早いもので、私がiPhone4Gを使いはじめてから、来月でもう2年となる。その間、昨年12月にはiPhone4Sへと買い替えた。4Gと4Sの違いは、はっきりいってしまうと、音声感応型の人工知能(とまでいうと、いささか買いかぶり過ぎではあろうが・・・)のSiriくらいで、そのほかにはこれといって素晴らしいと驚かされるようなアプリはない。とはいえ、このiOS5へのアップデートと合わせてアップル社が用意したiCloudという仕組みは、とても便利である。これは一種のバックアップ・システムなのであるが、クラウド上に自動的にバックアップしてくれるから、こんな楽なことはない。おかげで従来のようにiTuneを使ってパソコンにいちいちバックアップするようなことは必要がなくなった。もっとも、これを諸手を挙げて歓迎すれば良いというわけでもなく、たとえばアップル社に私の個人情報をすべて渡してしまったという薄気味の悪さはあるが、しかしそれを敢えてここで言うのは無粋というものであろう。 ところで今回、仕事の都合上、iPadも使うこととした。というのは、仕事で使う書類が増えに増えて大きなカバンに2つにもなってしまった。しかも毎日何かしら加わっていく。下手をするとそのうちカバンが3つ目という事態にもなりかねない。本当にこれらがないと、始まらないから始末に負えない。しかしこれでは、秘書さんたちにも持ってもらえるとはいっても、とても機動的ではないし、そもそも必要なときに目指す資料がなかなか出てこない羽目に陥る。しかも、使う法令が法律だけでなく時折は政令も必要となってきた。そういうとき、法律集はあるが政令集なるものはあるはずがないので、非常に困る。そのような場面がちょくちょく出てきたので、これは困ったと思うようになった。 しかし、iPhone4Sを使っていると、これはペーパーレスの極みのようなシステムだから、そんな問題はこういうデバイスを利用すれば一挙に解決できると思った。というのは、まず法令集については、iPhone4SのSiriに叫べば、画面上にその検索結果を出してくれるから、これでまずおよその法令はわかる。それでもわからないような特殊な法令は、政府のやっている「電子政府の総合窓口 e−Gov」なるものを出して調べれば大体は把握できる。ここでわざわざ「大体」と言っているのは、困ったことにこのe−Govデータは、その法令が施行されていないのにあたかもすべて施行されているがごとくに掲載されている。だから、それが場合によっては大問題になるからである。そういうわけで、正確な施行関係や改正経緯を知りたいというのであれば、ぎょうせいという出版社がやっている「Super法令Web」で調べればよい。その内容は毎週更新されることになっているから、施行によるタイムラグはほぼないといってよいだろう。これらを使えば、ネットで完璧に法令検索ができる。 もうひとつ有力な武器は、Boxというアプリである。クラウド上にデータを保管してあって、いつでもそれを引き出せるサービスだ。私はこれに50GBも使えるスペースをもらっていて、そこに手持ちで公開できる文書をすべてPDF化してアップロードしている。大きなカバンに2つ分も入っている膨大な書類をすべてPDF化してここに入れたところ、50GB中、その分だけではまだ2GBにもならない。余ったスペースがもったいないから、ついでに毎月あるいは毎週購入している雑誌類をすべてPDF化して、やはりここに入れてある。それでも3GBを少し超す程度と、まだまだ入れられる。だから、Boxの入ったiPhone4Sを常時携帯しておけば、2つのカバンが不要となるし、雑誌のたぐいでも何でも、PDFにしたものはいつでも読めるということになる。 そんなことで、すべての書類が掌の中に納まるという夢のような段階に来たのだけれど、そうなると今度は、iPhone4Sの画面が小さいという問題が露わになる。これだけはどうしようもない。そうかといって、またカバンの世界に戻るというのも、たまらない。それなら、同じiOSを使っていて画面の大きなiPadを買ったらどうかということになった。そういえば、昨年10月に、スチーブ・ジョブズが亡くなった後、今年3月になって新しいiPadがティム・クックによって発表された。これだと、画面が大きいだけでなく、高精細ディスプレイ「Retina Display」の採用でさらに鮮明になったというから、好都合である。 ということで、先週末にiPadの最新版を手に入れ、土曜日から月曜日にかけて、その設定をしていった。まず、自宅とオフィスのWifiに接続する。そして、i.softbankメールの設定とともにソフトバンクのWifiスポットに接続するための一括設定を行う。それから、Gメールなど現在使っているメールの設定をする。そうすると、連絡先も自動的に同期されてくる。ああ、これは実に便利だ。それから肝心のBoxの設定をする・・・これもIDとパスワードを打ち込むだけですんなりと終わった。立ち上げると、ちゃんとすべての文書にアクセスできる。こうこれだけでもよいくらいなのだけれど、せっかくだからほかのアプリも入れておこう。そうそう、Evernoteがあった・・・そうだ、Dropboxもだ・・・などと、思いついたものをAppStoreから私のアップルIDでアプリをインストールしていく。そのやり方も、実に簡単だ。AppStoreの中の「購入済み」というボタンをタップすると、私のiPhone4Sに入れてあるアプリの一覧が現れるので、それから必要なものを取り出し、タップしていくと、順次インストールされる。そうやってインストールしたアプリのアイコンを使いやすいように、並べていくのである。そうやって、土日の2日間で、必要な設定はあらたか終わってしまった。 ただまあ、このままでは裸のiPadだ。取っ手や紐もないから持ち運びにくいし、ガラス面を覆うものがないと壊しそうなので、有楽町のビックカメラにそのカバーを買いに行った。iPad専用のカバー売り場へ行くと、ピンからキリまで商品が並んでいる。蛇腹のように単にガラス面を覆うものから、革製で全体をしっかりと覆い、ビデオを見るときは立てかけ、タイピングするときはもっと寝かせられるものまで、いろいろである。その中から、5000円ほどで高かったが、後者のタイプでしかも持ち手が付いているものを選んだ。賢いことに、カバーを閉めると、カチッと言って電源も切れるから便利だ。ということで、そのカバーを付けて写真を撮ってみたが、問題なく撮ることが出来た。よしよし・・・と。 その夜、帰宅してそのiPadを私のパソコンに接続してみた。すると、iTunesが自動的に立ち上がり、くるくると回って、何かしている。あれあれと思ってみていると、私のiPhoneに入れてあるアプリがすべて、こちらのiPadにインストールされようとしている。まあ、いいかと思ってしばらく放っておいたら、200個近いアプリがすべてiPadに入ってしまって、再びそれらを整理する羽目になった。ひとつひとつのアプリを確認していくと、ほとんどが動く。iPadの右下に「2X」というボタンがあるのでタップすると、画面の大きさが2倍になる。元に戻そうとすると「等倍」のボタンを使えばよい。これも便利だ。ほとんどのアプリは、これで十分である。 ただ、iPhoneに入れてあるデータのうち、iTunesからは自動的に転送されないのが原則のようだ。たとえば、「i手帳」、「支出管理」、「豊平文庫」などは、またこちらのiPad側でデータを入れる必要があるが、前2つはそれがとても面倒なので、これらはiPhone一本でいくこととする。しかし、当たり前のことだが、クラウドを使うアプリはそのクラウド上にデータが保管されているので、このiPadから取り扱うことができる。たとえば、Gメールとそれと連動したアドレス帳、Evernote、Dropbox、Keeperなどで、これらはiPhoneでも扱えたことが何のストレスもなくそのままiPadでも扱えるので、ため息がでるほどに便利このうえない。ただし、このうちKeeperは、追加料金850円を徴収されてしまった。しかし、iPad側で内容を変えると、それが自動的にクラウド上のバックアップデータセンターに送られ、それがそのままiPhoneでこのアプリを開いたときに自動的に更新されて表示される。しかも瞬時だ・・・ううーむと思わずうなるほど、まるで夢のような仕組みである。この快感は、これまでパソコン上でバックアップにさんざん苦労してきたからこそ、味わえるものである。 もうひとつ、感激することがあった。これまで、iPhoneでiTunes Uというアプリを使って、アメリカの有名大学の授業を聞いていたのだけれど、音声はしっかりと聞こえるのだが、画面が小さすぎて、それがどうにも読めずに困っていた。そんなことを繰り返した挙句、そのうち興味をなくして、せっかくの天文学の授業なのに3〜4回見ただけで終わっていた。ところが、試しにこのiPadで見たところ、画面が大きいので授業中のフリップもよく見えて嬉しかった。これなら最後まで授業を受けられそうである。日本にいながらにして、イェール大学の天文学の授業を受けられるなんて、まるで夢のような世界である。 フォト・ストリームというものがある。これは撮った写真を一定期間保持してくれるシステムである。これまでは私はiPhone一本だったから、そのアルバムと同じ写真のみがフォト・ストリーム上に表示されていたが、iPadで写真を撮るようになると、その写真もまたフォト・ストリーム上に組み入れられて一緒に表示されるようになった。なるほど、それぞれ撮った写真を送り合う必要が一切ないのである。これはまた、うまい仕組みである。ところが、すべて良いことばかりではない。私は、iPhoneと、このiPadとを同一のアップル・アカウントで登録してしまった。これで助かることは、iPhone向けに買ったアプリをそのままiPad向けに転用できることで、言葉を換えれば再びお金を払って購入する手間がかからないということである。しかしその反面、別のアップル・アカウントにしないと、iCloud上で2つが統合されてしまって、1アカウント当たり最大5GBという上限があるその容量中に合計してカウントされてしまうのである。もちろんその場合は、増えた容量を購入すればよいだけの話であるけれど、それではいささか悔しい・・・というのは冗談のたぐいであるが、ネット・ユーザーとしては工夫の余地ありということになろう。ちなみに私は、Gメールの中の不要な添付メールを削除して対応した。 ところで話は変わるが、私の職場で、私の主催によりiPhoneクラブというものを立ち上げることにした。参加資格は単に、iPhoneを持っていること、それだけである。仕事の後に、私の部屋に集まって、お菓子をつまみお茶を飲みながら、それぞれiPhoneで苦労したこと、面白かったことなどを話し合うのである。集まったメンバーを見て、驚いた。私と私の秘書さんを除くと、あとはこの2〜3年の間に入った人たちばかりである。つまり職場での最長老と、その逆に最若年層という、妙な組み合わせなのだ。それでも、あのアプリはどうだ、このアプリは面白い、あのアプリはやめておいた方がよい、こんなひどい目に遭ったから・・・などと、皆さん、苦労しているだけあって、話は尽きない。中には、auの携帯からアンドロイドに乗換えたが、よくフリーズしてしまい、あるときは電話帳がすべて消えたという憂き目に遭ったという。ところが、やっとauがiPhoneを発売したので、これに乗換えることが出来て、一息ついたという人がいた。そうかと思うと、買ったばかりのiPhoneを無くしてしまい、「iPhoneを探す」というアプリを知らなかったために取り戻せなかったという人もいた。 しかし、一番面白かったのは、こういう話である。「○○部のKさん、面白いのよ・・・。上司のHさんから、iPhoneは良いから持ってみろと何回も言われて、本人はウィルスがいると嫌だと思って悩んだのだけれど、とうとう持たされた。でも、あの人、皆さんご存知のようにものすごく潔癖症だからやはりウィルスが怖くて怖くて、いまだに買ったままのアプリしか入れてなくて、自分ではひとつもインストールしていないのよね。それって、すごくない? すごいわよね。」 ・・・彼の顔を思い浮かべて、もう、一同、大笑いである。人の噂ほど面白いものはないという見本だが、彼はiPhoneとアンドロイドのスマート・フォンとではそもそもアプリの流通構造が違っていることをご存じないとみえる。つまり、iPhoneの場合はすべてのアプリにアップル社の審査があるから、アンドロイドのスマート・フォンに比べると、ウィルスにとりつかれる割合は、極めて低いのである。まあ、それにしてもiPhoneを持たされたKさんの反応は、いかにも彼らしいのである。腹がよじれるほど笑った後でふと我に返り、彼のこれからの長い人生、そんな調子で果たして大丈夫かと心配になった。
(平成24年6月 7日著) (お願い 著作権法の観点から無断での転載や引用はご遠慮ください。) |
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