This is my essay.







昭和記念公園( 写 真 )は、こちらから。

 11月の中旬となり、外の気温は摂氏20度少し下回るようになった。そろそろ紅葉前線が南下中という報道を見かけるようになり、心待ちにするが、東京中心部はまだまだそのような景色にはない。小石川後楽園などは下旬からだという。しかし私は今日は土曜日で暇だから、それをどこかで見られないかと思って、ウェブで調べた。そうすると便利なもので、立川にある国営昭和記念公園では、紅葉と銀杏を同時に鑑賞できるらしいことが判明した。これはよいと思ったものの、あそこまでは、文京区の自宅からはわずか一時間もかからない。同じ都内なのに、もう紅葉が見られるのかなと半信半疑で出かけたのである。

 昔々は米軍基地だったこの公園には、子供がまだ小さかった頃に行ったことがあるが、その返還の時からあまり年月が経っていなかったせいか、その頃には何もなかった。お花が広がる原っぱというイメージが頭にこびりついている。立川駅で降りて多摩モノレールを上に見るところを通って、現地に向かった。着いてみると、なかなか良い公園である。しかも大きな公園であるにもかかわらず、結構なんでもあって、しかもうまく設計されていることがわかった。
 最初にあったのが、立川口の少し先からはじまる「カナール」(仏語のcanardは鴨だから、英語のcanalつまり運河のつもりだろうか?)という、まっすぐ細長く続くフランス式庭園である。正面には噴水があり、両脇には銀杏の並木が作られていて、もう黄色に色づいている。落ち葉を踏みしめて歩くと、ギンナンのあちこちに落ちていて、あの独特のにおいが漂っていた。



 さらに進むと、野鳥がいる水鳥の池に着いた。確かに色づいている紅葉の木があり、それに群青色の水面に映えて、実に美しい。更に歩いていくと、下を自転車が走っている。どうやら歩く道と自転車の道とを分離しているようだ。私のように風に吹かれてのんびり歩きたい人間には、とても有りがたい設計だと思った。どんどん行くと、前方に人が一杯いて、ざわついている。市民マラソンの行事をしているようだ。「4キロコースはこちら!」と叫んでいる大会関係者が数人いるし、あるいは走り終わったらしき若い女の子が「○○ちゃん、がんばってぇーー」と、甲高い声を上げている。次々にやってくるランナーを見ると、私と同年配のおじさんも結構見かけた。皆、元気なものである。微笑ましいのは、若いお父さんが、奥さんを横に赤ちゃんを抱いて、何やら話しかけている場面である。「大きくなったら、一緒に走ろうね」なーんて、言っていたりして。

 その喧噪の空間を抜けると、日本庭園があった。その中の池の様子の全体を写真に収めようとしたが、パノラマ写真でも追いつかないほど大きいのである。私は、普段から小石川後楽園とか六義園などに出かけて満足しているが、これらは結局のところ、都心のちまちました元大名庭園にすぎない。そういう庭園を見慣れている身としては、この公園の日本庭園は、誠に雄大で素晴らしい。天高くどこまでも青い秋の空、ところどころ色づき始めた紅葉、そして池の紺の青っぽい色の組み合わせが何とも魅力的ではないか。池の周りを巡っていくと、池の中に浮かんでいる亀形の小島を見つけた。その頭に当たる石の形といい、足の石といい、実にうまく造っているものだと感心した。これが今日一番の収穫である。

 さて、その日本庭園で、燃えるような赤い色の紅葉を見つけた。さあ、どうして撮ってみようかと思い、青い空とともに撮れば、映えるかもしれないと考えた。これがご覧の写真であるが、まさに、その意図のとおりとなった。白い雲は、ご愛嬌である。加えて、紅葉の様子の写真をいささか気取って撮ってみた。種を明かせば、カレンダー写真でしばしば見かけるような構図であるが、いいものが撮れたと自画自賛している。



 今日は、木枯らし一番が吹いて、少し寒かったので、早めに帰ったが、期待通り、真っ赤な紅葉と黄色の銀杏を堪能し、かつ良い写真まで撮れたのでとても満足した。やはり、写真は被写体の良さと、それを引き出す構図と撮影テクニックである。





(平成17年11月12日著)
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