悠々人生のエッセイ  オリンパス・ペンE−P1



オリンパス・ペンE−P1と二つの交換レンズ




 早朝起きてみると、せっかくの日曜日なのに、霧のような雨が降っている。梅雨のシーズンの真っただ中だから、まあ仕方がないかと思って、1階のポストへ新聞を取りに行った。いつもと違って私の方が早く起きすぎたので、家内はまだ寝ている。いらぬ音を出して起こさないようにそっとドアを開け、新聞を手に帰ってきて再び静かに閉めた。その道すがら台所の脇を通るときに、バナナがひと房、目に入る。これはおいしそうだと思ってその一本を手にとり、居間の定位置に座った。新聞を読み始めながら、おもむろにそれを口にしていると、家内が起きてきて見つかってしまった。「あらまあ!お腹がすいているようね。いま用意するから待っててね」といって、朝食の用意をし始めた。いつもながら、ありがたいことである。新聞を読み終える頃には、食卓の上にご飯やおかずが並び始め、それを次々に平らげていくと、やっと、一日が始まった気がする。

 実は、昨日の土曜日、神田小川町にあるオリンパスのショールームに行った。そして、7月3日から発売される一眼レフカメラE−P1の現物の展示を見て、それを触らせてもらって来た。これは、「ようやく出たのか、遅かったじゃないか」と言いたくなるほど、コンパクトな設計の一眼レフで、私が長い間、そんなカメラが開発されたらなぁと待ちに待っていたものなのである。どういうことかというと、順を追って話せば、まず私は、フィルム・カメラの時代からのカメラ・ファンである。デジカメ時代になってからもそのカメラ好きの傾向は変わらず、性能が向上するたびにとっ換えひっ換えして買って、デジカメは、もう4台目となっている。もちろん、昔の35ミリフィルムの時代には安手のコンパクト・カメラしか持てなかったし、その延長でデジカメ時代になっても、持っているのは単に普通のデジカメにすぎない。

 ひとくちに普通のデジカメといっても、最近のカメラは以前のものに比べると、性能は圧倒的に向上していて、もうこれ以上は望めないのではないかと思うくらいである。しかし、上には上があるもので、やはり写真の質は、一眼レフにはとてもかなわない。たとえばデジカメでは、室内で人物の顔を撮ろうとしたら、黒くつぶれてうまく撮れなかったりすることが、しばしばある。あるいは鉄道博物館の内部をたくさん撮ったのに、出来上がったファイルをパソコンで見ると、どれもこれも失敗していて、使えるのはほんの2〜3枚くらいだったりした。だから、理想通りの良い写真を撮るのであれば、普通のデジカメではとても出来なくて、一眼レフに限るというわけである。

 でも、これまでの一眼レフといえば、「ずっしり重いし、とても嵩張るし、前に出っ張るし、本当にダサい」という四重苦で、とても持つ気にはならなかった。それに一眼レフといえば、どういうわけか静止画を撮るものばかりで、動画を撮ることができるものは、技術的にはできるはずなのに、従来は全然なかったのである。これなどは、私には理解しがたいところである。ひょっとすると、写真を撮るカメラとビデオを撮るカメラとは全く違うものなのだという、技術者の先入観のようなものがあったのかもしれない。かつてのソニーのウォークマン、近頃ではアップルのiPodのように、こんな技術者間のつまらぬ思い込みのようなものは、さっさと破られなければならないのである。

パナソニック

 ところが、昨年後半から、デジカメ、一眼レフ、ビデオカメラという三者間のこうした棲み分け状態に、次第に変化が現れてきた。たとえば、パナソニック「LUMIX」DMC-GH1の最新機種は、静止画は1210万画素で、常時オートフォーカスで動画を撮ることができるし、本体サイズ(H×W×D)は 89.6×124×45.2 mm、重さ約385g(本体のみ)約903gと、世界最小・最軽量という触れ込みである。つまり、一眼レフとビデオカメラが一体となり、そして普通のデジカメにも、ちょっぴり近づいてきた。ボディの色は、黒のほか、赤やゴールドまで揃えてある。これには、私は心を大いに動かされたのである。そこで、通りすがりに有楽町のビックカメラの売場をのぞき、その現物を手に取って見た。すると、「一眼レフの小型化を妨げていたミラーを取り払ったミラーレス構造を実現」とはいうのだが、相変わらず、いかにも一眼レフでございという顔をしている。小型化や性能や色遣いはかなり進歩したことは認めるものの、それにしても、隣のおじさんのような、このごつい顔は、どうにかならないものか・・・。ボディの色がレッドだと、まるで赤鬼ではないか。でも、どうしようかな・・・。

 などと思っていたところに、このオリンパス・ペンE−P1が出現したというわけである。ネットでそのHPを見る。本体サイズ(H×W×D)は 70.0×120.5×35.0 mm、重さ約335g(本体のみ)で、外見はまるで昔のフィルム・カメラである。軽くて、カメラの筺体も非常に持ちやすく扱いやすい。これなら、ポケットにも入る。静止画は1230万画素で、パナソニックを少し上回る。それに、ハイビジョン動画を最大7分間、撮ることができる。もっと長く撮るには、そこでいったん打ち切って、SDカードの容量の限界まで何回でも撮れるという。また、6種類のアートフィルターが用意されていて、色々な味わいの写真を撮ることが可能らしい。実際に手に取ってダイヤルを動かすと、なかなか使いやすい。うううっ・・・生来の新しもの好きの血が騒ぐ・・・、いけない、こんなことで、簡単に惑わされてはいけない。

 それにしても、このカメラ、どこかで見たことがあるなぁと思ったら、パンフレットにこんな説明があった。

「世界初、そして世界唯一のハーフサイズ・システム一眼レフ、オリンパスペンFは、昭和38年(1963年)に登場しました。20本におよぶバラエティ豊かな交換レンズ。その他独創的な機能を満載した革新的なカメラでした。」

 なぁんだ、これは、私が中学生の頃にウチにあったあのコンパクト・カメラである。道理で、カメラの上の段差などに、見覚えがあるわけだ。それにしても、確かあのカメラ、35ミリフィルムを半分に使うという、今から思えばケチくさい工夫だったけれど、ペン全体では累計で1700万台も売れたそうだ。それなら、半世紀という時を隔てて、その孫にまた会ったというわけか・・・。満更、縁がなくはないようだ。なるほど、新しものに加えて、ノスタルジーまでくすぐるとは、この会社、やっているのは胃カメラばかりかと思っていたら、消費者を大いに迷わせる術も心得ているようだ。なかなかやるではないか。そろそろノックアウトされそうな予感がしてきた。

 一眼レフの特徴は、別売りのレンズを使って、接写、望遠、広角、魚眼などと幅広い写真が撮れることである。それなら、E−P1にはどういうレンズが用意されているのかというと、パンケーキ型の普通のレンズと、標準3倍という小型望遠の二つしかないようだ。これから充実されていくとは思うが、この点は、まだまだ発展途上である。ただ、マウント・アダプターを付ければ、これまでの同社のレンズが使えるし、昨年パナソニックと共同で立ち上げた新規格マイクロ・フォーサーズシステムにも対応しているから、これから拡がっていくものと期待したい。

 ところで、最近の一眼レフ市場のシェアがどうなっているかといえば、こんなところらしい。@キャノン42.7%、Aニコン38.2%、Bソニー4.5%、Cオリンパス4.5%、DHOYA2.4%、Eパナソニック0.9%、F富士フィルム0.7%
(出典:テクノ・システム・リサーチ。東洋経済6月27日号33頁からの孫引き)。つまり、国内ではキャノンとニコンの二強状態で荒稼ぎをしていて、ソニーはもちろんオリンパスなんて、全く駄目なようだ。加えて、一眼レフの世界出荷数は、2003年から2007年までは大きく伸びていたが、2008年からは成長が鈍化したということであるから、その二強以外のメーカーは、今後ますます苦しくなってくるということか・・・。なるほど、この市場の状況が、多少わかった気がする。つまり、このオリンパス・ペンE−P1は、弱小メーカーが放つ乾坤一擲の勝負手というわけか・・・。

 そんなことを思いつつ、E−P1のことはもう忘れようと、先週の間に取りためていたビデオを何本か見たりしていたら、あっという間に時間が経ち、もう昼前となった。午後1時過ぎからは、テニス・レッスンの予定が入っている。ちょうど、家内がやや早い昼食を持ってきてくれた。梅雨で湿度が高いから、食欲が出るようにと、カレーである。それをおいしいおいしいと言ってあっという間に平らげて、テニス場に向かった。外では、いかにも梅雨らしく、しとしと雨が降っている。神宮の室内テニス場に着いたが、奥にある秩父宮ラグビー場の入口が人また人で一杯である。U−20ラグビー世界選手権大会が開かれているらしい。ああ、日本代表がぼろぼろに負けているあの大会か、この空模様と同じだなぁと思いながら、ロッカー室に向かった。

 この日のテニス・レッスンのテーマは、相手を横に揺さぶるというものだった。ややセンター気味に深い早い球を打ち、返って来た球に角度を付けて短く打つという練習である。深い球の方は問題ないが、角度を付ける球に順回転のスピンをかけるか、それともスライスでちょこんと打つかの選択肢がある。私は、フォアつまり右手で打つときはスピンが、バックの左手のときはスライスが合っているようだ。室内の気温はそう高くないが、湿度が相当高いようで、コーチもプレーヤーも、皆、汗が次から次へと出てきて止まらない。「まるで、サウナにいるようだねぇ」というのが、合言葉になる。

 そんな蒸し暑い中で、練習をひとしきりこなした後、いよいよダブルスの試合である。「あれれ、今日は、ファースト・サーブが入らない。これでは、試合にならないではないか」・・・短いスライスを練習しすぎたせいかもしれない。それで、力のないセカンド・サーブを狙い打ちされてしまった。中には、練習したとおりの角度を付けたスライス球を相手に打たれる始末。まあしかし、力の強いプレーヤーにはわざとバックに弱い球を、テクニシャンには体の正面を狙って強い球を打つなど、相手に応じて我ながら弱者らしくねばって、何とかイーブンに持ち込んだ。極めつけは、最後のゲームで私がレシーバーだったときに、サーバーの打ってきたサーブが比較的弱くて高目の球だったので、それを相手のパートナーの逆をついてストレートに強く打ちこみ、茫然と見送らせたことだった。相手には悪いが、これで久しぶりに気持ちよく、テニスを終えることができた。終わったとたん、頭からつま先まで汗で、全身に水をかぶったようになっていることに気付いた。そのまま風呂場に直行し、ぬるめのお湯に入ったというわけである。風呂から上がっても、次から次へと汗が出てきて止まらない。試しに体重を量ってみたら、1キロ半も減っていたのでびっくりした。普段の私の体は、よほど水ぶくれ状態なんだと反省しきりである。

 着替えても、肩や首などの体のあちこちの筋が、張っているのがわかる。それを感じながら地下鉄に乗り、車内の揺れに心地よく身を任せていたら、もう乗り換えの日比谷駅に着いた。そこで、そうだ、ビックカメラにまた行ってみようと思ったのが、運のつきだった。地下一階のカメラ売場に行き、キャノン、ニコンのいかにも一眼レフというカメラを見渡すが、やはり手に取ろうという気がしない。昨日オリンパスのショールームで見たE−P1のようなコンパクトな一眼レフは、どこにもない。E−P1の現物はその場にはなく、それに代えて実物大の写真のパネルがあった。そしてその隣に、小型一眼レフの現行機種であるパナソニック「LUMIX」DMC-GH1があった。やはり、レッドは赤鬼のような形相であったし、それを手に取ってみたものの、やや中途半端な大きさなのである。つまり、大きな私の手だと、握るところが逆にもう少し大き目の方がよいのである。だからこれは、女性や手の小さな男性が持つ場合にはちょうど良いのかもしれない。

 というわけで、なんだかんだと迷いつつも、次第に魅かれていき、結局、オリンパス・ペンE−P1を予約することにした。ダブル・レンズ付きで、13万円弱、それにフラッシュやら何やらで、大枚15万5千円の出費である。7月中に届くらしいが、その月末に予定している奈良への旅行までには、手に入れたいものだ。その前に、一眼レフについて少し勉強をして、腕を磨いておかなければならない。忙しいけれども、それでいて楽しみな夏休みになりそうである。良い写真を撮って、このサイトでも公開していきたい。



関係記事 目次
一眼レフのお勉強シリーズ
(1)ホワイト・バランス
(2)アート・フィルター
(3)露出補正とピント
(4)連写機能とピント
(5)被写界深度とF値
(6)交換レンズの知識
(7)実践編〜不忍池にて
一眼レフの実践編シリーズ
(1)不忍池の蓮を撮影
(2)奈良の夜景を撮影
(3)一眼レフの勉強と実践
(4)花のボケ味を撮影
(5)浅草サンバを撮影
(6)谷根千の花を撮影
[後日談]E−P1のその後


(平成21年6月22日著)
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