2012年9月21日にアップルがiPhone5を日本で発売した。テレビによるとその前の日から銀座のアップル・ショップはたいそうな人だかりだったので、何も急いで買うこともないと思い、2週間ほど経ってソフトバンク銀座支店に予約を入れておいた。ところが、忘れられたのか、11月に入っても何の連絡もない。そうこうしているうちに、自宅近くのソフトバンクの支店では、「今なら予約なしでiPhone5をお持ち帰りになれます」などというポップ広告が風にひるがえっている有り様だ。では、こちらに頼もうと、17日の土曜日に、そこへ2台のiPhoneを持ち込んだ。私の使っているiPhone4Sと家内に使ってもらっているiPhone4だ。私は、iPhone4Sの方をiPhone5へと機種変更し、iPhone4をiPhone4Sにして、そのまま家内に使用してもらうというつもりだった。 朝10時からの開店らしいが、その時刻の少し前に行ってみると、まだシャッターが下りていた。しばし待っているとシャッターが開き、私はその日の第一号の客となった。担当は、若い女の子である。持ち込んだiPhoneをその目の前に二つ並べて、機種変更を申し出た。まず、やりたいことを整理すると、私のiPhone4SをiPhone5へ機種変更し、iPhone4Sに家族サービスを付ければよい。ただしその場合には、家内の電話番号とメールアドレスが変更になるそうだ。家に電話をして変更の了解をもらい、そうすることにした。残ったiPhone4は余るので自分で持っているか誰かに使ってもらうか中古品として売り飛ばすか、ご自由にということらしい。この方針が決まるまで、約30分もかかってしまった。 それでは具体的な手続に入るということで、運転免許証の確認を行い、現在の契約内容を見てもらうと、意外なことがわかった。現在、私の使っているiPhone4Sに対して、家内のiPhone4は既に家族サービス扱いとなっているのだ。その状態で私のiPhone4SをiPhone5へと機種変更すると、その分の解約金が発生するかもしれないという。でも、実質的に同じことでそのひも付き契約をそのまま引き継ぐわけだからそれでどうかと、ちょっと本部に聞いてもらうことになった。電話をしてもらったところ、たらい回しされたり延々待たされたりした挙句、やっぱりダメという結論になった。それで解約金9,975円が発生した(注)。まあこれは、努力してもらった結果だから、致し方ない。その次に、現在、私の使っているiPhone4Sには残債があるので、どうするかということになり、それはただちに精算して支払うことにした。これが4万円強である。 それで、新iPhone5の料金体系の話に移り、パケットし放題フラットというプランに加入すると、月5,460円になる。これは旧iPhone4S時代と比べて約1,000円高く、AUに顧客が流出している原因である。だいたい、携帯電話会社が他社から顧客を奪おうといろいろな割引などを用意しているから、長く契約している者ほど損をするという仕組みになっている。これなどもそのひとつといっても過言ではないという気もするが、今から携帯電話会社をAUに変えるのも面倒なので、そのままソフトバンクを継続することにした。それで、料金プランはホワイトR(i)月980円で24時間とテザリングオプションを付けて契約した。まあ、ごく平均的なものだ。 それで新しく家内のものになるiPhone4Sはというと、料金プランはやはりホワイトR(ゼロから定額)(i)、パケット割引もゼロから定額(最大4,980円)、キャンペーンは4G/LTEスマホ家族キャンペーンというもの。ただ、この点は2年後に区切りが来るらしい。この契約はもちろん新規扱いとなるので、新たな電話番号が付与されて、メールアドレスも新規に与えられた。電話番号は特に頼み込んで、結論からいうと、元の番号とたった2つの数字だけが異なるものにしてもらった。これなら、関係者に変更をお願いしやすい。以上の手続きが終わって出てきたのは、午前11時半だから、1時間半もかかったことになる。プランの検討や比較でそれなりに頭も使ったし、これだけ担当者とやりとりしたわけだから、いやはや、少し疲れ気味である。そこでお昼は、家内と近くのフレンチ・レストランに行って、野菜たっぷりのフル・コースをいただいて元気の回復を図った。 実はこの機種変更の前日、有楽町のビックカメラに立ち寄ってiPhone5専用の青い皮カバーと、iPhone5の表のガラス面に張るフィルムを購入していた。iPhone用として売られている普通のカバーにはいろいろと種類はあるが、いずれも裏面から抱き付くような形のものばかりである。しかしそれだと、表のガラス面を保護することにはならないので、私は裏面だけでなく、表の面をも覆ってカバーしてくれるものが欲しかった。ネットで調べると、本型のものがあったが、それだと薄さと軽さを誇るiPhone5のせっかくのセールス・ポイントが減殺されてしまう。ビックカメラでそのようなものがありはしないかと探していたら、このカバーに出会った。これは、いわば観音開き風に裏も表も覆ってしまうタイプで、しかも軽いし薄い。でも、心配な点もある。それは、カバーの上下が開いているから下からすっぽりと落ちそうなのだ。しかし、iPhone5本体が落ちないように特殊な粘着フィルムが貼ってある。それにくっつけると、あら不思議。iPhone5がぴったりと留まるという仕掛けである。本当かなとやや疑問に思いつつもそれを買い、実際にiPhone5を収めてみたら、ぴったりはまって落ちないことを確かめた。それから、表面に張るフィルムとして、今はやりの眼によくない青い光線を遮断するというものを買った。これは、日の光にかざすと薄い青色で、値段も倍くらいだけれど、私は日常よくこのiPhone5を使うから、必要な投資だと考えた。実際にiPhone5の表に張ってみると、なかなか具合がよかった。 ところで、この機種変更の直前、自宅のパソコンのiTunesを開いて私のiPhone4Sのバックアップを行ってあった。もちろん、家内のパソコンでも同じくiPhone4のバックアップを完了していた。そこで、自宅に帰り、iPhone5をパソコンのiTunesに接続して復元した。途中で画面を見ると、各画面ともごく一部しか復元されていなかったので、これで大丈夫かと思ったものだ。しかし、2時間ほど経って終了したときに改めて見たところ、元のiPhone4Sと寸分違わない配置になっていたので、安心した。iPhone5本体の画面は更に美しくなっていて、大いに満足した。しかも前述したように最下段に4つのアプリが入るので、画面を再構成して画面の枚数を少なくすることが出来た。 それぞれの調子はどうかと、アプリをひとつひとつ開けていったが、唯一問題が生じたのは、Keeperという暗号保存のアプリである。これは年850円と、iPhoneのアプリとしてはかなり高い料金のものであるが、ともかく使いやすいので私は常時使用している。これを開けたところ、「この機器は登録されていないから、料金を支払え」という表示が出た。実は2か月前に支払ったばかりなのである。そこで、払おうとしたら、今度はメールが来て「2つ分の日割りで1200円ばかりを払え」という請求である。そんな無体な・・・これはどういうことになっているのかと思い、次のようにサポートに連絡した。 「Hi I changed from iPhone 4S to iPhone 5. When I started iPhone 5 it showed that I had to pay 850 yen. However after this, your company sent me email that I had to pay around 1,200 yen for two devices during the rest 270 days. Then the Keeper of new iPhone 5 still shows that I didn't pay. So I can't backup it. Why like this ?」 すると、2日経って、次のような返信が来た。問題解決ということである。やはり、何でも言ってみるものである。しかしやはりこういうものは、自動的に残りの日数をサポートするようにシステムを組み直すべきだろう。 「Dear Customer, You are all set now, we have refreshed your subscription. Please once again login into keeper from your new device and try to sync. This will resolve the issue. Regards, Keeper Support」 iPhone5は、薄いし軽い。動きも早い。これまでのiPhone4S時代にはしばしばよくあった「Memoryが足りません」などという無粋な表示も出て来ないのは有難い。それに一番良いことは、電池の持ちが長くなったことである。今までは、4時間も連続して使っていたら、もう電池切れを起こしてしまっていたが、このiPhone5はそれが6時間ほどに伸びたような感じである。そういう機能面に加えて、画面が縦に細長くなったからその分、横一列つまり4個分のアプリのアイコンが余分に入るようになった。これは使っている身には有難い改善である。できればもう少し、画面を横にも広げてもらえば更に良かったと思うが、それはまた来年にでも出る次世代のiPhone6に期待することとしよう。 というわけで、iPhone5の方は無事に機種を変更することが出来た。難渋したのは、家内に使ってもらうこととなったiPhone4Sである。最初、何も考えずについうっかり、iPhone5の場合と同様にiTunesに繋げて、「あれ何にも起こらないな」と思った。それもそのはずで、だいたい電話番号とメールアドレスが変わったのだから、復元の前に既存のApple IDを新しくそれに変える必要がある。というわけで、そのステップが抜けていた。それで、パソコンに既存のApple IDの変更画面を出して新しくしようとしたら「そのアドレスは、既存のApple IDのサブのアドレスとして登録済みです」と出て、受け付けてくれない。仕方がないので、Gメールでまた新たにアドレスを作って、それを新しいApple IDとした。そこで再びiPhone4SをiTunesに繋ぎ、まず工場出荷の段階に戻して、その上で新しいApple IDから復元していった。そもそも元のデータ量が非常に少ないから、わずか10分もかからないうちに完了した。パソコンのiTunesから中を見ると、復元は成功のようだ。 そこまでは順調に来たのだけれど、iCloudを起動しているときに失敗してしまった。というのは、家内のアドレスブックがiCloud上にあるとは知らずに、結果的にそのデータを消去してしまったのである。ああ、これは失敗だと直ぐに気付いたが、もう時既に遅かった。幸い、使わなくなったiPhone4上にはデータが残っているので、それを複写するなり引き写したりしてくれば復元は可能である。ただ、家内のアドレスブックがやや複雑になり過ぎているから、手入力で整理しながら復元しようと思った。しかしそれが運の尽きで、そこから延々と作業して、全部終わったのが4時間後だった。家内はあきれて先に寝てしまうし、孤独な作業だったが、ともあれ終わった。あとは、電話番号の打ち間違いがないことを祈るのみである。それから身内や家内の友人にメールで変更を連絡して、何とか終了した。 さて、気が付いてみると、使わなくなったiPhone4が残された。これは私にとって初めて手にしたiPhoneだから愛着がある。古くなったとはいえ、まだ十分に使える。これをどうしようかと思っているときに、良いことを思いついた。初孫ちゃんが来たときの遊び道具にするのである。この子、もうすぐ4歳になるが、ともかくメカが好きで好きでたまらない。我が家にやってくると必ず家じゅうのボタンというボタンを触りまくり、押しまくり、しかも直ちにその使い方を覚えてしまうという特技を持つ。我々のiPhoneには特に興味を持っていて、あれば必ず触るから、アプリのアイコンのタッチの仕方もうまくなった。そういうことでこれは本物のiPhoneだから、この子に持たせて遊ばせれば、我々のiPhoneにまで手を出すことはないだろうと思ったのである。 そこで、翌日、初孫ちゃんがやって来たとき、テーブルの片隅にさりげなく置いておいた。目ざとくそれを見つけた初孫ちゃん、満面の笑みを浮かべる。そして、スタートボタンを押し、画面を器用にスワイプして、一発で始動した。それで、アイコンをひとつひとつタッチしている。ガハハーッと大きな声で笑ったのは、コンパスのアプリで、その針が動くのが気に入ったらしい。そして私に「おじーさん、このミュージック、動かないね」と聞く。ああ、なるほど、家内のiPhone4には音楽はなかった。それで「今度、入れておくね」と言っておいたが、ということはつまりこの子は、ミュージック・アプリの使い方を既に知っているわけだ。これを見せたのはかなり前なのに、よく覚えているものだ。その次に言ったのは「写真は、これでいいの」という質問。「そうそう、それでいいんだよ」と答えたが、写真アプリまで覚えていたとは知らなかった。それで、「ここにいるおじいさんを撮って」と頼むと、「いいよ」と気楽に引き受けてくれた。そしてiPhoneをカメラのごとく構えて言われた言葉は、「おじいさん、動かないでね。はい、チーズ」・・・これには、チーズの顔をするどころか、大爆笑してしまった。孫が去った後、口を開けて大笑いしている私の写真が、手元に残った。 (注) 中途解約金条項の適法性 2012年11月21日、携帯電話の2年単位の契約プランを途中で止めた場合に課せられるこの9,975円の解約金につき、原告の京都消費者契約ネットワークがソフトバンクを被告としてその差止めを求めた訴訟の判決があった。それによると、解約に伴う会社の損失がこの解約金を上回っているので、消費者契約法上、無効とする場合に当たらないとし、原告が敗訴した。ちなみに、これに先行してNTTドコモとKDDI(AU)に対して起こされた同様の訴訟では、ドコモについては適法、KDDIについては一部無効とされ、控訴中である。ところで、この判決とは別に、この2年契約は、契約満了日の翌月に解約すれば解約金はかからないが、今回のように中途解約になると一律この解約金が課せられるというのは、そもそもそういうことを予め契約者に通知すべきであるのにそれを怠っているというのはいささか不実の感がするし、加えて一律同額を課すというのも合理性に欠けると思うが、どうであろうか。 【後日談】 USBケーブルが30ピンから8ピンへ iPhone5とそれまでのシリーズとの大きな違いは、iPhoneと家庭用電源やUSBコネクターを繋ぐケーブルである。iPhone4Sまでは平べったくてしかも表裏のあるコネクターだったから、iPhone4SやiPadにつなげるときにいちいち表裏を気にしないと繋げなかったけれども、iPhone5では、その裏表がなくなり、しかも5分の1ほど小さくなったのは誠に有難い。規格上は、30ピンUSB(ドックコネクタ)ケーブルから8ピンUSB(Lightning/ライトニング)ケーブルになったそうだ。しかしその反面、従来からのケーブルとの互換性がなくなったのは、不便である。私の場合、iPhone4時代から引き続いて、家に純正品をひとつ、オフィスにサード・パーティ製のコードの長いものをひとつ、それからチャージするための電源用にひとつをそれぞれ持っているから、後二者を新たな8ピンUSB(Lightning/ライトニング)ケーブルに変えるのはとても面倒だ。そこで、ケーブル全体ではなくて、30ピンを8ピンに換装するその部分だけのコネクターをアップル・ストアへ買いに行った。そうしたところ、そういうコネクターがあるにはあったのだが、アップル純正品というものしかなくて、1個2,800円という高い値段が付いている。サード・パーティの製品はないのかと聞くと、アップルの審査が通らないからまだ出荷できないというのである。なるほど、アップルはこういうところでも、阿漕に稼いでいるのかと思って急に嫌になり、それ以来どこへ行くのにも8ピンUSB(Lightning/ライトニング)ケーブルをポケットに忍ばせている。ただ、以前のiPhone4Sより電池の持ちがよいので、さほど不便を感じたことはない。
(平成24年11月17日著。30日追加) (お願い 著作権法の観点から無断での転載や引用はご遠慮ください。) |
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