邯鄲の夢エッセイ








 タイ・フェスティバル( 写 真 )は、こちらから。


 代々木公園は、昨年夏以来のデング熱騒動で、その最初の発生地になってしまったことから、それ以来あまり近づかないようにしていた。というのは、デング熱には特効薬も予防薬も開発されていないからであり、しかも私が東南アジアで見聞きしたところでは、一度罹患して得られた免疫ですら1ヶ月しか続かないからである。現に私の知人は、デング熱で高熱を発して寝込んでしまったが、せっかく治ったのにまた1ヶ月もしないうちに再びデング熱に罹ってしまった。よほどデング熱を媒介する蚊がたくさんいる地域に住んでいたのだろう。また、別の人の話だが、初回に罹ったときには割と軽症で、さほどのことがなく順調に治ったのに、2度目に罹ったときにはいわゆるアナキフィラシー・ショックを起こして死んでしまったとも聞いたことがある。これは体質によるから一概にいえないが、いずれにせよ、デング熱に罹らないに越したことはない。

01.jpg


01.jpg


 ところが、本年は5月16・17日と、代々木公園で例年通りタイ・フェスティバルが開かれている。前回は3年前に行ったが、とりわけタイ舞踊は、なかなか魅力的だ。これを見逃す手はない。一瞬どうしようかと思ったが、梅雨明けならともかく、いまはデング熱の蚊が飛ぶにはまだ早いと思って行くことにした。そういうわけで、あまり事前に調べていかなかったから、舞台で人形劇などが行われたのに見逃してしまった。代わりに、司会の話では「タイの人間国宝」という年配の女性が出てきて、歌を歌い、その後ろでダンサーが踊っていた。しかし、それにしても、会場にはタイ料理の出店がいっぱい並んでいて、それぞれのお店には、どんな料理を売っているかがわかる絵入りの看板がある。いわば、写真付きの巨大なメニューである。各店それぞれで、それらを見て回るだけでも面白かった。

01.jpg


01.jpg


 実は、2つ、お目当ての食べ物があった。それは、先日のバンコク旅行のときに食べられなくて、いささか心残りだったデザートのカオニャオ・マムアン(マンゴー、ココナツミルク、もち米)があったら食べてみたい。それに、出来ればドリアンがあれば、これも食べてみたいというものである。探すまでもなく、カオニャオ・マムアンは入口近くで売っていた。それも、一応綺麗なカバー付きのお皿に乗っていたので、買ってみた。マンゴーは甘いし、もち米とココナツミルクもよい組み合わせでなかなか美味しいものだった。

01.jpg


01.jpg


 次にドリアンだが、さっと見渡しても見当たらない。そこで案内所で聞くと、フルーツ市場というのがあるので、そちらに行ったらよいという。指示の通りに向かってみると、色々なフルーツが売られていて、あったあった、ドリアンが。そのほか、マンゴ、マンゴスティン、ドラゴン・フルーツに、ランブータンまであった。最後のランブータンは、緑色と赤色が混ざったような色をしていて、表面にもじゃもじゃと髪の毛(マレー語で「ランブート」)のようなものが出ている果物である。実は、東南アジアに住んでいたときに、自宅の庭にこの木があって、季節になるとの果実がたくさん生っていたので、懐かしい。実を剥いてみると、ライチーのような中身が出てきて、非常にあっさりとした味で美味しい。それはさておき、果物の王様のドリアンは、丸ごと1個が4000円だ、しかし、ひとりでこれを食べるのは多すぎる。というわけで、カップに入れられた一切れ500円を買ってみた。一口食べると、誠に美味しい。ジューシーで、良質のチーズとクリームを合わせたような、これぞ天国の味である。

01.jpg


01.jpg


 さて、満足して帰ろうとしたところ、入り口近くにタイ美人が3人いて、「Miss Thailand」の襷を掛けている。なるほど、確かに美人さんたちなのだが、日本のどこにでもいるお嬢さんたちの顔のようにも見える。そういえば、日本の女優さんにも、この手の顔の人がいなかったかと、つい思ってしまうほど近しい気がする。ともあれ、その合掌のポーズといい、優雅な身のこなしといい、なかなか魅力的なお嬢さん方だった。

01.jpg


 帰りがけに、代々木公園の中を通って千代田線の明治神宮原宿駅に向かったが、その途中のバラ園に立ち寄った。古河庭園とはまた違ったバラも植えられていて。今を盛りとばかりに咲きほこっている。それにしても、公園内を行きかう人々は数多く、芝生にも大勢の人々が座り込んでそれぞれに楽しんでいる。昨年のデング熱騒動がまるで嘘のようだった。日本人は、忘れやすいのか、図太いのか、それともデング熱の怖さを知らないのか・・・。どれも当たっていそうで、それがまた怖い。

01.jpg




(平成27年5月16日著)
(お願い 著作権法の観点から無断での転載や引用はご遠慮ください。)





悠々人生・邯鄲の夢





邯鄲の夢エッセイ

(c) Yama san 2015, All rights reserved