iPhone 4Gを買ってその完成度の高さに衝撃を受けてから、20日間が経過した。つい先日は10日目のエッセイを書いていたから、それからわずか10日しか経っていない。でも、この高機能のマシンを何とか使うこなせるようになり、もう完全に慣れたといえる。
先日、音楽ライブラリを作ろうとして、土曜日にテレビを見ながらiTuneにCDを読み込ませた。これはとても簡単で、ただトレイにCDを載せただけでiTuneがそれを取り込んでいる。1枚で数分といったところである。勝手に曲名を探してきてくれて、その一覧表を出すだけでなく、曲名を付けて保存してくれるのが優れている。まったく、何もしないでもいいではないか・・・人間が馬鹿になりそうだ。でも、これならCDトレイが壊れない限り、何万曲でも大丈夫である。
まずは居間にあったクラシック曲のCDを20枚ほど入れたが、ベートーベンなどの交響曲ばかりでは面白くないので、ムード・ミュージックも良いだろうと思ってポール・モーリアやマントバーニなどの軽いもの、それからビートルズやカーペンターズ、小椋佳にテレサ・テンのCDを棚の奥から探し出してきて、次々と入れていった・・・我ながら古すぎると思うが、今さら頭の中は替えられない。それを2時間ほど続けたら、もう手持ちのCDが尽きてしまった。まだ、数百メガの容量しか使っていない。だいたいこのiPhone 4Gは、32ギガの機種だから、まだまだ空いている。
私の思案顔を見て家内が、「向かいの区の図書館で、CDを貸し出していますよ。一度に5枚までだったかしら」という。ああ、そういえばそんなコーナーがあったと思って行ってみたら、小さな棚ながら、CDがたくさん並んでいる。係のお姉さんに聞くと、10枚まで2週間も貸していただけるらしい。それでまあ、ショパンだのモーツアルトだのヨハン・シュトラウスだのと、その10枚の制限いっぱいを借りてきて、iTuneに取り込んだ。家の中にあったCDの分と合わせると、全部で2ギガくらいになったろうか。最低5倍から最高15倍の範囲の速度で取り込むから、その早いこと早いこと。少し目を離していると、もう終わってチンという音を立てる。まるで電子レンジと同じだと思うと、笑えてくる。
以上で準備万端が整った。いよいよパソコンにiPhoneを繋ぎ、それらを同期させる段階である。iTuneの上部に「ただいま同期中」という表示が出て、床屋の広告塔であるねじり棒を横に倒したような進行中のサインがくるくる回ったかと思うと、2ギガ近くのファイルが10分もかからないでそのまま転送された。
早すぎるなぁ・・・本当に転送されたのかと思いつつ、試しにiPhoneのアプリであるiPodをタップすると、五十音順、アルバム順などと次々に出てくる。ひとつひとつをタップすれば、その曲を聞くことが出来、次にまたタップすると、次の曲に移っていく・・・まあ、とそんな調子である。いとも簡単という言葉は、このためにあるようなものだ。むかしレコードを傷つけないようにと、レコード針を慎重に置いていった時代が懐かしい。それにしても、こんな調子で図書館にCDが置かれて、それを閲覧者がこういう機器に自由にコピーするとなると、CDなどというものは売れるはずがないだろうなぁと心配になる。そもそも、インターネット時代の公共図書館とは、どういう存在になっていくのだろうか?
どうせなら、これで着信音を作ろうと思って、iPhoneに入れた全曲を聞いていった。出だしが小さい音だったり、途中で大きな音だったりすると困るし、交響曲のような大袈裟な曲、それに人の声も困る。というわけで、ムードミュージックのポール・モーリア・オーケストラの作品を中心に選んで、ライムライト、マドンナの宝石、涙のトッカータ、恋は水色、愛の喜び、南太平洋、ゴッドファーザーなどにした。家内からの電話は、マドンナの宝石にしようか・・・やや、お世辞気味だけれど・・・そうそう、ゴッドファーザーなんていうのは、仕事場からの着信音に最適だ、何しろ重々しいからねぇ・・・というわけである。それはともかく、それでは、iTune上でどうやるのかと思いながら、しばし手当たり次第に触ってみたが、どうもやり方がわからない。そこで、Webで調べてみたら、こういうことだった。なるほど、これではわからないわけだ。
@ iTuneの曲の一覧画面上で着信音にしたい音楽を選択し、右クリックでその「プロバティ」⇒「オプション」で、曲の開始時間と終了時間を指定する。40秒以内にすべきらしい。次に、再びiTuneの曲の一覧画面に戻り、右クリックで出したオプションから「ACCバージョンを作成する」を選択すると、それがあっという間に出来て、元の曲の次の行に表示される。それから、元の「オプション」画面に戻って、指定した曲の開始時間と終了時間を元に戻す。
A Paul Mauriat楽団のライムライトの場合は、C:\Users\[私のディレクトリ]\Music\iTunes\iTunes Media\Music\Paul Mauriatにそのファイルがあるので、【その拡張子を「.m4a」から「.m4r」へと変更する。しかるのちに、その ファイルをダブル・クリックする】と、これがiTuneの着信音のところに登録される。この【 】が、ポイントである。そして、パソコンにiPhoneを繋いで着信音を同期する。それからiPhone上で、連絡先を開き、その着信音を割り当てたい人の項に移動し、「着信音」をタップして選べばよい。個々人ではなく、着信音一般を設定するには、「設定」⇒「サウンド」⇒「着信音」で直せばよいというわけだ。
ところで、私はiPhoneのカメラを使って、毎日、手当たり次第に写真を撮っている。まるで、写真日記を付けているようなものである。その写真はiPhoneの中ではカメラ・ロールに保存されるが、これがたまってくると、探すのが面倒となる。そういう場合、iPhoneをUSBでパソコンにつないで、それからエクスプローラでを開くと、iPhoneは、ポータブル・デバイスとして認識されている。そこをクリックしていくと、写真にたどりつく。これがカメラ・ロールなので、これをパソコンのCディレクトリの私のピクチャー(C:\Users\[私のディレクトリ]\Pictures)内に「iPhone_2010」というディレクトリを新規に作り、写真がたまるとここへ移動させる。そうすると、カメラ・ロール内には、以前の写真は残らないから、新しく写真を撮ったような場合は、確認しやすい。ところがこのままだと、せっかくの写真日記が手元のiPhoneで見られなくなるから、この「iPhone_2010」というディレクトリをiTune上でiPhoneに同期させてまたiPhone内へと戻す。そうすると、以前に撮った写真をすべて、iPhone上で確認することが可能となった。
ただ、そうすると、この「iPhone_2010」の中にたくさん写真がたまってきて、また同じ問題が出てくる。これは、フォルダーを設けて管理するしかないなと思っていたところ、「i写真フォルダ」というアプリがあった。これは、iPhoneで撮った写真などを、フォルダ別に管理することができる。例えば、家族、仕事、風景、情報などとフォルダの名称を決め、それに従って既存の写真を分類してコピーし、iPhone上で見られるというわけである。これはコピー・ベースで写真を管理するものであるから、本体の写真にまで手を付けるわけではない。だから、放っておくと、本体の写真とこのアプリによるコピーされた写真とがiPhone内で二重になってしまう。それは無駄なので、前記の「iPhone_2010」をiTune上でiPhoneに同期させるのはやめて、こちらの「i写真フォルダ」に一本化することにした。
別のアプリの話になるが、「Dropbox」というソフトは、本当によく出来ていて、とても便利である。パソコンにインストールすると、2ギガのフリー・スペースを割り当てられる。それで、自分のCディレクトリ内にDropbox というフォルダが出来て、そこにファイルを入れると、自分のiPhoneでもそのまま見られるのである。これなら、いちいちUSBメモリを持ち歩く必要はない。もっとも、途中で情報が悪用されたり抜かれたりするのではないかという心配はもちろんあるが、それは「AES256ビットというもので暗号化しているから、どうぞご心配なく」というのが、この会社の売り文句である。しかし、重要な情報をどこか別のコンピューター会社に一括して管理してもらっているわけだから、まるで事業会社の情報システム担当者がクラウドについて抱くのと同じような懸念がつきまとう。まあ、信ずるしかないか・・・。それにしても、このシステムを使っていて、そもそも2ギガものフリー・スペースをもらって大丈夫か、タダほど高くつくものはないので少し払おうか、その方がセキュリティのレベルが上がるのではないかという気もするのであるが、この会社は、50ギガで9.9ドル/月、100ギガで19.99ドル/月を徴収しているようであるから、私のような使い方では、そんな大量の情報を扱う必要がない。
「Keeper」というソフトも、その出来の良さに、ほとほと感服した。これは、自分のクレジット・カード番号や、各種の会員番号とパスワードなどを一括して管理するソフトである。極めてシンプルな画面にこれらの情報を書き込めるし、それをABC順と分類順にソートでき、しかもその項目をタップすればそのままコピーできるから、これをそのWebの該当する欄に張り付けられるという便利さである。シンプルで便利、かつ凄い切れ味を持つソフトなのである。問題は、そのセキュリティである。まず最初のパスワードは、5回間違えたらすべての情報が消えてしまうようになっているから、これは良い。しかし、そもそもこの個人情報は本当にこのiPhone内にとどまっているのか、まさかそのままWeb上に流出してはいないだろうなぁ・・・もちろんKeeperの社のホスト・コンピューターに行ってしまってはいないよね・・・というのが、私の懸念である。これは、Dropboxで、これはまるでクラウドではないかと心配したのとちょうど同じような不安を覚えるのである。この会社は、「128ビットの暗号で保全しているし、途中の通信も大丈夫、それに必要なら、バックアップもしてあげます。ただし毎年100ドル程度をいただますよ」というのが説明である。あなたは、この説明を信じますか?という問題である。もっとも、この程度のことを信じないと、これからの高度情報化社会は、生きていけないかもしれない。ただし、少しでも気を抜くと、そのうち自分を含む世界の大勢の人のクレジット・カードから、2ドル・5ドルなどと薄く広く徴収されていたりして・・・。
「iSpy」というソフトも、こんなものがあるとは、俄かに信じがたい思いがした。というのは、これは全世界のその時点で動いているビデオカメラの映像をそのまま映してくれるからである。日本の猿山の猿、オーストラリアの水族館の熱帯魚の水槽、中国のパンダ舎のパンダが笹を食べているのもよく見える。それからフランスのエッフェル塔、日本の桜島、ハワイのホテルのビーチ風景、ポーランドの建物などというのはまだしも、ニューヨークのタイムズ・スクウェアや街頭で行き交う人々がそのまま映っている。あげくの果て、アメリカのどこかの球場で観戦している女性のクローズ・アップの映像まであるのには、びっくりした。これでは、プライバシーも何もあったものではない。しかも、それを見ている人に、そのカメラを遠隔操縦で動かす管理権(control)まで与えているものも多いから、何としたことか・・・一定時間の制約はあるものの、自由にそのカメラの方向を変え、クローズアップも出来るから、先ほどのように球場でポップコーンを食べながら談笑している金髪女性のクローズアップまで見られるというわけである。しかもご丁寧なことに、その映像の写真までボタンひとつで簡単に撮って保存出来ることが出来るようになっているから、もう・・・何をかいわんや・・・。
「Genius Scan」というアプリは、新聞の切り抜きの手間を省いてくれた。これまでは、仕事関係の記事は秘書さんにお願いしてもよいとして、個人的興味の記事など、たとえば訪れたい観光地の記事などは自分で切りぬいて、しかも後からどこへ行ったのかと探すのに時間がかかるといった体たらくだった。ところがこのアプリ、なかなかの優れモノで、起動するとiPhone 4Gのカメラで写真を撮り、その写真の中で必要な部分だけを切り抜けるようになっている。しかも、その切り抜きの形を四角にも長方形にも、また台形にも出来て、台形の場合はそれを四角や長方形にして保存出来るので、写真を斜めに撮ったような場合は、極めて便利である。加えてこれまではコピーしても白黒でしか保存できなかったからカラー写真のある記事などは味気なかった。ところがこれは、もちろんカラー写真で保存できるから、実に楽しい。そのほか、こんな使い方もある。大学で教師をやっていると、今はちょうど、春学期の試験の採点の最中である。この試験の解答用紙は学生さんたちに返すこととなっているが、これまでは念のため、コピーをとっていた。しかし、今年は違う。このGenius Scanでバシャバシャ写真を撮るのである。それでも十分に読める写真が撮れるので、時間の節約になる。実用に値するアプリだと思う。
「Skybook」は、青空文庫が読めるアプリであるが、これまで鴨長明の方丈記、夏目漱石の虞美人草、坊っちゃんと読み、今は寺田寅彦全集を読んでいる。ちょっと、時間が出来たときなどに便利に使える。こういうiPhone 4Gが与えてくれた機会でもなければ、中学生のときに読んだ古典をまた読むなどということは、まずなかったと思うのである。ところで、寺田寅彦全集を読み始めて、もう10数冊を読破した。この人は大正から昭和にかけて活躍した科学者で、かつ随筆の達人である。しかし、私が齢をとったせいか、その発想や観察眼は、私と非常に波長が合うのである。おもしろいものだ・・・。
昨晩は、「Classical Music Correction」というアプリを入れた。わずか数百円で、クラシック音楽が500曲近く聞けるという触れ込みなのだが、いやはや、すごい量で、1.6GBほどもあったろうか。聞いてみると、音もよくて、CDから入れたものとさほど遜色がない。これは十分に使えると思うのであるが、外国製のアプリだけあって、曲名や作曲家名よく読めないのが難点といえばその通りである。たとえば、作曲家名がBachならバッハ、Beethovenならべートーベン、ベルディはVerdi、チャイコフスキーならTchaikovskyというのは、まあカンでそうだろうと思うのだが、Rachmaninovって誰だっけとか、Chopin?・・チョピン・・・ああ、ショパンだなどと、一息ついてから思い出すというのは、笑い話のたぐいである。こういうときには、日本語のCDというものが、なかなか有り難いものだと思う。
それはそうと、Wi-Fi接続というものが、だんだんわかってきた。たとえば、大容量のファイルのやりとりを伴うものは、電話の3G回線を使うより、Wi-Fi接続を使わないと時間がかかって仕方がない。そこで、インターネットに接続したり、多少大きなファイルをダウンロードするには、Wi-Fi接続が不可欠である。ところが、3G回線は要するに電話なので、ほとんどどこでも利用できるのに比して、Wi-Fi接続は自分が使えるルーターのある場所でしか使えない。私の場合には、自宅では光ファイバーと繋がっている最高速度54GBの無線LANルーターと繋げばよいのであるが、外出してしまうとそういうものからは切り離される。だから、インターネットを自由に使いたいようなときには、ついついWi-Fi接続がしたくなる。
では、どこでWi-Fi接続が出来るかというと、それは駅構内やチェーン店のようなところである。そこでブラウザのサファリをタッチすると、そのときにiPhoneがある場所で使えるWi-Fiの接続先がいくつか出てくる。駅なら、フレッツつまりドコモ系が多いし、たとえばマクドナルドはソフトバンク系である。しかし、そのWi-Fiの接続先の大半のものには鍵印が付いていて、パスワードを入れないと繋がらないようになっている。もちろん、そうでないところもある。あれは空港だったが、NTTがWi-Fi接続を自由に使わせるサービスをしている店もあったけれども、そういうところはごく稀である。
そこで、ソフトバンクとしては、このままでは電話の3G回線がデータ通信でふさがってしまうと懸念したのか、iPhoneを買ったときに、fonというスペイン系の無線LANルーターをユーザーには無償で配るという。現に私のところにも、1週間ほど経ってそれが送られてきた。最初は何のためにと思ったが、それもそのはずで、私の自宅には先ほど話をしていた無線LANルーターがあるので、本来は不要である。それでも箱を開けてみたところ、このfonという会社のビジネス・モデルは、要するにfonというWi-Fi接続機器を1〜2000円で消費者に買わせ、それでお互いに使わせるというネットワークを作るというものだ。試しに私も、それに参加してみたところ、外出してもfonのあるところで使うことが出来た。なるほど、これは相身互いというシステムである。
しかし、それでも自分の行く場所で常にWi-Fi接続が出来ないというのは、不便で仕方がない。何とかならないものかと思っていたところ、意外なことがわかった。私はオフィスでは、イーモバイルのデータ通信カードを使っている。同じイーモバイルが、Wi-Fi接続が出来るポータブルな無線LANルーターPocket WiFi(D25HW)を発売していて、一台で5つの機器を繋げることが出来るらしい。私の場合は、パソコンとiPhoneで十分で、将来はiPadが増えるかもしれないが、それでも三台だから、十分である。速度は、下り最大 7.2Mbps、上り最大 5.8Mbpsというものだ。
ははあ、これは便利だと思っていたか、UQコミュニケーションズ株式会社のUQ WiMAX(ユーキュー ワイマックス)ブロードバンド通信カードがあると聞いた。こちらは、下り最大40Mbpsというから、Pocket WiFiなど、話にならない。ただ、UQ WiMAXは電波の直進性が強いので、携帯電話の電波のようにはいかないようなのである。同社のHPには、サービスエリアを確認できる欄があるので、そこに私の自宅の住所を打ちむと、「○」印がついていた。ところがオフィスの住所では、「△〜○」というのである。これではわからないなと思いつつ、そのHPをよく見ていくと、Try Wimax といって、機器を貸していただけるらしい。ただし、パソコン専用のUSB形態のものだけだ。
そこで、それでも電波の強弱や繋がり具合くらいはわかるだろうと思って、その借用を申し込んだところ、数日経って現物とドライバーが入ったCDが送られてきた。まず自宅で試したところ、ちゃんと繋がった。速度は、光ファイバーには劣るものの、まあまあ満足できる水準に達している。これならよろしい。合格である。ところが、オフィスで試したところ、いつも坐っている机の上では、電波がまったく来ていない。うんともすんとも言わない。あれあれ・・・これは困ったと思いつつ、パソコンに Try WimaxのUSBを装着した状態で、窓の近くへと持って行った。すると、いろいろと動かしても駄目であったが、わずかに窓際の一番左の場所で、そのUSBをやや傾けた状態で、やっと繋がることがわかった。でも、「電波微弱」という表示が出て、すぐに圏外になってしまうのである。これでは、とても実用にならないと思い、とりあえず今は使えないとその旨を断って、送り返したのである。まあ、あと数年後にでも、再び試してみるしかあるまい。もっとも、その頃になるとユーザーが増えすぎて、速度が遅くなっているかもしれない。というわけで、今はイーモバイルのPocket WiFiを入れて、しばらく使おうかと、考慮中である。
ところで、このWi-Fi接続は、せいぜい20ないし30mくらいしか電波が届かないと記憶しているが、それをこう考えると、なかなか面白いと思うのである。私は家内に対して、Wi-Fi接続の英数字の羅列の数は、その地区のインテリ度を表わすものだと説明している。というのは、Wi-Fi接続があるということは、その地区でパソコンを使って高速インターネット回線を使っているということを意味するので、そういうことが出来る人たちのことを、とりあえず「インテリ」と名付ける。本当は、「ネット中毒」、「ネットお宅」でも何でもよいのだが、まあこの方が、エレガントなネーミングだと自画自賛している。その上で私は、外出すると、このiPhoneの設定画面を要所要所で開き、その場所のWi-Fi接続の名前と数を見ることにしている。それが無味乾燥な数字と英字の羅列であれば、個人がその近くでWi-Fi接続をしてパソコンを使っているのであるから、さきほどの定義の「インテリ」が多いに違いないと思うのである。私はこれを、ガイガー・カウンターならぬ、インテリ・カウンターと名付けている。
これまで、そのインテリ・カウンターの網にひっかかった中で最も数が多かったのは、東京大学の本郷キャンパス弥生門近くの浅野研究室付近で、画面に所狭しと、20いくつも英数字の羅列が一気に出てきたのには、感動した。なるほどさすが理系だと納得した次第である。その次は、意外なことにお茶の水下の神田神保町交差点付近で、これも数としては20近くにもなったが、英数字の羅列の数より、大手の接続サービス名が多かった。チェーン店が多いので、こちらは「インテリ」というよりチェーン店集積度指数といった方がよいかもしれない。
それでは、私の家の近くではどうかというと、自分のWi-Fi接続の電波以外は、英数字の羅列はなかった。つまり、インテリ分布は極めて薄いらしい。そのほかどういうわけか、それだけポツンと単独で、AirportというWi-Fi電波も入っている。これは何だろうと思っている。そのうち、暇になったら究明しようと思っている。
また、オフィス付近ということで、霞ヶ関ビルの地下商店街に行ってみたら、何と、スポッという感じで直ちに繋がってしまった。地下一階のマックの店舗からのWi-Fi電波らしい。そのほかは、すべて大手の接続サービス名だったから、チェーン店集積度指数が非常に高いと思ったのである。しかし、よく考えてみると、こんなことは電波を見なくとも、目でその辺りを見回せば、一見してわかる。どうも、インテリ・カウンターを使い始めると、そればかりに目が行って、あまりよろしくない。しかしそれはともかくとして、このカウンターを見るのはなかなか面白くて、どこか新しい場所に行った時の楽しみである。
それにしても、このiPhone 4Gは、スマートフォンという名に値する。いや、それ以上の現代の万能道具である。その機能を機器にたとえると、まず携帯電話、パソコン、カメラ、CDプレーヤー、レコーダー、カーナビ、コンパス、計算器それにラジオと懐中電灯である。仕事面では、六法全書、英和・和英・国語辞典、翻訳者、エンサイクロペディア、スケジュールとメモと連絡先を入れた手帳、切抜き帳、時刻表である。また生活面では、地図、アルバム、地理案内人、金魚と熱帯魚の水槽、銀行通帳と御用聞きである。しかも、毎日毎日、その内容が進化している。これが、すばらしいところである。
たとえば、一昨昨日、何の気なしにアマゾンのアプリを入れた。そこで、驚いたことに、その場で撮った写真を送れば、その商品に関連したメールを送って来るというので、面白半分に目の前にあったパナソニックの電気シェーバーの写真を撮って送った。すると、折り返しのメールで、直ちにその電気シェーバーの型番と替刃の広告が送られて来た。ちょうど替刃の取替えの時期だったので、そのまま注文したら、3日間で自宅に送られてくるという手際の良さである。
このままだと、仕事上でも、生活上でも、このiPhoneを持っているかどうかで、大きな差がつくのではないだろうか。これを持っていない人、持っていても使いこなせていない人は、道具もなしに原始時代に生きているようなものである。いやこれは、実に大変な時代になったものだと痛感する今日この頃である。
(平成22年8月 3日著)
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