これまでの自分自身の買い物の頻度を振り返ってみると、カメラについて、私はどうも、およそ2年おきぐらいに買い換える傾向にあるようだ。2009年のオリンパスE−P1から始まって、2011年のE−P3、そして今度のキヤノンEOS70Dとなった。なぜこのEOS70Dにしたかは、前回のエッセイで記したところである。そこでこれからしばらくは、このカメラの使い勝手や撮った写真について書いていきたい。
先日、アマゾンから大きな段ボール入りの荷物が届いた。待ちに待ったキヤノンEOS70Dである。その箱の中身と、その後バラバラと届いた小分け発送荷物の内容は、次の通り。
(01) Canon デジタル一眼レフカメラ(EOS70D)本体及びCanon EF-S18-135mm F3.5-5.6 IS STM付属EOS70D18135STMLKの望遠レンズキット 145,258円。
(02) Canon 望遠フルレンズキットEF70-300 F4-5.6 IS USM フルサイズ対応、 52,020円。
(03) CanonレンズフードEW-73B、2,254円。
(04) Canon カメラ用保護フィルター 58mm、2,309円。
(05) CanonレンズフードET-65B、3,436円。
(06) Canon カメラ用保護フィルター 67mm、2,891円。
(07) Canon 一眼カメラケース ブラック EH21-L、11,635円。
(08) Canon バッテリーパック LP-E6、 6,500円。
(09) ハクバ CanonEOS70D専用液晶保護フィルム DGF-CAE70D、1,600円。
(10) Canon EOS70Dスーパーブック (Gakken Camera Mook) 、1,890円。
(11) SDHCカード32GB 2枚、8,680円。
(12) Canon Remote Swich RS-60E3 、2,080円。
(合計額) 238,244円。
カメラ(キヤノンEOS70D)を手にとってみると、かなり重い。それに、ボタンやダイヤルからは、相当、武骨な感じを受ける。小型軽量のオリンパスペンシリーズを使い慣れた身には、これは大丈夫かと思うくらいだ。データによれば、本体の重さは321gから755gへと、2.35倍になっている。EF-S18-135mm F3.5-5.6のレンズが480gだから合計1,235gだ。これでは、重く感じるのも無理はない。でも、私はもともと手のひらが大きいから、その手にカメラ左側の前に出っ張った部分がピッタリ吸い付くように持つことが出来る。そういう意味では、むしろこちらの方がたいそう具合がよろしいことに気が付いた。多少重いのも、ダンベルの練習と思えば大したことがないと考えよう。
さてそれではと、さっそくレンズを取り付けて、充電済みのバッテリーとSDHCカードを差し込む。昔から私は取扱説明書を読まないタイプの人間なので、そのまま各種ボタンを触ってみる。私の場合は、習うより慣れよで、この方がよほど早く機械に慣れることができるからだ。もっとも、初めてパソコンを触ったときもこの調子でやっていて、危うく壊しそうになったことも一度や二度ならずあったから、あまり誇らしく言えるものではない。少なくともカメラに関しては、基本的な操作や用語は、前のオリンパスのカメラで慣れているから扱えるともいえる。
知らず知らずのうちに、やはりオリンパスE−P3との違いを探してしまう。その先代のオリンパスE−P1の時代からずーっと、このオリンパスペンシリーズを4年間も使っていたのだから、それも当然か。ざっと見たところ、まずはレンズのCanon EF-S18-135mm F3.5-5.6の直径がとても大きいから、それだけでかなりの存在感がある。オリンパスの標準ズームレンズM.ZUIKO DIGITAL 14-42mmは直径37mmだが、こちらは67mmなので、大きな穴が空いている感じだ。
スイッチを入れて近くのものを撮ろうとして、背面の小型液晶パネルのディスプレーを見たが、何も映っていない。そうだこれはオリンパスのデジタル一眼カメラではなくて、デジタル一眼レフカメラなのだと改めて気が付く始末。そこで初めて、使い慣れない光学ファインダーを覗くと、なるほど良く見える。しかし、デジタル一眼のオリンパスに馴染んだ身からすると、やはり液晶ディスプレー(キヤノンでは、これを「ライブビュー」というらしい)で見たい。適当にボタンを触ると、ガチャという音がしてディスプレーに画面が映った。なかなか鮮明な画像が映る。しかも、この液晶ディスプレーそのものは色々な角度に変えられる。これは位置の低いものや高いものを撮るのに便利だ。それに、画面にタッチして焦点が合うとそのままシャッターを切ってくれる機能も気に入った。モードダイヤルを動かすのに、いちいち円の中心の小さなボタンを押さなければならないのは手間だが、これによってダイヤルがいつの間にか動いてしまうという間違いは避けられる。一通りやって、どのボタンについてもある程度は目星が付いたので、さて、外で試し撮りをしてみることにしよう。
(1)祭禮の夜景
まずは、夜景などの撮影環境が厳しい場合の能力である。カメラが届いたその次の日、近くの根津神社で毎年恒例の秋の祭禮があった。このキヤノンEOS70Dには、手持ち夜景モードというのがあって、夜景の撮影に三脚を使わなくても、たった一回シャッターを押すだけで高速で4枚を連続撮影してそれをカメラ内で合成し、ブレを抑えた写真にしてくれるとのこと。夜祭りの撮影にはピッタリの機能だ。
ということで、わざわざ午後8時を過ぎた頃に神社の境内に行ってみると、たくさんの屋台が並んで、焼きそばのソースの香りが辺り一面に漂い、多くの人がそぞろ歩きをしている。あまり人がいない方向を狙ってシャッターを切る。すると、ダダダダッという削岩機ではないかという音がして、何事かと驚くほどだ。確かに一秒間7枚という勢いで撮っている。2秒ほどして、次の写真が撮れる。ということは、もう写真が記録されているので、それを再生してみる。ああ、こらは良く撮れている。早歩きの人物が前を横切ったので、それはどうかと思ったが、それはちゃんと消えている。どうなっているんだろうと驚くほどだ。
楼門の前にある池の周辺には、人々が座って、屋台で買ったものを食べたり、話し込んだりしている。肉眼ではとても暗く感ずるのだが、それを撮ってみると、わあ凄いとびっくりするほどの写真が撮れた。もちろん粒子は粗くなっているものの、この写真は、すでに人の目のレベルを超えている。それから夢中であちこち撮って回ったが、本当に三脚の必要がない。これには、感心した。
(2)動き回る初孫ちゃん
翌日、動きが早くて直ぐに表情が変わってしまう最も手ごわい被写体、初孫ちゃんの登場である。場所は、東京都内のキドキドという子供の遊戯施設。なぜここかというと、適当にお客さんの数が少なくて、初孫ちゃんが伸び伸び遊んぶことが出来るからである。何しろこの子、最近は私をからかうのを覚えてしまって困っている。私がレンズを向けると、わざとクルリっと顔をそらせて、なかなか撮らせてくれない。それで、私がカメラを持って追い駆けると、鬼ごっこの要領でゲタゲタ笑いながら高速で走って逃げる。とても追い付けない。そのくせ、私が追い付けないと分かると、こちらを振り返ってニンマリと笑って天使のような笑顔を見せる。それを撮ろうとカメラを向けた途端、くるりと反転して、また逃げるという有り様だ。
そこで、作戦を変えて、本人が気付かないほどの遠くから、キヤノンEOS70Dに超望遠レンズを付けて狙うことにした。幸い、ここのスタッフはどの人も親切で、暇なときは孫の相手をして追いかけっこなどをしてくれる。それを超望遠で撮ろうというものだ。削岩機のような高速シャッターが鳴り響く。まずは、ボール投げの瞬間だ。これは簡単で、ピントは一定にしておくだけで良い。それで撮影したのだが、凄い連続写真が撮れた。何が凄いかというと、初孫ちゃんがボールを持って振りかぶる。それを的に向かって投げ出す瞬間の顔の歪みまで写っているのには驚いた。家内いわく、「大人っぽいね」。次にトランポリンをし始めた。これは、自動追尾のオートフオーカスを使った。これも見てびっくり。初孫ちゃんが上に飛び上がる時には顔の造作もやはり上に飛び上がって変な顔になっている。下に着地する時はその逆で頬っぺたが下に下がるので、見たことのない顔になる。いやはや、運動すると、こんな顔になっているとは知らなかった。このカメラを使わなかったら、永久にわからなかっただろう。もっとも、それが意味のあるものかどうかは、別問題である。
(3)巾着田の曼珠沙華
新聞を読んでいたら、埼玉県日高市で巾着田の曼珠沙華が満開を迎えているという記事を見つけた。曼珠沙華つまり彼岸花は、咲いてもほんの1週間もしないうちに枯れて汚なくなってしまうので、東京の公園でたまたま見つけても、すでに盛りを過ぎていることが多い。それが500万本も集まって咲いているなんて、なかなか見られない風景だと思い、カメラを持って出掛けることにした。
西武池袋線に乗って飯能まで行き、そこから高麗駅に着いた。田圃の中の道をおよそ15分ほど歩いて巾着田に到着した。日高市のHPによれば、「日高市内を流れる清流、高麗川(こまがわ)の蛇行により長い年月をかけてつくられ、その形がきんちゃくの形に似ていることから、巾着田(きんちゃくだ)と呼ばれるようになりました。直径約500メートル、面積約22ヘクタールの川に囲まれた平地には、菜の花、コスモスなどの花々が咲き、中でも秋の曼珠沙華群生地は辺り一面が真紅に染まり、まるで赤い絨毯を敷き詰めたようです。毎年多くの人がその美しさに惹かれて訪れます」とのこと。地図を見ると、なるほど、川の蛇行で大きな巾着の形をしているその南端と東端に曼珠沙華の大きな群生地がある。そのうち、南西部分が早咲き、東端部分が遅咲きと、上手く配置してある。この秋の季節には曼珠沙華とコスモス、春には菜の花と桜が咲くという。川にはカワセミの営巣地もあるらしい。
見物客がぞろぞろと歩く中、私もその中に混じって進んでいくと、一面が燃えるように真っ赤な場所にたどり着いた。そこで、入場料300円を支払って入った。ところが、それは広大な曼珠沙華群生地のほんの一部で、そこからずーっと、赤い曼珠沙華の花が果てしなく続くこと、続くこと。日高市・日高観光協会のパンフレットに「500万本の曼珠沙華」と書いてあったのは、唐の詩人・李白の白髪三千丈のたぐいかと思っていたが、そうでもなさそうだ。カメラ・キヤノンEOS70Dを取り出して、その一面の曼珠沙華を撮ってみるのだが、どこを向いても同じ風景が繰り返されてしまうから単調で撮りようがなくて困ってしまう。一本の曼珠沙華をアップで撮ったりしても、薔薇などと違って花に個性がないから変わりばえしない。たまに白い曼珠沙華があるからそれを撮ったり、あるいは曼珠沙華の上に黒揚羽蝶を見つけたり、木の幹に生えている曼珠沙華が面白いからそれらを撮ったりしてみた。
帰り際になって、果たしてプロのカメラマンは、どんな写真を撮っているのだろうと気になり、改めて日高市のパンフレットを見てみた。すると、曼珠沙華の群生地に光が射し込んでいる構図になっていた。なるほどと思ったけれども、残念ながら私が訪れたこの日は曇りだったので、そういう光の魔術は使えなかったのである。
(平成25年9月23日著)
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