iPhone 4Gを買ってから10日間が経過した。この間、本当に色々なことが起こったが、それなりに何とか対応して乗り越えて来た。ちょうど、20数年前に初めてノート・パソコンを買った当初に経験したことと同じようなものである。もっとも、ITに関する知識も余裕もなかったその当時に比べれば、この間に試行錯誤を繰り返して蓄積してきた経験の質と量が大きく違うことから、大変だったものの、昔のことを思い出してとても懐かしい思いがしたくらいで、比較的楽しみながら対応することが出来た。ところで、この20数年の間、技術は格段に進歩しているので、驚くことばかりである。たとえば、タッチスクリーンしかり、現在地を示すGPSしかり、加速度センサーしかり、高速CPUしかり、日本語入力方式しかりである。それぞれ、昔は重たくて鈍感なマウスを動かさなければならなかったし、GPSはもちろんセンサーなど一切なくて、文字通りのスタンド・アローンの機械だった。フロント・エンド・センサー(FEP)つまり日本語入力も、ワープロの時代が終わってみると、パソコン上では一太郎のAtokの変換が少しはマシといった状態で、このiPhoneのアカサタナ中心に十字形で入力するフリップという入力方式の便利さには、及びもつかなかった。 なかでも、特にタッチスクリーンが素晴らしいと思う。すべては、アイコンをトンと叩く「タップ」から始まる。それが二回の「ダブルタップ」は、写真の拡大にも使える。「タップホールド」といって指をタップしたまましばらくすると、虫めがねが現われたり選択のバルーンが出てコピー・アンド・ペーストなどが出来る。「スライド」といってボタンに指を当てたまま引っぱって横に動かすと、ロックが解除される。ある時、家内からこのiPhoneに初めて電話が架かってきたが、どうやれば電話に出られるのかわからなかったので、焦ってあれこれ触っているうちに切れてしまった。このスライド操作が必要だったのだが、それを知らなかったので、そんな仕儀と相成った。ちなみに、その時すぐに私から掛け直したのだが、たまたま家内も新しい携帯電話を使っていたので、あちらもどうやって出ればいいのか、一瞬とまどったらしい。つまりは、通信ネットワークの両端で、夫婦そろって似たようなことをやっていたのだから、もう笑い話としか言いようがない。 ところでそのタッチスクリーンの話を続けると、「フリック」といって、指を画面に当ててちょっと弾けば、ページを上下にスクロール出来る。また「ピンチ・イン」「ピンチ・アウト」といって、二本の指を同時に画面に当てて外に弾いたり内につまんだりすると、画像が拡大・縮小する。これなどは、とても便利な機能であり、感心した。直観的に簡単に出来るから、とりわけ高齢者にやさしい仕組みといえる。ちなみに、この二本の指を同時に画面に当てても判別できるという技術は、確か特許ではなかったかと思う。 とまあ、そういうわけで、アプリをどんどん入れて、家内の言葉によると「iPhone 4Gを毎日賢くしている」最中というわけだが、同時にその過程で、まあ本当に予期しないことが次々に生じた。それがどうしてかを考え、合理的に解決するにはどうするかという対処案を導き出し、どうしてもわからなければWebに情報を求める・・・そういう「Trial & Error」ならぬ「Error & Solution」の過程が、iPhoneの面白さである。それから、iPhoneのデザインのセンスが良い。たとえば、その外観の形状にしても、周囲が黒くて余分なボタンがなく、すべて中央下部のホーム・ボタンに集約されているから、誠にすっきりとした印象を与える。もちろん電源ボタンや音量ボタンは別に存在するが、それらは側面に目立たないように配置されている。そういうハード面だけではない。感心したのは、アイコンの配置換えである。アプリを買ってしまったから、それらのアイコンを使いやすいように再配置したい。どうするのかと思っていじくり回していたら、あるとき画面に浮かぶアイコンがゆらゆらと揺れた。これがアイコンを動かすモードだったみたいで、アイコンの配置換えと削除、それから二つ以上のアイコンをまとめるフォルダのようなものも簡単に作れた。これが凄いところである。 ところで、私が思うに、この種のIT機器を扱う人は、二種類に分かれる。ひとつは、マニュアルを隅から隅まで読んで、それで体系的な知識を得て使いこなすタイプである。いまひとつは、マニュアルなどハナっから読まずにとりあえずその機器を手にしたら直ぐに見よう見まねでどんどん使っていくタイプである。前者は、使いこなすまでに時間がかかるが、やることなすことが正確である。ただし、小さくまとまってそれで満足してしまうという難点がある。後者は、すぐに使えるようになるが、ところどころすっぽりと大事な知識が抜けていることがあって、そういう面ではいい加減であるけれど、その反面、マニュアル一筋の人間には思いもつかない裏技を難なく見つけたり発明したりしてそれを平気で使っていたりする。ウチでは、家内が前者、私が後者である。もちろん私とて、パソコンにしても家電にしても、わからなければマニュアルを見るようにしようとしているが、結果的には滅多に見たことがない。そもそもIT機器というものは、合理的に設計・プログラミングされているはずだから、私が合理的に考えてわからないものは、それはこれを作った技術者の方が悪いのだとさえ思っている。私の経験では、家電のようなものは、妙な設計が多くて、家内のようにマニュアルを読みこなさないと使い方がわからない。ところが、パソコンやこのiPhone 4Gの場合は、使える機能が多すぎることから、マニュアルではとても対応できなくて、むしろ私のように直覚的に使う方が向いていると思うのである。 それはともかくとして、それでは、iPhone 4Gを買ってからのこの10日間、どんなことが起こったかを記録しておきたい。 [Gメールの利用] メールとカレンダーとが同期できるというので、Gメールを使ってみた。既存の私のアドレスがあるから、それを通常使うメールとして登録したのだが、これを専用にするということを前提としていなかったので、どうもアドレスが気に入らない。そこで、別のアドレス名を登録し、そこへアウトルックなどの既存のメールを統合することにしたのである。そうすると、これ一本で私あてのすべてのメールが見られるという算段だった。 そこで、既存のメールをこちらに移し、カレンダー・ソフトもこちらに移行して、さあこれでよしと思って寝た。すると、翌朝、私あてのメールが何とまあ4130通も来ていることに気が付いた。はて、迷惑なチェーン・メールによる攻撃かと思っておそるおそる開けてみると、私が昨晩、このアドレスに決めたことを記録しておくために、自分自身のアウトルックのアドレスあてに打ったメールが届かなかったという報告の同一メールばかりであった。よく見ると、そのアドレスがとんでもなく間違っている。そんなはずではなかったのにと思ったが、よくよく見ると二つのアドレスが並んで張り付けられてしまっており、しかも、その二つを繋いでいる文字に問題があったらしい。悪用されるといけないので詳しくは書かないが、どうも、この小さな画面に張り付けるときに、だぶってペーストしてその文字列が挟まった結果となったらしい。それがいわばチェーン・メールとなって、ぐるぐると回っている原因になったようなのである。これは困ったと削除し始めたが、まだ届くのが続いていて、なかなか止まらない。他方、アウトルックなどにある既存のメールを統合したものを見てみると、何と、本文にはすべて文字化けが発生している。エンコードを変更してみたけれど、直らない。先のチェーン・メールも問題だし、これではとても実用にならないと思って、この計画は中止することとした。そこで、今では別アドレスで、小ぢんまりとメールを使い、併せてGoogleカレンダーを使っている。特に、Googleカレンダーと同期してくれるので、実に便利である。 [プロバイダのメール] 自分が加入しているプロバイダのメールを、いつもOutlookで見ているが、ひょっとして、iPhoneでこれも見られないかと思って、メールのアカウントの設定を行った。すると、ちゃんと見られるではないか。これがあると、改めてパソコンを開く必要がないので、便利になった。ただし、POP経由なので、プッシュ受信は出来ず、いちいち見に行かなくてはならないが、どうせメールは頻繁に見るので、特に煩雑になるわけではない。でも、検索機能の便利さを考えたら、そのうちGメールに一本化することを考えている。 [連絡先が消滅] iPhoneをUSBで繋いでiTuneをさわっていたとき、まずアイコンの整列をさせようとしたが、方法がわからなかった。アイコンをドラッグしても、動いてくれなかったからである(のちほど、iPhone上ですべてのアイコンをゆらゆらさせた上で、動かせることがわかった)。そのとき、電話帳コピーのアイコンを動かそうとした。そのせいか、あるいはその次の段階で、連絡先の同期をしたときに電話帳を指定したせいかはわからないが、何とまあ、「連絡先」が名前とコメント欄を残してすっかり消えてしまったのである。これには困った。そこで考えた末、その消そうとしていた電話帳コピーのアイコンを起動し、機種変更の時にソフトバンクのコンピュ−ターに保存していたデータを移し換えたところ再生し、事なきを得た。60日間は保存しておいてくれるらしいので、助かった。やれやれ、驚かされることばかりである。明日は何が起こるやら。 [同期の方向] iPhoneには、よく「同期」という言葉が出てくるが、これをバックアップと受け取ると、間違いの元となる。つまり、「同期」の方向が問題なのである。私のiPhoneをUSBでパソコンに繋げると、アップルの管理ソフトであるiTuneが自動的に立ち上がる。そして、左の縦欄に「デバイス」という項目があり、そこに私のiPhoneが表示されている。そこを右クリックすると「バックアップ」があり、これがiPhoneからこのiTuneへとアプリをバックアップしてくれる。その反対に、iTune内にあるアプリとその羅列をiPhoneへと反映させるのが、「Appを同期」という項目である。これを常に意識していないと、せっかくiPhone内のアプリのアイコンを綺麗に並べ替えて悦にいっていたのに、また元の黙阿弥になってしまうことになる。 これは、Appbankでのアプリの購入を、iPhoneで行うか、パソコンのiTuneで行うかによって使い分けなければならないからである。iPhoneでアプリを買った場合、左の縦欄の「デバイス」を右クリックして「購入した項目を転送」し、それからアイコンを並べ替えたようなときは「バックアップ」し、次に「同期」をしておくようにしている。最後の「同期」は、たぶん不要だと思うが、念のために行っているにすぎない。 ところが、iTuneでAppbankのアプリを買ってしまった場合、上のようにiPhoneからのバックアップの手順を踏んでおかずにいきなりiTune内の「Appを同期」という項目をクリックしたりすると、その直前までにせっかく済ませておいたiPhone内のアイコンの配列が元に戻ってご破算になってしまうのである。それなら、その買ったアプリだけをiPhoneにインストールしてくれればいいものを、どういうわけか、その買ったばかりのものについては「レ」印つまりチェックから外れてしまっている。これは、私がメインとして用いているパソコンを使用していたときではなくて、二台目のパソコンを使っていたときに生じたから、メインのパソコンを使う場合には起きない現象だろうとは思うが、こういうところがiTuneを使い始めたばかりだと、とまどう点である。 [ラジコをインストール] ふと思いついて、FMラジオを聞きたくなった。確かパソコンでは、「ラジコ」(radiko.jp)というものがあって、各局の放送番組をそのまま聞けた。そこで、グーグルで調べてそのアドレスにアクセスすると、iPhone専用の無料アプリがあって、それをダウンロードしたところ、めでたくラジオを聞くことができた。これで、ラジオ受信機になったというわけだ。 [辞典の購入] 「大辞林」の評判がよいらしい。そこで、これを2500円で購入した。画面が黒くて、見やすいし、使われている字体が美しい。それから、パソコンでお馴染みの「英辞郎」もあったので、これも1000円で購入したのだが、あまりにもデータ量が多すぎて、パソコンのiTune経由の購入になった。これは、文例が多くて助かる。そういえば、これに和英辞典が含まれているので、これも何かと役に立つ。そうそう、商売道具の法律関係であるが、Safariで「ぎょうせいの法令データベース」を開けることが出来た。これで、法律だけでなく政省令や規則をすべて参照することが可能となったが、ログインしたりして面倒だなと思っていたら、「基本六法」2010年版が無料で提供されていることが分かったので、これも日常の利用のためにダウンロードしておいた。 [便利なアプリ] 何千円というアプリはさほどなくて、たいていは、100円からせいぜい300円程度のものが多い。しかし、アプリが安い、あるいは無料といっても、それぞれなかなかの力作である。カメラとスキャン(「Genius Camere & Scan」)、交通機関の乗換えやJRと地下鉄の路線図と時刻表(「乗換案内」、「Japan Subway、Go!」、「Tokyo、Flight Status」)、レストラン案内(「食べログ」、「ぐるなび」)、「そら案内」などは秀逸である。ちょっとしたものとしては、「懐中電灯」(なかなか明るい!)、色々な単位の変換(「Measures」)、「時差時計」(海外へ電話や旅行の際に便利)、家内に今日は何にする?と聞かれたときに使えそうな料理のレシピ(「クックパッド」)、波や雷鳴や電車の音(「White Noise」)、年号と西暦と年齢の計算(「年号計算」)などは便利に、あるいは面白く使えそうだ。 それから、感心したのがいくつかあって、たとえば、「産経新聞」は、新聞紙面をそのまま出している。読もうと思えばいつでも読める。ただし、画面が小さいだけに、全体を見るのは一苦労だし、通信速度も3Gの場合にはちょっと力不足で、WiFi接続でないと時間がかかる。しかしこれなどは、紙の新聞とネットの世界の融合時代の先駆的(?)又は破れかぶれ的(!)な試みではなかろうか。続けていっていただきたいものである。日経新聞も、あの誰が読んでいるのだろうかといぶかる電子版よりも、こちらを見習ったらいかがかと思う。 青空文庫が読めるアプリ(「Skybook」)も、魅力のひとつである。私はこれに、夏目漱石や芥川龍之介を何冊か入れて、暇なときに読んでいる。普通の文庫本なら字が細かすぎて堪らないが、これならいつでも好きなように字を大きくできて、誠に好都合である。その古典の読書の第一号として夏目漱石の虞美人草を読んだのだけれども、私が中学生の時に読んだときとまったく同じ感想、つまり、「どうしてこんな簡単なことを、くどくどと、いかにも回りくどく書いているのかわからない。小説家というのは、本当に暇な人種だ」という読後感を持ったのだから、我ながら面白い。人間というのは半世紀経っても変わらないものか、それとも私に進歩がないのか、そのどちらである。後者だったら、どうしよう?・・・もう、笑うしかない。いや、だからこそ私は小説家にはならなくて(正確には「なれなくて」)、今現在、法律を飯の種にしているのであるが、さもありなんと我ながら納得した。 それから、私はお魚が好きなものだから、それに関連して、二つのアプリを入れた。ひとつは、「桜金魚すくい」で、別にホイを使って金魚すくいをしなくとも、観賞モードがあって、本物よりもかわいいのである。金魚の動きに併せてサーッと広がる水紋も美しい。いまひとつは、熱帯魚の「マリン・アクアリウム」である。これも魚がリアルで、水槽の映像が美しい。美しい音楽を聞きながら、しばし、見とれてしまうほどの出来である。 [標準添付アプリ] iPhone 4Gに標準で添付されているアプリも、使えば使うほど、便利である。たとえば、カメラは、タップするところに焦点が合う。マップは、GPS機能で現在地を割り出し、目的地を入力すれば、そこまでの経路を示してくれる。これなどは、道行く人に道順を尋ねなくとも簡単にわかるから、方向音痴の人の特効薬である。地図と航空写真も併用できるから、これもわかりやすい。そのほかの標準アプリとしては、ブラウザのSafariは軽くて使いやすい。試しにこれを使って私の銀行を呼び出してみたが、ログインも出来て、明細も見られた。普通のパソコン並みに、ちゃんと使えるのである。ユーチューブは、あまり見ないが、見るときは3GではなくてWiFi環境が必要だろう。 [Skype] 話題の「Skype」をインストールしてみた。そして、クレジットを1500円分購入して、向こうの迷惑もかえりみず、試しにアメリカ在住の友人の固定電話に架けてみたが、ちゃんと通じたからびっくりした。音声もしっかりと聞き取れるレベルに仕上がっている。これでいくらだろう・・・計算はしていないが、せいぜい何十円というとてつもなく安い料金のはずだ。そんなタダみたいな料金で、地球の裏側とも何十分も話せるではないか・・・。これは、専用の無線帯を使った従来の携帯電話というものが、ごく近い将来なくなることを意味する画期的な仕組みではないだろうか。ただ、それでいて、自宅の番号にはどうもうまく繋がらなかった。なぜだろう?、186を設定しているせいかもしれないと思っている。まあ、それくらいは、在来の通信会社に寄付しろということかもしれない。 [音楽のiPod] iPhone 4Gは、音楽のiPodをベースにしているだけあって、音楽関係も充実している。手持ちのCDをパソコンに乗せると、iTuneが立ち上がってそれを取り込んでくれる。それがそのまま、iPhone 4Gに転送されて、聞くことが出来る。iPhone本体を物理的にシャッシャッと振れば、あらかじめセットしておいた曲を文字通り「シャッフル」してくれて、ランダムな順で聞ける。また、「Genius」といって、ライブラリから似たような曲を探してきてくれて、それを演奏リストに加えることも可能である。これなどは、こういうのが欲しいとという音楽ファンの心情をよく調べた上で、作られていると思う。 [その他のアプリ] これを書いている間にも、iPhone 4Gをさわって、どんどんアプリを入れた。たとえば、「AroundMe」というのは、現在地の周辺の喫茶店、病院、銀行、駐車場、ホテルなどの情報を示してくれる。もっとも、文京区の私の家ではぴったりと位置を示していたのに、なぜか千代田区のオフィスでは300メートルほどズレたのは、理由がよくわからない。「イマココ」といって現在地を地図上に示してくれるソフトも、同じ位置にズレていたから、これはiPhoneのGPSの特性によるものなのかもしれない。ところで、「Bangumi」というのは、テレビの番組表を1週間分示してくれるし、「Currency」は、各国の為替レートを教えてくれる。海外旅行に便利そうだ。「Google Earth」は、パソコンでお馴染みの航空写真を見せるソフトで、ピンチ・アウトの威力を存分に発揮できる。アメリカのサウス・カロライナ州在住の友人の家が見えたのには、びっくりした。もちろん、東京の私の家もよく見える。 「J-Cast News」 これは、常にその日の記事を流している。それは良いのだが、元ネタには大手の新聞紙がないからいわば芸能記事に毛が生えた程度になってしまって仕事には使えないし、加えて広告が出るのがいささかわずらわしい。だから私は、こちらを削除して、代わりにGoogleのニュースをホーム画面に追加して使うことにした。「クック・パッド」というのは、料理のレシピがたくさん載っているらしい。「らしい」というのは、ちょっと覗いたらそのようだったからで、このアプリは、たとえば家内が実家に帰ってしまって、なかなか戻って来てくれないような事件が発生したときにでも、見ることにしよう。「Weather News」は、日本全国の地図とともに天気を知らせてくれるアプリで、よく見かけるものである。それはそうと、「Googleの音声入力」には、びっくりしてしまった。この画面を開いたことを確認し、調べたいもの、たとえば「iPhone 4G」などと叫ぶだけで、Googleの検索窓にその文字列が入力され、検索結果が表示されるなんて、素晴らしい。つまり音声認識をしてくれるのである。ごく近い将来にでも、この技術がもう少し進歩すれば、すべて音声で命令できるというわけだ。もっとも、近くに家内がいるようなときに、いきなり命令調の声が聞こえてきたら、少し迷惑かもしれない。 「excite翻訳」は、パソコンでよく使うソフトで、アプリ化されている。パソコンでは、中国語や韓国語の版もあるから、近い将来、そういう英語以外の言語も追加してくれるだろう。それから、「Keeper」というアプリには、感心した。今回もたくさんの会員になったりパスワードを入れたりしたが、その数が多くなってとても覚えきれなくなった。そういう場合に、ここに会員番号やらパスワードを入れておくと、暗号化してバックアップもしてくれるという。ただし、結局は、このアプリの作者を信用するかどうかである。そのほか、「Shazam」には、笑ってしまった。日常ふとした時に聞こえてくる音楽の題名が浮かんでこないという場面は、これまで嫌というほど経験してきたのであるが、これはその聞こえてくる音楽にiPhone 4Gを向けるだけで、題名などを言い当ててくれる。まさに、年配者向けのアプリではないか。「UNIQLO」というソフトは、例のモーレツな衣料品会社の作らしいが、画面の下半分にはカレンダー、その上半分にはトイ・カメラ風のビデオが流されていて、たくさんの人物が動いていて面白い。それと同時に聞こえる音楽と合わせて聞くと、なぜか心が癒されるというものだ。ああそうそう。「PS Mobile」というアプリは、著名な写真加工ソフト会社の作で、写真の色々な加工が出来るようであるが、まだ使ってはいないのでコメントは書けないけれども、期待できそうだ。 まあざっと、以上のような次第で、関心のない人には、「何だそれは」と言われそうであるが、このiPhone 4Gを手にしているだけで、毎日が楽しくて仕方がない。これって、iPhone 4Gの中毒現象かもしれない。 そうそう、話は変わるが、2010年7月21日の新聞には、米アップルが20日に公表した10年4〜6月の決算は、4月に売り出したiPodの爆発的な人気に支えられ、売上高は前年同期比61.3%の157億ドル、利益も78%増の32億5300万ドルという最高の決算となったという。なかでも発売から3ヶ月が経過したiPadは販売台数が327万台、iPhone 4Gも発売からわずか3日間で、170万台も売れたそうだし、これらに支えられてパソコンのMacもこの3ヶ月間で3割強増しの347万台に達したというから、まさに絶好調というところである。 一方、それと同じ頃の7月20日、日本のシャープも、10.8インチと5.5インチという二つの大きさのタブレット端末を発表した。一見すれば、iPadそっくりの外見である。かつて物まねは日本企業の得意技で、この20年ほどはようやくそういう批判は免れてきたと思っていたら、また復活したかのようである。しかし、iPodにせよ、iPadにせよ、はたまたiPhoneにせよ、アップルの機器が爆発的人気を博しているのは、既に述べたように、カスタマイズの自由さと、多種多様なアプリの存在である。つまりは、秀逸なハードのデザイン力と、アプリという目に見えないソフト資産とのコラボレーションこそが、その本質なのである。 ソニーやKDDIのような日本企業は、そういう点がまだわかっていないと思う。しかしそうした日本企業の中でも、このシャープは、その点は多少は理解している模様である。というのは、同日、次のようなことを発表しているからである。 「シャープは、従来の『テキストや静止画』に加え、「動画や音声』が楽しめ、コンテンツの表現力を一段と高めた次世代電子書籍フォーマットXMDF(以下、次世代XMDF)を開発しました。この技術を核に、出版社・新聞社・印刷会社・取次会社など国内外の関係各社の協力を得ながら、本年内にも、配信サービスとタブレット端末を組み合わせた新たな電子書籍ソリューションを提供し、電子書籍事業に参入いたします。 『次世代XMDF』は、2001年より小説や漫画など日本の貴重な文化を電子コンテンツ上に表現してきたXMDFをさらに発展させ、「動画や音声』を含むデジタルコンテンツを手軽に閲覧できるほか、文字サイズに合わせて自動で段組みを変えられるレイアウト機能など、編集側のコンテンツ表現へのこだわりに応えるとともに、利用者の読みやすさを高めます。 さらに、端末での快適なユーザーインターフェイス(UI)技術と合わせることで、電子書籍の楽しみを一層拡げ、市場の開拓とユーザー層の拡大に貢献します。また、1つのコンテンツを、タブレット端末だけでなく、スマートフォンやパソコン、テレビなど複数の機器で閲覧できる『ワンソース・マルチユース』を特長とし、版元側での制作面の負荷軽減を目指します。」 つまりこれは、ハード面としてタブレット型リーダーの試作機を披露しただけでなく、ソフト面から見ると、意外と良いところを突いているのである。すなわち、日本語版の電子書籍市場は、これからの市場だからだ。アメリカでは、このiPodやらキンドルなどのタブレット型リーダーは出ているが、まだ日本語に本格的に対応する端末と規格はない。特に、日本語特有の「縦書き」とか、「ルビ振り」に対処する規格が、近くアメリカで開発されるとはとても思えないからである。その点、このシャープのように、テキストや静止画だけでなく、いち早く動画や音声まで楽しめる規格を作ったとなれば、それはすなわち日本語コンテンツを囲い込める電子書籍フォーマットになるからである。 ただ、私が思うに、まだまだ「プロ」つまりは出版社や将来的には新聞社などに配慮した規格にとどまっているものと推察する。インターネット時代は、そのような「プロ」ではなく、「アマ」が発進する時代なのだから、その一般大衆の発信力を利用できる基盤をむしろ作るべきである。それを現に行っているのが、素人による何十万というアプリ資産を築いたアップルなのだと考える。この点、出版社などは、たとえていえば、蒸気機関が発明されたために失業した、工場の職工や馬車の御者のようなもので、既に「時代に置いていかれるべき存在」なのである。既にユーチューブがその片鱗を見せているように、コンテンツは素人たる作者から直接、一般大衆へと発信できる。ならば、書籍も同じで、作者が直接、アップロードすればよくて、その流通の仕組みと、規格と、そして課金の制度さえ作ればよい。それが、来るべき時代の避けられない姿なのである。だからそういう時代には、情報の分野でも流通の「中抜き」が起こる。これまで作者と読者の中間に位置して、文字通り高い流通マージンを謳歌していた出版社や新聞社などは、必然的に、社会的に不要な存在とならざるを得ないと思っている。シャープが果たしてそこまでを意識しているかどうかが、この会社の浮沈の鍵を握っていると考える。しかし、そもそもシャープは、液晶テレビと太陽電池の会社だから、このようなコンテンツの流通の世界とは、かなり文化が異なる。私は、総じて悲観的であるけれども、同社に異端児でもいて、この悲観論を見事に覆すことが出来るのならば、誠に立派なのだが・・・。
(平成22年7月22日著) (お願い 著作権法の観点から無断での転載や引用はご遠慮ください。) |
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