悠々人生のエッセイ



ふじさわ江の島花火大会の20号緑芯錦冠先色蜂



ふじさわ江の島花火大会( 写 真 )は、こちらから。

 10月19日、江の島で花火大会が開催されるという。時間は午後6時から6時45分までだ。そうすると東京に帰り着くのは午後9時前後となるはずだから、もうすぐ5歳になる初孫ちゃんを連れていくのにはちょうど良い。この時期の花火大会としては、花火カレンダーの全国花火大会による関東の人気ランキングで第1位の「土浦全国花火競技大会」があるが(注)、帰京するのが真夜中になりそうだから、小さい子連れには無理である。

ふじさわ江の島花火大会


 また例の通り電車で行くのも良いが、調べてみると「ぽけかる倶楽部」という旅行会社で丸の内ビル前午前11時50分発、帰京午後9時のツアーがある。これまでの花火大会でやってきたように、花火の帰りに子連れで混んでいる電車に乗るというのもなかなか大変なことなので、ではこちらにしようということで申し込んだ。手続きはインターネットで簡単に出来て、支払いもクレジット・カード決済だから手軽である。ツアー・イベント名:<湘南の夜空に煌めく秋の華! 『ふじさわ江ノ島花火大会』バスツアー(江ノ島にて海鮮丼のお食事付)>(バス代+花火観覧「桟敷席」チケット代+添乗員)というわけだ。1人分8,980円。

ふじさわ江の島花火大会


 当日になった。丸の内ビルの東京駅と新丸の内ビルに面した角にツアー・バスが到着して、初孫ちゃんと一緒にそれに乗り込んだ。参加者は意外と多くて30人、添乗員は60歳を過ぎたと思うくらいの胡麻塩頭のおじさんである。出発前、初孫ちゃんは立ち上がって盛んに後ろの席のおばさんと話をしている。そうこうしているうちに、バスが出発するのでシートベルトをさせるために初孫ちゃんを座らせた。首都高に乗ってまず横浜に向かう。無理やり座らせられてご機嫌斜めだった初孫ちゃんも、途中、レインボー・ブリッジや東京湾の海底トンネルをくぐって行くのに興味を持ち、景色の変化を楽しんでいる。そうこうしているうちに、かつて自分の保育園があった横浜ランドマークタワーを見つけてはしゃいでいる。バスはベイブリッジすぐ脇の大黒パーキングエリアに到着した。そこでトイレに行ってもらい、またバスに乗る。横須賀半島根元の山の中を走り抜け、逗子から高速道路を降り、逗子と鎌倉を抜けて午後1時20分に江の島に到着した。

ふじさわ江の島花火大会


 こんな早く着いてどうするのだろうと思っていたら、辻堂の駅の北側にある「テラスモール湘南」というところに連れていかれた。ここで1時間ほど過ごしてくれとのこと。バスから少し歩いてこのショッピングモールに着いたが、途中は風も強くてとても寒かった。気温は15度とのこと。われわれにとっては、まるで真夏から晩秋に一足飛びに連れて来られたようだ。これは初孫ちゃんが可哀相だと思って、ショッピングモールのすぐ入口にあるユニクロでサイズ120のジャンパーを買った。いろいろな色調があったが、初孫ちゃんが「青がいい!」というので、真っ青のものを選んだ。着させてみると、まるで青い蓑虫のようで笑えて来たけれど、暖かそうだからまあ良いか。迎えに来たバスに再度乗り込み、夕食の会場に向かう。そこは江の島のKKRニュー向洋というのだけれど、まあ、それなりのものが出てきた。こんな海鮮丼、果たして初孫ちゃんが食べるのかと思っていたら、玉子だけでなく、魚も2種類を選んで食べ、それから寿し飯も半分近くも食べていたのは意外だった。

ふじさわ江の島花火大会


 午後5時となり、いよいよ花火会場に向かう。バスの駐車場である江の島タクシーから有料観覧席まで歩いて10分の道のりだ。観覧席はどこかと思ったら、何と江の島に繋がる江の島大橋の中ほどにある海岸そのものに並べられたパイプ椅子の列である。そこの指定された番号の席に座り、午後6時の開始を待つ。気になるのは天候だ。東京の家内からのメールによれば、あちらではもう雨が降り始めているそうだ。こちらはショッピングモールにいた時にポツポツと雨粒が落ち始めたけれども、少なくとも今は雨が降っていない。でも、空は雲が低く降りてきていて、いつ降り始めてもおかしくない。そんなことになれば、せっかくここまで来た甲斐がないというものだ。加えて、いささか心配なことに、風が強くなってきた。それにつれて体感温度も低くなってきたので、初孫ちゃんを膝の上に乗せて抱いた。手持ち無沙汰になった初孫ちゃんが私の三脚やカメラに手を出そうとするので、大好物のメロンパンを食べさせてその手が自然に塞がるようにした。そのうちようやく午後6時となり、藤沢市長の開会宣言で花火大会が始まった。

ふじさわ江の島花火大会


 実は、これがキヤノンEOS−70Dを使った花火の最初の撮影だったのだが、何か気が乗らなくて事前の準備を全然していなかった。そもそも初孫ちゃんの世話があるから、カメラを持って行くのは止めようと思っていたくらいだったが、出発直前になって三脚が入るリュックが準備出来たからカメラを持ってきたという体たらくである。それでも、いざ会場に来てみて三脚をセットし、その上にカメラを乗せると、良い写真を撮りたくなった。リモート・レリーズ(Remote Release )、つまりカメラのシャッターボタンを押す代わりに離れた場所からシャッターを切るアクセサリーは買ってあったのだが、使うのは初めてだ。カメラの脇にある適当な穴に差し込んで、ボタンを押すと、シャッターを切ることが出来た。長い間押し続けるのはどうするのかと思って試してみたところ、押したまま上にスライドすれば押しっぱなしになるようだ。まあ、これで適当にやるか・・・。当然、カメラ撮影の設定は「B」つまりバルブである。天文現象でなくて花火だから1秒から3秒くらい、シャッターを開いておけばよいだろう。それから、背景に花火の煙が光って入り込むと画面が汚くなるので、露出補正をマイナス2ないし1.5にしよう。これらの操作を片手で初孫ちゃんの相手をしながらもう片方の手でやるのだから、大変だ。

ふじさわ江の島花火大会


 いただいたパンフレットによると、それなりのシナリオがあるらしい。シーン1はプロローグで「しっとりした前半から、これからの盛り上がりを予感させる迫力ある花火に続」くという。花火の打上げが真上だけでなく、斜め上に上がって行くのは斬新で美しい。

 シーン2はメモリアル・ステージということで、花火そのものは普通だが、打ち上げ前にメッセージが入る。たとえば、しゅんくん、ここ江の島で元気に育ってね」(しゅんくんのパパとママより)、きらら、1年半ありがとう! 今年も愛してます」(カンカン)、91歳おめでとう!来年も一緒にいようね」(佑樹、萌華、双葉)、頑張れ藤沢応援しているよ。光の芸術ありがとう」(藤沢湘南台病院)などというものである。これだけを見ると千葉の花火大会とあまり変わらないが、広告宣伝色が全くないのですっきりしている。それに続いた音楽花火は、コンピューター制御による、まるで組体操のようなもので、感心して観ていた。初孫ちゃんの方を見ると、うっとりして「いいねぇ」などとつぶやいている。笑ってしまった。


ふじさわ江の島花火大会


 シーン3は、光の造形ということで、芸術玉の数々や色とりどりの花火で様々なキャラクターが登場する。しかし、これがなかなか撮りにくい。シャッター開放が短かければ写らないし、長いと何がなんだかわからなくなる。こういうものを調整して自然にみせる人間の眼というものは、つくづく素晴らしいと思う。

 シーン4は、エビローグというもので、「フィナーレを飾るのは江の島花火名物、金色の大瀑布そして特大2尺玉で大会を締めくくります。壮大なメロディーにのせて、花火の迫力を体で感じてください」とのこと。確かに、最後を飾る一面が金色となった大花火と、大空一杯に、赤、青、緑、白、黄色の下向きの箒の先のような形が広がる「20号緑芯錦冠先色蜂」(冒頭写真)という花火は、素晴らしいものだった。


ふじさわ江の島花火大会


 この大会は、花火の合間にかかっている曲も、湘南らしい雰囲気が出ていてなかなか良かったし、花火そのものも全部で3000発と少ないが、何よりもあの江の島のサイズにぴったりとなるように厳選された感があった。また、観覧席と花火との距離がちょうどよくて、見やすいし、写真も撮りやすい。なるほど、このローカルの花火大会が関東地方で土浦全国花火競技大会に次いで第2の人気をよんでいるだけのことはある。

ふじさわ江の島花火大会


 ところで、いただいたパンフレットの中に書かれていた記事の中で面白いものがあったので、ここに引用しておきたい。第一は、日本の花火と外国の花火の違いである。日本の花火の典型例である芯のある菊の形が出る花火は、球体を作るのだが、真ん中に導火線、その周りに割火薬、その周りに心星、その外側にまた割火薬、その外側にまた星という形をしている。これによって「(1) まん丸く大きく、空に五彩七彩の花を広げる、(2) 花弁ひとつひとつの色が変わる、(3) ひとつの円でなく、花の芯のように二重三重の円を描く」という。これに対してアメリカ・ヨーロッパ・オーストリア系の花火は、そもそも筒型が多くて、花火が開く形は、下向きの箒の先のような姿をしているという。なるほど、さきほどの「20号緑芯錦冠先色蜂」は、これかもしれない。

ふじさわ江の島花火大会


 第二は、花火の楽しみ方である。単発で打ち上げられる割り物花火は、「(1) 玉の座り〜 美しい花火が開くには発射された玉が空中に上がり上昇力を失ってちょうど落下する瞬間の静止状態で破裂することが理想的で、この瞬間を逃すと丸くなくなって花火の形が崩れてしまう、(2) 割り口〜 玉が座ったところで点火し、星が一斉に飛び散る瞬間のことだが、すべての星が同時かつ均等に飛びちらないといけない、(3)〜 つまり玉の開いたときの形で、どれだけ均等のとれたきれいな球形に見えるかがポイントで、たとえば瞬間的に素早く開く玉は男性的だが、これとは対照的にゆっくりと大きく開く玉は女性的で優雅なおおらかさを感ずる、(4) 星が泳ぐ・抜け星〜 前者は星がいびつだったりその表面の燃焼が均等ではなかったりした等のために軌跡が曲がったり均等ではないこと、後者は星の一部が着火せずにそこだけ抜けてしまうこと、(5) 消え口〜 すべての星が一斉に吹き消すように消えるのが良いとされている」とのこと。

ふじさわ江の島花火大会


 それから、煙火(花火)の形である。「」というのは、芯とその周辺の二重三重構造の球体で、ひとつひとつの星が細長くなっている。「牡丹」というのは、同じく二重三重構造の球体だが、個々の星が細長くなくて丸い。「」は、下向きの箒の先のような形。「大柳」は、柳が大きくなっている。「スターマイン」は、上にたくさんの丸型の花火を何発も連続して打ち上げる。「小割」は、大きく打ち上げるが、それが中くらいの花火に分かれてそのひとつひとつが菊のように開く。「土星(立体型物)」というのは、土星やキャラクターを模ったもの。「椰子」というは、文字通り椰子の木のような形になっている。





(注)花火カレンダーの全国花火大会による関東人気花火大会ランキング(平成25年10月9日現在)

第1位 第82回 土浦全国花火競技大会(茨城県)
第2位 ふじさわ江の島花火大会(神奈川県)
第3位 燃えよ!商工会青年部!!第12回 こうのす花火大会(埼玉県)
第4位 2013 NARITA花火大会in印旛沼 8th(千葉県)
第5位 あついぞ!熊谷 第64回 熊谷花火大会(埼玉県)
第6位 第36回 隅田川花火大会(東京都)
第7位 第35回 足立の花火(東京都)
第8位 第2回 寒川みんなの花火(神奈川県)
第9位 第28回 神奈川新聞花火大会(神奈川県)
第10位 納涼花火(神奈川県)







(平成25年10月19日著) 「初孫ちゃんと花火大会を見物 4.」と重複掲載

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