乗組員は気に入った。特にジェインウェイは、その町のバーの店主が気に入り、愛情すら抱く。その性格や容姿に関するプログラムを自分の好みに合わせて変更し、その妻までも消去してしまう。そして、これは単なるホログラムのキャラクターなのに、深く愛しすぎていることに気づき、自制する。 [ 艦長という立場にある艦内では交際相手を見つけられないことから、自ずと恋の対象をホログラムに求めてしまったジェインウェイの揺れる心の内を表している。] 第6B−130回 (瞬きする間に:Blink of an Eye ) 総合評価 ★★★★★ (ストーリー ★★★★★) (人間の描写 ★★★★★) ヴォイジャーは航行中にある惑星の引力に捕らえられ、軌道を離れられなくなった。その惑星では、ヴォイジャーの出現以来、月6回の頻度で地震が起きていて、その原因はヴォイジャーだと考えられていたが、同時に神のような存在にもなっていた。この惑星では時間が何千倍もの速さで流れており、ヴォイジャーの1秒が地上の1日に相当していた。ヴォイジャーでは脱出方法を探るため、時間の流れの影響を受けないドクターを地上に送って調査をさせた。 やがて惑星の科学技術が進歩し、ヴォイジャーに宇宙飛行士が来るようになった。そのうちの1人と話をしているうちに、地上から最新兵器で攻撃され始め、シールドが持たなくなった。そこで、ヴォイジャーに来ていた宇宙飛行士にいったん帰ってもらい、脱出方法を相談してもらうことにした。彼は地上へと帰還し、その地上では1年半後に、ヴォイジャーまで2機の宇宙船を派遣して、トラクター・ビームで引っ張り、無事にヴォイジャーを引力圏から脱出させた。 [ ヴォイジャーより数千倍もの速さで時間が流れている星の物語で、原始時代から産業革命を経てあっという間にワープ時代を迎えた。このままで行くと、どうなってしまうのだろうと心配するほどの文明の進歩をテーマにしており、色々と考えさせられる。ジェインウェイ艦長と宇宙飛行士とのやり取りが、心に残った。私の好きなエピソードのひとつである。] 第6C−131回 (ドクターはオペラ歌手:Virtuoso ) 総合評価 ★★★★★ (ストーリー ★★★★★) (人間の描写 ★★★★★) ヴォイジャーはコーマー星に差し掛かり、コーマー人を船に招待してドクターのオペラの歌声を聴かせたところ、大いに歓迎された。彼らは、そもそも音楽というものを知らなかったからである。自らの星は科学技術が進んでいて、他の種族を見下す傾向にあるコーマー人にしては実に異例なことに、ヴォイジャーの乗組員をコーマー星に招待してくれた。目的は、ドクターにリサイタルを開かせるためである。そこでドクターは大観衆を前にしてオペラを歌い、大きな喝采を浴びた。ヴォイジャーには多くのファンが押し掛け、ドクターは一躍有名人になった。それだけでなく、ドクターの世話役の女性からは、「あなたと一緒に過ごしたこの数日間は、一生の中で一番幸せだった。あなたは、ヴォイジャーでは余り正当な扱いを受けていない。そういうところで僅か150人の乗組員の世話をするより、このコーマー星で何百万人の人を音楽で幸せにする方がいい。是非残ってほしい。」とまで言われた。 ドクターは、艦長に辞任届を提出した。艦長は引き止めたが、友人としては引き止めることはできないとして、その自由に任せた。ドクターの世話役の女性は、ドクターの歌声からインスピレーションを得て、作曲をしたが、それは音域が広すぎて、とてもドクターが歌えるものではなかった。ドクターは、ヴォイジャーの乗組員に別れを告げた。その時、ドクターの世話役の女性から連絡があり、行ってみると、ドクターのコピーを作り、全ての音域を歌えるようにしたというものだった。しかもそれが歌うものは、オペラなどとは全く違うものである。その女性は、「これがあれば、あなたはヴォイジャーでの勤務を続けることができる。」といい、ドクターはがっかりした。 その翌日、コーマー星でのリサイタルに臨んだドクターは、失恋の歌を心を込めて歌い、ジェインウェイ艦長が涙目になるほどだったが、コーマー人には今一つ分からないようだった。それに対し、次に歌ったドクターのコピーの歌は、地球人の感覚ではとても歌とはいえないものだったが、コーマー人には大いに受けた。ドクターはがっかりしてヴォイジャーに戻り、復職願いを出す。 [ 人気というものは移ろいやすいものだが、それにしても、ドクターの勘違いには笑えてくる。しかし、人生について、ふと、考えさせられるエピソードである。] 第6C−132回 (虐殺の記憶:Memorial ) 総合評価 ★★☆☆☆ (ストーリー ★★☆☆☆) (人間の描写 ★★☆☆☆) ある星系で2週間の派遣ミッションに出たチャコティ、パリス、キム、ニーリックスの4人は、ヴォイジャーに帰ってきたところ、いずれも異星人間の戦闘に参加して民間人を大勢殺した悪夢を見た。その原因を探ろうとしていたとき、ジェインウェイ艦長自身も同じリアルな夢を見て、それが乗組員に広がっていった。 その原因を探るためヴォイジャーが星系を探したところ、ある無人の惑星を見つけた。それは、300年前の虐殺の跡で、中心に塔を建て、そこから星系全体に神経エネルギーを送って、通る宇宙船に虐殺を体験させるための施設だった。これを破壊すべきか乗組員間で意見が分かれたが、ジェインウェイ艦長の判断で、あと300年は持つようにエネルギーを補充し、軌道上に注意のブイを置くことにした。 [ 忘れてはいけない虐殺の記憶を、こうした形で残しておくことにした。賛否が分かれるところだろう。艦長の考えにも、確かに一理ある。] 第6C−133回 (奴隷戦士セブン:Tsunkatse ) 総合評価 ★★★★★ (ストーリー ★★★★★) (人間の描写 ★★★★★) ある星系でヴォイジャーの乗組員は休暇を取っていた。そこは、海岸が美しく、観光名所が多い。チャコティ、トレス、パリス、ニーリックスは、ツンカッツェという格闘技を観戦して興奮していた。ところが、セブンとトゥヴォックは、シャトルで星雲の調査に出かけた。2人とも、休暇を楽しむような趣味があまりなかったからである。ところが、2人のシャトルは何者かに襲われ、トゥヴォックはかなりの深手を負った。 セブンが気が付いてみると、そこはツンカッツェの競技船の中で、他に色々な種族の競技者がいた。側には、負傷したトゥヴォックが横たわっている。管理者がやってきて、セブンがツンカッツェの試合に出るなら、トゥヴォックを治療しようと言う。セブンはやむなく試合に出たが、最後のひと突きを躊躇ったことから、負けてしまった。一方、その試合を見ていたチャコティは、セブンが試合に出ていたので驚き、そこから転送しようとしたが、それはホログラムで、本当の競技者は別の場所にいることがわかったが、それがどこかわからない。ニーリックスは現地の当局に協力を要請するが、ツンカッツェからの収入に依存しているので、協力はあまり期待できない。 一方、ツンカッツェ船内に囚われているセブンは、同じ競技者のヒロージェン人のチャンピオンから親切にしてもらって、訓練を受け、競技の技術や闘いの心構えを教えてもらった。そのヒロージェン人は、もう10年以上もここにいると言っていた。管理者がやってきて、セブンのようなボーグは嫌われ者だから、それがやられるのを見たいというファンからの要望が殺到しているという。そして次は、レッドマッチ、つまり死ぬまでやる試合に出ろと言ってきた。試合に出ると、その相手は親切にしてくれたそのヒロージェン人だった。試合が始まり、一進一退の攻防が続く。しかし、セブンが勝り、怒りに任せて最後のとどめを刺そうと両手を挙げた。 その頃、ヴォイジャーはそのツンカッツェ船を発見して攻撃しようとしたが、重武装の船で、ヴォイジャーでも攻略は容易でない。それでも、転送しようと苦戦中に、休暇に出ていたジェインウェイ艦長のデルタ・フライヤーが帰ってきて、その援護でセブンたちを転送するのに成功した。セブンは、倒れたヒロージェン人に手を挙げたままの姿で、2人一緒にヴォイジャーまで転送された。 セブンは、後からトゥヴォックに礼を言われて、「ボーグから人間に戻って3年間、ひたすら人間性を取り戻そうと努力してきたが、最後の瞬間、怒りに任せてヒロージェン人を殺すところだった。恥ずかしく、後悔している。」と語る。トゥヴォックは、「それが人間性というものだ。」と言う。ヒロージェン人は、仲間の元へと戻り、昔、このツンカッツェ船に捕まったために生き別れた息子を探すそうだ。 [ まるで古代ローマの奴隷戦士を思い浮かべるような話である。セブンがだんだん戦士に仕立てられていく様子、その華麗な格闘の技、最後に人間性について煩悶するところなど、非常に良いエピソードである。それにしても、セブンの選手姿は、なかなか堂に入っていた。] 第6C−134回 (ボーグの子供たち:Collective ) 総合評価 ★★★☆☆ (ストーリー ★★★☆☆) (人間の描写 ★★★★☆) デルタ・フライヤーで任務に出たチャコティ、パリス、ニーリックス、キムの4人は、突然現れたボーグ・キューブに驚いた。攻撃を受け、キムが破損個所を修理中に気を失った。ボーグ・キューブの中に取り込まれたデルタ・フライヤーからチャコティ、パリス、ニーリックスが同化室に入れられるが、そこには同化に失敗した死体があった。ヴォイジャーが後を追って行くと、通常であれば5,000人が乗船しているはずの船に、5人の、しかも子供しか乗っていなかった。 その子供のリーダーと、ヴォイジャーの重要な部品であるデフレクターと引き換えに人質を返すという合意が成立した。それで、集合体とのリンクを再度繋げるつもりらしい。セブンが交渉役にボーグ・キューブの中に送られた。子供のリーダーは猜疑心が強く、セブンをなかなか信じようとしない。他の子供たちは、次第にセブンに心を開いていく。ヴォイジャーのドクターの調査で、成人のボーグが全員死亡した原因は、人工のウィルスを撒かれたことによるものと判明した。 取り込まれたデルタ・フライヤーの中で気が付いたキムは、転送を邪魔しているシールド発生装置にプラズマ爆弾を仕掛けようとした時に、ボーグの子供に発見され、同化されかけた。それに逆上したボーグの子供のリーダーは、機器に触っているときにエネルギー・サージを受けて死んでしまう。 ヴォイジャーの乗組員とボーグの残り4人の子供たちは、無事に帰ってきた。ジェインウェイ艦長は、セブンにボーグの子供たちの世話を頼んだ。 [ ボーグの未熟な子供たちは、何をするかわからない。それを相手に、ジェインウェイ艦長とセブンが粘り強く交渉と説得を続けた結果、4人の子供たちと1人の赤ちゃんの命を助けることができた。] 第6D−135回 (フェア・ヘブン住民の反乱:Spirit Folk ) 総合評価 ★★☆☆☆ (ストーリー ★★★☆☆) (人間の描写 ★★☆☆☆) トム・パリスがホログラムとして作ったアイルランドの田舎町フェア・ヘブンは、クルーの憩いの場として、24時間の運転をしていた。ところが住民らは、パリスが住民のマギーを突然、牛に変えるいたずらを目撃したことから、パリスたちが悪魔の精霊ではないかと疑い始めた。住民たちは、「そういえばあの連中といると、一瞬で消えたり、子供を井戸から一瞬のうちに救ったり、おかしなことが多い。」と言い出し、ますます疑念を深めていった。そこで住民たちは、サリバンのパブ店に乱入して、パリス、キムを捕らえて店の椅子に縛り付けた。話し合いに向かったドクターも縛られた。同時に、店にあったホロデッキのコントロールパネルを破壊してしまった。これで、安全装置が外れ、登場人物も消せなくなった。 ヴォイジャーでは、登場人物を全て消すという強行手段をとる者もいたが、そうするとこれまで培ってきたヴォイジャーの乗組員とフェア・ヘブン住民との人間関係が全てなくなってしまう。ジェインウェイ艦長は、他の手段を考えるが、すぐには思い付かない。そうこうするうちに、ドクターを転送するつもりで、誤ってパブ店主のサリバンをヴォイジャーをヴォイジャーのブリッジに転送してしまった。サリバンはジェインウェイ艦長と親しい。艦長は、全てを話すとともに、サリバンの協力を求めた。艦長とサリバンはフェア・ヘブンに戻り、住民たちを説得した。それが奏功し、フェア・ヘブンは、元に戻った。 [ なかなか面白いストーリーで、なるほどあり得る展開だと思うが、最後の収束の過程が、やや甘さがあって、あまりに楽観的で、説得力がないと思われるのが残念である。] 第6D−136回 (戻って来たリンジー・バラード:Ashes to Ashes ) 総合評価 ★☆☆☆☆ (ストーリー ★★☆☆☆) (人間の描写 ★☆☆☆☆) 突然現れた異星人のシャトルから連絡が入り、「自分はリンジー・バラード」だといい、ヴォイジャーの乗組員のことを実によく知っている。確かに同名の乗組員がいたが、もう3年前に任務中に死亡し、遺体は宇宙に流された。その人物がヴォイジャーに来ると、コバリ人の顔をしており、元のリンジー・バラードとは似ても似つかない人だった。その説明によれば、コバリ人が死体を回収し、コバリ人として再生したという。ドクターが検査したところ、確かにリンジー・バラードのDNAと一致しているが、もうコバリ人の細胞になっていると診断した。そして、外見は地球人にできるが、中身はコバリ人のままだという。 外見は地球人に戻ったリンジー・バラードは、機関室で勤務したり、艦長からディナーに招待されるが、突然コバリ語で話したり、どこか馴染めないでいる。親しいハリー・キムが仲を戻そうとするが、あまり嬉しそうでもない。そのうち、コバリ船で父親という人物が現れ、娘のリンジー・バラードを引き戻そうとする。ジェインウェイ艦長が断ると、今度は仲間の船を連れてきて、ヴォイジャーを攻撃し始めた。ヴォイジャーが危なくなったとき、リンジー・バラードは自主的にコバリに帰るといい、去っていった。 [ 要するに、死人が生き返って帰ってきたが、馴染めないので、また帰っていったという話である。ハリー・キムが再び失恋してしまった。] 第6D−137回 (ボーグの子供イチェブの運命:Child's Play ) 総合評価 ★★★★☆ (ストーリー ★★★★☆) (人間の描写 ★★★★★) ボーグ艦から救われた4人の子供たちは、セブンの指導もあり、年長のイチェブを始めとして、ヴォイジャーによく馴染んできた。中でもイチェブは、ヴォイジャーが早く地球に帰れるようにとワームホールの探索装置を考案するなど、大人も驚く優秀な子供だった。そういうある日、イチェブの両親が判明し、ヴォイジャーはその星に向かった。その星は、ボーグの通路に近く、何回もボーグに襲われた形跡がある。今や農業で何とか食いつなぐのが、やっとの有り様だった。イチェブを両親の元に送り届けたが、あまりの貧弱な様子に、イチェブはこの星に居たくないという。セブンも内心は手放したくない。ジェインウェイ艦長は、子供は両親の元に返すべきだと思って、イチェブを両親の村で一晩過ごさせるなどしたことから、イチェブの心は両親の元へと傾き、ついにヴォイジャーを降りて、両親を手伝うことにした。 イチェブが去った後、セブンは奇妙なことに気付いた。イチェブの父親が言っていたボーグに同化された状況は、4年前に村でということだったが、ボーグの記録では、4年前に村を襲ったことはなく、イチェブは輸送船内で同化されたのである。ヴォイジャー内でその原因を探っていた頃、村ではイチェブの両親が言い争っていた。父親は「この子はもう役割を果たしたのだから、もうよいではないか。」と言い、それに対して母親は「それがこの子の運命だから、もう一度やってもらう。」と言う。母親は、帰ってきたイチェブを気絶させた。 ヴォイジャーがその星に戻り、両親を問い詰めるが、「お前たちには関係がない。」と言う。イチェブの現在地を探ると、ボーグの通路に向かっている輸送船の中である。ヴォイジャーは、ボーグ艦に吸い込まれる直前にイチェブを救出した。ヴォイジャーで検査すると、イチェブのDNAが書き換えられており、イチェブ自身がボーグを殺すウィルスを生み出していることがわかった。つまりイチェブの両親は、イチェブをボーグ対策の人間生物兵器として利用したのである。ヴォイジャーの天体ラボで、イチェブがセブンに聞く。「自分は、ボーグ対策兵器になるのが、その運命だったのだろうか。」、セブンは、「いや、お前は個人なのだから、少なくともお前の意思を尊重すべきだ。」と答えた。 [ 両親が自分の子供を、いかにボーグ対策とはいえ、2度も生物兵器として使い捨てにするという悲しい話である。] 第6D−138回 (勤務評価が最悪の士官たち:Good Shepherd ) 総合評価 ★★★☆☆ (ストーリー ★★★☆☆) (人間の描写 ★★★☆☆) ヴォイジャー内で勤務評価が最悪の者が3人いた。1人目は間違いばかりして本人も自信を喪失している女性士官、2人目はいつも体調が良くないと信じ込んで健診を繰り返している男性士官、3人目は最下部の第16デッキで1人でこもって天文学の理論を解いて他人と交わらないでいる男性士官である。これら3人は、これまで船外任務に出たことがない。ジェインウェイ艦長は、この3人を鍛えようと、自分が操縦するデルタ・フライヤーに乗せて、星雲の探査に出かけた。48時間の予定である。 星雲に近づいた頃、デルタ・フライヤーが何かにぶつかった。外壁の一部が剥がれてしまったのである。天文学士官は暗黒物質だろうというが、自信喪失士官の発案で剥がれた外壁を回収してみると、そうではない。デルタ・フライヤーが何者かに襲われて緊急事態を迎える中、3人はパニックにおちいる。ジェインウェイ艦長はそれを励ましながら、事態を乗り切ろうとしたとき、健診士官が突然消えて、また戻ってきた。ところが彼の身体には大きな虫のようなものが入っており、それが出てきて操縦パネルを操作し始めた。ジェインウェイは、ファーストコンタクトの機会だと思ったが、怖くなった天文学士官がそれを撃ち殺してしまった。 大きな虫が出ていった健診士官は正気を取り戻し、「彼らは、『近付くな』と言っていた。」という。ところが、デルタフライヤーは、燃料がなくて土星状のガス惑星に落ちていく。ジェインウェイは、大気中のプラズマを取り込んで燃料にしようとするが、たくさんの異星人が追ってくる。そこで、フェイザーで大気を燃やし、その爆発力で逃れようとする。3人もそれぞれの持ち場で頑張り、難を逃れた。ヴォイジャーに帰った3人は、それぞれにたくましくなっていた。 [ どこの組織でも、こういうタイプの人たちがいるものだが、ジェインウェイ艦長はそれらを粘り強く指導している。見習わなければならない。] 第6E−139回 (宇宙の詐欺師:Live Fast and Prosper) 総合評価 ★★★☆☆ (ストーリー ★★★☆☆) (人間の描写 ★★★☆☆) ある鉱山にジェインウェイ艦長、トゥヴォックを語るグループが現れ、ダイリチウムと交換すると騙して鉱物を手に入れた。本物のヴォイジャーが通りかかった時、騙された鉱山の責任者がヴォイジャーに怒鳴り込んできた。これによってジェインウェイ艦長らは、ヴォイジャーを名乗る詐欺師の一団がいることを知った。何か怪しいことがなかったかと振り返ると、ニーリックスたちがある星に降りた時、孤児を救う活動をしているというシスターたちをデルタフライヤーに招いたことがあった。つい気を許している隙に、ヴォイジャーの情報が抜き取られたらしい。 ヴォイジャーは、その詐欺師ダーラの一団の船を追っていた。すると、ダーラたちがまた別の船を連邦に加入させると言って加入料を詐取してトラブルになっている場面に出会った。そこから詐欺師の3人を転送しようとしたが、ジェインウェイ艦長を騙る偽艦長しか捕まえられなかった。その偽艦長を拘束して、盗んだ物とその場所を言わせようとしたが、言わない。 ニーリックスが偽艦長に食べ物を持っていったときに、偽艦長が脱走して、デルタ・フライヤーに乗り込んだ。そして、仲間のところへと逃げていった。ところが、デルタ・フライヤーの中にパリスとドクターが隠れていて、ドクターが偽艦長に扮して盗品を隠している場所から転送させ、一味を捕まえた。その後、ヴォイジャーは、盗品を被害者に返した。 [ 宇宙にヴォイジャーを騙る詐欺師が出るとは思わなかった。それにしても、偽艦長、偽トゥヴォックは、よく演じていた。肩の凝らない面白いエピソードである。] 第6E−140回 (劇の主役はトレス:Muse ) 総合評価 ★★☆☆☆ (ストーリー ★★☆☆☆) (人間の描写 ★★☆☆☆) 船外任務にベラナ・トレスとハリー・キムが出かけたが、乗っていたデルタ・フライヤーが大きく損傷した。キムはポッドで脱出し、ベラナはデルタ・フライヤーとともに墜落した。ベラナが気が付いてみると、そこは紀元前のギリシャのような世界で、青銅器時代であった。そこへ詩人で脚本家の男が現れ、ベラナとヴォイジャーの通信から着想を得て、領主の前で劇を演じていたが、良いアイデアが湧かない。次の劇の脚本を書かなければならない。ベラナの協力を得たいが、ベラナは通信の再開に忙しい。 それでもベラナとの会話でヒントを得た脚本家は、領主に見せるその日に、最後の場面だけを残して書き上げ、トレスに監修を依頼する。ちょうどそのとき、領主は近隣の領主と抗争中で、再び戦争を起こそうとしていた。最初の脚本通りだと、上手くいかないと感じたので、ジェインウェイ艦長がボーグ・クイーンを殺す寸前までいくが、これを許して戦いを止めるということにした。脚本家に請われて、ベラナもそれに参加し、芝居のクライマックスで、転送して去った。 [ ヴォイジャーの乗組員がギリシャ劇の主役になったようなもので、妙な感じのエピソードである。やや消化不良の感がある。] 第6E−141回 (戻ってきたケスの怒り:Fury ) 総合評価 ★☆☆☆☆ (ストーリー ★☆☆☆☆) (人間の描写 ★★☆☆☆) ヴォイジャーの前に小型船が現れ、年老いたケスが乗っていて、乗船許可を求めていた。小型船はそのまま衝突し、ケスは転送されて乗船した。ところが、ケスは乗船後、第11デッキを破壊し、機関室でトレスを殺害し、ワープコアに近づいてエネルギーを吸収して去った。ケスはタイムトラベルをして3年前のヴォイジャーに戻り、そのときのケスを失神させて隠した。そして、ちょうどその時、他の種族の内臓をとるヴィディア人の船に、ヴォイジャーの航路と戦術情報を教えた。 ヴォイジャーの乗組員のうち、トゥヴォックだけが、何か不自然なものを感じ、将来の姿を見た。ヴィディア人が攻撃してくる中、ジェインウェイ艦長は、2人のケスがいる野菜栽培室に向かい、年老いたケスと対決する。ケスは、ジェインウェイ艦長と乗組員のために、このような異常な姿になってしまったと恨み、その復讐に来たのだと分かった。話し合いは決裂し、ジェインウェイはケスを射殺した。そのときのケスに、協力を頼み、これは3人だけの秘密とした。 それから3年後、ヴォイジャーにケスが現れた場面から、再び始まる。機関室から全員を退避させて、ジェインウェイはトゥヴォックとともに機関室に行き、3年前のケスのホログラムに、「これだけお世話になったヴォイジャーの人たちに、恩を仇で返すようなことは、しないで。」と言わせた。ようやく自分のしていることに気が付いたケスは、納得してヴォイジャーを去った。 [ あたかも亡霊が現れたような気分になる恐ろしいエピソードである。] 第6E−142回 (ドクターの生みの親:Life Line ) 総合評価 ★★★☆☆ (ストーリー ★★★☆☆) (人間の描写 ★★★★☆) ヴォイジャーと艦隊本部との通信が、月に1回だけだが、バークレー大尉のパスファンダー計画で確立された。それでドクターは、自分のプログラムの生みの親であるルイス・ジマーマン博士が、木星基地で重病の状態にあることを知らされた。地球の医者は、誰にも治せないという。ドクターは、ボーグ技術の応用などの自分のデルタ宇宙域での経験を生かせば治せると考えた。そこでドクターは、他の通信後回しにするようジェインウェイ艦長に頼み込み、博士の命を救うために、アルファ宇宙域へ転送された。 木星基地に着いたドクターは、ジマーマン博士にさぞかし歓迎されると思っていたが、それどころか口喧嘩となり、治療にも入れない。バークレー大尉はほとほと困って、カウンセラーのディアナ・トロイを呼んで仲裁を頼むが、うまくいかない。ドクターは、ジマーマン博士が最初に作った緊急医療用ホログラム(EMHマーク1)だが、艦隊本部の受けが悪くて675体全部が返品され、鉱山労働やプラズマ管清掃の業務を行っている。博士はそれが屈辱的に思い、ドクターを見ただけで喧嘩腰になっていたことがわかった。 その一方、今度はドクター自身のプログラムが劣化してきた。バークレー大尉には治せないので、ジマーマン博士の手を借りることになった。博士はプログラムを見ていくうちに、ドクターが進歩していることに気づき、ようやくドクターを認めるようになった。博士はドクターの治療を受け、治るめどがついた。2人は和解して、ドクターはヴォイジャーに帰っていった。 [ まるで親子喧嘩のようなものだが、その喧嘩の理由も、マーク1が欠陥品だと博士が思い込んでいるところにあるとわかったあたりから、話が急展開する。人情の機微が窺える良いエピソードである。] 第6F−143回 (第12デッキの怪:The Haunting of Deck Twelve ) 総合評価 ★☆☆☆☆ (ストーリー ★★☆☆☆) (人間の描写 ★☆☆☆☆) ヴォイジャーは数時間、全艦を停電することになった。ニーリックスは、ボーグの子供たちの世話をセブンに頼まれたので、ボーグの再生室のある貨物室で、ランタンを点けて次のようなお話をした。 「ある日、ヴォイジャーが色鮮やかな星雲に入ったときのこと、艦内で多くの異変が起こった。ターボリフトがおかしくなり、星雲内の大気が船に侵入し、最後は船の操縦や生命維持装置まで、何者かにコントロールを奪われた。ヴォイジャーが星雲を通過していたときに、不思議な生命体に侵入され、彼らに乗っ取られたようだ。ジェインウェイ艦長は、ヴォイジャーの音声を通じて彼らと交渉し、元いた星雲に戻ろうとしたが、既に星雲は消滅していた。生命体は怒り、ヴォイジャー全員を脱出させようとしたが、ジェインウェイ艦長だけは残り、生命体と交渉する。決裂寸前でこのままだと共倒れという段階で、ようやく合意に至った。それ以来、生命体は第12デッキの特定のセクションに囲われて、住めるような星雲に来たときに、放出することになった。」 そのようにボーグの子供たちに説明し終わった時、ヴォイジャーの停電が終わって照明が点いた。ニーリックスは、「今の話は、皆、嘘だよ。」というと、子供たちは、「そうだろうと思った。」といい、再生を開始した。それからニーリックスがブリッジに向かい、「準備は?」と聞いたとき、スクリーンには、色鮮やかな星雲が映っていた。 [ 嘘の話をさぞ本当のように話すのが夏の夜の怪談話だが、まさにそのようなエピソードである。] 第6F−144回 (ユニマトリックス・ゼロ 前編:Unimatrix Zero, Part I ) 総合評価 ★★★★★ (ストーリー ★★★★★) (人間の描写 ★★★★★) ある日、再生中にセブンは美しい森の中にいる夢を見た。それが実にリアルなのである。不思議に思ったセブンは、それが何かを探ると、驚くべきことを発見した。それはユニマトリックス・ゼロといい、ドローンは本来なら集合体に所属して個人の自意識を一切持たないはずであるが、 100万体に1体の割合でいる特定の突然変異の個体だけは、再生中の間にだけ、自意識を持つことができ、その時はここに集うという秘密の場所なのであった。ところが、再生が終了すると、その記憶は保持できなくなるというもので、いわば、ボーグ・ドローンの隠れた息抜きの場である。 ジェインウェイ艦長は、トゥヴォックの精神融合を利用して、セブンの意識の中に入り込み、ユニマトリックス・ゼロ に行ってみた。すると、その「住人」であるドローンたちから、助けてほしいと頼まれた。ジェインウェイ艦長は、自分がボーグ艦内の中枢部に乗り込み、その通信装置経由で、ドローンが集合体下でも自意識を持てるウィルスを、ボーグ全体にばら撒くことにした。下手をすれば同化されるという極めて危険な任務だが、トゥヴォックとベラナが同行を志願した。 ボーグ・クイーンが、ユニマトリックス・ゼロを観察していたとき、ジェインウェイ艦長がいるのを見つけた。クイーンは、ヴォイジャーに直接連絡をし、早く地球に帰ることができるようにトランスワープ技術を提供するから、ヴォイジャーはユニマトリックス・ゼロには関与しないようにという交換条件を出してきた。ジェインウェイ艦長は、ボーグの弱点かもしれないと考え、これを断った。そして、手近にいるボーグ艦を探し、3人でこれに乗り込んだが、捕まって同化されてしまった。ボーグ・クイーンは、「ジェインウェイ、お前はもう少しずる賢いと思ったが、何と無謀な・・・」という感想を発した。 [ ジェインウェイが、勇敢というか無謀というか、ここまでやるとは思わなかった。これからどうなるか、先が読めない。セブンの恋物語も重なって、見応えのあるエピソードである。] 宇宙船ヴォイジャー【第7シーズン】 第7@−145回 (ユニマトリックス・ゼロ 後編:Unimatrix Zero, Part U ) 総合評価 ★★★★★ (ストーリー ★★★★★) (人間の描写 ★★★★★) ボーグ艦内に侵入したジェインウェイ、トゥヴォック、トレスは、同化の影響と戦いながら、艦内の中枢部にある通信装置までたどり着き、ドローンが集合体下でも自意識を持てるウィルスをばら撒いた。脱出しようとすると、同化抑制剤の効果が消えたトゥヴォックがジェインウェイを倒し、彼女はボーグに捕まった。そのままホログラム装置に入れられ、ホログラムの形でボーグ・クイーンと相対した。ボーグ・クイーンは、たとえ11万人のドローンが乗っている船に1人でも自意識を持つドローンがいれば、船全体を自爆させるという破れかぶれの戦術に出た。ジェインウェイが、問題のウィルスの効果を打ち消すワクチンを提供しなければ、これを続けると脅す。ジェインウェイが断ると、今度は自分がユニマトリックス・ゼロに行き、自ら自意識を持つドローンを殺すという。 ジェインウェイ艦長のホログラムのイメージがヴォイジャーに現れて、同じようなことを言うが、チャコティはボーグ・クイーンに先回りしてユニマトリックス・ゼロを破壊してしまう。後は、自意識を持つドローンがそれぞれのボーグ艦内でゲリラ戦を展開すれば良いという考えである。セブンは、破壊される直前のユニマトリックス・ゼロに行き、元恋人のラクサムに会うが、彼は銀河の反対側のベータ宇宙域にいるので、現実世界で会うのは、まず望みがない。 ジェインウェイ艦長らを回収するため、ヴォイジャーは再びボーグ艦に近づいていくと、前回と違って今度は、自己を持つドローンのボーグ艦が援護してくれた。これは、ドローンでも自意識が持てるウィルスの効果である。これによって、無事に3人はヴォイジャーに帰ってくることができた。 [ 活劇シーンが続き、これからどうなるのかと途中で筋が気になり、面白いエピソードである。それにしても、ジェインウェイ艦長のボーグ姿は、なかなか怖かった。] 第7@−146回 (セブンの神経結節部品:Imperfection ) 総合評価 ★★★★★ (ストーリー ★★★★★) (人間の描写 ★★★★★) セブンが食堂で倒れてしまった。頭の中に入っている神経結節点というボーグの重要な部品に不具合があるようだ。このまま放っておくと、命に関わる。ジェインウェイ艦長は、セブンの命を救うために、ボーグ艦に行ってドローンから神経結節部品を回収することにした。近くに破壊されたボーグ艦が見つかったので、そこへ乗り込んでドローンの死体からそれを回収しようとしたところ、邪魔する異星人が現れたが、振り切って帰ってきた。 その回収した神経結節部品をセブンに移植しようとして事前のシミュレーションを12回も繰り返したが、いずれも失敗した。停止していた期間が長すぎたらしい。こうなると、生きているドローンから取り出すしかない。それは、なかなかできるものではないのは、皆が分かっている。手詰まりの状態に陥った。セブンは、死ぬことを心配し始めた。「ボーグの集合体にいたときは、たとえ死んでも、その人の記憶、知識、経験は、集合体の中で永久に受け継がれる。ところが、個人になった今は、そうではない。死んだらそれで終わりだ。」と。しかしジェインウェイ艦長は、「セブンに関する記憶は、乗組員の皆に受け継がれる。」と言う。セブンが「集合体から切り離された後、完全な個人になろうとしたが、まだまだ不完全だ。」というと、艦長は「いや、あなたほど努力して成果が上がった人はいない。」と慰める。 そうこうしているうち、セブンの弟のようなイチェブが、驚くべき提案をする。「私はまだ子供のうちにボーグに同化されたので、ボーグの神経結節部品にはそれほど依存していない。これをセブンに移植しても86.9%の確率で成功するし、自分も神経結節部品なしで体が適応する。」と。セブンは、イチェブに危険があるとして、申し出を断る。ところがイチェブは、自分で神経結節部品を外してしまい、セブンが移植を受けざるを得ないようにしてしまった。移植してから6日後、セブンは回復した。イチェブの回復にはもう少しかかるが、彼を見るセブンの眼には、涙が溢れてきた。 [ セブンの命を救うために、皆が一生懸命に努力しているが、上手くいかない。もう望みが消えかかっていたとき、ボーグの子供だったイチェブが、自分の身を犠牲にする驚くべき提案をする。それは危険だとして皆が止めたが、イチェブは自らの身体を犠牲にして、セブンを救おうとした。感動的な話である。イチェブについては、第6Dー137回を参照。] 第7@−147回 (命懸けのレース:Drive ) 総合評価 ★★☆☆☆ (ストーリー ★★☆☆☆) (人間の描写 ★★☆☆☆) デルタ・フライヤーで飛んでいたパリスとキムは、異星人パイロットのイリーナに呼びかけられて、近くの星系でレースがあることを知り、ジェインウェイ艦長に参加したいと申し出た。100年間にわたって戦争をしていた種族間の和平の象徴だというので、ジェインウェイはこれを認め、参加することになった。しかもそのレース開始のパーティの場所として、ヴォイジャーも開放するほど力を入れていた。それは、トム・パリスとベラナ・トレスの仲が微妙になっている頃だった。この2人がデルタ・フライヤーに乗った。 第1日は、レース途中でイリーナの船の副操縦士席が爆発し、副操縦士が負傷した。トゥヴォックの調査によると、爆発物が仕掛けられていたためで、何者かによる破壊工作だった。レースの主催者によると、まだ和平に反対する勢力がいるらしい。このまま中止するかどうかが問題になったが、中止するのは反対勢力に利するという判断で、再開することにした。キムがイリーナの船の副操縦士になることになった。 翌日、レースが再開された。パリスとトレスの船が先頭だったが、喧嘩して止まってしまう。キムとイリーナの船では、また副操縦士席が爆発した。キムが不審に思うと、イリーナがキムに銃を向けた。破壊工作は、イリーナ自身が行っていたのである。イリーナは、パリスとトレスの船にも工作をしていたが、キムが何とか連絡をして、ワープコアが爆発する寸前に事なきを得た。その直前に、パリスがトレスに求婚し、受け入れられた。 [ ちょっとしたレクリエーションのつもりが、命懸けのレースになってしまった。] 第7@−148回 (マインドコントロール:Repression ) 総合評価 ☆☆☆☆☆ (ストーリー ☆☆☆☆☆) (人間の描写 ☆☆☆☆☆) ヴォイジャーの乗組員が、誰かに襲われて5人も倒れた。いずれも、元マキのメンバーであるのが共通点である。トレス機関部長、チャコティ副艦長まで襲われた。トゥヴォックが捜査するが、犯人が一向に分からない。しかし、襲われた乗組員は、しばらくすると回復している。やがてトゥヴォックは、自分自身が犯人であることを知って、愕然とする。しかも、ベイジョー人の幻影が見え、それに操られている。拘束室で自分自身を監禁した。ジェインウェイ艦長が調べると、トゥヴォックが受け取った息子からの手紙に、そのベイジョー人が「聖なる時が来た。今こそ決行せよ。」という指示があった。 やがてその指示は、チャコティ、ベラナその他の元マキの乗組員へと伝染し、元マキがヴォイジャーを乗っ取った。しかし、トゥヴォックがチャコティに精神融合をしたおかげで、皆はベイジョー人のマインドコントロールから逃れることができ、我に帰った。 [ 第7シーズンにもなって、今更マキによる乗っ取り計画など、あり得ない話で、まるで冗談のようなエピソードである。それとも全体が冗談か・・・全シーズンを通じて最低の評価としたい。] 第7A−149回 (病院船の治療方針:Critical Care ) 総合評価 ★★☆☆☆ (ストーリー ★★☆☆☆) (人間の描写 ★★☆☆☆) ドクターは、誘拐されて異星人の病院船に連れて来られたが、その治療方針に驚いた。社会的価値が高い人ほど高度な治療を受けることが出来るという仕組みだったからである。かつて、餓えなどで絶滅寸前だったが、このシステムで資源の有益な配分が出来るようになり、立ち直ったからだという。しかし、「患者に優劣は付けられない。どの患者も同等に扱われるべきだ。」というドクターには、信じられない治療方針である。 ドクターは、この治療方針に対して果敢に闘いに挑んだ。社会的価値のクラスが上のところから下のところへと薬品を横流しをしたり、病院の官僚的な発想を逆手にとって薬品の量を増やしたりした。ところが、病院の管理者に見つかる。そこでドクターは、管理者に病原体を打ち、最下層のクラスの治療を体験させて、治療方針の変更を迫り、イエスと言わせた。そこへ、ドクターを探すヴォイジャーの乗組員が現れた。 [ 患者に優劣は付けられないという医療方針には、もちろん大賛成であるが、それにしても、時間がないとはいえ、あまりに拙速なやり方だから、すぐに元の治療方針に戻るのではないかと心配する。] 第7A−150回 (バークレー大尉のホログラム:Inside Man ) 総合評価 ★★★★★ (ストーリー ★★★★★) (人間の描写 ★★★★★) 毎月あるはずの地球との交信が、どういうわけか1回途切れ、翌月送ってきたのはレジナルド・バークレー大尉のホログラムだった。そのホログラムは、デルタ宇宙域とアルファ宇宙域とを、それぞれ近くにある赤色巨星同士を通じて繋ぐことができるので、すぐに地球へ帰ることができるという計画を説明した。しかし、赤色巨星の放射能が強くシールドも相当強化しないと抜けられない。そこでホログラムの指示で乗組員には放射能耐性免疫剤を打ち、船体には強化シールドを張って、必要な対策を講じることになった。 その頃、地球の宇宙艦隊本部では、本物のバークレー大尉が、ダボ・ガールに騙されて、ヴォイジャーに関する情報、デルタ宇宙域と連絡をとるパスファインダー計画、バークレー大尉自身のホログラムを盗み出してから、しばらく経っていた。デルタ宇宙域との連絡ができる通信基地の脇に、フェリンギ船が現れて、セブンのナノプローブを盗み出す企みが進行中であった。ナノプローブは、単に同化のために用いられるだけでなく、免疫の強化、老化の防止、病気の治療など、あらゆる分野で役に立つので、セブンの身体の360万個だけで巨万の富が稼げるという。偽のバークレー大尉のホログラムは、そのために改変されて、ヴォイジャーの乗組員を騙すようにプログラムされていた。 本物のバークレー大尉は、艦隊カウンセラーのデアナ・トロイに、「教師の同棲相手が自分のホログラムとともに消えてしまった。」と打ち明けた。艦隊の機密情報が漏れたのではないかと、その同棲相手を尋問したところ、教師ではなくダボ・ガールで、フェリンギ人に雇われたと打ち明けた。そのフェリンギ船は通信基地の近くにいて、今まさに赤色巨星のチャネルを開こうとしているところだった。そのままヴォイジャーを突入させ、乗組員全員を死亡させてでもセブンのナノプローブを盗むつもりである。 その頃、ヴォイジャーでは、ドクターとセブンが偽のバークレー大尉のホログラムの異常さに気付いたが、誤魔化されたり、倒されたりして、機能を止められなかった。目の前に赤色巨星のチャネルが開いた。ヴォイジャーがそれに突入すると、乗組員全員が危ない。ところが、艦隊本部にはヴォイジャーに連絡しようがない。まさに絶対絶命の状態に陥った。ここで艦隊本部が一計を案じ、本物のバークレー大尉に偽のバークレー大尉のホログラムの真似をさせ、「見破れられたから、計画を中止するように。」と言った。赤色巨星のチャネルを閉じようとしていたまさにその時、ヴォイジャーから発出された脱出ポッドで、偽のバークレー大尉のホログラムと気を失ったセブンが出ていった。ヴォイジャーでは、これを転送し戻そうとしていた。その直後、アルファ宇宙域の赤色巨星の出口から脱出ポッドが出てきて、フェリンギ船にぶつかったが、中は空っぽであった。 [ 帰還話はこれで3回目で、再びぬか喜びに終わった。しかし、フェリンギ人の金儲けと、セブンのナノプローブとを結びつけるとは、なかなか巧みなエピソードである。] 第7A−151回 (身体はセブン、中身はドクター:Body and Soul ) 総合評価 ★★★☆☆ (ストーリー ★★★☆☆) (人間の描写 ★★★☆☆) ロキリムの領域でセブン、ドクター、キムがデルタ・フライヤーで探査任務に出ていたとき、光子生命体を運んでいるとの容疑で、パトロール船に捕まってしまった。光子生命体が反乱を起こしているとのことで、重罪だそうだ。逮捕されるとき、セブンの咄嗟の機転で、ドクターをセブンのインプラントに入れた。すると、身体はセブンだが、中身はドクターになってしまい、ドクターにとっては飲んだり食べたりする感覚が新鮮でたまらない。デルタ・フライヤーの検査を行ったパトロール船の船長と一緒に、酒やピザやケーキを飲み食いして盛り上がり、出来上がってしまったほどだ。 一方、ヴォイジャーの方にも、ロキリムの別のパトロール船が近づいてきて、光子生命体がいるから検査を受けよと命じられるが、ホロデッキを止めただけで、検査はさせなかった。 そのうち、脱出を図っていたセブンの身体のドクターから連絡があり、そちらに向かった。パトロール船から脱出する過程で船長が負傷したので、ドクターが残って手術をし、命を救って、感謝された。 [ 軽い、まるでデザートのような味のエピソードである。] 第7A−152回 (ナイチンゲール号の真実:Nightingale ) 総合評価 ★★★☆☆ (ストーリー ★★★☆☆) (人間の描写 ★★★★☆) キム少尉は、異星人の2隻の船が戦闘を行っている場面に出会った。破壊された一方の船に乗船してみると、乗客のほかは、1名の新米士官を除いて、艦長以下の士官は全員、死亡していた。キムは修理を手伝い、それを終えようとしたとき、乗客の「医師」から、思わぬことを頼まれた。「自分たちは、ワクチンなどの医療用貨物を運んでいる貨物船だが、このままでは母星にたどり着けない。どうか、艦長になってくれないか。」。キムは迷ったが、人道上の援助だと割り切って、ヴォイジャーと合流するまでの約束で艦長となり、船を「ナイチンゲール号」と名付けて出発した。一方、ヴォイジャーはキムの船と敵対する異星人と、燃料などを交換する取引をしていた。 ナイチンゲール号が異星人船から執拗な攻撃を受け、キム艦長の指揮の下にこれを跳ね返していたが、そのうち、キムが不審に思って調べてみた。すると、ナイチンゲール号は、単なる人道貨物船ではなく、研究所で開発した最新式の遮蔽装置を運搬するという、いわば軍事物資運搬船だとわかった。キムは嘘をつかれたと激怒したが、医師を名乗っていた軍事技術者から、「遮蔽装置は、敵から船を見えなくするという究極の自衛のための兵器で、これがなければ我々の星は、食料も医薬品も入手できなくなる。」と言われて、また艦長席に戻った。そして、異星人の攻撃をかわして、無事に着陸させ、自らもヴォイジャーに戻った。 [ 青二才のキム少尉の若さが出てしまったが、何とかハッピーエンドに持ち込めたというところである。] 第7B−153回 (ホログラムの反乱者たち:Flesh and Blood ) 総合評価 ★★★★☆ (ストーリー ★★★★☆) (人間の描写 ★★★★☆) ヴォイジャーが救難信号を受けて急行すると、それはヒロージェンの初心者用狩猟訓練場だった。しかも、かつてジェインウェイ艦長が与えたホログラム技術を用いて作られたホログラムの戦闘員らが、ヒロージェン人を50人ほど殺して、ホログラム船に乗って逃走した。いわば、ホログラムによる反乱が勃発したのである。ヴォイジャーのドクターも、そのホログラム船に誘拐されてしまった。ドクターがそのブリッジに行くと、そこはアルファ宇宙域にいるほとんどの人種がホログラムになっていた。彼らは、長年、ヒロージェンによる狩りの対象になり、心も身体も傷ついていたが、その分、頭が良くて狡猾になっていた。 ドクターは、ホログラムのリーダーが「安息の星の家に住み、もう狩りの対象にはなりたくない。」というのを信じ、ヴォイジャーに戻ってジェインウェイ艦長に、「ホログラムは単に定住する星を見つけたいだけだから、そのための光子エミッターの強化を手伝い、ホログラムに協力してほしい。」と頼むが、却下された。ホログラム側は、ドクターのほか、トレス中尉を誘拐し、光子エミッターの強化を手伝わせた。そして、星雲の中へと逃げた。 それを追跡するヒロージェン船が2隻、集まり、ホログラム船の追跡を始めた。ヴォイジャーはその後ろに隠れて付いていった。ドクターは、ホログラム側の定住する星を見つけたいという話を信じて、呑気に定住後の夢を語るなどしていたが、ホログラム船が異星人の船を襲ってその中の「有機体」つまり乗員を殺して、乗船していたホログラムを解放した頃から、ホログラムのリーダーの真意を疑い始めた。 案の定、ホログラム船は、ヴォイジャーによって破壊されたヒロージェン船からヒロージェン人たちを惑星上に転送し、これまでとは逆に、ホログラムたちが、ヒロージェン人を対象に「狩り」を行った。それを、惑星上に転送されたドクターが止め、生き残った何人かのヒロージェンたちを救った。 [ 昔、ジェインウェイ艦長が供与したホログラム技術を使って、ヒロージェン人がホログラムに対して残酷な狩りを行っていること自体がショッキングである。しかし、そうして狩りの獲物となったホログラムが賢く、しかも狡猾になって、逆にヒロージェン人たちを獲物にするというのは、まさに自業自得である。それにしても、ドクターの浅知恵には呆れてしまうが、ホログラムらしく所詮そういうものだということか。] 第7B−154回 (ヴォイジャーの時間移動:Shattered ) 総合評価 ★★★★☆ (ストーリー ★★★★☆) (人間の描写 ★★★★☆) ヴォイジャーが航行中、時間と空間の歪みが現れ、そこからのエネルギー・サージでヴォイジャーのコアとチャコティ副艦長が打たれた。チャコティが医務室で気がつくと、ドクターが、身体の中で腎臓は12歳、肝臓は80歳などと年齢が異なっているのを統一した時間帯にするワクチンを開発して注射してくれた。そのおかげでチャコティは時間の違いを通り抜けられるようになった。 チャコティがブリッジに行くと、ヴォイジャーがまだアルファ宇宙域にいる時代で、ジェインウェイ艦長がいてもチャコティのことは知らず、それどころか「なぜマキが艦隊の制服を着ているのか。」として拘束されそうになるが、何とか説得し、2人でこの問題を解決しようとする。ヴォイジャー艦内を回ると、機関室にはセスカとケイゾン人が、天体ラボには17年後のイチェブとナオミ・ワイルドマンが、貨物室にはボーグが、別の部屋にはマキの一団が、廊下には巨大化したウィルスがいたりして、38もの時間軸に分かれていた。そこで、艦内のネットワークを形成する神経ジェルパックに、ドクターの開発したワクチンを注射して回り、その後にセブン・オブ・ナインの言う通り、ディフレクターを調整して時間移動を統一するパルスを発生することにした。 ジェインウェイとチャコティが艦内のすべての神経ジェルパックにワクチンを注射して回ったが、途中、ジェインウェイ艦長がパリスのキャプテン・プロトンのホログラム・キャラクターのご機嫌をとらざるを得なかったり、その他様々なことがあったものの、最後の機関室で、セスカとケイゾン人の妨害にあった。それを、ジェインウェイが協力を求めた全ての時間帯の乗組員の力で、これを撃退し、パルスを発生して、ようやく元に戻った。 [ まるでヴォイジャーの冒険の総集編のようなエピソードで、その発想の自由さに感心した。] 第7B−155回 (母となるベラナ・トレス:Lineage ) 総合評価 ★★★☆☆ (ストーリー ★★★☆☆) (人間の描写 ★★★★☆) ベラナ・トレスが気分が悪くなった。側にいたイチェブが寄生体がいるという。セブンが、「いや彼女は妊娠している。」と訂正した。ドクターが診ると既に7週目である。それから、騒動が始まった。ドクターが、胎児の背骨が曲がっているのを矯正する手術をすることになった。そのときベラナは、胎児の全体像の映像を見た。胎児の額には、自分と同じクリンゴン人の特徴である亀の甲羅のような突起があった。それが彼女の子供時代の嫌な記憶を思い起こさせた。それは、ベラナがまだ小学校の頃、父、叔父さん、いとこ達とキャンプに行った時のことである。いとこ達は、ベラナに悪ふざけをし、とても嫌だった。自分の子供をあんな目に合わせたくない。そういう気持ちが募るばかりである。 ついに、胎児からクリンゴン人の特徴を消してしまいたいと思い詰めて、遺伝子操作をしたいと夫のトム・パリスに言うと、大反対された。夫婦喧嘩を繰り広げ、トムは夫婦の部屋を追い出されて、キムの部屋のソファーで寝る始末だ。ジェインウェイ艦長にも2人で相談するが、「まずは、夫婦間で話し合ってちょうだい。」と言われてしまう。ベラナはまた、子供時代の嫌な思い出が蘇る。父が叔父さんに、「この結婚は失敗だった。妻もベラナとも、喧嘩してばかりだ。」と言った後、7日ほどで家を出て、それから2度と帰って来なかった。 ベラナは、密かにドクターを改造して、胎児からクリンゴンの特徴を消してしまおうとしたが、見破られてしまった。それを契機にトムと話し合って、このままにしておくことにした。 [ 子供時代は、他人と少しでも異なる点があると、それを殊更に大きく取り上げていじめられることが多いが、そういう嫌な思い出を自分の子供にはさせたくないとの考えで、やり過ぎてしまったものだが、ベラナの気持ちは、よくわかる。] 第7C−156回 (死刑囚の悔悟:Repentance ) 総合評価 ★★★☆☆ (ストーリー ★★★☆☆) (人間の描写 ★★★★☆) ヴォイジャーは爆発寸前のナイジアンの宇宙船から乗員を転送し、2人を医務室に、残りを貨物室に収容した。それは死刑囚とそれを監視する刑務所長や看守たちで、その死刑執行のために母星に運んでいる途中だった。その医務室に収容されたアイコという死刑囚が、セブンとドクターを人質にとったりして極めて凶暴だった。独房でも騒ぎを起こしたので、刑務所長らが制圧したときに、アイコが頭に怪我をした。それをドクターがセブンのナノプローブを使って治療した。その時、先天的な頭の異常で凶暴さが現れていた部分も、正常になった。するとアイコは、自分の犯した殺人について悔悟の気持ちが生まれ、次第に普通の人間になっていった。 ドクターとセブンはそれを見て、ジェインウェイ艦長や刑務所長に再審を願い出た。ナイジアンの法制度では、被害者側が許せば、死刑を免れる。その手続きをする一方、アイコは次第に改心していった。セブンはそれを見て、ボーグ時代の自分が何千人も同化したことを思い出した。 ヴォイジャーが囚人を奪おうとする宇宙船に襲われたとき、囚人を収容している区間の電源が落ち、囚人が逃げ出した。刑務所長が人質になり、殺されかけたとき、アイコに救われた。恩にきた刑務所長の働き掛けで、アイコが殺した人の遺族に嘆願するが、それは実らなかった。セブンは、自分と比べて不公平だと嘆いた。 [ セブンの人間らしさが良く現れた、いいエピソードである。] 第7C−157回 (預言の子:Prophecy ) 総合評価 ★★☆☆☆ (ストーリー ★★☆☆☆) (人間の描写 ★★★☆☆) ヴォイジャーが航行中、クリンゴンの旧式の戦艦が現れて攻撃された。地球人は敵だというが、地球とクリンゴン帝国とはもう何十年も前に平和協定を結んでいる。この家族も含めた200人ほどのクリンゴン人を乗せた船は、彼らの信じる預言書を信じて、もう何世代も航行し、アルファ宇宙域から3万光年まで来て、新しい星を見つけようとしていた。そして、同じクリンゴン人のベラナ・トレスが妊娠していることを知り、それは「新しい星に導いてくれる預言の子」ではないかと考えた。その子が見つかったら、預言書の内容通り、乗っている船を破棄するということで、船を自爆して全員がヴォイジャーにやって来てしまった。それ以来、ヴォイジャーの艦内は、乗組員150名を上回る200名ものクリンゴン人で溢れかえる状態になった。 中には、「トレスの子は預言の子ではないのではないか。」と疑うグループもいて、パリスに決闘を求めたり、ヴォイジャーを乗っ取ろうとしたりする。ところが、このクリンゴン人たちは、やがて死に結び付く疫病の保菌者であった。パリスに決闘を申し込んで闘つた男も、それに罹っていて、決闘中に倒れてしまった。しかし、トレスの子が持っていたクリンゴン人と地球人が融合した細胞を使って、彼らの疫病を直せたことから、本当に預言の子だと信じて、新しい星へと移住して行った。 [ トレスとパリスの子を材料にして、無理矢理作ったようなエピソードで、かなり不自然な話である。] 第7C−158回 (暗黒空間の同盟:The Void ) 総合評価 ★★★★☆ (ストーリー ★★★★☆) (人間の描写 ★★★★☆) ヴォイジャーは強力な重力波を受け、とある空間に吸い込まれた。そこは完全な暗黒の世界で、新しく吸い込まれた宇宙船から食料やエネルギーを奪い合うことで、生きながらえている。ヴォイジャーも早速他の船から攻撃を受け、食料の9割と燃料を奪われた。しかもこの空間では、燃料消費が通常空間の10倍の速度で進んでしまう。ヴォイジャーもあと1週間しかもたないところまで追い詰められた。 ジェインウェイ艦長は、他の船に燃料や食料を提供して同盟を結んで共に対処しようとする。部下は限られた食料や燃料を提供するなど、とんでもないと言うが、ジェインウェイはそれが宇宙艦隊規則の精神だと意にかけない。そのうち、同盟に加わる宇宙船が増え、ヴォイジャーに技術を提供するなど協力して脱出方法を探った。脱出に必要な部品を他の船を攻撃して奪取した船があったが、同盟から追放した。 準備が整い、同盟の船が一体となってシールドの中に入り、空間が自然に開く僅かな瞬間に飛び出す計画である。そのとき、ヴォイジャーの同盟から外れた船が2隻、襲ってきた。そこへ、ドクターが救って「暗黒の怪人」と名付けたグループがそれらの船へと転送され、ワープコアを停止させて、同盟の船団を救ってくれた。 [ ジェインウェイ艦長の方針には、アメリカの理想主義の理念が色濃く現れている。確かに、パックス・アメリカーナの20世紀末の時代の雰囲気は、まさにこういうものだった。その頃のアメリカは、政治、軍事、経済、科学技術に優れ、理想主義が国の内外に満ち満ちていた。ところが、21世紀に入って中国が台頭し、アメリカの実力が相対的に落ちつつある。そういう状況の下で、共和党大統領候補者にも、伝統的な外交政策には全く理解のないドナルド・トランプ氏のような、単に目先の損得勘定で動くようなレベルの人物が出てくるようになってしまった。そうすると、これからのアメリカは、貧すれば鈍するで、もはやこのジェインウェイ艦長のような方針はとれないのかもしれない。] 第7C−159回 (惑星クアラ 前編:Workforce, Part I ) 総合評価 ★★★★★ (ストーリー ★★★★★) (人間の描写 ★★★★★) チャコティ、キム、ニーリックスの3人がシャトルで探査任務に出て帰って来ると、落ち会う場所にヴォイジャーがいない。やっと探すと、星雲の中に隠れていて、ドクター1人が艦長として、機能していた。チャコティとキムがヴォイジャーに帰って事情を聞くと、放射能の高い空間に入って、艦長以下の全乗組員が脱出ポッドで出て行ったという。その時、ドクターが非常時の艦長に任命されたとのこと。その後、ヴォイジャーを狙う異星人の宇宙船が幾つも現れたので、交戦して、星雲の中に逃げ込んだと語る。 4人が協力してヴォイジャーを直し、とりあえず必要な機能を回復させた。周囲の星系をスキャンしたところ、ヴォイジャーの乗組員がいる惑星クアラを見つけた。その星に向かったが、着いてみると行政当局は非協力的で、いったん撤退を余儀なくされた。ニーリックスがその星に出入りする船に聞いたところ、この星系では特に熟練労働者が慢性的に不足しているようだ。 惑星クアラでは、ヴォイジャーの乗組員は、いずれも中央発電所で働いている。病院で神経操作をされ、出身地などは覚えているが、ヴォイジャーの乗組員だった記憶は消されていて、代わりにここで働くのは幸せだと思い込まされていた。ジェインウェイ艦長、トゥヴォック、 トレスは発電所コントロールを、セブンは管理者補佐を、管理者に反抗したパリスは首になってバーで働いていた。トゥヴォックはヴォイジャー時代の記憶を断片的に思い出してセブンに植え付けたが、自身は精神的に不安定ということで病院送りになってしまった。ジェインウェイは、中央発電所の同僚と仲良くなり、同棲するまで親しくなる。 チャコティとニーリックスは、惑星クアラの中央発電所に応募して職員となり、状況を探った。トレスを確保し、ニーリックスとともにヴォイジャーに転送して記憶を思い出してもらうようにした。チャコティはその場から逃走するが、撃たれて負傷した。 [ まずは、よくこのようなストーリーを思い付くなと感心する。とても出来の良いエピソードである。] 第7C−160回 (惑星クアラ 後編:Workforce, Part II ) 総合評価 ★★★★★ (ストーリー ★★★★★) (人間の描写 ★★★★★) 惑星クアラで負傷したチャコティはジェインウェイの部屋に行き、艦長の記憶を思い出してもらおうとするが、艦長の同棲相手が疑って捕まり、これまた病院送りとなる。しかしその直前に、捜査官に対して「ヴォイジャーの乗組員が捕まり、病院で記憶を操作されて働かされている。」と叫び、捜査官は不審に思う。 中央発電所では、トゥヴォックに刺激されたセブンが、昔の場面を頻繁に見るようになり、自分はここにいて良いのかと疑うようになる。ジェインウェイ、パリス、セブン、捜査官が集まり、対策を話し合った。その結果、中央発電所に侵入してバリアを解除することになった。そして、乗組員をヴォイジャーに転送する計画である。 ヴォイジャーでは、クアラの宇宙船に襲われるが、最初はドクター艦長の活躍でその覚えている戦術で撃退するが、次第に手に負えなくなった。そこでキムが、脱出ポッドを3個打ち上げ、その中に爆薬を仕掛けておいた。それを取り込んだクアラ船は爆発に巻き込まれて、難を逃れた。ホログラムより人間に一日の長があったということである。 一方、病院では、若手の医師がベテランの医師の診療記録を見て不審に思う。同じ日に100人を超える診療をし、いずれも中央発電所に送り込まれていたからだ。ベテラン医師はそれを認め、「労働力不足のときのやむを得ない措置で、経済のためにもなるし、収入にもなる。」という。大臣、中央発電所長、病院長、捜査局長を巻き込んだ一大スキャンダルだったのである。 中央発電所では、ジェインウェイが同棲相手の協力でバリアの解除に成功し、ヴォイジャーの乗組員全員が戻ってきた。ベラナ・トレスの例にならって、記憶を取り戻してもらった。惑星クアラ上では、関係者が皆捕まった。ジェインウェイの同棲相手は中央発電所の管理者に昇進したので、この星に残ることにした。 [ 潜入したチャコティに降りかかる数々の困難、ジェインウェイとセブンの活躍、トム・パリスとベラナ・トレスの関係、キムとにわか艦長のドクターのやり取りなど、どれをとっても面白い。] 第7D−161回 (セブンの恋人:Human Error ) 総合評価 ★★★☆☆ (ストーリー ★★★☆☆) (人間の描写 ★★★☆☆) セブンがホロデッキで、新しい部屋にステキなドレスを着てピアノを弾き、チャコティと過ごすホロプログラムに夢中になり、仕事を忘れるほどだった。その頃、ヴォイジャーは亜空間の射撃練習場に迷い込み、いきなり現れる弾道ミサイルを避けるのに四苦八苦していた。セブンの天体ラボがその予測に不可欠で、セブンがいないとミサイルを避けられないのに、天体ラボから席を外してジェインウェイ艦長に注意される始末である。セブンが、もうこのプログラムを止めようとしてホログラムのチャコティと口論をしていたとき、セブンが急に倒れてしまった。ドクターによれば、それはボーグの装置が感情が一定程度以上に上がると脳を停止してしまうからだという。ドクターは、その機能を除去することを提案するが、セブンはこのままで良いと、頑なに拒んだ。 [ セブンが、人間性を取り戻す過程で、色々な困難を乗り越える過程を示している。なかなか、魅力的な女性である。] 第7D−162回 (Qの問題息子Q2:Q2 ) 総合評価 ★★☆☆☆ (ストーリー ★★★☆☆) (人間の描写 ★★☆☆☆) ジェインウェイ艦長の前に突然、Qが現れて、横にいる若者を息子だという。この息子Q2は、その行状が余りに酷いので、一時アメーバにされてペトリ皿に入れられていたらしい。だからQは、ジェインウェイに、ここで鍛え直して欲しいという。ところがこの息子Q2は相当のワルで、超能力を使ってニーリックスの口をふさぎ、セブンを裸にし、異民族どうしを戦わせるなどその他諸々の悪戯や酷いことをしたことから、ジェインウェイが怒り心頭に達した。父親のQも同様で、Q2の超能力を奪い、ヴォイジャーにいる7日間で更生しなければ、アメーバに逆戻りさせると言う。 Q2は、少しは真面目に過ごしたものの、5日目が過ぎた頃に、友達のイチェブを誘ってデルタ・フライヤーで宇宙に飛び出した。そこへ現れた異星人に攻撃され、イチェブが重傷を負った。Q2はいったんはヴォイジャーに逃げたが、イチェブの命を救うために再びその異星人のところへ戻り、謝罪していたら、実はその相手がQの変装だった。そういうやり取りの後、Q2は再び超能力を取り戻し、連続体へ帰っていった。 [ 札付きのワル息子を更生させるために押し付けられたときは、どうなるかと思ったが、それなりの常識的な結末となった。] 第7D−163回 (ドクターのホロノベル:Author, Author ) 総合評価 ★★☆☆☆ (ストーリー ★★★☆☆) (人間の描写 ★★☆☆☆) ドクターが勇み足でヴォイジャーとその乗組員を思い起こさせるホロノベルを作った。その内容が実に酷くて、ドクターへの差別だけでなく、艦長が患者を殺したりする場面があったりする。これでは、ヴォイジャーがこんなことをしていると、地球で誤解されると乗組員全員が怒り心頭に発し、ドクターに修正を求めた。ドクターは単にヴォイジャーに触発されただけだと抵抗するが、遂に修正に同意し、出版を延期してもらうことにしたが、出版社は約束に反して出版してしまった。ドクターは抗議したが、後の祭りである。 艦隊本部も気付いて、ジェインウェイ艦長に注意をし、ドクターは出版社に回収を申し入れるが、出版社はドクターはホログラムだから人間ではなく、著作権はないという。ジェインウェイは、裁判を申し入れる。そこで、ドクターがいかに普通の人間と同じであるかを乗組員が入れ替わり立ち代わり裁判官に説明した。裁判官の判断は、「ドクターは人間とは認められないが、実に人間的であり、芸術家と認めて、作品の回収を命ずる。」となった。 [ 非常に困ったことで、現実の人間を容易に思い起こさせる内容であると、そういう内容の小説は乗組員の人格権の侵害として、ヴォイジャーの乗組員の側から出版社に差止めを求められると思うが、ドクターが人間であるかどうかという点に焦点を当てたいということで、こういう筋書きになったのだろう。] 第7E−164回 (フレンドシップ・ワン:Friendship One ) 総合評価 ★★☆☆☆ (ストーリー ★★★☆☆) (人間の描写 ★★☆☆☆) ヴォイジャーは、地球から300年前に打ち上げられたフレンドシップ・ワンという深宇宙探査機を捜索してデータを回収するように、艦隊本部から指令を受けた。それは、人類が初めて深宇宙に向けて放った探査機で、まだ見ない宇宙の種族との友好親善を図るために、その当時の地球の文化、音楽、技術の詳細の全てを盛り込んだものであった。 ヴォイジャーが探査機を調べたところ、それがある惑星上にあるとわかった。その地上をスキャンしたところ生命体がいないので、チャコティ、ニーリックス、ケリー中尉が降りた。すると、地上でフレンドシップ・ワンの一部を見つけたが、いないはずの住民に襲われた。彼らは、放射能で汚染された「核の冬」の環境で生きていて、顔や身体に汚染の深刻な影響が見られた。そのリーダーが言うには「地球から送られたこの探査機のせいで、惑星が壊滅してしまった。それまで自分たちはワープ技術など知らなかったのに、この技術のせいで核戦争が起こった。責任をとるため、適当な惑星を探して自分たちを移住させろ。」と言い、地球に対する敵意をむき出しにする。 そのうちの1人が重症を負ったので、ヴォイジャーに転送して治療を受けさせた。彼は科学者であり、長年、放射能汚染の除去の研究をしていた。一方、地上では妊婦が産気づいて死産したが、パリスの治療で生き返り、ヴォイジャーの医務室に送られた。ところが、地上では、ヴォイジャーを敵視する住民の強硬なリーダーがケリー中尉を射殺してしまった。ジェインウェイ艦長は話し合いを諦めて、トゥヴォックとドクターを送って征圧したが、住民もさすがに強硬なリーダーの言うことを聞かなくなって、ヴォイジャーで治療を受けた科学者を新たなリーダーにした。その後、彼の理論を生かして、ヴォイジャーから光子魚雷を放って、惑星の放射能汚染を除去した。 [ 友好親善のための探査機を送り、逆にその惑星に争いの種を蒔いてしまったというわけで、善意のつもりが逆の結果になった。悲しき結末である。] 第7E−165回 (アボリジニへの道:Natural Law ) 総合評価 ★★★☆☆ (ストーリー ★★★★☆) (人間の描写 ★★★☆☆) ヴォイジャーはある惑星に着いた。そこで乗組員の大半は、観光に出かけたが、パリスは、宇宙船の航行規則に違反したということで、操縦講習を受けるように命じられた。チャコティとセブンは、ある惑星での会議に出席するため、シャトルで急いでいたが、その惑星の一部の地域を覆うエネルギーバリアに衝突して、その中に墜落してしまった。中はジャングルで、原始的なヴェンツー族が住んでいた。とても素朴で親切で、怪我をしているチャコティや、通信しようとするセブンを助けてくれた。セブンはヴォイジャーと連絡をとろうとしたが、シャトルの残骸を集めなければならないので難渋していた。ヴォイジャーはエネルギーバリアの中にシャトルがあると考えて、その惑星の当局に聞くが、何百年も前に異星人が設置して以来そのままで、誰も入れないという。 ヴェンツー族の世話で、チャコティの怪我は少し回復し、セブンはシャトルの残骸を使って内部からエネルギーバリアを解除することができたが、解除したとたん、惑星当局の調査隊がやってきて、「この部族に教育を与え、この地域を開発する。」という。ジェインウェイ艦長は、ヴェンツー族やその居住区を保護するために、エネルギーバリアを元に戻すことにした。2人を転送し、シャトルの残骸を全て回収しようとしたら、惑星の当局の宇宙船がヴォイジャーを攻撃してきて、転送装置を壊した。そのとき、操縦講習中のパリスが機転を利かして調査隊を回収し、エネルギーバリアの解除装置を破壊して、その地域から抜け出した。 [ まるでオーストラリアのアボリジニに起きた歴史的事実のような話である。白人が入植してきた後、アボリジニは遅れた民族として、場合によっては子供たちを白人の一般家庭で教育するという名目で取り上げられるなどの艱難辛苦の道を歩んだが、このままバリアを閉じないでいると、そういうことになっていたかもしれない。文明と幸福と人間性とは何かについて、深く考えさせられる。] 第7E−166回 (タラクシア人のコロニー:Homestead ) 総合評価 ★★★☆☆ (ストーリー ★★★☆☆) (人間の描写 ★★★★☆) ある星系で、ニーリックスの同胞であるタラクシア人が500人ほどいるコロニーを発見した。小惑星帯にあり、地下の熱を利用して酸素やエネルギーを供給するシステムを備えている。元々、6隻の宇宙船でやってきて、そのうちの5隻を解体して、これを作り上げたそうだ。ところが、その小惑星にある鉱物を採掘するため、異星人の採鉱船がやってきて、立ち退きを迫っている最中だった。ニーリックスは深く同情する。 立ち退きのため、ジェインウェイ艦長はヴォイジャーで近くの居住可能な惑星までタラクシア人全員を運ぶつもりでいたが、ニーリックスはその近辺に高度な文明を持つ星があるため、また立ち退きを迫られることを心配した。そして、今の小惑星にバリアーを張って、ここに定住する道を選んだ。採鉱船の妨害にもかかわらず、バリアーを張り終えたことから、採鉱船は手を出せなくなり、去っていった。ニーリックスは、悩んだ末、ここに残ることにした。それは、ヴォイジャー乗組員にとっても、ニーリックスと永久に別れることだった。 [ コック、異星人との交渉役、皆を元気付ける役、ナオミ・ワイルドマンの名付け親など、ヴォイジャー乗組員に親しまれたニーリックスとの別れである。] 第7E−167回 (ドクターの変身:Renaissance Man ) 総合評価 ★★☆☆☆ (ストーリー ★★☆☆☆) (人間の描写 ★★★☆☆) ジェインウェイ艦長とドクターがシャトルの船外任務に出ていたとき、異星人船に襲われた。異星人はヴォイジャーを狙っていた2人組で、ヴォイジャーのワープコアを奪って売り飛ばす計画である。艦長は異星人船に留め置かれ、その命と引き換えにドクターにヴォイジャーのワープコアを放出させて、持ってこさせる計画である。ドクターはまず、ジェインウェイ艦長の姿に変身して、次々に指令を出す。それを疑ったチャコティ副艦長を眠らせて死体置き場に置き、自らチャコティに扮してその場を切り抜けた。キムも疑ったので、同じようにした。トレス中尉にも扮して、異星人の言う通り神経ニューロ回路のジェルパックを入手した。こうして、乗組員に次々に変身していったので、トゥヴォックが不審に思い、とうとうドクターが変身していることを見抜いた。 ドクターは、ヴォイジャーのワープコアを放出させ、それを牽引して異星人船に持っていくが、異星人は約束を果たさずにドクターをジェインウェイ艦長とともに拘束してしまった。ヴォイジャーでは、異星人船の位置を検知してシャトルで向かい、異星人を攻撃して艦長とドクターを取り戻した。ヴォイジャーに戻ったドクターは、オーバーロードでプログラムが消えかかっていたので、初期化されてしまうかもしれないと心配して、その前にと、あらゆることを告白してしまうが、これで多くの友人を失いかけた。 [ 一種の喜劇仕立てのエピソードである。] 第7F−168回 (ゲームの終わり:Endgame ) 総合評価 ★★★★★ (ストーリー ★★★★★) (人間の描写 ★★★★★) ヴォイジャーは、デルタ宇宙域に飛ばされてからアルファ宇宙域の地球に向けて23年間の苦難の航海の末に、ようやく地球に戻ってきて、それから更に10年が経った。ジェインウェイ提督は、ヴォイジャーの元乗組員のことを思うにつけ、その心を痛めていた。船外任務で亡くなったセブン、セブンを亡くしてから別人のようになったチャコティ、アルファ宇宙域での治療が受けられずに精神に異常をきたしたトゥヴォック、その他デルタ宇宙域で死亡した22人の乗組員のことである。そこで、過去へと時間をさかのぼって歴史を変えてしまうことを決意した。まず、クリンゴン人と交渉して時間を遡る部品を入手し、ボーグ兵器に対抗できる装甲と武器を装備したシャトルを用意して出発した。今や艦隊の宇宙艦の艦長に昇進したハリー・キムの協力も得て、16年前のヴォイジャーの位置に、時間を遡った。そのときヴォイジャーは、ボーグが持っているトランスワープのハブ基地の近くにいた。この基地はボーグが全宇宙に持っている6つのハブ基地の1つで、このトランスワープ回廊を通ればアルファ宇宙域にまで一瞬で移動できる。 キャスリン・ジェインウェイ提督は、未来のシャトルに乗ってヴォイジャーの前に現れた。そして、ジェインウェイ艦長に、未来の自分であると理解させ、ヴォイジャーに装甲と対ボーグ兵器を備えさせた。準備を整えた上で、ボーグのハブ基地に向かったが、突入の前にジェインウェイ艦長がこれはボーグの最重要基地であることを知り、突入を止めて反転した。そして、上級士官全員を集めて、「これはボーグに大打撃を与える絶好のチャンスである。これを破壊しながら無事に帰還するというのは至難の技だが、私はやりたい。しかし、1人でも反対するなら、中止する。」という。すると、ハリー・キム少尉が「やろう。艦長についていく。」と言い、皆が賛同した。提督と艦長の2人のジェインウェイが話し合い、危険を伴うが、基地の破壊と地球への帰還を同時に目指す計画を実行することになった。 ジェインウェイ提督は、未来のシャトルで単身、ボーグのハブ基地に突入した。ボーグ・クイーンのキューブのすぐ側にシャトルを置き、未来の技術で自分のホログラムをクイーンの前に出現させて、クイーンと交渉しようとした。提督はヴォイジャーのアルファ宇宙域への安全な帰還を求め、クイーンは未来のシャトルの技術の提供を求めた。ところがその交渉の間、ボーグは提督のシャトルの位置を突き止めて提督をクイーンの前に転送してしまった。もう交渉の余地はなく、クイーンは自ら提督を同化した。勝ち誇るクイーンだったが、しばらくして意識が遠のき、ふらつき始めた。それどころか、腕がもがれ、脚がとれた。ジェインウェイ提督を同化した際、提督が持っていたボーグへの神経毒がクイーンを侵した。つまり、提督は自らの身体をボーグへの生物兵器にしていたのである。 その頃、ヴォイジャーは、ボーグのハブ基地にあるアルファ宇宙域に通じているトランスワープ回廊の中に突入した。ボーグ・クイーンに毒が回るにつれ、回廊が崩壊し始める。ヴォイジャーにボーグのスフィア(球形戦艦)が迫り、これに撃たれてヴォイジャーのシールドがダウンした。ヴォイジャーがスフィアの中に呑み込まれた。ボーグ・クイーンも、身体がバラバラになって事切れた。その頃、アルファ宇宙域では、地球からわずか1光年のところに亜空間の穴が開き、ボーグのサインを検出したと大騒ぎをしていた。パリス提督は、近くにいる宇宙艦隊の船を大急ぎでかき集め、出口付近で待機させた。待ち受けていたその時、ボーグのスフィアが出てきたが、艦隊の十数隻の船が見守っている中、大爆発を起こし、その中からヴォイジャーが出てきた。驚くパリス提督に、ジェインウェイ艦長が話しかけた言葉は、「提督、驚かせてすみません。次は、事前に連絡します。」。そのとき、パリスとトレス夫妻に、赤ちゃんが産まれた。 [ アルファ宇宙域への即時帰還と、ボーグへの攻撃という、本来はどちらも不可能に近い難題である。それを、提督の捨て身の決断と攻撃で、二兎を追い、その二兎とも物にしてしまった。ヴォイジャー・シリーズの最後を飾るにふさわしい最高のエピソードとなった。] (平成28年8月10日著) (お願い 著作権法の観点から無断での転載や引用はご遠慮ください。) |
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