アップルの創業者スティーブ・ジョブズは2011年10月にその生涯を閉じたのであるが、最後まで新商品やサービスの開発にその全精力を傾けていた。亡くなる年の6月には、入院先の病院からわざわざ駆けつけて新サービスを発表したほどである。実はそれがiCloudである。私はてっきり、ちょうどその頃、世界的に始まったばかりのクラウド・サービスを作るのだろうと思っていた。事実、グーグルやマイクロソフトなど世界のIT業界の大手は、個々のパソコンにソフトを入れるという従来の方法から、集中的に管理しているホスト・コンピューターでデータ処理を行ってその結果を個々のパソコンに打ち返すというクラウド方式へと変わりつつあった。一種のシン・クライアント(ユーザーが使うクライアント端末に必要最小限の処理をさせ、ほとんどの処理をサーバー側に集中させて行うシステム構想)である。そのほかEvernoteなどは会員から集めた情報をホスト・コンピューターでデータ管理を行うというもので、集中して管理するという意味では、これも一種のクラウド方式であろう。iCloudは、前者ではなく後者のひとつなのである。いずれにせよこうしたクラウド方式というものは、インターネットの高速通信と大規模容量のデータ蓄積技術が発達してきたからこそ、可能となったものである。iCloudも、そうしたもののひとつだと思っていたが、どうやらそうでもなかった。というのは、スティーブ・ジョブズが発表した3年近く前から、少しも進歩していないのではないかと思わせる出来事があったからである。 今から2か月前の昨年12月、私がiPhone5に買い替えてから1年を過ぎた頃のこと、自分のパソコンにiPhoneのバックアップをするのがいささか億劫になってきた。バックアップに小一時間もかかるようになったからだ。それというのも、日記代わりにしているi手帳というソフトが主な原因である。これに孫や家族の写真から新聞の切り抜きまで貼り付けるということを3年以上もやってきたので、データ量が膨大なものとなってきたからだ。バックアップ・サイズは、iPhone5全体で28.5GBあるが、うち22GBがそのi手帳のデータ量である。しかし、このアプリをやめて他のアプリに乗換えるという手もあるが、いやいやもうこのi手帳だけは手放せなくなった。というのはグーグルのスケジュール帳と同期してくれるし、文章はもちろん、先に述べたように写真、手書きのメモ、それに録音まで貼り付けられる優れた使いやすいアプリなので、これからも引き続き使うつもりだし、ますますデータ量が増大する見込みだ。もちろん、毎日のデータは別途PDFファイルにしてパソコンに取り込んではいるが、それでは写真は拡大できないし、録音データも聞き取れない。やはり原データが必要なのである。もちろん、このi手帳にもパソコンにデータをバックアップする機能があるのだけれど、そのためにはいちいちパソコンを立ち上げないといけないし、これもやはり小一時間もかかる。 そこで、12月下旬に、iPhone5のiCloudバックアップを使うことにした。これは、iPhone4Sの時代に使っていたのだが、その後データ量が増えてきたことから、時間がかかるようになって、止めていたものである。説明によると、「このiPhoneが電源に接続され、ロックされ、Wi−Fiに接続されているときに、カメラロール、アカウント、書類、および設定が自動的にバックアップされます」とのこと。だから、自宅で寝る前にiPhone5を充電ケーブルで電源に繋いでいておくと、朝には自動的にバックアップが終わっているというイメージである。とまあ、そういうことで、とりあえずストレージの増量を申し込んだ。最初はバックアップに必要な容量がよくわからなったから、通常の5GBに加えて10GB、年間2,000円を申し込んだが、当然それでは足りるはずがなくて、20GB、年間4,000円とした。ところがそれでも容量不足だったので、とうとう最高額の50GB、年間10,000円にした。これでバックアップ容量は、フリーの5GBと合わせて、55GBとなる。というわけで、電源に繋いでiCloud上でバックアップを取り始めたのだが、よくわからないまま、「最後に行ったバックアップが完了できませんでした」という表示が出た。困ったなぁと思いながらも、そのあと年末年始の多忙期があったので、そのまま放置しておいた。 年が明け、この件を思い出したが、その前に、iPhone5上でiCloudのバックアップ容量をクレジットカードで購入する際、最初2,000円の支払いから始めて4,000円を払い、最後に10,000円を払ったから、ひょっとして三重払いになっているかもしれないという気がして、アップルのiCloud担当(0120 277 5352)に電話し、その点の確認を依頼したら、結局、クレジットカードのヒストリーを見れば良いといわれた。そこでしばらく待って自分のクレジットカードの記録を確認したところ、2,000円と4,000円と10,000円が次々に引き落とされた後、ちゃんと2,000円と4,000円がまた戻ってきていて、ひと安心した。 ところがその後、何度か試してみたところ、ちっともバックアップが出来ない。バックアップ中という表示が出て、残り時間を計算中となる。しばらくして8時間かかるという表示が出る。それから本当に7〜8時間経ってから、あと1分未満という表示になる。ころがそれからが長い。それが出てから更に3〜4時間ほどして、バックアップ出来ませんでしたという表示になって失敗するということが10回近く続いた。とうとう1月8日になって再び(0120 277 5352)に電話したところ、担当者が出て、「iCloudのアカウント削除をしてやり直せとか、あるいはすべてリセットせよ」などといわれたが、後者はまた色々と再設定する必要があって面倒なことになるので止めて、アカウント削除だけ試みたが、やはり、同じような経過をたどって最後に「バックアップ完了まで1分未満」の表示が出たのに、結局、失敗に終わった。あるいは別の失敗パターンとして、下のスクリーン・ショットのように「バックアップ完了まであと4分」と出てそれから4分どころか5時間もかかって青い線は最後まで進むものの、やはり「バックアップできませんでした」となる。全くもって、時間の無駄遣いである。 次の週末の17日から再び、そのNさんにお付き合いいただいて同じようなことを一週間やったが、結局バックアップ出来なかった。不思議なことに、Nさんの提案で、容量をかなりとっているi手帳とEvernoteの分を外した残りの2.5GBのバックアッブを試してみても、あと1分という表示が出てから結局バックアップができない。これは、ひょっとしてこのiPhone5が構造上おかしいのではないかという気すらした。そこで、私からNさんに申し上げたことは、@こうなった原因はiPhone5のパワー不足とiOS7との相性の悪さか、あるいはiCloudのスピードの遅さのせいかもしれない。いずれにせよこのiPhone5のキャリアとの契約は2年間で、今年の11月までその契約が残っているから、いま新しいiPhoneに買い替えるという選択肢はない。したがって、AそちらからこのiPhoneを修理していただくというならそれでも結構。B日割り計算で1万円を返金するというのも、一案である。Cしかし、私はどうせ今年中に新しいiPhoneに買い替えるから、iCoudバックアップをあと1年無料で延長するというのも一案であるから、3択で選んでくださいれと申し上げた。すると、部内に諮って一週間後に連絡するということになった。そしてNさんがいうには、「iPhone構成ユーティリティ」というものをダウンロードして、それでバックアップができないという現象をログにとり、それと「あと1分でバックアップを完了します」という画面を撮った写真を送ってほしい。それで部内において相談するという。それが23日のことである。 これには困ってしまった。結局、パソコン自体の「システム回復」を行ったところ、当たり前だが、その変な表示は出なくなったし、iTunesにもバックアップ出来た。しかし、そのiTunesを開いたとき、「バージョン11.1.4」にアップデートするか?と聞かれたので、これが原因かもしれないと思い、念のためインターネットを検索してみた。すると、まさにこのアップデートが原因で、私とまったく同じ問題が世界中で発生していることがわかった。つまり、「iPhone構成ユーティリティ」のせいではなく、「iTunesバージョン11.1.4のバグ」のせいだったのである。ということで、バックアップ問題が落ち着くまで、このアップデートは当面しないでおくことにした。。(その後、iTunesバージョン11.1.5」というアップデートで、この問題は解決した。) そこから更に1週間経って、Nさんから電話があった。1月23日22:14にバックアップがとれているというのである。自分のiPhoneをみると、確かにその通りであるが、これは2.5GBしかなく、容量22GBのi手帳とEvernoteなどの嵩張るソフトの分を外したものである。だから、出来て当然なのであるが、最初はiPhone5そのものが構造的におかしいのではないかと疑っていたから、その疑いは晴れた感がある。そのうえで、再び全体のバックアップを試したところ、やはり失敗に終わった。というわけで、とうとうバックアップを諦めて、Nさんに2013年12月22日の購入からの期間に相当する日割り計算分を返金していただくようにお願いしたところ、快く返金に応じていただいた。支払った1万円に対し、8,575円がクレジット会社経由で振り込まれていた。まあこれで、とりあえずは終わったが、これはおそらく、クラウド・システムとしてのiCloudが未成熟なシステムだったのか(少なくとも、スビードは非常に遅い)、あるいは、iPhone5にそもそもiOS7を載せて動かしているということ自体が、CPUのパワー的に無理をしているのかもしれないと思うのである。今年の終わりに、次世代のiPhone6の時代になったらまたこれに買い替えるつもりなので、そのときに再び試してもよいと思っている。その頃にはスピードが増しているのではないかと期待しよう。 それにしても、iCloudの担当者であるNさんには、よくやっていただいた。対応も実に丁寧であるし、遅くまで電話をいただいたり、問題の解決を図ろうという熱心で誠実な姿勢が感じられた。私も本件に相当、時間を使ったが、Nさんも同じだったわけで、結局は目的を達せずに失敗に終わったものの、その点は、心から感謝している。やはりアップルは、良い会社である。
(平成26年2月11日著) (お願い 著作権法の観点から無断での転載や引用はご遠慮ください。) |
(c) Yama san 2014, All rights reserved